北欧の魔剣

登録日:2012/01/07(土) 17:58:45
更新日:2025/05/15 Thu 10:43:33
所要時間:約 4 分で読めます




北欧神話には、オリエントやエジプトなどの、他の神話には無い程に、神や宝の設定が充実している。
RPGツクールやなんかで、よく武器の名前をつけるのにお世話になっている人もいるかも知れない。

1つの項目に纏めきるには、いささか多すぎるため、著名な魔剣/妖刀を幾つか紹介したい。





◆グラム

典拠は「北欧神話」より。

英雄シグムンドとその息子、竜殺しの英雄シグルドが所持した剣。

元は大神オーディンが木の根本に突き刺した選ばれしものが抜ける選定の剣だったそれを若きシグムンドが引き抜きそれ以降あらゆる戦いに使用した。

しかしある戦いにおいて授けた張本人であるオーディン自らに叩き折られてしまうそしてこの戦いで致命傷を受けたシグムンドはグラムの破片を妻に預け息を引き取るのだった。

その後邪竜ファフニールを倒しうる剣を求める息子シグルドによって破片から修復されたグラムはファフニールの鉄より硬い鱗を切り裂き打ち倒した。

最後は裏切りにあい重症を負ったシグルドに投擲され暗殺の下手人を真っ二つにしたところで役目を終える。



◆バルムンク

典拠は「ニーベルンゲンの歌」より。厳密にはドイツの叙事詩であり北欧の神話群ではないのだがこの叙事詩とシグルドの物語はあまりに多い類似性から同じ伝説を敷地に大陸と北欧でそれぞれ発展したものだと考えられているため記載する。

ネーデルラントの王子であり騎士である竜殺しの英雄ジークフリートが所有する剣。

製作したのは溢れるばかりの財宝を所有する小人の一族ニーベルンゲン。

冒険でこの一族が住む国に訪れたジークフリートに先代の王の遺産の分前で争う2人の王シルブンクとニベルンクが遺産の公平な分配を依頼しその報酬として贈られたのがバルムンクである。

本当に公平に分配したジークフリートであったがこれに二人の王が「本当に公平にする奴があるか俺の分を多くしろ💢」と怒り一族数百名の軍勢で襲い掛かったが相手は人外の域の技術で造られた剣を持った英雄ジークフリートだったので勝てるわけがなく全員返り討ちにされ極一部を除き一族は全滅した。

そして有名な竜殺しの件だがニーベルンゲンの歌は誕生から数百年経ってるためバリエーションが非常に多いのだ、それはどう竜を退治するのかでもバリエーションが多くありバルムンクを使うパターンもあれば使わないパターンもありそもそも竜殺しの出来事自体ジークフリートって竜を退治して無敵の体を持っています程度しか触れられなかったりするパターンもあるので上記のグラムほど絶対的なドラゴンスレイヤーというわけではないのだ。

それでも竜殺しの剣としてトップクラスの知名度を誇っている武器である。

ジークフリートの死後は暗殺したハーゲンが持っていたが捕まった際にジークフリートの妻クリームヒルトに奪われ首を刎ねられてしまった。
だがクリームヒルトも彼女の残酷な仕打ちに憤慨した部下に殺され物語は幕を閉じる。

邪悪なドラゴンを打ち倒した聖剣であるが持ち主を破滅させる魔剣でもある。非常にロマン溢れる剣。




典拠はエッダ。

ホグニという王がいた。
彼は娘を誘拐され、怒り狂って誘拐した王の領土に侵攻した。
そのあまりの強さに、王は和解を求めた。
しかし、返ってきた返事はこうだった。


「もう遅い。 わしはもう、ダインスレイヴの鞘をはらってしまった」
と。

……つまりこの剣、魔剣と呼ぶに最も相応しい呪いがかけられている。

一度抜かれれば、人のを吸わなくては治まらないのだ。

小人族ドヴェルグが造ったこの剣は、豊穣神フレイヤに呪われている。

1度抜いたらそのままで良いじゃん。

……そう思ったあなた。

この剣の呪いは、それだけではない。
持ち主を必ず死に導くという、半端ではない呪いがかかっている

つまり、抜いちゃったら最後、手が滑って頭にこいつが刺さっても、ナニが斬れて失血死しても文句言えないのだ。
王様も早く鞘に納めたくて気が気では無かったのだろう。

この項だけやたらと充実しているのは、呪いのせいでしょう。



典拠はエッダ、『フョルスヴィーズルの言葉』。

現代日本ファンタジーでは巨人スルトの振るう炎の剣と同一視されるが、原典においてはこの剣は無銘であり、
レーヴァテインはスルトの妻シンモラの宝物庫にある武器に過ぎない。
なんなら剣なのかどうなのかもよくわかっていない。

出番も滅茶苦茶少なく、
「砦に入るには魔鶏ヴィゾーヴニルの肉を持ってこないといけない」
「魔鶏ヴィゾーヴニルは無敵なのでレーヴァテインがないと殺せない」
「レーヴァテインをシンモラから借りるには魔鶏ヴィゾーヴニルを殺してその尾羽を渡さなければならない」
という堂々巡りのなぞかけのみ。

それはそれとして、あるモンスターを倒すためにそのモンスターの素材が必要というのは現代ゲーマーだとよくある話である。


ティルフィング、ディルウィンクとも。

典拠はヘルヴォルとヘイゼレク王のサガ。

アニヲタの諸兄には、この剣は少々厳しいのかも知れない。

何故なら、

抜かれる度に男を一人死に至らしめるのだ。

これは無視できない。

つまり、アニヲタの息子たちが、苦しみながら息絶えてしまうのだ。
しかも、く度に……。

これは無視できない。


北欧神話とは、一体何なのだろうか。

「一回抜けば確実に誰かを殺す。三度願った相手を殺した後使用者を殺す」と伝承される、正直ネタ抜きでも傍迷惑な魔剣。



◆スコヴヌング

典拠はラックサー谷の人々のサガ。

エイズという人物が持っていたものを、ソルケルという男が借り受けたもの。
彼はそのまま溺死しても返さず、息子(息子って言ってもそっちじゃないからね?)ゲリルに受け継がせた。

借りパクの祖かも知れない。

この剣でつけられた傷は、剣に付属した治癒石で擦らなくては治らない。
なんとまあ、某イケメン槍兵の黄槍みたいな厭らしい呪いである。
しかし、別説『コルマクのサガ』では斬れ味を保つ為に

  • 「剣に付いている小袋は外してはならない」
  • 「柄頭に日光を当ててはならない」
  • 「戦いの準備が整うまで剣を振ってはならない」
  • 「戦いの場では剣を持って一人で座り、剣を抜いて刃を自分に向け、息を吹きかけ、柄頭の下の方から蛇が這い出してきたら剣を傾け蛇が柄頭に戻るようにしなければならない」

……という多い上に長ったらしい誓約が課されており、管理手順が面倒すぎて所有者以外には真価を発揮出来なかったとされる。
『コルマクのサガ』の主人公コルマクは決闘の為にスコヴヌングを借り受けるも、誓約を全部破ってコテンパンに叩きのめされ、刃毀れまで作った挙げ句に持ち主にぶーぶー文句を垂れ流したとも。

アニヲタの諸兄も、これを股間に食らわないよう。
二度と営めないよ。

また、後世ではデンマークの伝説王フロールヴ・クラキの手に渡ったともされる。


追記・修正しないとアレスパーッ。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 北欧神話
  • 魔剣
  • 神話
  • 呪い
  • ある意味ホラー
  • 股間に危険を感じる項目
最終更新:2025年05月15日 10:43