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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

登録日:2011/02/03(木) 16:59:48
更新日:2026/05/22 Fri 07:57:30
所要時間:約 4 分で読めます





責任とってね!!


『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』とは、1984年2月11日公開の『うる星やつら』の劇場版オリジナル長編アニメーションの第2作。全98分。
主題歌は「ラムのラブソング」を歌った松谷祐子の「愛はブーメラン」。
ちなみに吉川晃司の初主演作『すかんぴんウォーク』との2本立て上映だった。

劇場版うる星やつらの最高傑作と呼ばれることが多く、監督押井守の原点であり出世作となった作品であるが、同時に原作者高橋留美子と押井を決別させた とされる 作品としても有名。
(理由は後述)

さまざまな要因により原作ファンからの賛否は分かれる本作だが、
  • 「いつまでも続く学園祭前日」「風鈴の音色に導かれるように路地を彷徨うしのぶ」「廃墟と化した友引町でのバカンス」といった観客のノスタルジーを喚起する抒情的なシーン
  • SFのジャンルとしては確立していたものの、アニメではほとんど前例がなかったループものを初めて劇場アニメでやってしまった
といった要素は高く評価され、本作に影響を受けたというクリエイター・作品も少なくない。
具体例を挙げるならこの作品*1とかあの作品とか(リンク先ネタバレ注意!)。
あと、アニメ『らき☆すた』の最終回のEDで白石稔が本作のテーマソングを実写で歌ってもいる。*2
2020年には『踊る大捜査線』で有名な本広克行監督が、本作にオマージュを捧げた青春ドラマ『ビューティフル・ドリーマー』を発表している(もちろん、押井守氏も原案としてクレジットされている)。





あらすじ

なぜか荒廃しきった友引町の場面から、物語は始まる。
廃墟と化し、水没した友引高校のほとりでバカンスを楽しむラム達。そしてその傍で呆然と佇む諸星あたる。
いったい、彼らの身に何が起こったのだろうか……?

場面変わって、学園祭を目前に控えた友引高校。
昼夜を問わないドタバタ騒ぎの最中、学校の給湯室でラムはしのぶに語る。
「ダーリンや、お父様やお母様やテンちゃんや、終太郎やメガネさんたちと、ずっとずっと楽しく暮らしていきたい」と。
その願いを叶えるが如く、学園祭前日のドタバタ騒ぎはいつまでも続くのだった。
明日も、そして明後日も……。

最初に異変に気づいたのは温泉マークだった。
いつまで経っても訪れない学園祭の当日。久しぶりに帰ってみたら、廃墟も同然と化しているアパートの自室。そして、すっかりおかしくなっている季節……。
報を受けたサクラが調査に乗り出した途端、今度は空間までもがおかしくなり始める。
いつの間にやら環状線と化している電車。ごくありふれた住宅街は迷路と化し、電話はどこへも繋がらない。その様子はまるで、皆を閉じ込めようとするかのようであった。
脱出不可能の迷宮と化した友引町で、サクラは乗車したタクシーのドライバーと意味深な会話を交わす。
「もしも竜宮城へ行ったのが浦島太郎だけではなく、太郎の住む村人全員だったら、果たしてそれでも数百年の時が経ったと言えるのか?」
「時間なんてものは所詮、いい加減な人間のいい加減な主観の産物に過ぎないのではないか?」
ドライバーの様子にただならぬものを感じ、正体を現すように迫るサクラ。だが、あと一歩のところで逃げられてしまうのだった。

面堂やしのぶ、ラム親衛隊の面々、そしてあたるも異常に気づきはじめる。
なんとか状況の打開を模索する彼等は、面堂の操縦するハリアーで友引町からの脱出を図る。
そこで皆が目の当たりにしたものは……巨大な石の亀の背中に乗って宇宙空間を航行する、あまりにも異常な町の姿であった。
しかも、亀の背で町を支えている石像は、よく見るといつの間にやら姿を消していた人物──錯乱坊や温泉マークの姿をしていたのだ!

