登録日:2009/12/30 Wed 12:23:55
更新日:2025/03/25 Tue 11:18:57
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「どく」 または 「ぶす」
  • 体に害を為すもの。またはトリカブト*1そのもの。
  • 転じて、周囲に害悪を及ぼすもの。特に放っておいてもその悪性が広まっていってしまうこと。
    悪口雑言を言い放つ事を「毒を吐く」という形容も有る。某毒蝮おじいさんとか笑点紫の着物の腹黒い噺家とか。


〈概要〉

植物や両爬類や虫などの小動物が、天敵に食べられないように蓄えたりする毒は総じて、赤い等変な色や形、模様をして警告を促すことが多い。
速効性で注入してすぐ弱体化を図るものや遅効性で気づかない内に進行するもの、内臓器官等にダメージを与え死に至るもの、一部器官のみに作用しその働きを奪うものなど様々。迂闊にキノコ食べると死亡フラグ

また、自分で毒を作る能力はないフグのようにプランクトンなどの毒を自分の体に蓄積する動物や、蛇やクモ等の場合は攻撃手段としても用いる動物もいる。
前者は天敵への威嚇、後者は対象をスムーズに捕食するため*2

ほかにも対象を眠らせたり神経を麻痺させ、痛みを感じないようにする「麻酔」もあるが、その原理は未だによく分かってないらしい

「毒にも薬にもならない」「薬も過ぎれば毒となる」といった諺の通り、薬と毒の差は量でしかない
有名なヒ素は人体にとって必須(もちろん極微量)で、地球上最強「ボツリヌス菌毒素」も痙攣の治療や美容形成に、トリカブトも漢方に使われたりする。


適正量で用いれば薬、過剰量で用いれば毒。


そんな便利で危険な毒を我ら人間も太古の昔から殆どは害を為す方向性に用いてきた。

〈用途〉

物により効果に差異はあれど、およそ「毒」に大別されるものを全て含めれば、地球上最も多くの命を奪ってきた武器と言える。
ソースはARMS、及びキングダム。
いつ現れるかわからない、動きが素早く仕留めることが困難な獲物をも簡単に仕留められるのだから使わない手はない。害獣・害虫の駆除に通り道に毒餌を用いることもあった。ただし駆除対象以外が服毒する(人間を含む)リスクもある。
なお「食べる肉に毒を使うってどうなのよ」と思うかもしれないが、狩猟用には獲物を食しても問題ないよう、特に厳選された特殊な毒が用いられている。経口摂取では無害であったり、刺さった後に周囲の肉を抉って捨てれば残りは問題なかったり、加熱調理することで無毒化できたり…。こうした毒は獲物を素早く無力化できるよう即効性もあり、吹き矢等で使われる事から「矢毒」とも呼ばれる。キョウチクトウ科のストロファンツスや、マチン科のクラーレという植物から作られる矢独がよく知られている。


だが人間は罪深い生き物。相手は獣に留まらない。

軽い攻撃で敵に大ダメージを与えられる毒は、いつの時代も軍隊にとって魅力的である。
一番お手軽?な利用法としては、例えば矢じり(毒矢)やなどの先端に塗り、相手を傷つけることで毒に侵すという「毒武器」的な用法がある。
かつてユーラシア大陸を東西に制覇したモンゴル帝国の騎兵も毒矢広くを用いたことで知られており、その実戦での有効性はまさに折り紙付きと言える。

……と言えるのだが、実は世界史的にみると毒を通常装備として使う軍隊はかなりの少数派であったりする。
なぜならそもそも敵が死ぬ毒というのは、即ち取り扱いを誤れば自分も死んじゃうわけである。
「毒矢の製作中*3に指を傷つけてそのまま死んじゃいました!」
なんてことがあったら大変にまずいし、
「あれ?俺の毒瓶どこ行った?って探し回ってたら、なんかこの部隊用の水桶の中で見つかったんだけど……」
なんてずさんな管理をしていたら、最悪部隊の全滅まである。

つまり常に武術訓練を積んでいる戦士階級、あるいは日常的に毒を使って狩猟をしている狩人たちなどならともかく、多くの軍隊で編成の大多数を占めている一般人(主に農民とか)に毒を使わせるのはぶっちゃけあまりにも危険すぎるのである。

