ペルビアンジャイアントオオムカデ

登録日:2010/08/10 Tue 14:04:07
更新日:2025/03/24 Mon 11:32:19
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ブラジルやペルーなど南米の熱帯雨林に生息する、世 界 最 大ムカデ
近縁種と区別するために、ペルビアンホワイト(イエロー)レッグとも呼ばれている。

世界最大の名は伊達ではなく、通常のものでも体長(触角と曳航肢=尻尾抜きで)20〜30cm、幅2cm以上、最大で40cm超にもなり、その体長は小さな蛇を連想させる程。 

学名はScolopendra gigantea。
どこかの破面が使う帰刃『百刺毒娼』は学名から取ったもの……と思われるが、『Scolopendra』は『エスコロペンドラ』とは普通読まず(スペイン語訛りで読んでも微妙…)、学名を(ラテン語音で)仮名転写すると『スコロペンドラ・ギガンテア』となる。意味としては、『Scolopendra』がギリシャ語で『ムカデ(更に原義では、「固く連なるもの」という意味)』を意味する名詞、『gigantea』が『巨大な(原義は「ギガス族の」)』と言う形容詞である。
英名はAmazonian giant centipede。
……何故かいちいちカッコイイ。

天敵に狙われぬよう森林と同化するような体色の生物が多い熱帯雨林に於いて、ペルビアンジャイアントオオムカデは深紅の頭部、ワインレッドの胴体、ピンクの関節、黄色の多脚と極めて派手で、目立つ体色をしている。
しかし、それは自身がを持っていることを他の生物に示す、所謂「警告色」である。

ムカデである以上、当然ながら肉食性で、しかも性質は非常に獰猛。顎の力が強く、プラスチック程度ならば易々と噛み砕き、昆虫は勿論のこと、ネズミや小鳥、果ては蛇までもを餌と見なして襲い掛かり、触れた者に関しては情け容赦なく噛み付く。

これまでに咬まれた事例が少ない為、その毒の程度については不明な点が多い。
ある研究者の人体実験によれば、飼育下個体に咬まれた際の症状は意外にもトビズムカデより軽微なものであったという。
ダイオウサソリなどと同様に、敵との戦いにおいては優れた筋力が最大の武器となるので、毒は獲物にとどめを刺せるだけの最低限の強さでよい、ということであろうか。
が、ムカデの分類については未だ解明されていない部分が多く、現在ペルビアンジャイアントとして分類されているムカデの中に毒の強いグループと弱いグループが存在する可能性もある。また、体質によってはアナフィラキシーショックが起こる可能性も否定できないので、警戒は怠るべきではない。
因みに日本産のムカデ(全長10p前後のトビズムカデなど)は咬まれると、場合によっては皮膚が壊死する可能性もあり、身近ながら非常に危険な生物である。

他の危険動物にも言えることだが、生息地以外では出会う心配が無いかというとそうでもない
本種の場合南米から発進した貨物船に侵入し、イギリスで発見された事もあると言う。
こちらから危害を加えない限り襲ってくることはないので、仮に発見しても刺激せずに無視するか丁寧に長い棒などで遠ざければまず大丈夫だろう。
(これは日本土着のムカデ類にも言えることである。靴を履く前に裏返して中を確認するのも咬害を防ぐ一つの手。)

世界最大と言う肩書きや『ここまでデカいと逆にカッコイイ』と言う見方で、「奇虫」というペットカテゴリーにおける一つの終着点となっている。
前述の通り強靭な顎と強力な毒を備えている為、当然であるが飼育には極めて厳重な管理を求められるだろう。
因みに、生息地が日本から遠い南米であること(輸送費が高くつく)、もともと現地での個体数が少ないこと、強力な顎・毒(多分)を持ち採集人が少ないことなどから価格は非ッッッ常に高額
日本での販売価格は安めの20cm未満の小型個体でも四〜六万円
30cmオーバーならば十二、三万円
仮に幻の40cmオーバーが入ると標本でも数十万円の値が付くとみられており、あらゆる意味で「破格」である。
飼育するなら、これらの要素をすべて受け入れられる本当のマニアの方のみどうぞ。

\キシャー/

この項目で「世界最大」と何度も強調して紹介したペルビアンジャイアントオオムカデではあるが、実は世界最大ではないとの意見もある。
その説における真の最大種はガラパゴスジャイアントオオムカデ(学名はScolopendra galapagosensis)という種で全長62㎝という空前絶後のサイズの個体が捕獲されたと噂されている。 
ガラパゴスジャイアントはその名の通りガラパゴス諸島産だが、対岸の南米大陸、エクアドルやペルー北部にも分布しており、過去にはペルビアンジャイアントと混同されていた可能性もあるらしい。
尤もガラパゴスの最大記録は流石に誇大ではないか?という意見もあるので、真の世界一がどちらであるかは明確ではない。 
とはいうものの、ペルビアンもガラパゴスも少なくとも30cmは軽く越えるのは確実なので、両者とも「世界最大級」のムカデであるのは間違いないことである。



追記・修正は「最大」という二字に込められたロマンを夢想しながらお願いします。

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最終更新:2025年03月24日 11:32