ロック鳥

登録日:2024/09/27 Fri 11:11:33
更新日:2025/03/30 Sun 13:25:05
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『ロック』とは、主に中東の伝承に登場する巨鳥のこと。
英語での綴りは“roc”
また「ルフ」「ルク」「リュ」と呼ばれることもある。

決して、「岩」を意味する“rock”のことではない。ないが…(後述)
このようにロックだけでは紛らわしいからか、「ロック鳥」「ロックバード」と表現されることも多く、本項目でもそれに倣うものとする。


【概要】

正確な起源は不明。
8世紀初期には伝承として語られていたらしい。
翼を広げれば太陽をも覆い隠すほどの巨体で、ゾウサイをも軽々と掴み、餌としていたという。

また、時にフェニックスシームルグガルーダといった東洋の巨鳥と混同されたり、起源を同一視されることがある。

伝承の元となった存在については、後述する様に絶滅種の大型鳥類説や、岩を落とすヒゲワシを元にしたという説等がある。
上記以外にも、マダガスカルのラフィアヤシの葉が巨鳥の羽根としてヨーロッパに持ち込まれていたという話もある。また10世紀にとある旅行家が「巨鳥の羽根の軸」製の水差しについて言及しているが、これはマダガスカル産の竹筒細工を誤認したのではないかと推測されている。
何にせよ、巨大な羽根(と思える物品)というものは、当時から想像力を大いにかきたてるものであったのだろう。


東方見聞録において》

ご存じ、13世紀にマルコ・ポーロが著したとされる、アジア諸国に関する記述をまとめた書。
ここに、ロック鳥が『南洋の島マダガスカル島に住む巨鳥』として紹介されている*1

そこでは「全長は約45m、翼の長さは18mほど。その足で象を捕えると空高く運び上げ、落として殺した上でその肉を食らうという。」と記載されている。
なお、この鳥の事を「グリフォンである」とも記述している。
ただし「私達が想像しているのと異なり、下半身がライオンで上半身が鷲の姿をしているわけではない」とも注記している*2

なお、マダガスカル島には「エピオルニス」と呼ばれる全長3mにもなる、飛べない鳥が16世紀頃まで生息していた。
そのため、例えば羽根だけが他所に伝わり、ロック鳥のイメージ元となった…などの可能性も高いと思われる。

《伝承に登場するロック鳥》

船乗りシンドバッド

いわゆる「千夜一夜物語」の一説(…と思われているが、実はそうではない)*3
いずれにせよ、この話に登場するロック鳥が、世界で一番有名なロック鳥であろう。

最初に登場するのは、二度目の航海時。
とある島に置き去りにされたシンドバッドだが、偶然にもロック鳥のタマゴを発見。
タマゴの陰に隠れたシンドバッドは、巣に戻った親鳥の脚に自らを括り付けて、その島を見事脱出することに成功。

…するも、到着したのは深い谷底。
これが有名な「ダイヤモンドの谷」であり、ダイヤ取りの商人が落とす肉塊にまた自らを括り付けて脱出する。
なお、たまに誤解している人もいるが、ここで肉の回収に利用されているのはロック鳥大ワシの二種類がある。
作品によっては大ワシしか出演しないし、そのせいでここで登場するのはロック鳥ではないと誤解する人もいる。


また、五度目の航海の話にもロック鳥は登場している。
今度は砂漠の島で、またもやタマゴを発見。
なのだが、なんと同行していた商人が、ちょうど孵ったばかりのヒナ鳥を料理して食べてしまう。
戻ってきた親鳥は当然激怒し、一行を追跡。
船に乗り海上まで逃げてもなおも追跡はやまず、それどころか(恐らく)夫婦のもう片方も参戦し、大岩を上空から落とし始める。
ロックがロックを落とすのである。
たまらず船は大破し、シンドバッド自身は一命こそ取り留めるが、そのまま漂流するのであった。

なお、この岩を落とすというところから、ユーラシア大陸南西部などに生息しているヒゲワシ*4がロック鳥のモデルだという説もある。

『アラジンと魔法のランプ』

同じく、本来は「アラビアン・ナイト」ではなかったが組み込まれることが多い作品。
子供向け絵本などではカットされることの多い最終章にて、魔法使いの弟が高名な聖職者に化けて「御殿の屋根にロック鳥のを吊るすとご利益がある」とアラジン夫妻を唆す。
実はロック鳥は魔神の元締めで、これをランプの魔神に命令すればアラジンは殺されるという兄の敵討ち計画だった。
実際にランプの魔神は「お前は私のご主人を殺して、あの天じょうからぶらさげてくれというのか」とアラジンを叱り、本来ならアラジンを殺さねばならぬと言うが、
この計画を見抜いていたのでアラジンに暴露して命令の方は聞かなかったことにしている。

