サイクロプス(ガンダムSEED)

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サイクロプス(ガンダムSEED) - (2019/10/21 (月) 13:10:50) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/02/18(土) 18:52:36
更新日:2024/04/19 Fri 09:14:34
所要時間:約 7 分で読めます






……この犠牲により、戦争が早期終結に向かわん事を切に願う…


青き清浄なる世界の為に…


3…2…1…!


【概要】

サイクロプスとは、機動戦士ガンダムSEEDに登場する戦略兵器

構造としては、マイクロ波発生用装置である多数の大型パラボナアンテナを敷き詰めたもの。
原理はマイクロ波を放射し、更にはマイクロ波の強度を増加させ、周囲一帯にマイクロ波加熱を生じさせるというもの。





ぶっちゃけ巨大な電子レンジである。


【使用時の影響】

原理は単純なれど、マイクロ波を放射する為、身体を水で構成された人間等の生物には脅威であり、
有効範囲内にいる生物は、体内にある水分が急激に加熱・沸騰させられる。
更に水蒸気が全身の皮膚を突き破って爆発し、北斗神拳を食らったモヒカンの如く身体が破裂し、死に至る。
この描写はかなりグロイ為、トラウマになった人も多い。

また、水以外の物質もある程度は加熱され、また大気中水蒸気からの輻射熱も発生する。
その為、搭載している燃料や弾薬が加熱される事で、誘爆してMSや戦艦を始めとした兵器群や軍施設等も破壊する事が可能。もちろん水蒸気爆発も爆発なので、衝撃波や爆風も普通に生まれる。
序でに発生してるのが強烈な電磁波なので、中のコンピューターなんかもあっさりやられる。
本編ではサイクロプスに巻き込まれたジンはコクピットのモニターにホワイトノイズが走る程度であったが、
小説版ではアラートすらなることなくモビルスーツの全機能が唐突に操作不能になる場面が書かれている。

人間も死ぬし兵器やコンピューターも死ぬという寸法である。


C.E世界の地球とプラント周辺は、核分裂を抑制し電波を妨害するニュートロンジャマーに満たされているが、電波であるマイクロ波も当然これに妨害されてしまう。
しかし完全には抑え切れない為、サイクロプスの効果を狭い範囲*1にする事が出来る為、限定的に使用出来る様にしてしまい、しかもマイクロ波なので放射能汚染も起こらない。
比較的クリーンで使い易い自爆システムとして使用される事となったのである。


【使用条件と配備】

余りの効果の為、起動には司令官クラスの将校二人が、同時にキーを差し込む必要がある。

本来は兵器ではなくレアメタルが混ざった氷を融解させる為の装置として月面のエンデュミオン・クレーターに設置されていた。
が、本編開始以前、月面を巡るグリマルディ戦線の敗色が濃厚になった時に地球連合軍がレアメタル採掘施設がザフトに渡らない様、暴走・自爆させたのが発端である。
その結果、大損害を出したザフトは月から撤退した。
戦闘含めて敵味方共に死者多数であり、数少ない生き残りの一人が後の「エンデュミオンの鷹」ことムウ・ラ・フラガである。

アイデア自体は19世紀末から存在する、戦前のSFにも幾度となく登場した*2SFガジェット「怪力光線」の現代版である。


劇中では、オペレーション・スピットブレイク時にアラスカ基地に設置された状態で登場。
新造戦艦であるドミニオンが開発された時点で用済みとなったアークエンジェルを、ザフト軍と道連れにする為に起動された。
因みに、こちらは最初から自爆用途として設置した為、威力を増し増しにしているという設定がある。


性質上動かす事が出来ない為、能動的に使用しようにも敵軍を自陣に誘い込む必要があるという欠点がある。
その為には設置場所が敵軍にとって攻める必要のある重要拠点である事と、大勢を巻き込む為に自軍の配置も求められるが、
使用すればその拠点は敵味方諸共壊滅してしまう。
かなり扱い辛いリスキーな兵器と言える。

