Mの憂い@-3rd.Stage★The small satans' in whispers talks
Chapter2:哀しみの宝石箱
「どうだ?12こ全部確認できたかな?」世慧が彼女にきいた。
「ええ、乗船の時は確かに12個、通り過ぎていったのですが、会場に全部集ってるかどうかは今からです。」
彼女の名は、揺 杷明都。後藤研究室の学生の一人だが、これが結構優秀である。
今回、世慧の指示のもとマリポンストーン探知器を組み立て、持ってきたのである。
パーティー会場の天井に近い壁にいくつかのカメラが設置されていた。
会場の様子が映し出されたモニターのある部屋に、世慧や雲丹が集っていた。
「どれどれ、1・2・3・・・やや、なんでここに固まってるんだ。」雲丹が少し驚いた。
「コイツ等が一連の事件の犯人なのか」鬼瓦署長はほろ酔い気分ながら怒りを露にした。
「まぁまぁ、とりあえず、この位置関係からすると・・」
会場を映すモニターと、探知器上で動く光を照らし合わせて考えてみた。
「まず、1個は、あの帽子をかぶった風変わりなおっさんか。」
「そして、このしきりに動いてるのは・・。」
「むむ、フロントの冦夢さんですね。ここに2つ、有りますね。」
「こっっちも、動きが激しいな。今出でいった・・、あのメイドだ。」
「それから、お、今デッキから会場に入ってきたあのカップル。」
「あ、あの大きく背中の開いたドレスを着てる女のカップルの方かな。」「ええ」
「で、6個はあの若者4人だな。」
「あと一個か。うーん、見当たらないな・・。もう少し様子を見てみるか。」
「ねぇ、どれがどの石かは判らないの?」理恵世が聞いた。
「細かく調べれば判りますが、何かお探しでしたか?」杷明都は事務的に聞き返した。
「いえ・・、いいわ、なんとなくよ。」「はぁ・・・。」
「じゃあ、あとは、その持ち主にだけ渡す招待状を準備しておいてくれ。」
「はい。」世慧の指示にそばにいた野琵が答えた。
黒いドレスに包まれた女が静かな闇の中で隠れるように佇んでいた。
ゆかりは、今夜が瞳海に会える最後のチャンスと考えて船に乗っていた。
だが、あの華やかな雰囲気の中に入る気持ちにはどうしてもなれず、デッキで一人海を眺めていた。
不意にデッキの扉が開いた。
反射的に会場内を覗いたゆかりは、あふれでる光の中に瞳海の姿を見た。
「会いたかったわ。やっと会えたわ。」ゆかりは思わず走りよって抱きついていた。
瞳海は、挨拶後の緊張から解放され一息つこうと、デッキに出たのだった。
だが、ゆかりの顔を見るなり複雑に交差する気持ちで胸がいっぱいになり、声どころか呼吸さえ止まりそうだった。
やっとの事で大きく深呼吸をした瞳海は、やさしくゆかりの肩を抱きながらデッキチェアに座らせた。
「元気そうでよかった。」
「ちっとも元気なんかじゃないわ。あの日なんで出てくれなかったの?あなたは部屋にいたはずよ。」
涙ながらに話しながらも、ゆかりの目は瞳海の顔を睨んでいた。
「あぁ、すまなかった。君の秘密を知ってしまってから俺は・・・・。」
「秘密?何の事かしら。あ、もしかして、これのことかしら。」
ゆかりは徐にバックの中から小袋を取りだした。
「ごめんなさい。私もついこの前まで知らなかったのよ。
私の家ががシッタカ文明の分家だったなんてこと」
そういうと、【F】と刻まれた石を瞳海の手をとって、掌の上に載せた。
「えっ、なんだって!」
驚きを隠せない瞳海に、涙を拭きながらゆかりは尋ねた。
「え、これのことじゃないの?」
「社長、権田助教授がお探しです。至急会場の方へお戻りください。」
秘書が遠慮がちに少し遠くから呼んだ。
「ああ、わかった、すぐ行く。」
そう返事をすると、石をゆかりの手に大切に戻した。
「ゆかり、すまないが話しは後だ。俺のキャビンで待っていてくれ。」
鍵を渡してまた光の中へ戻っていった。
世慧と瞳海は会場から外に出た。
瞳海がタバコに火をつけて一息ついたとこで、世慧が話し始めた。
「今現在の持ち主が大体わかりました。それぞれの身元確認中です。ですが、後一つ。
会場には見あたらないんです。確かに船には乗ってるはずなんですがねぇ。」
そういうと、手に持っていたグラスを傾けた。
「ああ、それはむこうのデッキにいるよ。」グラスを瞳海が静かに言った。
「そうか・・じゃあ13個そろったな。いよいよか。」
「そういえば、仲間が来ると踊り出すって歌流したよなー、どうしたんだ、あれは。」
「あれは他の石が近寄ったのを確認したらこっちで【J】を少し動かすようになってる。遠隔操作だ。」
「そうか遠隔操作か。俺達は一体誰に操作されてるんだろか。」
ちょうど二人の瞳にはシッタカ山が映っていた。
重く黙り込むそれを見ながら悲しそうに瞳海が呟いた。
「そうだな、財宝なんていらないから、それよりもう誰も失いたくないな。」
「俺もだ、もう何の秘密も知りたくない。大切なものと引換えに俺達は何を得るんだろうか・・」
気のせいか、かすかに何かが海に落ちる音がした。
最終更新:2005年12月21日 16:35