Mの憂い@-2nd.Stage★Perplexed hide-and-seek
Chapter2:焦り
ゆかりは島に着いて空港からすぐに警察署に向かった。
「こちらです。」担当者が事務的に対応した。
地下に向かって階段の先は薄暗く、灰色の無味乾燥なコンクリートの壁が周りの空気を一層冷たくさせていた。
もちろん一刻も早く会いたい。けれど、会っても、もう笑ってくれることはない。
「ままぁー」と駆け寄ってきてくれることも、反抗していじけてみせることも・・。
一段ずつ降りていくごとに少しづつ暗くなっていく階段は、気持ちの奥に抑えこんでいた悲しみを、胸が破裂せんばかりの勢いへ変えていった。
白装束に包まれ、静かに眠る剣斗の姿を見たとき、声にならない叫びが、ゆかりの頬の上を次から次へとあふれ流れていた。沈黙の時間がしばし流れた。
一方、そのさらに奥の西側の狭い一室。地下遺失物保管室では・・。
小さな天窓から入る仄かな光の中で、一つの影が動いていた。
コツコツコツ・・扉の向うの足音に、影は暗闇の中で息を潜めた。
ガチャガチャッ!。扉が開いた。一瞬電気のスイッチをつけ「あ、これだこれだ」と警察官は用事を済ませ消灯後出ていった。
警察官の気配が完全に遠ざかったのを確認すると、影は再び動き始めた。
■引き取り待ち。持ち主代田ココ様。■とかかれた付箋が、ホチキスで留められている荷物のを見つけた。中身をさっそく物色し始めたが・・・。
(くっそぉ_っ。どこにいたんだ・・・)
そこは、いったん引き揚げる事にした。
警察署で剣斗の遺体を引き取り、葬儀の手続きを済ませたゆかりは、警察署の正面入口で、連行されてきた男と一瞬目が合った。見覚えのある顔だったが、すぐには思い出せなかった。そんな事より、タクシーを捕まえることに気持ちが行っていた。
10代で、親の反対を押しきって子供を産み、一番遊びたい盛りに一人で子育てをしてきた。剣斗の事を考え父親となる男性を探すべく、たくさんの男性とも接してきたこともあった。そして半年前、剣斗の事も含めて愛してくれる運命の男にやっと巡り合えた。それが瞳海だった。
そんなゆかりにとってこれからが剣斗との、いや、もしかしたら瞳海と3人の一番楽しい未来が待っているはずだった。
今のこの不安定な気持ちを落ち着かせ、ぽっかりあいた心の隙間を埋めてくれれるのは、瞳海しかいなかった。
瞳海にあいたい。今すぐ抱きしめてほしい。
はやる気持ちを抑え、身だしなみを整えようとコンパクトを覗いた視線のその先に、
重くたちこめる雲をさえ嘲笑うかのように、どっしりといすわっている一つの山が見えた。
(あれが・・・)小さく呟くその口元は、僅かに強ばっていた。
(そうだ、あのことも相談してみよう・・。)
いまだ混乱の続くホテル。
ごった返す多くの人々の間を、目深に帽子をかぶり通り抜けると、エレベータでオーナー室がある最上階へとあがっていった。
見るからに重厚感のあるそのドアを静かに3回ノックした。
ドアの向うからの返事はなかった。だが、微かな気配が伝わってきた。
今のゆかりは、是が非でも瞳海に会いたいという気持ちが少しの物音さえも聞き逃さなかった。
再び、ノックした。今度は少し強めに。
「瞳海さん・・・あたしよ、ゆかりよ・・」
だが、返事はなかった・・・・。
ホテル1階のロビーでは緑田の事件の事情聴取が行われていた。
第一発見者である芳尾・久万埜の2人が戸惑いながら受け答えしていた。
平川紅緒は体調が悪くおなかが痛いと言って部屋で休んでいた。
紅緒はお腹なんて痛くなかった。仮病を使ったのだった。
警察に行くと余計なことを喋ってしまいそうで恐かった。、
もちろん、あの時見たエレベータの中の凄惨な光景を思い出すとめまいがするのは事実だったのだが。
紅緒の携帯が鳴った。発信者を確認するやいなや、
「どうだった」と、いきなり聞いた。
「それが・・・・・」(紅緒は少しいらいらしながら相手の話を聞いいていた)
「で、そこにはあったの?」
「なかった・・・」
「一体何してるのよ、約束が違うじゃない、もういいわっ」
ヒステリー気味に電話を切ってしまった。
ふっと、後ろを振り返ると、そこに帆羽がいた。
「は、はやかったのね・・。」
「ええ、どうやら犯人の目星はついてるみたいで、一応念のためということみたいでした。もう、大丈夫なんですか、お腹のほうは・・。」「あ、うん・・。」
「そういえば、梨生先輩、来てるんでしたよね・・。」「ああ・・」
「会いませんねー。どこにいっちゃったんでしょう・・。」「うん・・・」
紅緒は、帆羽がいつから居たのか、そして、あれがどこに行ったのか気になってほとんど生返事だった。
最終更新:2005年12月02日 09:42