『荷かつぎ人足と乙女たちとの物語』

こちらは正しく「千夜一夜物語」の一説で、その中の「第三の托鉢僧の話」にも登場。
元王であった男だが、領地をめぐる際に漂流する羽目になり、紆余曲折を経て、真鍮の宮殿に辿り着く。
そこにいた男たちは総じて左目を失っており、理由を訊ねると
「羊の皮を被って露台にいると、ロック鳥が羊と間違えて遠い山の上まで連れて行く」
「そこで逃げ出し、歩いて黄金の宮殿まで行けば分かる」
と答えたので、元王はその通り実行した、というもの。
そこでのロック鳥は「十頭の象ほど膨大な、二十頭の駱駝ほど巨大な、純白な鳥」と記されている。
なお、黄金の宮殿で何があり、皆がどうして左目を失ったのかは、本編をお読みください。



【その他、ロック鳥が登場するフィクション作品】

以下では、明らかに鳥であるもののみを紹介するものとする。

◆『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ

東京ディズニーシーに存在するアトラクションの一つ。
上記の「船乗りシンドバッド」を下敷きとし、主人公の少年シンドバッドと相棒の小虎・チャンドゥの不思議な大冒険を描いたボートライド型アトラクション。

ロック鳥も登場。羽色は赤(朱鷺色?)。
道中、ロック鳥の卵とヒナを狙う盗賊たちとの闘いになり、無事に彼らを守ったシンドバッドはロック鳥の不思議な羽根を貰い受けるのであった。
なお、ここで貰った羽根が後々、役にたつことに…。
ちなみに前作にあたるアトラクション『シンドバッド・セブンヴォヤッジ』ではシンドバッドとその仲間たちに襲いかかる怪物として登場した。


◆『T・Pぼん

「シンドバッド最後の航海」のエピソードでロック鳥が登場。

こちらでは、リームを探して砂漠を彷徨うぼんとシンドバッドが崖下で巨大な卵を発見する。
その卵でなんとか飢えと渇きを癒せた二人だが、それはロック鳥の卵で、怒った親鳥は二人を追跡。
二人は狭い岩陰に身を潜めて、なんとかやり過ごすことに成功した。

なお、容姿はぼんが「ずっと昔絶滅したモアの仲間」と推測したように、巨体と長い脚、そして短い翼を持った(恐らく)飛べない鳥。
ただ、ジャイアントモアの生息域はニュージーランドであり、(伝承のモチーフの一つならともかく)彼らを襲ったロック鳥がモアの仲間である可能性は低いと思われる。


◆『ドラゴンクエストモンスターズ』

「ロックちょう」が鳥系のモンスターとして、初代テリワンから登場している。
逆に、メインシリーズでは登場したことはない。
羽毛というよりウロコのような赤い表皮に包まれており、脚はなく、長い尾の先に3本の鋭いツメが付いている。
要は、同シリーズの常連モンスター「キメラ」の亜種とも言えるような見た目。
DQM2の図鑑で確認できるサイズも当然LL。

初代の図鑑では
ムチのように あしをしならせて するどいツメで つきさす。
とあるため、尾ではなく脚である可能性も高い。
ゾウをもその脚で掴んで飛ぶ伝承のロック鳥の要素はこのあたりにあるのであろうか。
いずれにせよ、元ネタは当然、巨鳥ロック鳥と思われる。

だが、DQM2の図鑑には
がんせきの からだを あいてにぶつけ ぺったんこに おしつぶす。
とあるため、岩の方のロックとも係っていると思われる。

ステータスはHPの伸びが非常に高く、1レベル上がるごとに10~20ほど上昇するせいで印象に残る人も多いはず。
そのせいでついたあだ名がHP版グリズリー。

配合は任意の鳥系を血統に、ライバーンを相手に選ぶことで誕生させられる。
この組み合わせはNPCマチコとのお見合いで入手可能。
マチコ曰く『鳥系が好み』とのことで、プレイヤーに対して暗にロックちょうを誕生させられる配合をお勧めしてくれている。
ストーリー攻略にも高すぎるHPのおかげでなかなか棺桶送りにはならないのでオススメできる。
ただし一部の鳥系モンスターではキラーグースとの特殊配合が優先されてしまうので注意。

その他、サンダーバードのような一部の鳥系と、ゴーレム・うごく石像・ストーンスライムのような岩っぽいモンスターを配合しても誕生する。
ただし、技で「がんせきおとし」は覚えてくれない。
(取得技は「アストロン」「くろいきり」「タッツウしょうかん」)

