アットウィキロゴ
Mの憂い@-4th.Stage★Come back from Long journey
Chapter1:前進あるのみ

太陽の日射しが燦燦と降りそそぐ真夏日ではあったが、湿度が低く、頬をなでる風はさわやかで、雲一つない空は見つめるほど引き込まれてしまいそうな真っ青な空だった。
やがて日が傾きシッタカ山の稜線を赤く染める頃、東の空では望月が出番を待っていた。

ふふんドームの西側2番ゲート近くの木陰に、大型ボックス車とセダンが停まっていた。
セダン車の方には真里菜と理恵世そして愛知警部補が乗っていた。
「とうとう今日でケリがつくのか。」
蟹派が運転席側の窓の外でタバコを吸いながら呟いた。
「あ、遅れましたが、例の爆破事件、お預かりしていた起爆装置の破片と見られるものを調査したところ、米軍基地のものと判明しました。」
愛知が思い出したように報告すると、
「あらま、じゃあ爆破の犯人は米兵さんかしら?」
真里菜は頬づえを突きながら呑気に笑った。
「それは、まだ調査中です。」理恵世が少し申し訳けなさそうに答えた。

一方ボックス車の車内には、世慧、揺、雲丹、典子、瞳海が乗っていた。
そこに野琵が戻ってきた。ドアを開けて車から降りるながら世慧が聞いた。
「処理終わったか。ご苦労さん。ところでゲート前に皆集ってきてたか?」
「ええ、いましたよ。それどころか、招待しなかった者まで来ているようですよ。どうしましょう。」
「まあ、いいだろう。じゃあ13個揃ってるかどうか念のため。」
世慧が目で揺に合図をして、改めて確認をさせた。
「はい。」小型のモニターを確認しながら「大丈夫です。」と、返事をした。
「よし、いよいよだ。あっちの皆さんにも声を掛けてきてくれ。」
一同は車を降りて、1番ゲート前に向かった。

ゲート前には、ゆかり・亜梨葉・人志、梨生・帆羽・黒田・割賦、太良登・芳尾、真予、冦夢・夏生、星人の13人が来ていた。
「はーい、では、みなさん、ここでふふん性マラリアの予防注射を行います。」
「注射きらーーーい。」「あたいもやだっ。」典子と割賦が半べそをかいて騒ぎ出した。
「一応、先程洞窟前のマラリア菌を駆除しておきましたが、万が一という事も有りますし、洞窟の中までは保証できませんよ。」野琵が冷たく説明した。
それが違う不安まで誘ったようで、二人は余計騒ぎ出してしまった。
「そうよ、先日米兵がイチコロでなくなったって聞いてるわ。ここは我慢しどころね。
ほんの少しで終わるから、ね。」
署長が優しく言い聞かせるようにしり込みする二人の背中を軽く押した。

全員に注射をし終わると、野琵は世慧に報告した。
「よし準備OKです。僕はこれを車に戻して追いかけますから行っててください。」
「わかった。さあ、皆さん行きましょうか。僕についてきてください。」
世慧自身袖を伸ばしながら皆に声をかけた。全員がぞろぞろと、ついていった。
最後尾で、半べそをかきながら俯くゆかりを尻目に亜梨葉が上機嫌ではしゃいでいた。
「うふふ。とうとうだわねー。やっとだわねー。あら?ゆかり先輩元気ないわね。」
「ぅん。私、行くのやめようかしら。」
血が止まったかどうか確認しながらも、また泣きそうになっていた。
「なんで?どうしてよー」
「彼がね、彼がね・・・・別れようって・・・。」
「男なんていくらでもいるわさ。気にするな。別れは新しい出会いの始まりよ。」
「・・・」恨めしそうに亜梨葉の背中を睨んでみたもののどうなるものでもなかった。

歩き始めてからしばらくすると洞窟の前についた。
西の空のオレンジ色もすでに褪せていた。天には、既に幾つかの星が瞬き始めていた。

「さ、皆さんそれでは行きますよ。」
誰もが不気味に暗く静まり返った闇の向うに、莫大な財宝が眠ることを信じて、いや、願っていた。
いくつかのランプや懐中電灯が何人かに渡された。
入口は天井も低く、人間が1人か2人がやっと通れる程に狭かった。
世慧を先頭に揺、野琵、瞳海、そして雲丹の腕に典子がくっつくというよりぶら下がるようについていった。
「皆さん足元に気をつけてくださいね。少し滑るみたいですから。」
杷明都が振り返って小声で注意を促した。
続いて蟹派や真里菜達が一列についていった。
「こ、怖えええ。」「寒いわ・・ここ。」
梨生達はもう一塊になって、今にもお互いの足がもつれそうな状態で進んでいた。
「ちょっと、足踏まないでよ」帆羽が小声で言うと、
「だから痛いって、、狭いんだから横にくっつかないでよ。」
梨生が思わず叫んだ声は洞窟内にいた小動物を嚇してしまったようで、一斉に飛びまわるそれらに、一同も一層の恐怖を感じた。
「ほら、ゆかり大丈夫?おいていかれるわよ。」「待って~。」
いつの間にか、二人の関係は遊び仲間の先輩後輩から友達へとかわっていた。

程なく進むと、突然視界が広がった。
後続の太良登達や夏生達も広場にたどり着いて全員が再び揃ったところで、世慧が以前に米兵からメールで送られてきた壁の文字を見つけランプで照らした。
「今、この文字を解読しますから少し待っていてください。」世慧が言うと、
杷明都がリュックから取り出したPCを開き早速調べ始めた。
「あら、ここ、どこにも通じてないのね。」真里菜が何気に言い放った。
「行き止まりってこと?地面とかにも何もないのかしら。」
理恵世が冷静に懐中電灯で照らしながら周りを見渡した。
「いやああああああああ、帰るううう。」
割賦大声で喚き出した時、それが原因かどうかは不明であったが、洞窟内で鈍く重い地響きが起きた。小さな岩や土が天井からバラバラと降ってきた。
「きゃ、」「ぉいいい、冗談だろおお」「ヒィィィィィ。」
しかし、皆は姿勢を低くして頭を抱えるしかなかった。
幸いそれはすぐに止み、誰も大怪我する事もなく何事もなかったように思えた。だが。
「ぁーー。」帆羽が声にならない悲鳴をあげてさっき来た方を指差した。
一同は言葉を失った。青ざめるを通り越して無表情になっていた。
皆が呆然と座り込む中、気を取り直した世慧と冦夢が何とかしようと試みたが、道を塞いでいる大きな岩はびくともしなかった。

最終更新:2005年12月31日 21:40