因みに、両勢力共に情報統制も行っている為、特に連合側はそのままの情報を伝える筈も無く、
エンデュミオンでのサイクロプス使用は当時の連合側では余り公になっておらず(ムウを英雄に祭り上げた理由の一つ)、
アラスカ基地での使用についてはザフトの新兵器と発表している。


【作中の使用時の背景】


「青き清浄なる世界の為に…」


…普通、世界の事を考えてる奴等のする事じゃないが…

戦争終結を狙うザフトはオペレーション・スピットブレイクでの標的にパナマ基地*3をちらつかせていたザフト側、というかパトリック・ザラ達の策*4*5によってアラスカ基地は予想外の急襲を受けた。
が、実はパトリックに接近していたクルーゼが情報漏洩した事で基地上層部は事前にこれを察知。

しかし基地の防衛に付く部隊が大西洋連邦の潜在敵であるユーラシア連邦軍などだったりと、不要と判断された戦力の寄せ集めで構成されていた基地の戦力ではザフトの総攻撃を前には敵わない事も分かっていた。
そのため上層部は元々基地に所属していた兵や高官や要人は脱出させつつ、それを知らされない防衛隊は敵を誘い込む為の捨て石とされてしまう。
勿論、起動したウィリアム・サザーランド大佐ともう片方の将官も起動後に一緒に逃走。
因みに、連合への影響が強いブルーコスモスも承知……というよりも状況から推奨した行動であり、命令違反にはなっていない。

アークエンジェルもコーディネイターのキラの活躍が知られていた事もあって防衛戦に参加させられ、サイクロプス起動に巻き込まれそうになるが、
自身の過去と相まって、違和感を察知して居残って調査をしていたムウ*6が命を顧みずに戻って来て軍上層部のサイクロプス使用を知らせた事により、
命令を無視する事になるが当然マリューは残存艦艇と共に戦場からの脱出を選ぶ。

ザフトの猛攻により脱出は困難を極めたが、フリーダムガンダムに乗ったキラ・ヤマトが宇宙から救援に現れ、アラスカから脱出に成功。
キラはマリューから聞いたサイクロプス使用の情報を両軍に伝え、それを聞いた一部の部隊も脱出を選択。
ザフトの方でもフリーダムに戦闘能力を奪われたイザーク・ジュールを始めとする一部の部隊が、
不信感はあったものの連合の動きも相まって戦闘区域から離脱した事で全滅は免れた。

しかし、重要拠点という事も重なって両軍共に必死の攻防戦を繰り広げている最中で、キラの撤退を促す言葉はそうそう信用される筈も無く、
残り続けた大半の両軍の将兵の他、機体の損傷等で脱出が不可能になっていたパイロット等、多くの人命が失われてしまった。
最終的に、アラスカ基地は大爆発を起こし、辺り一帯は巨大なクレーターの様な地形になってしまった。
ザフトはこれにより 投入戦力の80%を喪失 するという大打撃を被り、後のパナマ基地攻略戦にも少なくない影響を及ぼす事となった。

「クリーンで使い易い兵器」というのはあくまでも、
放射線等を発生させず一定範囲内を徹底的に破壊出来る自爆用システムという意味の評価なのである。


使用機会自体が限定的な為か、敵味方諸共殺害という全方位から批判を浴びる様な殺戮兵器の為か、以後の公式の使用記録はない。



【その後の流れ】

必死になって命令通りにアラスカ基地に辿り着いたのにブルーコスモスの思想等から都合が悪かった為に徹底的に糾弾されたせいで、
アークエンジェルクルー達は地球軍上層部に強い不信感と反感を抱いていた。
そこにこの「情報を隠蔽して大量破壊兵器で捨て石の味方毎敵を殲滅」という作戦は、
クルー達の地球連合軍への不信感を決定的なものにするには十分であった。
後にアークエンジェルが地球軍を脱走して独立勢力として行動する様になる切欠となり、
更にその後、オーブで下船許可が出て尚、元々軍属だった者も含む多くのクルーが残ったのも、
ムウは「サイクロプスの件が相当頭に来ていたのだろう」と評していた。
因みに、アークエンジェルがそのまま連合に戻った場合、命令を無視して敵前逃亡したとして重罰に処されていた可能性も高い。

