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Mの憂い@-3rd.Stage★The small satans' in whispers talks
Chapter5:潮煙

ホールの最後列に亜梨葉並んで座っていたゆかりも席を立とうとしていた。
「うふふ。やっと、見つけたわ。」亜梨葉が不敵な笑いを浮かべてゆかりの顔を見上げた。
「ぅん?なにを?」「いいから一緒に来て。」
またもや亜梨葉に腕を掴まれ振り回されるようについていった。
入口を出ようとしている一人の男に、亜梨葉が声をかけた。
「ソラ、みっけ。」その声に男は何気なく反応し振り向いた。
が、即座に180度回って、何事もなかったようにその場を去ろうとした。
ゆかりは、ぽかーんとしていた。「ソラ、逃げるな。」一段と大きな声で亜梨葉が呼んだ。
男は観念したように再び振り返ると、亜梨葉の腕をぐいっと掴んで暗がりの方へと引き連れていった。仕方がないからゆかりも後を追った。
「なんでわかったんだ・・。」男は俯きながら目線だけをあげて聞いた。
「そうよね、顔変えたのね。あまりの素敵なお顔で、最初は判らなかったわよ。」
けらけらと面白そうに笑いながら亜梨葉は答えた。そして、
「その歩き方と背格好よ。お金も知識も有るのに微妙に自信の無いその歩き方よ。それとその左手の掌に有る大きなホクロね。あとその癖よ。」
と、勝ち誇ったように言い放つ亜梨葉に、今度は男が開き直った。
「ちっ、で、なんだよ。俺は役割は果たしたぞ。それにさっき、杷明都に聞いたら、揃ったって言ってたぞ。」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、いよいよね、楽しみだわ。あとはー・・・・」
何やら画策するようにどこを見るでもなく腕組みをした。
「ねぇ、何の事?この人だれ?」
ゆかりが亜梨葉の背中を突つきながら、小声で話しかけた。
「あ、あのね、・・」亜梨葉が話しかけた時、若い女が男を探しに来た。
「人志さん、こんな所で何してるの。」少し離れたところから女は甘えた声で彼を呼んだ。
「ああ、すまんすまん、今行くよ。」愛野人志こと斜穴井宙は答えた。
「へぇ~、『ひとし』っていうんだ。ソラ、今は」と、意地悪そうに言う亜梨葉をじろりと睨むと、
「じゃあ、俺いくな。その日が決まったらまた教えてくれ。じゃっ」
宙は玲亜のところへ、逃げるように走って行った。
「ねぇねぇ、、なんなのよ。」ゆかりが再び聞いた。
「ああ、ごめんごめん。彼は元々クラブのお客さんだったんだけど、いつのまにか飲み友達になちゃって。彼ねー、本名は斜穴井宙(しゃあない ひろし)って言うんだけど、『宙』って『そら』とも読めるでしょ、だから友達皆でからかってシャーナイソラって呼ぶの。」
「あ、だから、ソラ、ソラって言ってたのね。で、役割とか揃ったとかいうのは?」
二人は明るい方へ戻っていきながら話していた。
「うーん、ちょっと、長くなるからそれはまた今度。でもね揃ったっていうのは例のマリポンの13個の石の事よ。」
「石?石なら1個持ってるわよ私。」
ゆかりは、足を止めてハンドバックから石を取り出してみせた。
「まぁ、そうだったの。実は私も・・・持ってたのよ、今は誰かが持ってるわ。」
「え?」妙に余裕の有る亜梨葉の態度に疑問を持ちながら、石をバックに大切にしまった。


輝く鍵を持つ貴方へ
★ふふんドーム西側1番ゲート

次の満月の日没

◆輝くマリポンの石をお忘れなく。


「あ、そうそう、これ。さっきスタッフの人から、渡されたんだけど。何かしら。」
ゆかりはバックのポケットにしまっていた一通の招待状を取り出した。

「あは、これよ。私が心待ちにしていたのは。」
横から覗き込んだ亜梨葉が嬉しそうに笑った。
「ソラに伝えてくるわ。」そう言うと、
そそくさと、どこかへ行ってしまった。
どうにも不可解な気持ちではあったが、ゆかりはとりあえず再び瞳海のキャビンへと向かった。

その頃、人影もまばらなパーティー会場でちょっとしたハプニングが起きていた。
「おお、あれテンテンじゃないか。」「わーい、何か歌ってぇ~。」
次々と会場の人々が騒ぎ出した。
キャビンでじっとしていられなかったらしく、テンテンが姿を現わしていた。

「あちゃぁ、あれほど大人しくしていなさいって言ったのに。」
雲丹が少し広がりはじめたおでこに手を当て小声でため息をついていた。

「ち、ちがうわよ、」
テンテンが取り繕って否定するものの変装したつもりのそれは余計に存在を強調していた。
天井で豪華に輝くシャンデリアや銀色の皿の上でおいしそうに照り輝くオードブル、赤やピンクやレモン色の冷たく澄んだドリンク類が彩り鮮やかに並ぶ様子にテンテンはまるでお城の中にいるお姫様になった気分だった。
「まぁ、素敵。」周りの目も気にせずにはしゃぎ始め、アルコールの強いカクテルを一気に飲み干してしまった。口当たりがよかったらしく気分をよくしてもう一杯飲み干した。
するとマリポンに石が視界に入ったらしく、ふらつきながら走りよっていった。
「ああああ、これねー、マリポンの石って、ヒック、。」一気に酔いが回っていた。
「これさー、歌では仲間が来ると動くって言うけど、仲間ってどこにいるのかしらねぇ。」
誰かがぽつりと呟いた。
「そうそう、これねー、おんなじ様なのが13個あるんだってねー。最近流行ってるじゃん!マリポンの唄、ヒック。あの歌ってあげるわ。」
そう言うとマイクを掴みご機嫌に歌い出した。
会場はちょっとしたミニコンサートへとなっていた。
「うたいまぁ~~す。ぶー ぶー しったかぶ~~♪・・・」
すると、展示されていた石が歌にあわせて踊り出した。
「おおおおおおお」会場は、いつのまにか戻ってきていた人々で盛り上がっていた。
実はリズムに合わせて震えているのが踊ってるように見えただけだった。

「すっみません、お手数おかけします。」「いえ。」
別室で、雲丹がひたすら小さくなっていた。
「ここしか無いかも知れませんもの。動かすとこ。」杷明都が悪戯気に笑った。
「ちょっと、やっぱり連れ戻してきます。」雲丹が部屋を後にした。

ひとしきり歌い終わり、再び石に視線を落とすと、
「これ、手が届きそうね。」徐に石に手を伸ばした。「あれっ、」
勢いあまってテンテンはひっくり返り、そのまま酔いつぶれてしまった。
「なーんだ、ただのCGかよ、偽もんじゃん。財宝も本当にあるんだか。」
誰かの一言で皆の気持ちは一気に覚めたようだった。
「ちえっ。ビリヤードでもしてこよぜ。」「おお、飲み直しだ。」

船が港へと到着したのは、それから間もなくだった。

最終更新:2006年01月01日 00:31