Mの憂い@-2nd.Stage★Perplexed hide-and-seek
Chapter4:橙色の出来心
立ち込める湯気の中で、透き通るような肌が、水を弾きながらほのかに桜色にかわっていった。
キッチンでは、パスタが茹で上がろうとしていた。
夏生の細く長い指が、手際よくサイドボードからワイングラス取りだし、サラダボールを運び、料理を並べていった。
桃菓は部屋に泊まったあの日から、夏生の家に度々来るようになっていた。
夏生がワインクーラーに手をかけたその時、インターホーンが鳴った。
モニターに映っていたのは、魁矢だった。
一瞬居留守を使おうと思ったが、無理だった。外には車も止めてある、玄関脇からバスルームの湯気も排気されてるはずだ。
「おーい、夏生いるんだろう。」「・・・おうよ、なんだよ・・。」
それに、魁矢とは、小さいころからの親友だったから無下に断る事も出来ず玄関を開けた。
魁矢は挨拶もそこそこに、いい匂いに引き寄せられるようにリビングにはいっていった。
「おお、うまそうだなー。誰か・・・」言いかけて、椅子の上に置かれたブランド物のバックと上着に気がついた。
(またにするよ。)そう言いたかった気持ちがあったが、そうはいかなかった。
少しの間沈黙の時が流れ、バスルームから気持ちよさそうに色づいた桃菓が出てきて、再び3人の間に無言の時が流れた。
パスタのふきこぼれる音で、3人は我に返った。
桃菓はバスローブ姿から着替え、料理を皿に取り分けていた。
「で、どうしたんだ。」「ん・・・・」
魁矢は、左ポケットから何やら取り出してテーブルに置いた。
蛍光灯の光がそれに反射してグラスや食器までが一瞬輝いた。
そして、頬や腕に未だ残る引っ掻き傷をなでながら話し始めた。
suzusimaホテルのフロントクラークをしてる魁矢は偶然にも、光江がチェックインの手続きをしている時、彼女の大きく開いた胸元に光る石を見ていた。
そして、自らも「N」と刻まれた同じ輝きを持つ石を受け継いだ魁矢は、それが何を意味するかを知っていた。
フロントに特別室の客から誰か来てほしいと内線がはいった。魁矢は部屋を訪ねた。光江の部屋だった。
「薬ないかしら、頭痛がするんだけど。あ、それと・・・」いくつかの用事を言い付けた。
「かしこまりました」
魁矢が部屋を去ろうとした時、足元のソファーの上に無造作に脱ぎ捨てられた服と一緒に石が転がっているのがみえた。
次の瞬間、魁矢はいつのまにか石を掴んでいた。
「ちょっとっ、何するのよ。」
光江にとっては、クラブの客からもらった只のアクセサリーだったのだが、とっさに奪い返そうと掴みかかっていった。
あまりの剣幕に何とか静かにさせたい一心で、つい力が入っていた。魁矢が我に返った時は、光江はピクリとも動かなかったのだった。
魁矢の話が終わると、夏生は奥の部屋から小袋と手紙を持ってきた。
この島で生まれ育った夏生の家にも代々、石が伝えられてきていた。
小袋から取り出し手のひらに置いた。「S」と刻まれていた。
そしてテーブルに置かれていた石には「E」と。
魁矢が左ポケットから取りだした石を横に並べた。
3つの石をテーブルの中央にならべ眺めてみた。
「あとは・・・Wかしら・・・・。」いたずら気に、桃菓がつぶやいた・・。
そのころ、南の島警察に110番通報が入っていた。
*****ダイヤモンド鉱山の麓で女の人が頭から血を流して倒れている。
早速、蟹派刑事と数人の警官が現場に駆けつけた。
既に息絶えていた。凶器が、死体の側に落ちてる血の付いた岩だという事は推測できた。
さらに、誰かと争そった痕跡と、持ち物が物色された形跡がうかがえた。
しかし、着衣に若干の乱れはあるものの暴行された様子はなかった。
ハンドバックの中から散乱したと思われる財布やカード類の貴重品が無造作に落ちていた。社員証と顔をを比べて、警官が言った。
「身元は平川紅緒45才。涼島商事の経理課の社員のようですね。」
「あらこの人、ホテルで事情聴取お願いした時にこなかった人じゃないかしら。」
そばにいた婦警が言った。
「第一発見者は、通報者かな・・・誰だね。」
「こちらの方です。蜜場大学・考古学科・後藤研究室・研究生の野琵さんです。」
「蜜場大学・考古学科・・・・・。あれ、この前海岸で発見された死体の・・。」
野琵は面倒臭そうに軽く頭を下げた。通報した事を少し後悔していたようだった。
辺りは、いや、島全体が不気味に強いオレンジ色に染まっていた。
夕暮れが何かを主張するかのようだった。
最終更新:2005年12月02日 09:46