少女奇談まこら

登録日:2011/09/02 Fri 00:54:33
更新日:2024/11/16 Sat 10:05:12
所要時間:約 4 分で読めます




少女奇談まこらは月刊少年ファングで連載された漫画。
原作は平野俊貴と植竹須美男で、作画は阿部洋一。
全体的に水木しげる作品のオマージュが多い。


バニラスパイダーでカルト的人気のある阿部洋一のデビュー作で、凄まじい書きこみと独特の絵柄は健在。CMが打たれるなど人気もそれなりにあったようだが、掲載誌ファングの廃刊で打ち切り。講談社のウェブ漫画サイトで復活を果たすも、同じような憂き目にあって終了。
が、2011年秋にアスキーメディアワークスからコミックス未収録分を含む完全版の発売が決定した。

登場人物

●まこら
妖怪皇の娘で人間の母と暮らす所謂ハーフ、父の力が左目に宿っている。行方不明になった母親を探すため、三匹のおともとともに
旅に出る。皇の眼に宿した妖怪皇の力により、妖術や敵妖怪との戦闘では頼もしい戦力となる反面ハーフゆえ人間と同じく
食事を必要とする。劇中では空腹で力を充分に発揮できない場面や、行き倒れて食べ物を与えられる導入がある。人間が使う貨幣を
持ち合わせるが財力は小学生程度、使い切っても次の話では補充されているあたり、おとも3人が何かしらの方法で
稼いでいると思われる(ちなみに賽銭泥棒などの悪事は御法度とのこと)。

●一枚布巾
おともの一人。ひょうきんな性格でよく小袖の手にたしなめられる。ネズミとは仲が悪い。
普段は襟巻になっている。戦闘では最長まで広げた体で敵に巻き付く(重機を締め潰すくらいの力を出せる)。
まこらが眠る際はハンモックに変身するなど「布製日用家具」の代わりを務める事は多い。

●小袖の手
おともの一人。しっかりものの女妖怪。暴走しがちな一枚布巾やネズミを叱りつける役。普段はまこらの上着になっている。
戦闘では長く伸びる両手による鉄拳攻撃がメイン。鉄骨をもぎ取る腕力、両手から繰り出す爆破、拳で岩壁を粉砕するなど見かけによらずパワーファイトを得意とする。
西洋妖怪ゴーレムの身体には全く歯が立たなかった。包んだ者の衣服を自在に着せ替える能力を有し、まこらの洋服類は全て彼女が創り出している。

●あわせ壁
おともの一人。いつもはまこらの服のポケットの中・カバンのマスコットに扮しているほど小さいが戦闘時は巨大化、もしくは地形から戦闘用の身体を生成する。ブルドーザーを軽く投げ飛ばす力持ち。敵の体に取り込まれた時などは体内に部屋を生成し、仲間を収容した状態で最大サイズまで巨大化し内側から敵を粉砕する。戦闘用の身体は性質を自在に変化させる事で水に浮く船にもなる。

ネズミ
旅先で怪しげな品物を売り付ける男。おともからは警戒されているが、まこらはついつい乗せられて買ってしまう。
各地でまこら一行が倒した妖怪の一部やキーアイテムの欠片を瓶に詰めて収集する、その目的は不明。涙ぐむほどミネコを恐れている。

●ミネコ
化け猫の少女。大きなリボンを付けている。(一方的な)まこらのライバルで、まこらを追いかけ回しているがまこらには全くライバル視されていない。
まこらを仕留めようとするが毎回ハプニングで失敗・もしくは逆に助けられる事が多い。化け猫ではあるが人間からは肉眼での確認が可能。

●あにら
逆臣達により分解された妖怪皇の眼が変化した青年。まこらを護ろうとする想いが強過ぎるあまりミネコをはじめとしたおとも達に危害を加える。
船幽霊によって粉々になったまこらの破片全てを感知し、ミネコ・おとも達によって集められた破片からまこらを再生させた。眼が変化しただけにまこらと違い皇の眼を制御できる。計り知れない戦闘力を有し、おとも三体で太刀打ち出来なかった船幽霊を完全消滅させ強制成仏させた。

●妖怪皇
まこらの父。かつての日本妖怪の総元締め。現在は体を分解されている身だが意識は健在らしく娘まこらの旅を見守っている。分解されたパーツのひとつひとつを介して娘まこらの状況から適格なサポートを行う。はっきりとした姿は描かれていないが常に正しい道を進むまこらを愛しく思っている。
人類が世界に文明を築くはるか昔から存在しており歌声には天地を返すほどの強大な力がある、後に歌は7色の鈴に封印されコロボックル達に委ねられた。
皇のパーツを探す旅は鈴の力を狙う西洋妖怪軍団との鈴争奪戦という要素も加わり、淡々と進行していた物語をより複雑に長引かせる展開を作り出した。


その他の妖怪

●雲外鏡
第1話登場。元は妖怪皇に仕えていた鏡の妖怪、まこら母子が住まう屋敷で食事の支度や洗濯など家事全般をこなしていた。
妖怪皇が逆臣達に分解された後、まこら母子に仕えながらも幽閉・監視を行っていた。まこらの有する皇の眼が覚醒したと知るや、
学校から帰宅したまこらを家に閉じ込めるも、ネズミの介入により本体である大鏡の間を突き止められた。屋敷内の空間を自在に
操り、迷路を作り出すが皇の眼には通じず、3人のおとも達の出現により形勢は逆転、最後は小袖の手によって粉砕された。
戦闘では無数の分身体を生み出し閃光を浴びせる「鏡地獄」なる妖術を使う、分身体とはいえ皇の眼はごまかせなかった。破壊された
鏡の欠片を通して、まこらの母から事情を告げられる事となったが...

