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ロールシャッハ

登録日:2009/09/25 Fri 23:30:43
更新日:2026/06/23 Tue 09:23:37
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ロールシャッハとは、
  1. スイスの地名。
  2. スイスの苗字。有名人の例に「ロールシャッハ・テスト」を開発した精神科医 ヘルマン・ロールシャッハ がいる。
  3. DCコミックスのアメコミヒーロー。この項目で説明する。

BeHinD yOU.┓┏.


アラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画のアメリカンコミック、及びそれを原作とする映画『ウォッチメン』に登場するヒーローの一人。
デザイン・名前は精神分析に使用される「ロールシャッハ・テスト」から。

演: ジャッキー・アール・ヘイリー
日本語吹替:山路和弘

概要

トレンチコートとソフト帽、そして白い生地の上を黒い模様がランダムに流動する全頭マスクがトレードマーク。
この独特のデザインや強烈なキャラクター性から同作に登場するキャラクターの中でも一際人気が高い。原作者アラン・ムーアも一押しのキャラである。

全体的なモチーフはDCコミックのヒーロー*1「クエスチョン(本名:ヴィク・セージ)」。
作者であるムーアがクエスチョン、及びそのクリエイターであるスティーブン・ディッコのファンという事もあり、「顔の無いマスクにソフト帽とトレンチコートの探偵ヒーロー」「悪人に対して容赦無く、妥協をしない極右主義者」とヒーローとしてのスタイルはかなりストレートにクエスチョンの要素を引用している。
一方でマスクを脱いだ人間としては、ハンサムで社会的に成功したTVコメンテーターであり恋人もいるセージに対し、コバックスは落ちぶれた無職の醜男でセックス・ヘイターと、意図的に真逆の人物像になっている。


人物

本名ウォルター・ジョセフ・コバックス
1940年3月21日生まれのアメリカ人。現在は45才(映画版では35歳)。
右翼系雑誌『ニュー・フロンティアズマン』を愛読する極右思想の持ち主。
第二次世界大戦におけるアメリカの原爆投下を賛美し、共産主義に罵詈雑言を吐きつける。
ついでに大の女性嫌いで童貞

母は娼婦のシルビア・コバックス。父親は不明。
貧乏な娼婦のシルビアにとって子供など邪魔でしかなく、ウォルターは母親から日常的に虐待を受けて育った。この経験から女性、というより性に関わる者全般を嫌悪するようになった模様。
ある日、年上の少年二人に母親の事を揶揄われた事で激発したウォルターは彼らを失明させる程の重傷を負わせ、少年院へ送られる。また同時にシルビアも「養育能力なし」と判断され、育児放棄の罪で警察に逮捕。
ウォルターは少年院でも母親に対する怒りを日記に書き殴っていたが、後に当の母親は「仕事」の最中に殺害されてしまい、彼は怒りの行き場を無くす事になる。
少年院で過ごすうちに服飾の才能を開花させ、出所後はドレスの仕立て屋に就職したが、そこで出会った顧客が殺害された際の出来事(後述)がキッカケで人間や正義という物への根本的な疑問を抱き、母という行き場を失った怒りをぶつける矛先として犯罪との戦いを開始した。

それでもデビュー当初は比較的理性を保っていた(本人曰く『クズどもに優しかった頃』)が、1975年、とある少女誘拐事件に関わった事がひとつの転機となる。
6歳のその少女は同姓同名の社長令嬢と間違えて誘拐されたのだ。「必ず連れ戻す」と両親に約束したウォルターは(かなり暴力的な手段を用いて)犯人の隠れ家を突き止め、侵入。
少女の身柄を捜索していたウォルターは、犯人が少女を殺害して証拠隠滅のため犬に喰わせた事を知り、人間に絶望。
狂気に陥った彼は犬の頭をナタでかち割った後、その屍を主犯の男に向けて投げつけ昏倒させ手錠で拘束。
「俺だって殺したくなかった」と言い訳する男だったが、彼は一切聞く耳を持たなかった。男に少女の遺体を解体するのに使ったノコギリを手渡し「助かりたかったら手錠は切るな。手遅れになる(=お前自身がやったように自分で自分の手を切れ)」と言い捨て、灯油を撒き散らしてそのまま隠れ家ごと焼き殺した
この瞬間、彼は「ウォルター・コバックス」の名を捨て「ロールシャッハ」となり、世界を善悪の二つで割り切る事で辛うじて正気を保った。
暴力的で独善的な、そして一切の妥協を許さないヒーロー・ロールシャッハはこうして誕生したのだった。