またそうした個人の兵士が使う毒武器だけでなく、大掛かりな手口としては「井戸や池などに毒を投げ込む」パターンもある。某将軍は川に流していたが、リアルではあまり例がない。
これならより多くの人間(あるいは軍馬や駄馬なども)を一度に毒に侵すことができるし、また「水源を使用不可能にすることで、その場に人間(軍隊)がとどまれないようにする」という形で敵の行動を阻害することもできる。

またその変化形として、毒や毒を持った何か・・・というかまあぶっちゃけた話人間や動物の死体(腐敗毒だけでもかなりの効果はあるが、強力な伝染病などで死んだものとかだとなおよい)を敵の城や陣に投げ込むというアクティブな戦法もある。

こうした大掛かりな毒責めは非常に強力な戦法ではあるが、この場合もやはり問題になるのは取り扱いの難しさである。
毒にせよ死体にせよ、敵に使用するまでは自陣に置いておかねばならないので、当然ながら管理上のリスクが発生する。
また現地の井戸を使用不可能にしたり、現地で大規模に病気を流行らせてしまったりすると、たとえ勝ったとしてもその後の統治に支障が出る……どころか下手すれば当分人が住めない土地になってしまうこともありうるのだ。

なので近世以前の戦争では、毒というのは「使い方によっては非常に強力な武器ではあるが、取り扱いが難しいのでそれほど主流というわけでもない」的な立ち位置だった。
しかし化学が発展し、また軍隊・兵士の維持管理も精密になった近代以降では、毒兵器の利用と対策が一気に加速する。

第一次世界大戦では、空気中に毒物を散布する毒ガスが広範に使用されることになった。
かつてのように生物や腐敗物などの毒を使った素朴な?毒武器とは違って、科学的に合成された毒ガスの威力はあまりにも凶悪、そして無慈悲であった。
毒ガスが初めて大規模な攻撃が行われたベルギー・『イーペルの戦い』の記録によれば、塹壕の向こうから黄緑色の雲が迫って来たとか…想像するだけでも恐ろしい光景である。
しかし機関銃と有刺鉄線の発達により、いつ果てるとも知れない塹壕戦をダラダラと続けるしかなかった当時、塹壕にこもる敵兵を皆殺しにする逆転の一手として毒ガスはあまりにも有効であり、両軍はこぞって毒ガスを前線に投入する。

これによって両軍の兵士たち、さらには周辺の一般市民にまで凄まじい犠牲が出ただけでなく、戦場となった土地そのものすら大規模に汚染されてしまうことになった。
最も激しい戦争が繰り広げられたフランスのドイツ国境付近は、致死量をはるかに超えるヒ素などの毒物が土壌にしみこんでおり、『ゾーン・ルージュ』と呼ばれて21世紀の現在ですら居住が厳禁されているほどである。
これには当然というべきか欧州人も激しい拒絶反応を示し、戦後の国際会議で毒ガスはタブーとされることになった。

ちなみに、この毒ガスの開発の全権を握っていた化学者、フリッツ・ハーバー(1868−1934)は実は空中の窒素を取り出すハーバー・ボッシュ法を生み出し、人工肥料を生み出すきっかけを作って人類を飢餓の危機から救っていた人物でもある。
だが、このハーバー・ボッシュ法により生み出す硝酸アンモニウムは火薬の原料でもあった。
さらに悪い事にハーバーは根っからの愛国者ゆえに、自らの技術を戦争に使われる事は何のためらいも無かった。
こうして彼は軍の化学研究部門を担うようになり、毒ガス開発を行う事になった。
この事が原因で、妻のクララはハーバーを止めようとしたが最期は拳銃による自殺で息を引き取ってしまった……。

各国で研究・生産・備蓄はされているものの、毒を戦争で投入するのは政治的に損という結論に落ち着いている*4

量を確保するにはある程度大きなプラントが必要なのでなかなか難しいが、少量ならテロリストが暗殺に使うことも多い。
無味無色無臭のものなら、気づかない内に体内を毒に侵せる。
方法としては、毒を塗った短剣や矢、等で注入するか、「毒を盛る」と言う独特のワードのごとく*5配膳前の食物に毒物を混入するか。
昔の王族等はこれを防ぐ為に毒味役を用意していた。これが後のソムリエ。

