シンドバードの冒険

登録日:2012/11/17(土) 11:30:12
更新日:2024/10/24 Thu 12:30:10
所要時間:約 4 分で読めます




『シンドバードの冒険』は、千夜一夜物語、所謂「アラビアンナイト」に収録されている物語のうちの一つ。
…と思われているが、実はもともとは別のお話。
フランスの東洋学者アントワーヌ・ガランが千夜一夜物語を翻訳・編集した際に、その一部と思い込み、誤って組み込んでしまったという説が有力。

名前に関しては「シンドバッド」と訳されることもあり、人によってはこちらの方が聞き馴染みがあるかもしれない。
また、この物語は富豪であるシンドバードが、同名の若い青年に自身の物語を語るという、テイで行われている。
そのため、前者を「海のシンドバード/船乗りシンドバード」。後者を「陸のシンドバード/荷担ぎシンドバード」と言い分けることもある。

いずれにせよ、これは航海士であり商人でもあるシンドバードの、7回に渡る冒険を描いた物語である。

あらすじ

昔々、アラブの港に一人の航海士がいた。
名はシンドバード。
(容姿については、出版社によってはが生えている青年だったり、10代位の少年だったりする)
彼は他の船員達と共に、大海原を船で航海している途中、大きな島を見つけた。
彼らは早速、島へ上陸。
島に上陸するなり、歌を歌い、ダンスを踊り、そして食事をした。
所が次の瞬間、島に大地震が起こった。
そして島が移動し始めた。
そう、その島は実は大きな鯨だった。
背中に沢山の木々を生やした、大きな鯨だったのだ。
突然のハプニングに驚く人々。
そして次々とに投げ出され、シンドバードを除いて全員溺死。
命からがら脱出したシンドバッドは、船の残骸だと思われる木の板につかまり、何日もかけて泳いだ。
そして一つの島に辿りついた。
シンドバードはあてもなく彷徨い歩いた。
その時、上空を巨大なロック鳥が通り過ぎた。
シンドバードは何とかして脱出方法を探した。
そして深い谷底へ足を踏み外し、落下。
「てやんでい!こんなモン、何ぼのモンじゃい!」
運よく掠り傷で済んだシンドバードは驚いた。
谷底には、沢山のダイヤで一杯だったからだ。

唖然とするシンドバード。
その時、上空から誰かが羊の肉の塊を投げ入れた。
「ウホッ…▼いいお肉…▼」
シンドバードがその肉を拾い上げると、肉にはダイヤがビッシリ刺さっていた。
そう、これはダイヤを取りに来た人達が投げ入れた物だったのだ。
肉を谷底へ投げるとダイヤが沢山突き刺さる。
そしてそれをロック鳥に引き上げて貰うという作戦だったのだ。
シンドバードは早速、ダイヤが突き刺さった肉を背中に括り付けた。
すると案の定、ロック鳥が飛来。
ロック鳥は足でシンドバードの背中に括り付けられた肉を鷲掴みにすると、谷底から飛び立った。
シンドバード、奇跡の生還!
かくして、シンドバードはこの方法をマネし、ダイヤで財を成したという事である。

それから暫くして、シンドバードはまた航海に出た。
多くの船員を引き連れ、着いた島にはロック鳥の巨大な卵が…。
船員達はシンドバードが止めるのも聞かず、卵を割って食べてしまった。
勿論、これがロック鳥の逆鱗に触れ、シンドバード達は島を脱出するも、ロック鳥に岩を落とされ、船は大破。
シンドバードただ一人が生き残り、命からがら泳ぎまくった。

そしてまたしても別の島を見つけ、上陸。
島にはおいしい果物が沢山なっていた。
シンドバードは果物を沢山もいで抱え、食べながら先へ進んだ。
すると、痩せこけた一人の老人の姿が。
「この人もこの島へ流れ着いたんだな…。」
シンドバードは同情した表情で老人を見た。

すると老人は、
「ワシをお前さんの背中に乗せてくれ。うまい果物が食いたい。」
と、身振り手振りでシンドバードに伝えた。
シンドバードは老人を背中に負ぶった。
すると老人は、
「ブッ飛ばすぜえ!!シンドバードの旦那ァァ!」
と、言わんばかりにシンドバードをの様にこき使った。
シンドバードは振り払おうとするも、老人は力強く、中々振り払えない。

「このままでは殺されてしまう…。」

そして翌日、シンドバードは空の瓢箪と葡萄の木を見つけた。
「こんな時は葡萄酒でも作って飲もう、精力を付けよう。」

空の瓢箪に葡萄を入れ、発酵させた。
そしてシンドバードは瓢箪の中の葡萄酒を飲んだ。
すると、体中に活気が溢れ、歌い踊った。

それを見ていた背中の老人は
「ワシにもくれ」
と、言わんばかりに葡萄酒を指差した。

シンドバードは老人に葡萄酒を渡した。
老人はあっという間に葡萄酒を飲み干し、酔っぱらった。
そして…

「あばよ、じいさん!貴様の死因は泥酔中の不運な転倒死だ!」

シンドバードはそう呟くと、背中の老人を一本背負いで投げ飛ばした。
老人は地面に頭を強くぶつけ、死亡。

シンドバードは駆け足で浜辺に出た。
そして一隻の船を見つけ、SOSを出した。
船に乗ってた人々はシンドバードから一部始終を聞いて驚き、こう言った。

「この島に住んでいるのはオンブオバケという恐ろしいヤツだ。しかし、よく助かったな…。」

かくして、シンドバードは富豪としても、一流航海士としても有名になりましたとさ。


◆主な登場キャラクター


  • シンドバード
船乗りの青年。
版によっては髭があったりなかったりする。

巨大な鳥。二回に渡って登場。
一回目はダイヤの谷にシンドバードを置き去りにし、二回目は卵を割った船員達に復讐する役で登場した。

  • オンブオバケ
島に流れ着いた人にしがみつき、死ぬまでこき使う恐ろしい妖怪。
最期はシンドバードの作戦により、死亡。


【余談】

ヂュマの小説『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』の主人公エドモン・ダンテスが名乗った偽名の一つに『船乗りシンドバッド』がある。


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最終更新:2024年10月24日 12:30