上記の経歴を見てわかると思うが、自警活動以外に気を配る精神的な余裕は一切ない。
そのため人としての尊厳を半ば放棄しており、ほぼ無職の変質者。
  • 昼間は「終末は近い(THE END IS NIGH)」と書かれた看板を担ぎ、街を練り歩く。そして夜な夜な悪党を狩り殺す。
  • とにかく不衛生。部屋は汚いし、食器は洗わないし、服は洗濯してないし、風呂にも入ってないので体臭がキツい。
    (しかも自覚しており、口で謝っても改善する気はない模様)
  • 栄養が補給できればよいので食事にも頓着せず、主食はハインツの超マズい冷えた豆の缶詰と宅配専門のスイート・チャリオット社製の角砂糖。
    ちなみにこれらはダニエル(ナイトオウルⅡ世)の家に勝手に上がり込んで食う。外伝作では時にガンガ・ダイナー(食堂)のチリドッグが2本だけだという場合も…
  • というか、ダニエル宅にピッキングで勝手に上がりこむ。

……と、生活面はかなり終わっている。
まあこんな所も彼の魅力の一つなのだろう。

犯罪者を尋問する時は指を折り、悪党を見れば一切の容赦なく制裁を加える処刑人。
少なくとも殺人容疑が2件、正当防衛の殺人が5件は掛けられているとされる。
ダークヒーローとも毛色が違い、ヒーローというより悪党専門の通り魔に近い。
きわめて独善的かつ暴力的な男ではあるが、ある事情から子供にだけは優しい。特に泣いてる子供のいる状況には我慢ができない。
ヒーローの自警行為を禁止するキーン条例が制定されても無視し、警察や政府から敵視・危険視されている。
いつも手帳を持ち歩いており、出来事はもちろん思考や行動をも逐一記録している。他人に読まれないよう、あえてガタガタの汚い字で書いている模様。

能力・武器

ヒーローを名乗るだけあり、戦闘能力は非常に高い。ヒーロー排斥運動の際には単独でニューヨーク東側の暴動を鎮圧した事もある。
銃やナイフといった直接的な武器を持ち歩く事はないが、判断力に優れ、身の回りにある物や状況さえも武器にしてしまう
例を挙げれば、スプレーを利用した火炎放射、コショウ、便器の水、熱々の油、冷蔵庫から飛び出して奇襲、冷蔵庫から飛び出すと見せかけて背後から不意打ち等々。
ゲーム版ではバットや瓶、バールのような物なんかも拾って振り回す(クズに甘かった頃でも)。

また唯一のオリジナルアイテムとして、ガス圧でフックを発射するワイヤーガンを携帯している。
これはダニエルの発明品の一つで、超高層ビルの上階まで届く移動用の道具だが、攻撃に転用する事も可能。
パクった経歴はゲーム版で描写されている。ちなみに当のダニエル曰く「あれを人に向けるとは思わなかった」。
他にも懐中電灯、角砂糖、下水道の地図、小銭、日記帳と鉛筆、胡椒瓶などをポケットに突っ込んでいる。

特徴的なマスクは仕立て屋時代にドレスの生地として入手したのを覆面に仕立て直した物で、極薄の生地の間にインクを密閉する事で流動する模様を生み出す特殊な素材でできている。*2
白と黒が流動しながらも決して交わらないその姿は、まさしく『ロールシャッハ』という存在を象徴するアイテムと言える。
元のドレスはある顧客にウェディングドレスを依頼されたコバックスが作った渾身の一着であったが、斬新すぎたために「気味が悪い」と不興を買った為に受け取ってもらえず、更には後にその顧客が殺害されてしまった事でコバックスが退職金代わりに貰い受けた。
この事件の際、被害者が襲われる場面を複数の人物が目撃していたにも関わらず誰も行動を起こさなかったという話を聞いた事が、彼を自警活動へと駆り立てるキッカケとなっている。
……なお、その被害者の名は「キティ・ジェノヴィーズ」。「傍観者効果」の実例として知られる事になる、実在の殺人事件の被害者である。*3