この服毒は非力な人間でも使える殺害手段であるため、他殺・自殺を問わず用いられる。
ただし飲んだら秒で口から血を吐いて死ぬ!というのはフィクションの話で、実際に毒殺で使われる毒というのはそこまで作用が早くない(例えばコナン君なめたりする青酸カリなどは、致死量でも作用に数分、実際に死ぬまでには下手すれば10分以上かかる)。
人体というのは割と頑丈なので、実際にはもっと長い間、苦しみにのたうち回りながら死ぬことになるのだ。やだぁ!
現代でもミステリーやサスペンスの常套手段。毒になる物質を一般人が簡単には入手できないようになっているから、入手経路の特定は謎解き・捜査でも重要となる(ただし全く問わない作品もある)。だが話がややこしくなったり、未知の毒物で解決するのはあまり評価されないので扱うのは難しい。



〈効能〉

大きく分けると「肉体に作用する毒(出血毒)」、「神経に作用する毒(神経毒)」の2種に大別される。
出血毒はさらに「出血毒」と「筋肉毒」に分けられることも多く、この場合前者は主に血液に、後者は筋肉に作用する。

神経毒

神経に作用する毒だが、神経そのものを破壊するのではない(その場合は出血毒のカテゴリーに収まる)。
神経毒は神経の伝達機能に作用し、麻痺というかたちで発症する。
具体的には運動機能の低下や自律神経機能の阻害による呼吸困難など。
組織自体を破壊するわけではないので、解毒に成功すれば後遺症が残らないケースも多い。
一方で毒の進行は出血毒より早いことが多く、対処は一刻を争う。

出血毒

上述の通り、血管や血液への作用が強い毒。
この毒に侵されると、血小板などの血液組織が破壊されて凝固機能が失われるため、古傷からの出血や皮下出血(いわゆる青あざ)などが外見的に発症する。
筋肉組織も侵し、壊死などを引き起こすのだが、出血毒は壊死に伴う出血が止まらないことも大きな問題となる。

筋肉毒

筋肉つまり肉体そのものを侵し、破壊する毒。
消化液が変化したもの、というか消化液であり、肉体を破壊するため程度によっては助かっても深刻な後遺症を伴う。
直接的に肉体を破壊するため、激痛・苦痛を伴い、その痛みによるショック死も引き起こす。

〈対処法〉

毒に侵された場合、創作物では「解毒薬」を飲んで簡単に治療してしまうことが多いが、現実では毒の種類がはっきりわからないと対処のしようがない

自然毒であれば、病院にはその地域の動植物に対応した治療薬が用意されていることがある。
まず現地の病院へ行き、その動植物の名前を話して治療を受けるのが最善策と言える*6

そもそも毒の中には治療法が確立されていないものも少なくないため、最初から毒を避けるに越したことはないのだ…






〈創作物での扱い〉

創作物ではたまに「あらゆる毒が効かない(効き難い)」というキャラクターが登場するが、
これつまり、「あらゆる治療薬も効かない(効き難い)」ことを意味する*7

だもんで、居たとしても完全な長所だとは言い難い。肉体が硬過ぎて注射針やメスが折れて治療不可能、なんてのより更に扱い難い。
実際その手のキャラで薬が使えないという展開になったモノも存在する。やはり短所もあるのだ。
まぁ、中には「不利益な毒は効かないけど有益な薬効は受け付ける」的な大変ごつg...便利な選別をしてくれるパターンもある*8。普通の生物ではあり得ない特性だからこそ、まさに「異能」というべきか。

ゲーム等では、毒は状態異常の代名詞である。
大抵紫色緑色の、特に泡や霧、ドクロマーク等がエフェクトやアイコンに表示されることが多い。
時間経過や、ターンごとに減っていく体力は、それだけでなく焦燥感も煽る。解毒できるとしても、それに行動を費やすことにもなる。
また、戦闘とフィールド移動が別なゲームでは、戦闘が終了しても、フィールドでも時間経過や一定距離を移動するごとにダメージを受けることも。
毒沼なんかは、歩くだけでダメージだったり、毒にかかったりしてしまう。

毒の効果は大抵じわじわとダメージを与えるもので、時間経過による、固定ダメージや体力の割合に対するダメージが多い。
このバランスは微妙なものであり、少し間違うとすぐバランスブレイカーとなったり、逆にまったく無視しても構わないようなものともなる。
特に放っておいても自然回復するような作品では、効果時間やダメージ量が少ないと空気。

他にも毒を持つ物は毒に対する耐性があるものもある。
(ポケットモンスターでは基本的にどくタイプは“どく状態”にならない等)

〈代表的な毒〉

毒の強さ、致死量を表す数値として半数致死量(50% lethal dose)というものがある。これは「実験動物の半数が死亡する毒の量」で、LD50(mg/kg)と表す。数値が小さいほど毒性が強いということである。ただし、実験動物が指標なので実験系の状況下によって数値は変動するため、参考値である。ガス・粉塵の場合はLC50と表記する。

