
「おい、こいつ使えないか?」
狭苦しい操縦槽の中で〈フラーゴ〉の操手は僅かに右手を挙げた。低めに設定された増幅角がその動きを反映し、控えめな動作を装兵にさせた。
その手に握られていたのは〈M-60A1〉。アルカディア帝国軍が600年代から運用し続けている魔導機関砲である。
その手に握られていたのは〈M-60A1〉。アルカディア帝国軍が600年代から運用し続けている魔導機関砲である。
「いつのやつだ?」
背後から声を掛けられた〈レーヴェ〉の操手は応えた。
「あー……多分初期型だな? よくもまぁこんなもの使い続ける奴もいたな」
「すまない、それじゃあこっちと接続出来ない」
「すまない、それじゃあこっちと接続出来ない」
〈フラーゴ〉が操縦槽内の動きを映して肩を落とす。
「じゃあ置いておくな」
「おう」
「おう」
周囲の湿地帯には帝国軍と聖王国軍の激しい戦闘の痕跡が残されており、両軍共に幾つもの装兵や武装が転がっている。
先の戦闘は帝国軍が勝利を納め、今は続く進軍に向けて現地で武器弾薬等の調達を行っている。
行っているのだが、帝国軍では度々こうした問題が見られるのだ。
帝国軍は通常の軍隊と異なる性質を有しており、貴族による私兵集団という側面がある。そして各企業は帝国軍全体に向けてだけでなく、そういった貴族に向けて独自の商品を販売しており、そのため合同で作戦を遂行する際には互いの武装の規格が異なるという事態が発生するのだ。
先の戦闘は帝国軍が勝利を納め、今は続く進軍に向けて現地で武器弾薬等の調達を行っている。
行っているのだが、帝国軍では度々こうした問題が見られるのだ。
帝国軍は通常の軍隊と異なる性質を有しており、貴族による私兵集団という側面がある。そして各企業は帝国軍全体に向けてだけでなく、そういった貴族に向けて独自の商品を販売しており、そのため合同で作戦を遂行する際には互いの武装の規格が異なるという事態が発生するのだ。
「なぁそっちもこれ使えるか?」
〈レーヴェ〉が水面から持ち上げたのは小口径の魔導機関砲と実体剣などの数種類の武装が一体化した複合兵装。
「あー、なんだったかなそれ」
〈フラーゴ〉は一瞬考え込むような仕草をし、思い出したように言う。
「この前ヒヒカネの兵器ショーで見たぞ。複合兵装システム〈ジブラルタル〉だ」
「確かヘパイストスの? でも俺達のどちらにもヘパイストス製の装兵はいなかっただろ?」
「不思議だよな。それに〈ジブラルタル〉はまだ試作段階だったはずだ」
「確かヘパイストスの? でも俺達のどちらにもヘパイストス製の装兵はいなかっただろ?」
「不思議だよな。それに〈ジブラルタル〉はまだ試作段階だったはずだ」
〈フラーゴ〉と〈レーヴェ〉は同時に首を傾げた。
『不思議だなぁ……』
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