Mの憂い@-2nd.Stage★Perplexed hide-and-seek
Chapter3:空色の記憶
世慧は、HeartfulParkのベンチで、呆然と空を見上げていた。
昨日久しぶりに見た際の笑顔を思い出しながら、幼い頃の記憶をたどっていた。
静かな空気の中で、携帯から流行の音楽がけたたましく鳴り響いた。
際の自宅からだった。
「はい・・」「お義兄さん、お久しぶりです」・・・・・・。
警察から連絡がいったのだろう。
彼女にどんな言葉をかけたらいいか戸惑いながら、彼女の言葉を聞いていた。
「本当は私がそちらに行くべきなんだけど、ちょっと無理みたいだわ。いつ生まれてもおかしくない状況で・・・。ご面倒かけると思うんですが、彼の事お願いできないかしら。」
「ああ、任せてください。とにかく今は体が一番だから。」
「あのね、名前、決めたのよ。『稀』って。あの人の・・たっての・・希望だったから・・・。」
「・・・・いい名前だな。今は元気なお子さんを産む事だけ考えていてくださいな。」
「ありがとうございます。・・・・・・・」
「ああ、くれぐれも無理はしないように。じゃあ、また連絡するよ。」
おそらく、彼女には際が亡くなった事しかまだ伝わってないのだろう。
食事会の時は、のびもいたし身内の事はあとでゆっくりと思っていたから、彼女のことはそこでは話題にはださなかった。妊娠したという話は聞いていたが、既に臨月だったとは知らなかった。
(まったく、こんな大事な時に際のやつ・・)
携帯を上着のポケットにしまい込みながら、ふと視線を上げたその時、
ハート岩に隙間から零れ落ちた光が彼の瞳に反射した。
*こっちが、さいの。んでこっちが、せえの。
*わーい。*きれいだねー。*だねー。この石。
*ほら、太陽にあてると、もっとキラキラするよ。*ねー。*ねー。
これこれ、それはパパの大事な物でしょ。ひきだしにかえしてらっしゃい。
*はーい。*はーい。
そうだ、あの石・・あれ・・どこにあるんだろう・・・。
再び携帯を取り出すと、彼女のところへ連絡をした。
「はい・・」「あ・・世慧です。」「どうしたの」
「あの、際の遺品の中に光る石、はいってなかったかなー・・」
「あー、もしかして、あれのことかしら・・。」
「あるんだね、それを僕に譲ってもらえないだろうか・・」
「それがね・・しばらく前に空き巣にはいられた時なくなったのよ・・現金とかと一緒に・・。一応金庫に大切にしまってたみたいなんだけど、それが逆に盗まれる破目になったみたい。そんな高価な物には見えなかったのに。彼にとっては現金よりそれが無くなった事の方がダメージ大きかったみただったわ。」
「それは、まだ見つかってないのか?」
「ええ、犯人もまだ捕まってないみたい・・。」
「わかった、ありがとう。」
しばし、雑談をして電話を切った。
世慧と際の育った権田家は、お金持ちとまでは言わないが、わりと裕福なほうだった。
だから二人とも、お金や物に対する執着心はなかった。石も代々伝わる大切なものだと言われれば、忠実に大事にしまっておく程度だった。
二人は二卵性双生児であったため、うりふたつではなかった。どちらかといえば父親似の際は田舎くさい風貌だった。それに比べ、早くから都会に出て遊んでるせいもあるのか、母親似の世慧は、いろんな面でスマートだった。学問も率無くこなし、大きなコンプレックスも無くここまで生きてきた。だから、今までの世慧は石の価値に興味なんて無かった。亡くなった父の遺品の中に、石と手紙が封筒に入っていたが、そのまま際に任せていた。存在すら忘れかけていた。
だが、ここにきて何故か、ふっと思い出したのだった。
もしかして・・あれは、シッタカ文明の分家が持つ石ではないかと。
(際は、呪いで殺されたのだろうか・・。)
「ああ、俺がついてるから大丈夫だ。」 という、際の声が聞こえたような気がした。
いつも、まったくアテにならない大丈夫だっただけに、微かな不安が過ぎった。
一方、光江の方はというと、警察の現場検証で爆破による死でない事がわかった。
奥の寝室のスタンドか倒れ、枕や毛布も散乱していた。何より、光江の体に誰かと争った形跡が残っていた。
僅かであるが首を絞められた跡も確認されていた。
最終更新:2005年12月02日 09:44