MW-ムウ-

登録日:2009/07/03(金) 01:20:40
更新日:2025/05/15 Thu 15:19:04
所要時間:約 2 分で読めます





生きるもの、全て道連れだ


手塚治虫の漫画作品で、1976年から1978年にかけてビッグコミックにて連載。

2009年に映画化。
だが、オリジナル要素が強く、同性愛表現も控えめで評価は芳しくない。
主題歌はflumpoolの「~Dear Mr. & Ms.ピカレスク~」。
ちなみに、映画版を原作にしたノベライズ作品がある。




梨園(歌舞伎界)生まれのエリート銀行マン、結城美知夫は、戦争時代の遺物である毒ガスMWを吸引してしまったショックとトラウマから良心を失った結果、
どんな残酷なことでも平然とやってのける冷酷な犯罪者と化し、犯罪を犯す度に、旧知の間柄である神父・賀来巌の教会に足を運び、懺悔を行っていた。
賀来は実は同性愛者として彼と肉体関係を持っており、結城を救い構成させたいと願いつつ彼との肉体関係をやめることができず、苦悩の日々を過ごしていた。

結城はMWによって余命幾許もない状態であり、世界を道連れにすべく賀来をも利用してMWを手に入れようと目論んでいく。


【主要人物】

◆結城美知夫
[映画版―結城美智夫(玉木宏)]

両刀使いで女装も行けるメンヘルイケメン。獣k(ryも……。
自身の人生を変えたMWを手に入れるために様々な犯罪に手を染めていく。
凶悪犯ではあるが、後半で明確に自分の犯行を止めようとする賀来に対し各種妨害工作で制止はしても「始末」までには至らない等、時折失ったはずの人間性を覗かせることも。

◆賀来巌
[映画版―賀来裕太郎(山田孝之)]

神父。少年時代は現在で言う「半グレ」グループにいたガラの悪いDQNだった。
過去に結城をレイプしたことがあり、今でも(神父として間違った行為だと結城の罪と共に先輩に懺悔しつつも)肉体関係を継続している*1
結城の救済のために邁進するのだが……。


■MWを巡る惨劇

結城と賀来は16年前、ある島で軍が保管していた毒ガス・MWが漏れ出し嶋一帯を汚染するという重大な事件の現場に居合わせ、偶然により2人だけが生き残った。

その毒ガス事件は政府の隠蔽により抹消され、世間では知られていない。
賀来は結城を誘拐・レイプしたことで毒ガスを吸わせてしまったことへの負い目と懺悔から、神父となり、
結城を救済すべく、犯罪をやめさせようとするのだが、結城の悪魔的魅力に翻弄され、彼の計画に協力してしまう。

結城は毒ガスを吸ったショックとトラウマから心身ともに蝕まれ、
一切の理性を失い、その後遺症から時折ひどい発作に襲われ、余命僅かであった。

結城は毒ガス事件の当事者たちへの復讐と、それをも上回る程の破滅願望によって、
数々の誘拐事件と猟奇殺人を繰り返した末にMWを奪い、全世界を自分の最期の道連れにしようと企むのである。
そして「復讐だけ」ならまだ同じ被害者として許容出来た賀来は、結城の本命が大規模テロと知り敵対していく事に。


ちなみに結城と賀来の歪すぎる関係性に関しては、手塚先生の過去作品『バンパイヤ』の間久部緑郎と立花トッペイの関係(トッペイの弱みを握って犯罪の片棒を担がせる緑郎(女装が得意)と、悪と知りつつも終盤まで彼を止めきれなかったトッペイ)の発展形説もある。




さらなるネタバレ







毒ガスの保管庫の場所を知るために、アメリカ軍人と肉体関係を結んだ結城。
まんまとMWを手に入れ、今度は空軍大佐の子供を人質をとり賀来と共にハイジャックする。
機内では人質である子供にMWの入った袋をもたせていた。

警察は結城が飛行機を乗り換える際に、
結城の双子の兄に協力してもらい、ガスの入った袋を摩り替える作戦に出る。

結果もみ合いになり、どさくさに紛れ、賀来がガスの袋をとりあげ、そのまま飛行機から身を投げた。

賀来を失ったことで涙を流す結城は賀来を助けようとしたのか、操縦席に向かうも、そこで射殺されてしまう。

この事件でMWの存在は公にされ、国民の怒りが爆発する中、結城の双子の兄は不敵な笑みを浮かべるのだった。


結城の双子の兄が最後に見せた不敵な笑みは双子であることを活かして入れ替わったとも取れるし、
弟にある種の人間性が残っていたのとは逆に善人な兄にも大きな悪意があったとも取れるが、
真相は不明。



追記×修正




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最終更新:2025年05月15日 15:19

*1 ちなみに本作は同性愛自体は否定しておらず、作中で結城が賀来をゲイバーに勝手に連れていき不品行スキャンダルで社会的に無力化しようとした際は、そのネタをリークしたジャーナリストが隠れ女性同性愛者だったため恋愛の多様性重視から記事にするのを取りやめるなんて挿話があった。