脱出は失敗に終わった。
おまけに友引町の異常な全貌を彼等が目の当たりにしてから数日後──世界はまるで開き直ったかの如く、その装いを突然変えてしまった。
あたるやラム、そして彼等と親しい者だけを残して消えてしまった人々。荒廃し、瓦礫の山と化した町並み。
そんな世界の終末じみた光景の只中で、奇妙なことにあたるの家にだけは依然として電気もガスも水道も供給され続け、新聞さえ配達された。
しかも近所のコンビニには、豊富な食料品が変わらず供給され続ける。
かくして、残された人間たちによる、衣食住を保証されたサバイバル(byメガネ)は始まったのだった……。

泳ぎに釣り花火、映画鑑賞。
まるで終わりのない夏休みを謳歌するかの如く、無邪気に遊び続けるあたる達。
だが、面堂やサクラはこの世界の正体に気づきはじめていた。
こんな、いい加減で物理法則的にもありえない世界が存在するはずがない。もしそれが存在しうるのだとしたら、それは夢の中でしかありえない。
では、この世界は誰が見ている夢なのか?
そして、その夢を現実のものとしている者は誰なのか?
果たしてあたる達は、夢の世界から脱出できるのか?

あたる達と夢を司る黒幕との決戦が、幕を開けた……。

登場人物

■諸星あたる
CV:古川登志夫
ご存知、ツンデレ主人公。
相変わらずいい加減で怠け者でいやしくて女好きで淫乱で浮気性でエゴイストだが、決める時には決める男。
本作で念願のハーレムが叶うが……。

彼が放ったある発言は、長年ファンの間で物議を醸した。

■ラム
CV:平野文
純真で一途な鬼娘……なのだが、本作の彼女は少しミステリアスな雰囲気。

■三宅しのぶ
CV:島津冴子
いつも通りの怪力娘。
冒頭の給湯室で行われる、ラムとサクラとの会話シーンは押井監督のお気に入り。

■面堂終太郎
CV:神谷明
いつも通りの御曹司。
「自分は諸星たちとは違う」と言わんばかりにスカしているが、喫茶第三帝国に自前の戦車を持ち込むあたり本質は同類。
サクラと共に異変の正体に気付くが……。


■藤波竜之介
CV:田中真弓
女になりたい女の子。
ついにブラジャーを手に入れる夢が叶う。

■テン
CV:杉山佳寿子
本作では比較的大人しい幼児。
知らないおっちゃんからもらったという仔豚をペットとして可愛がっている。

■温泉マーク
CV:池水通洋
あたる達の担任で、最初に異変に気付く人。生徒の敵とか言わない。
余談だが、喫茶店でのサクラとの会話シーンは声の収録が大変だったらしい。

■サクラ
CV:鷲尾真知子
巫女としても保険医としても大忙し。
前作ではチョイ役だった彼女だが、本作では大活躍する。

■メガネ
CV:千葉繁
本作でも大活躍のラム親衛隊隊長の最高幹部会議長。
あたるの提案した「美人喫茶」を「個人の趣味で決められてたまるか!」と却下し、「喫茶第三帝国」を文化祭の出し物に決定させた張本人。個人の趣味ねぇ……。
中盤で語られる「友引前史」は監督押井守がフィルムを(ほぼ)完成させてからアフレコさせる、などかなりの力のいれっぷり。

■パーマ、チビ、カクガリ
CV:村山明、二又一成、野村信次
お馴染みラム親衛隊メンバー。
パーマは下校時や深夜の校内探索などメガネとコンビを組んで行動する為、通常回よりも出番や台詞が多めである。
チビは「餡子が中に入ってる板チョコ」をチョロまかした罪で、人民法廷へと連行される見せ場が与えられている。
カクガリは序盤で、温泉マークとのキャラデザの近似性を逆手に取ったメタなネタを披露する。

■あたるの両親
CV:緒方賢一、佐久間なつみ
家に何人も居候を抱えるハメに。

■錯乱坊(チェリー)
CV:永井一郎
ご存じ、破戒坊主。
いちおう高い霊感を持っているため、黒幕に厄介な存在と判断されたらしく、物語の冒頭ですでに退場させられていた。


制作

本作は押井守監督によるリターン・マッチという側面が大きい。

もともと押井監督は、自身が手がけた前作『うる星やつら オンリーユー』の出来栄えに満足していなかった。
なにしろ、たった5ヶ月というあまりにも無茶苦茶な制作スケジュールのもと突貫工事で作らされた上に、制約だらけで自分のやりたいことも満足にやらせてもらえない。
そうした経緯もあって、押井監督は前作のことを「完全な失敗作」「ただの大きいテレビ」とボロクソに貶していた。ファンから万雷の拍手で迎えられ、原作者の高橋留美子氏からも絶賛されたにも関わらず、である。
同業者にして大先輩たる宮崎駿氏からもダメ出しを喰らったことも、彼の反骨精神に火をつける結果となった。*3

