1993年1月7日午後8時45分

登録日:2012/03/04(日) 16:36:42
更新日:2021/10/13 Wed 00:48:17
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この項目は、全てJST・日本標準時の時系列でお送りします



1993年1月7日木曜日。
お正月気分も抜けつつあり、学生さん達は「さあ、明日から三学期だ、寒いし憂鬱だなー」と思いながら、ある人は炬燵の中でみかんをむきながら、
ある人は当時超人気番組であった「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」(日テレ系列)を、ある人はフジテレビの新春大型時代劇を、
ある人は冬休みの宿題のやり残しを、ある人は会社帰りの電車に揺られ、ある人はどこかで酒を飲み、
ある人は夕食を食べていたり片付けをしたりして、普段通りの夜がそこにあった。


しかし、テレビやラジオを観たり聴いたりしていた人は、にわかに緊張状態に陥ることになる。
午後八時三十分、突如テレビのテロップやラジオで、


「この後、午後八時四十五分より、予定を変更して特別報道番組を放送いたします」

という内容が流される。


当時はネット等は限られた人達でしか使われていなかった為、今のように根拠のない憶測等は当然流れなかったが、
まだイラクと多国籍軍による湾岸戦争の記憶が生々しく残っていた為「またフセインが何かをやらかしたか?」とか、
「皇室関係者が死んだか?」と15分間のインターバルでリアリティーのある、口コミの話は盛り上がった。

おまけにこの時間は、年明け以降ではフジテレビを除いて通常編成に戻しており、
人気クイズ番組やアニメ、バラエティや情報番組が多数緊急報道特番により、途中でバッサリ切られることや、
9時以降のドラマやバラエティも潰れることが明白であった為、各テレビ局にはこの時点で既に苦情や問い合わせが来始めていた。

当然、対応した苦情問い合わせ担当の方々も寝耳に水で、答えようがなかった。

この頃、各放送局に宮内庁から、
「皇太子殿下のお妃に、外務省職員の小和田雅子さん(当時)に内定した。ついてはこの報道は八時四十五分に解禁する」とする通告を行った。
これは、NHKの編成が8時45分に各地域のニュースを伝える時間帯の為、
宮内庁としても、以前報道機関に自粛要請を行った皇太子妃の報道への自粛を少しでも早く解かせたいと考えてのことであった。
また皇太子妃が内定した場合には、報道機関代表であったNHKに合わせる必要があった。


これで大慌てになったのは民放各局。
宮内庁から通告があったのが午後8時20分頃で、宮内庁がNHKのプログラムに合わせてきた為と、
今まさに放送されている番組に出演しているタレントや俳優の所属事務所、広告代理店への連絡に追われ、
さらに9時以降のドラマ等に出演している俳優やタレントの所属事務所等への連絡にも追われた。


当時の協定では、

「国民の生命を脅かすような災害や事件、事故、国民の重大な関心事の場合は、あまり所属事務所や広告代理店は文句を言ってはいけない」

となっていたが、皇太子妃内定が国民の重大な関心事にあたるのか、一部の事務所が激怒したという。

特にこの日、新しく始まるドラマに出演していたある俳優の事務所は、烈火のごとく怒りを顕にし、
「ドラマのスケジュールはどうなるんだ!すでに次のクールのスケジュールも埋まっている。伸びたらどうしてくれるんだ!」と編成担当者に詰め寄ったという。


午後8時45分。
各局はその局の看板キャスターを登場させて
「番組の途中ですがここで臨時ニュースをお伝えします。皇太子様のお妃に、外務省職員の小和田雅子さんが内定いたしました」と、
まるで戦争が始まったかのごとく各局の報道フロアから騒然とした状況でスタートした。


これをテレビで観ていた人達は




「あーっ!せっかくいいところなのに!」

「たかが結婚で番組を中断するなよ!」

「(呆然)」

となった人が多数出たという。
おかげで、各局の苦情問い合わせセンターの回線はパンク、一時NTTが通話制限をかける事態となった。

宮内庁では、各民放がカオスな事態になったことに対し、
「NHKに合わせようと考えてのことであったが、逆に民放各局に多大な迷惑をかけたことは大変申し訳なかった」と不手際を認めた。

この日放送が途中で終わった番組や休止を強いられた番組は、後日地域差はあったものの、10日以内に再放送されたり、一週繰り下げられる措置がとられ、
特にショーバイ!ショーバイ!や時代劇の再放送は驚異の録画率を記録した。


だが皇太子妃内定という日本国にとっての重大ニュースである為、番組中止は仕方なかった事だろう。

なお、特番体制から通常編成にいち早く戻ったのは



で、午前零時には戻っていた。ただ、本当の特番は午後8時45分から10時までで、
本来11時台から始まる、経済と市況を中心としたニュース番組を10時に繰り上げた上で、
婚約内定に伴う東京市場への影響や、ニューヨークとロンドン市場への影響、経済効果や円相場等、テレビ東京らしい伝え方であった。おまけに、冒頭は


「それでは、今日の日経平均株価です」

と、いかにもテレビ東京らしい始まりではあった。また、普通こういう皇室関連のニュースは、政府機関のあるワシントンやモスクワが普通なのに、
ニューヨーク証券取引所やロンドン外国為替市場に中継をふるところは、他局では真似できない芸当であった。





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最終更新:2021年10月13日 00:48