そして、転属命令を出されて逃がされたナタル・バジルールもこの件を知った時は動揺し、アークエンジェルの船員の生存を絶望視しかけた程だった。
連合所属のままだが、その後のムルタ・アズラエルの暴挙と相まって考えが改まっており、最終的に彼に反抗した要因の一つになっている。

地球軍司令部はJOSH-AH崩壊をザフトの新兵器によるものとして発表している。
軍上層部が自らサイクロプスを使用した事も、差し当たりユーラシア連邦軍を捨て駒にして崩壊させた事も伏せた挙句、
ザフトへの対抗心を滾らせるためのプロパガンダに利用したのは、冷酷非情にしてしたたかと言わねばならない。

ザフトにしても敵・味方・負傷兵等、無差別に巻き込んだサイクロプスによる大損害で兵士等は報復心に燃え、
次に目標に定めたパナマ基地の攻略成功の際、投降した地球軍兵士を当然の行為として虐殺する事態を引き起こした。
ただし、大量破壊兵器の使用禁止等といった戦時条約は連合とザフトでは結ばれておらず、サイクロプス単体での行為は違反行為とは見なされにくい。
むしろ、パナマ戦で投降した兵士への組織的な大量虐殺は捕虜の権利を定めた「コルシカ条約」に明確な違反へと繋がっており、地球連合の捕虜条約黙殺に関する格好の大義名分になった。
イザークもザフトとして戦ったが、アラスカでフリーダムに助けられた事とパナマでの惨状を見た事で(虐殺には参加していない)、
ストライクガンダムへの復讐心に囚われていた自分を顧みる事に繋がった。
理由はこれだけではないが、パトリック・ザラの怒りが増した大きな要因でもあり、より過激な行動に出る様になってしまった。

小説版によると直後の第三次ビクトリア攻防戦では、このパナマでのザフト側の大規模な違反行動が原因で、
ビクトリア基地のザフト兵は投降が認められず、連合軍に殲滅されてしまった。

サイクロプス使用を把握しながらもドサクサに紛れて基地に潜入したクルーゼによって、
アークエンジェルに戻る為、転属命令を無視しようとしていたフレイが攫われるというその後の展開にも繋がっている。


サイクロプス使用前までは初代ガンダムをオマージュしてなぞる様な展開だったが、以上を見ても分かる様にここから独自の展開に移行していった。
SEED作中に於いて、サイクロプスは様々な意味で大きな転換点となる兵器であったと言える。


X_ASTRAYでも、特務部隊Xのメリオル・ピスティスから、ユーラシア連邦が大西洋連邦を快く思わない例として挙げられた。



【その他作品にて】

スパロボシリーズでは大体原作通りの扱いであり、捨て駒にした味方諸共ザフトを皆殺しにする点がアークエンジェル隊だけでなく、
プレイヤー部隊の面々の怒りをも買っていた。

特に『第3次スーパーロボット大戦α~終焉の銀河へ~』では、囮にされていたプレイヤー部隊をアラスカ基地から逃がした岡防衛長官がサイクロプスで命を落としてしまった。
岡防衛長官の死後、彼の娘である岡めぐみは同胞(ブルーコスモス派の連邦軍)の手によって父親を失いながらも連邦軍を信じて争いを平和的に解決しようと前向きに考えていたが、
腐敗しつつある地球連邦の情勢に嘆いていたカミーユ(とクスハ)は、人類同士の戦いに対する不満が最高潮に達してしまった。
なお、防衛部隊が真相に気付いて脱出しようとするとモビルドールが妨害するように仕組まれているという悪辣な仕組みになっていた。
他にも三輪長官が一矢をリンチしたり、リリーナやレディ・アン、救助にやってきた万丈が原作とは違い現地に来ていたアズラエルに隔壁を下されて脱出不可能になっていたのを
ヒイロがツインバスターライフルで隔壁だけをぶち抜いたりなどイベント目白押しである。





追記・修正はサイクロプスに耐えてからお願いします。

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