今度こそは自分が手がけたい映画を作る──。
そう決意した押井監督は、脚本段階で持久戦に持ち込むという作戦に出た。
高橋留美子氏が提示したストーリー案をうやむやにし、首藤剛志氏や伊藤和典氏といった錚々たる面々が提示したシナリオを却下し、制作時間がギリギリになったところで満を持して提示したのが、本作の原案だったという。
しかも恐ろしいことに、その原案さえ実際の映画とは全くの別物だったらしい。
プロデューサーの落合茂一氏曰く、実際に上がってきたコンテを見た瞬間に「それを抱えて辞めたくなった」とのこと。
かくして出来上がったのが、本作──テレビシリーズ第101話『みじめ! 愛とさすらいの母!?』をブラッシュアップしたような、夢をモチーフとした作品だったのである。

そうして完成された本作は興行収入こそは前作を下回ったが、アニメ雑誌では公開後、高く評価された。
また「キネマ旬報」において、読者選出ベスト・テンで邦画の部第7位と評価された。(同年の第1位は『風の谷のナウシカ』)

その後、押井氏は『うる星やつら』テレビシリーズのチーフディレクターを降板、スタジオぴえろを退社した。
テレビアニメのシリーズ途中でのメインスタッフの交替は異例であり、押井は当時のインタビューで「体力的・精神的な限界」と説明した。
しかし後年のインタビューでは、「『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』が高い評価を受けたことでイケイケになってしまい、監督としての自信がついたため独立した」と語っている。
かくして「自分のやりたいように作る」を突き詰めていった結果出来上がったのが、次回作にしてアニメ映画史に残る大問題作『天使のたまご』である。

原作者との確執の噂

さて、本作にはある噂がしつこくついて回っている。
その噂というのは、原作者の高橋留美子氏は本作の内容に激怒し、今でも「2は嫌い」と公言しているというもの。
この説の傍証として、オーディオコメンタリーにおける押井守監督の「2は原作者の逆鱗に触れた」という発言が挙げられる。

……が、結論を書いてしまうと、この噂は当の高橋氏によって明確に否定されている。
そもそもこうした噂が蔓延する原因となったのは、小説家・平井和正氏との対談。
この対談において高橋氏は「押井さんは天才」「2は押井さんの傑作で、お客さんとして非常に楽しめました」と語っているのだが、これが「これはもはや私の作品とは言えない」といった具合に、遠回しな皮肉として曲解された結果生まれたのが上記の噂というわけである。
「押井さんの」という言い方に引っかかるものを感じるかもしれないが、これは(本作が評価されてるという主張を聞いて)「それは私の原作だからとかではなく押井さんの手がけた作品だから傑作なのだ」というストレートに押井を持ち上げるための表現なのである。

高橋氏はサンデーでのインタビュー等で「押井のことをネガティブに評価したことはなく、(後から和解したとかではなく)押井と仲違いしたこと自体がそもそもない」と表明し続けているのだが、氏の思惑をよそに高橋・押井不仲論は未だ根強く、 「何度否定しても仲が悪いことにされる」 と苦言を呈したこともある。
上記の通り、一方の押井がDVDなどで「原作者の逆鱗に触れた」と発言しており、双方の認識に齟齬があるので仕方がない面もあるのだが……いずれにせよ、高橋留美子自体も本作自体は評価して、少なくとも能動的に押井を排斥しようとまではしなかったということだろう。

……まぁ本作は、「うる星の劇場版にもかかわらず、るーみっくワールドをメタ的に批評するような展開」「諸星あたるが発したある決定的な一言」といった、原作ファンが引っかかりを覚えがちな要素が多く含まれているため、そうしたわだかまりをファンが原作者に投影(防衛機制的な意味で)した結果がこの噂と捉えることもできる。

余談

  • 押井が降板した後の『うる星やつら』劇場版においても、原作最終回の『完結編』以外の2作品はいずれも「幻想的」・「夢世界的」な作品であり、本作の高評価が影響した可能性がある。

  • しのぶが風鈴の音色に導かれるように路地を彷徨うシーンの最後に登場する、後ろ姿だけの男はあたるに似ているが別人。監督の押井守氏曰く「彼らを見守る観客をイメージした」そうな。


かつて今までいかなる先達たちも実現し得なかったアニヲタwikiを、あの永遠のシャングリラを実現するだろう。

メガネ著 友引前史第1巻 追記・修正よろしく 序説第3章より一部抜粋

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最終更新:2026年05月22日 07:57

*1 学園祭のシーンに本作のオマージュとして「喫茶第三帝国」が登場している。

*2 らき☆すたの最終回のエピソードも、文化祭をメインとしたオリジナルストーリーだった。

*3 宮崎駿氏も対談で「ラムを本質的に理解することは男には不可能」「次は押井さんのフィルムとして作ってほしい」などと発破をかけていた。