LD値、LC値が確認できたものは記載する。*9
特に明記していない場合はラットに対して行った実験とする。

・シアン化カリウム

LD50値=5〜10 mg/kg
またの名を『青酸カリ』。ミステリー作品ではお馴染みの猛毒である。極めて毒性の高い物質であるが、工業用薬品としても優れている。あと昆虫標本とか。
有名なアーモンド臭はこいつを飲んで死んだ人間の口(正確には胃袋)から漂う臭いであるが、収穫前のアーモンドの臭いであるため注意。
あんな香ばしいアーモンドの臭いではない。
ミステリやサスペンス作品では毒殺に使用される代表的な毒物であるが、実際には強烈な臭気と苦味を発するため飲み込むことは困難であり、気付かずに食べてしまって中毒死という可能性はかなり低く殺人の手段としては確実性に欠ける。
ただし現実で紅茶に混入させて殺害に使用した例はある。
ちなみに胃酸と反応して毒性を発揮するシロモノなので無酸症の人にはあんまり効かない。ラスプーチンがなかなか死ななかったのはこれが原因のひとつと言われている(なお彼の死因は溺死。青酸カリも頭部への殴打も効かなかったため、簀巻きにして冬のネヴァ川に投げ込まれた)。

・エタノール

LD50値= 6200 mg/kg
酒類に含まれる成分。世界で最も乱用されている毒物の一つ。(双璧は後述のカフェイン)
少量では気持ちよくなったり楽しくなったりするが、見かけの反応に反し、ガチガチの抑制系薬物の代表格であり、多量に摂取すると脳の中枢が過剰に抑制されて呼吸がままならなくなり死に至る。正常な判断力を奪うという意味でも多大な問題を発生させている毒物と言える。

・モルヒネ

LD50値=120〜500 mg/kg
ケシの実から採取されるアルカロイド。
言わずもがな、麻薬の一種。麻酔作用・鎮痛作用に優れる為医療の現場では重宝される。
なお、これをさらに化学処理することでヘロインができる。
戊辰戦争において旧幕府軍側で戦った伊庭八郎が重傷を負い、「もはやこれまで」とばかりに服毒自殺した際に用いたのは、かねてより同じく旧幕府軍側の榎本武揚からもらっていたこの薬品であったという。

・ヒスタミン

LD50値=220 mg/kg
ハチやドクガ類の毒の主成分。生物にはありふれた物質だが、毒として過剰に摂取すれば痒みや皮膚炎を引き起こす。
また、この物質が原因の食中毒も確認されている(ヒスタミン食中毒)。
腐敗した青魚の汁には多量に含まれ、これが塗られた刃物や矢で怪我をすると死ななくとも死ぬほど苦しい思いをする。

・カンタリジン

LD50値=0.5 mg/kg(ヒト)
ハンミョウやカミキリモドキ類の甲虫の体液に含まれる有毒物質。
口に入った場合は青酸カリ以上に危険であるが、どちらかと言えば皮膚に付着することで起きる皮膚炎の方を警戒したい。
なお、この物質は「発泡薬」として肌に痛々しい水疱を作るために用いられた歴史がある(当時は水疱を作って中の液体を出し続ければ病気が治ると信じられていた)。

・ホスホリパーゼA2

LD50値=1.2 mg/kg
タンパク質分解酵素の一つであり、生物にはありふれた物質であるが、過剰に摂取すれば肉や皮膚など体内の組織を破壊する出血毒となる。
ヘビ毒やオニヒトデの毒の主成分。

テトロドトキシン

LD50値=0.01 mg/kg
またの名をフグ毒。
極めて高分子かつ危険な物質であり、古来から現在に至るまで数多くの人間を殺してきた。詳細は当該項目参照。

・アコニチン

LD50値=0.3 mg/kg
冒頭でも述べたトリカブトの主成分。
この植物は全部位が強力な毒で、矢毒としても用いられた。
詳細はトリカブト(植物)を参照。

・ソラニン

・チャコニン

LD50値=450〜500 mg/kg
皆さんご存じジャガイモの毒。
ジャガイモ全体に存在するが、皮の部分に特に多く含まれる。緑色に変化した箇所は100gあたり100mgを超える量が検出されている。
ただ危険な物質ではあるが毒性は弱く死ぬことは殆どない。……が、ジャガイモの芽の部分だけを大量に摂取して死亡した例もあるとか……やはり量か……。
中毒量は体重1kgあたり1mgとされていて、体重1kgあたり3~6mgを摂取すると致死の可能性が生じる。
朝鮮戦争当時の北朝鮮では、食料不足で傷んだジャガイモを口にした住民の内約380人に中毒が発生し、20人以上が死亡している。