●竹切り狸
第2~3話登場。人里離れた竹林に住まう善良な化け狸たち、腹鼓を使った妖術を得意とする。凶悪な団三郎狸の襲撃を受けて、必死の抵抗
も敵わずビル建設のために無理やり誘拐をはじめとした悪事に加担させられた。里の危機を知らせるため、子狸「ポン酢君」が母狸によって
人里に逃げ延び、まこら一行の助力を得る事となる。
長老狸は妖怪皇に関する事件をはじめとした妖怪世界の情勢にはある程度の知見を持つ。

●団三郎狸
第2~3話登場。たぬきびるでぃんぐ建設のために悪事を働いていた強力な化け狸。善良な妖怪である「竹切り狸」達を力で支配し、自らの
妖力で作り出した異空間に自分専用のビル建造に必要な人間の労働者を誘拐、昼夜を問わず竹切り狸たちに腹鼓を打たせる事で操り
働かせていた。不意打ちでおとも2人の動きを封じたうえで、まこらに襲い掛かるも、あわせ壁の奇襲により片目を潰され
子狸「ポン酢君」の活躍で、おとも2人は解放。戦闘では巨大な重機に変化し力任せの攻撃を仕掛けるが、おとも達には通じず
潰され肉塊となり果てた。

●太郎猫
第4話登場。年老いた猫又、人間の老婆に化けて若い女性を喰うことで美貌と力を維持してきた。喰らった女性にインプラントなどの
人工物が含まれていると拒絶反応を起こす。戦闘では巨大な猫又の姿に変化、ミネコとは異なり真の姿は戦闘時の姿である模様。
ミネコとはライバル同士だが、老いにより実力では圧倒的にミネコに劣る。

●目玉医院の3人
第5話登場。院長:手の目、看護師:百目鬼、看護婦:一つ目、の3人組妖怪で構成された奇妙な病院の従業員たち、目玉収集などの
不気味な設備が多い。まこらの皇の眼と引き換えに妖怪皇の情報を持ち掛け収集癖ゆえに魔が差し、強引な手段で襲いかかるが本来は
死人の目玉を収集するだけの地味な妖怪と自称。標本化した目玉から生前の記憶を見通す妖術を使う、戦闘では無数の目玉に化けたように
見せる催眠術のような術を使うが、弱点である陽の光の下では歩く事すらままならない完全無力と化す。まこら一行に妖怪皇に関する
具体的な手掛かりを提供した数少ない中立的な立ち位置の妖怪。なお、院長以外の2人は女性妖怪である。

●さざえ鬼
第6話登場。300年生きたサザエから変化した妖怪、元は妖怪皇に仕えていたが現在は逆臣となっている。離れ小島に続く海底洞窟
そのものを体とする巨大妖怪だが、本体である心臓部は小さい。不思議なリズムを奏でる貝殻を使い、まこら一行を海底洞窟に誘い込む。
戦闘では洞窟内壁面から人食いホタテを撃ち出す以外に、体である海底洞窟を伸縮させることで誘い込んだ獲物を圧し潰す術を使う。
まこら一行を仕留めたかのように見えたが、あわせ壁の本気の巨大化(まこら達は内部に生成した玉座に保護)によって本体である
心臓部もろとも海底洞窟ごと破壊された。変わり果てた姿となった心臓部はネズミによって回収されるが....

●三護鬼
第7話登場。離れ小島「御髪島」で妖怪皇の髪を守っていた鬼の三兄弟、今もなお妖怪皇族に仕え続ける忠臣たちでもある。
口から強風を吹く「捻鬼」、幻術を操る次男、見開いた目から熱線を放射する長男、まこらに試練を与える。この試練では皇族以外は
介入を許されないため、おともの助けを借りる事はできない。三兄弟で三男から1人ずつ順番に兄弟それぞれ異なる妖術を駆使した
試練を課す。試練を終えたまこらを姫と認め、改めて旅の無事を祈ると告げた。なお島には妖怪のものと見られる大量の骨が
散乱しており、かなり昔から逆臣や反乱分子たちを葬ってきたとおぼしき描写から三護鬼たちの並々ならぬ実力がうかがい知れる。
劇中で名前が明記されるのは三男「捻鬼」のみ、次男と長男の名前は不明。