「超人」として

ロールシャッハは、他のアメコミヒーローのようなスーパーパワーは一切持っていない。
しかし彼には他のヒーローが誰一人として持っていない、最強の精神がある。

一切の妥協を許さない強烈な意志力。
己の正義に異常なまでに忠実な姿は、彼がニーチェが『ツァラトゥストラかく語りき』で提唱した、精神的「超人」である事を示している。

「超人」とは永劫回帰の無意味な人生の中で、自らの確立した意思でもって行動する事のできる存在。
つまり彼は「自身の善悪観が世界に屈服しない生き方」を貫ける、強靭な精神の持ち主なのだ。


俺たちは実は凄い力を持っているんだが、ソファに座ってビール片手にテレビを見ているだけだ。
スーパーパワーがあったって、やっぱりソファに座ってビール片手にテレビを見てるだけだろう。
馬鹿がコスチュームを着たところで、変な格好のおかしな奴が1人増えるだけだ。
ヒーローってのはスーパーパワーがあるとか、コスチュームを着てるって事じゃない。
自らの意思でもって世界を良くしようと戦う人々の事を言うんだ


何せ彼は、ただの人間にもかかわらず神に対してさえ「No」を突きつけた男である。(詳しくは本編を参照)
ウォッチメン』という物語において、たった一人で最後の最後までヒーローを貫き通した唯一の人間。
ロールシャッハの行動が引き起こすだろう事態を差し引いても、賞賛に値するはずだ。

己の理想、思想、生き方。
その全てに一切妥協しない彼こそ、本当の意味でヒーロー(=超人)と呼べるのかもしれない。



なお、和訳された原作(3500円程)が発売されている。
もし手が届かなければ映画の映像ソフトも出ているので是非見てほしい。
端から見たら頭のイカれたヒーローとも、モラルの欠落した世界で孤独に戦う聖戦士とも取れる姿。
そして彼の取り巻く運命、そして「ウォッチメン」の意味は……?

恐らく楽しめるはずである。


名言

  • 「世界は天を見上げてこう叫ぶだろう。“助けてくれ!”と」
    「見下ろして俺はこう答える。“ノー”だ」
  • 「No, NoNoNoNoNo!」
  • 「セックスや殺ししか頭にないクソ共、自分の罪でがんじがらめになった政治家やマスコミの連中は、天に向かってこう叫ぶだろう。“助けてくれ!”」
    「俺は答える。いやなこった
  • 「何をためらっている?世界を救う救世主になるんだろう?大勢死んだんだ、今さら死体が一つ増えたところで誰も気にしやしない」
    「……やれよ……」
    殺せ!!


余談

映画版において彼を演じたヘイリー氏は熱狂的なロールシャッハファンであり、
映画化と聞くや否や自分でPVを作って送りつけたとか。
なんでも、かつてネットで「実写でロールシャッハをやるならヘイリーだろう」という書き込みを見て原作を読んだところ、見事にドハマりしてしまったそうな。
なんだか後の「デッドプール」におけるライアン・レイノルズみたいな話である。

吹き替えを演じたのは、B級アクション映画吹き替えの常連にして「だが私は謝らない」でお馴染みの烏丸啓を演じた事でも知られる俳優・声優の山路和弘氏。
ヘイリー氏とは声質も近く、氏の演じた役柄の中でも随一のハマリ役と評判。



「…たとえ全てのWiki篭りに追記・修正を拒絶されても……」

「俺は絶対に妥協はしない」

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最終更新:2026年06月23日 09:23

*1 元は「チャールトン・コミックス」が権利を持っていたが、後にDCが権利を買い上げた。

*2 『ウォッチメン』世界の科学はDr.マンハッタンの登場により現実とは異なる発展を遂げているため、現実には(まだ)存在しないような技術や素材が存在している。

*3 ちなみに実際の「キティ・ジェノヴィーズ事件」では、周囲が全くの無関心だった訳ではなく、警察への通報や犯人への声かけも行われていたとされている。直接止めに入った人間こそいなかったものの、「誰も何もしなかった」というのは厳密には新聞社の誤報であった。