・アマニタトキシン

LD50値=0.1 mg/kg(ヒト)
ドクツルタケやその類縁に含まれる物質であり、これらの食中毒を引き起こす元凶。
下痢嘔吐に始まり脱水症状や肝・腎機能障害を起こす危険な猛毒。取りあえず白いキノコは食べない方がいい。

・イボテン酸

LD50値=129 mg/kg
ベニテングタケ等テングタケ科の一部に含まれる有毒物質。腹痛や視力障害を引き起こすが、皮肉なことにそれ以上にものすげえ旨味成分
毒も致命的という訳ではないので、有毒と知りつつ食べる人は後を絶たない。

・ウルシオール

ウルシの樹液から取れる物質。漆器に使う漆の材料であり、あのウルシかぶれの原因である。
強い刺激性を持ち、敏感な人はウルシに近づいただけでもかぶれることがある。
ウルシ科の他の植物(マンゴーなど)にも同様の成分を持つものがある。
ミステリーやサスペンスではこれを体中に塗り捲って相手を殺す…なんて事件の例も。恐ろしすぎる。

・ヒ素

LD50値=2 mg/kg
漢字では「砒素」と表記される毒物で、元素記号は「As」。別名「遺産相続薬」。
無味無臭であること、病死と区別しにくいこと、薬局で殺鼠剤として普通に販売されていたことを利用し、食事や飲料に盛って暗殺に──しかも頻繁に──用いられた(そこらへんの家政婦が三人続けて毒殺した事件もあったほど)。

・水銀

LC50値= 0.019 mg/kg
常温で液体の唯一の金属。元素記号は「Hg」。
不老長寿の仙薬として古代中国で皇帝が服用していたことで名高い毒物で、現在でも水銀式温度計などで用いられている。
中世ヨーロッパでは一時期医療目的で盛んに使用されており、最も悲惨なものを挙げると「梅毒患者を水銀蒸気の蒸し風呂(首だけ出す)に入れる」「異常な量の大便・唾液の排出を促すために水銀製剤を服用させる(しかも子供にも)」というようなものがあった。
なお、あのリンカーン大統領も水銀の含まれた丸薬を服用していたことがある(彼は聡明にも、途中で服用を中止した)。
一応液体状態の水銀なら摂取してもそのまま多くが排出されるものの、水銀は"常温でもゆっくり気化"するので肺から吸収されやすくなる。加えて腸内細菌による化学変化や後述の有機水銀になる可能性もある)ので決して安全ではない。
加えて水銀と炭素と結合した有機水銀は更に危険で、たやすく体内に吸収されてしまい深刻な中毒症状を引き起こす(メチル水銀を当時のずさんな排水と生物濃縮により接種してしまったのが有名な水俣病の原因)。
昨今では環境問題など知るかといった悪質業者や個人による、簡易的な金の採掘に用いられることが多く、世界中で再び水銀の環境汚染が深刻化してきている。

・カフェイン

LD50値=192 mg/kg
コーヒーや茶に含まれるアルカロイドの一種。軽い興奮作用があり、眠気覚ましに良く用いられるが、ヒト以外の哺乳類にとってはかなり強い有毒性を持つ。
人であっても短時間に過剰に摂取すれば死に至る。

・テオブロミン

LD50値=950 mg/kg
カカオ豆等に含まれるアルカロイドの一種。カカオ、でピンと来た人も多いだろうが、チョコレートに多く含まれている。
代表的な嗜好品のチョコレートが毒? と思われるだろうが、実は人間「以外」にはかなり強力な毒で
特に人間と生活を共にする犬・猫が食べてしまって中毒を起こす事例が多い。
そんな強毒がなぜ人間には効かないのか? というと、実はよくわかっていない。
「こんだけ食べられてるけど害がないんだから大丈夫なんだろう、多分」という、嘘のようなホントの話。

・コニイン

LD50値=100 mg/kg
あまり聞き覚えがない名前だろうがドクニンジンに含まれる毒、つまりかのソクラテスを殺した毒である。
中枢神経に作用する痙攣毒であり、運動神経麻痺や呼吸困難を発生させる。