●提灯横丁
第8話登場。金色に光る提灯の妖怪、妖怪達が経営するかりそめの商店街に誘い込む能力を持つが悪意は無い。
情報こそ得られなかったが、まこら一行につかの間の休息を与え最後は妖怪皇の髪から意を察し、現実世界に戻した。
まこら曰く「ちょっぴり楽しかった」と感謝された。商店街では様々な一般妖怪との交流が描かれるが、ここでは割愛。

●桂男
第9話登場。廃墟と化した映画館を根城とする、夜空に輝く月の光が変化した妖怪。本体は映画として上映される二次元世界に住み、
迷い込んだ子供達を時代劇や任侠映画などのバイオレンス系の作品内で永遠に斬殺するなど玩具のように扱う。映画の世界なので殺されても
桂男の術で生き返り、恐怖は永遠に続く。映画の世界に人間を引き込む際に巨大な腕をスクリーンから実体化させる妖術以外には、
これといった戦闘能力は無い。空腹で行き倒れていたまこらに食べ物を与えたパン屋の子供がスクリーンに引き込まれる寸前、まこらが
身代わりとなって映画の世界に侵入。おとも3人たちの一斉攻撃により敗北。本体は二次元世界でしか存在できない為、現実世界では
消滅してしまう弱点をもつ。一見すると強力な妖術だが、おとも3人からしてみれば能力的には大したことない様で、桂男の撃破後は
自力で現実世界に帰還した。

●おとろし
第1話、第11話、第12話登場。既刊の完全版全4巻の時点での逆臣妖怪達の幹部とおぼしき立ち位置にいる長い髪と鬼のような
顔をもつ妖怪。主に海上を住処とする巨大妖怪の体内を根城に、配下の逆臣妖怪達に指令を下す。日本妖怪全てが彼の賛同者という
わけではなく、同じ逆臣でありながらも地方によって異なる派閥が存在する事をほのめかす描写がある。
また、彼の所属する派閥の元締めとおぼしき「親方様」という存在が語られた。

●船幽霊
第11話、第12話登場。航海士の帽子を被った小柄な妖怪、正確には無数の船幽霊達のボスにあたる。手下である船妖怪達を銛などの
鋭利な漁具に変化させ、一斉攻撃を仕掛ける戦法を得意とする。妖怪でありながら幽霊の性質を併せ持つ為、変化した漁具を破壊しても
成仏しない限りは何度でも再生する。ボスは人語を話せるが手下達は会話ができない。人間の家庭から母親を人質にとるなど卑劣な戦法を
取る以外に巨大妖怪「船霊」を操る。一度はまこら一行を倒すが、あにらの逆鱗に触れてしまい特大の苦痛を味わいながら強制的に
成仏させられた。

●船霊
第11話、第12話登場。大型漁船と同等の体躯と外観を有する巨大妖怪。取り込んだ人間をカマボコに変える能力を持ち、一度はまこらを
カマボコに変えてしまう。おとろしの拠点として使われることもあるが、喋ることはなく船幽霊と意思疎通ができる程度。
あにらの逆鱗に触れて消滅する。

●海難法師
第12話登場。船幽霊のまとめ役とおぼしき海の妖怪、おとろしの参謀でもある。船幽霊たちが完全に成仏した事を気配から
察するあたり、船幽霊より上位の妖怪と思わせるやり取りが見られるが実力に関しては不明。

●鶴瓶火
第12話登場。おともの1人、一枚布巾の旧友である炎の妖怪。風呂屋の廃墟を住処としており、人間や妖怪に対し高い治癒効果のある
風呂を沸かす技能を持つ。無数の小さな妖怪達と共同生活をしている、また妖怪医学にも精通している。皇の眼が暴走したまこらの病状を
的確に診断し、治療に適した風呂を沸かして暴走を鎮めた。身体をひねった際に発生する火の粉から小さな分体を無数に生み出し、総出で
水汲み、湯沸かし、火力調整、治癒の呪言などをスムーズに行う事ができる腕利きのヒーラー。

ゴーレム
第15話登場。隻腕の巨大人型妖怪、西洋妖怪軍団「魔の眷属」が送り込んだ刺客。おとも3人が束になってもダメージを与えられない
強敵。妖怪皇の忠臣である石神が守っていた鈴を奪うことが目的だが、まこらに助力を求めた石神との連携攻撃により頭部を残して
粉々に破壊された。「ゴォーレム!」としか喋ることはなく、残った頭部だけでも攻撃能力こそ無いが移動は可能。その本体は意外にも....?

●石神
第15話登場。妖怪皇に仕える石に宿った精霊のような妖怪、土地神に近い。遥かな昔、妖怪皇から秘宝である「赤い鈴」を託され
守っていた。まこらの存在、活躍は忠臣達を通じて知っていた模様。単体での戦闘能力は無いに等しいが、まこらの持つ皇の力を借りる事で
ゴーレムを粉々に粉砕するほどに強力な自爆攻撃を繰り出す能力をもつ。

追記・修正は妖怪だけどうぞ。

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最終更新:2024年11月16日 10:05