・マイトトキシン

LD50値=0.00017 mg/kg
現在までに確認されている海に生息する生物が持つ毒の中で最強の猛毒。
尋常ではないほど組成式が複雑な高分子物質であり、長らく科学者を悩ませて来た。

・ボツリヌストキシン

LD50値=0.0000011 mg/kg
嫌気性細菌であるボツリヌス菌が生み出す、現在までに確認されているあらゆる毒の中で最強の猛毒。
1kgかそこらで地球上の人間を皆殺しにできる程強力な毒(ただ致死量の数百倍を摂取して生存していたケースもある)。
一時化学兵器として研究もされていた。

・ポロニウム210

強力な放射性物質。
紙一枚で存在を隠せるほどガンマ線が少ないが、人体に入ればあっさり多臓器不全を引き起こすほどのアルファ線を出す
という政治がらみの暗殺に非常に都合のいい物質で、コレで暗殺されたと考えられる事件が複数起きている。
ただし、入手には原子力実験規模のプロジェクトが必要。

・ピレスロイド系薬剤

主に殺虫剤に使われる薬剤群。元来は除虫菊に含まれた成分がオリジナルであり、その構造を参考に多数の薬剤が開発された。主に昆虫や節足動物に選択的に効果を発揮し、哺乳類への毒性が低い事が特徴。
一発で失神させるノックダウン効果、物陰から追い出すブラッシュアップ効果、異常を感じさせ寄せ付けない忌避効果と優れた特徴を持つ。神経系に働きかけ異常興奮させるとされる。
特に新世代の薬剤は非常に強力で、昆虫類を飼育している家の別部屋で使っただけで全滅することすらある。

APTX4869

近年存在が明らかになった物質。恐らく人工的に作られた毒物。
服用した場合、細keN1dpデータが破損しています。

う○こ

殺人用に刃物や罠に塗る毒。調達が非常にお手軽。
刺さった場合、破傷風菌などの感染源となる大変危険な毒物。
江戸時代の牢屋では、標的の囚人の食事に混ぜて危害を与えることがあったという。
漫画『ドリフターズ』を参照されたし。

・腐敗物

用途の例でも触れられているが、腐敗した動物や人間の死体を用いることがあった。
腐敗が進行したものは多量の毒素を複数種含んでいるだけでなく、飲食物を汚染する、伝染病を流行らせるなど手軽なバイオ兵器として用いられてきた。
人間の死体の場合は精神面へ与える影響も甚大で士気を大きく削ぐのに役立ったという。

〈余談〉

人間の味覚の一つである「苦味」は、毒を判別するために発達した物である。*10


英語で毒を表す単語にはいくつかの種類がある。
poison(ポイズン)
「毒」「毒物」を指す一般的な単語。
toxin(トキシン)
毒素。生物に由来する毒性の高い物質。
フグ毒「テトロドトキシン」や、ボツリヌス毒素「ボツリヌストキシン」などが有名。
venom(ヴェノム)
毒液。ヘビやハチ、サソリ等が分泌し、主に牙や毒針などを介して注入される。
生物由来という点は同じだが、toxinが成分そのものを指すのに対し、こちらはその伝達方法に主眼を置いた言葉と言える。



俺はもう毒で助からん、あとはこの項目の追記・修正を…。

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最終更新:2025年03月25日 11:18

*1 トリカブトの薬名である「附子」がそのまま「毒」の字の読み(転じて、毒物の代名詞)として広まったと考えられる

*2 毒が肉体を破壊する「消化液」の役割も担うので、毒を除去した状態で捕食させた実験では消化効率が著しく落ちることが確認されている

*3 一般的に毒矢に使われる矢じりは、毒を入れるくぼみなどがある

*4 放射線は毒物に見えないからOKのようだ。

*5 茶匙などでこんもり「盛る」という形で毒を混入させていた事の形用からお茶など食品に毒を混入させる事を指す

*6 分からない場合は特徴をできるだけ詳しく説明すること

*7 実例としては数億人に一人レベルで存在するらしい。

*8 RPGなどでたとえると「敵の毒攻撃は無効だが、傷薬の類は受け付け通常通りHPが回復する」など。

*9 特別展「毒」の目録、厚生労働省ホームページ、各社の安全データシート等を参照

*10 他に「酸味」は腐敗物、「甘味」は糖質(炭水化物)、「塩味」はミネラル、「うま味」はアミノ酸を判別するためと言われている。