当然テリワン3Dにも登場するが、サイズは名前と過去作に反してSサイズに。
自然系のAランクと位階は高めだが、配合法がカプリゴンorレティスにギガントドラゴンorブラックドラゴンという面倒なものになってしまった。
メダルおじさんの報酬にもなっているのでそちらを利用すれば比較的楽に手に入る。
初期スキルは「神聖」、特性は「スタンダードボディ」「みかわしアップ、」「ギラブレイク」「ギガキラー」「くじけぬ心」。

イルルカ3Dでは天空の世界や宿り木の塔に野生の個体が生息しており、時折キラーシックル(SPではアラウネ)をさらっていく。
ロック鳥なんだから、パオームくらいさらえよ…
新たにグレイトドラゴンとの配合でシャンタクが作れるので配合素材としても優秀。

DQM3では初の色違いとなるスノーグリフォンが登場している。
グリフォンなのは上記の東方見聞録での記述によるものであろうか。


◆『女神転生シリーズ』

ラストバイブルシリーズには「ロックちょう」が、デビルサマナー以降の作品には「ルフ」が登場。
STRANGE JOURNEYあたりから、同シリーズの鳥族としては珍しく、銃属性に耐性を持つ事が多くなった。


◆『Wizardryシリーズ』

一部の作品で「ロック(Roc)」が登場。伝説に語られる存在ゆえか、神話系モンスターに分類されている。
初登場の#3では中盤の雑魚であり、同じく鳥型のモンスター「ヴァルチャー」を多数引き連れて現れる。

一方、外伝Ⅲでは…


◆『グランブルーファンタジー

メインクエスト75章「極地の試練」の敵として登場。
ごく普通の中ボス敵めいた外見とシナリオ上での扱いながら全体ダメージ後にサブメンバー2人と強制交代させる特殊行動や高い攻撃力で順調にメインクエストをクリアしてきた騎空士をも苦しめた。
何故かHPも1部のラスボスより高く設定されている。一時期は打ち間違いなどの設定ミスも疑われたが、どうやら仕様だったようだ。


◆『Fate/Grand Order

奏章Ⅱイドのフリークエストから大型エネミーとして、ロック鳥が登場。
中ボスとして登場したサンダーバードの色違いで、見た目は普通の鷹、ないしは鷲。
ドロップアイテムは「黄金釜」。スキル《ウィンドヴェール》で自身に回避を付与してくるため、手早く倒す必要がある。


◆『モンスター烈伝オレカバトル

第2章「砂縛の遺跡」に「ロック鳥ルフ」が登場。
先述の『アラビアンナイト』のイメージからか、「巨石落とし」「象落とし」「船落とし」などといった掴んだ物を上空から落とす技を数多く持っている。


◆『遊戯王OCG

《ドロール&ロックバード》というモンスターカードが存在。
ただ、ロックバードはドロールの腕に留まれる程度なので(ドロールがバカデカくない限りは)結構小柄*5
英語名は《Droll & Lock Bird》だが、相手のドローなどを妨害する効果を持っているため、それに掛けていると思われる。
詳しくは個別項目を参照。

その他、《霞の谷の大怪鳥》《霞の谷の幼怪鳥》というカードの英語名は、ぞれぞれ《Roc from the Valley of Haze》と《Mist Valley Baby Roc》である。


◆『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』

少年の願いを叶えようと、卵を取ろうとする烈と壮絶な空中戦を展開した。


【余談】

漫画ONE PIECE」の主人公「ルフィ」の持ち技の一つに「ゴムゴムの怪鳥銃(ロックガン)」というものがある。
これは「ゴムゴムの象銃(エレファント・ガン)」の上位の技ともいえるものであり、ロック鳥がゾウをも捕食することからその名がつけられたと推測されている。

ゼルダの伝説シリーズには度々『ロック鳥の羽根』というジャンプアクション用のオレンジの羽根アイテムが収録されるが、大元のロック鳥は未だに姿を見せていない。
また綴りは異なるが、風のタクトにはカーゴ/ジークロックという怪鳥は登場する。

ARMORED CORE NEXUS」には「WR08PU-ROC」という、ミラージュ社製のパルスライフルが登場する。
ミラージュのパーツ命名法則では腕武器には「神話や伝承に登場する魔物・怪物」の名が与えられるので、この武器の元ネタはロック鳥となる。
小型軽量の割に高い火力を持ち、同じROCの名を持つ後発武器がいくつか開発されている。
特に「ARMORED CORE LAST RAVEN」で追加されたナインボールのパルスガンのリメイク品「YWH14PU-ROC4」はパルスライフル内では単純な火力のみならず弾数も図抜けており、
それでいて火力を踏まえればかなり低燃費という最初から手持ち武器として使っても良し、格納に忍ばせて弾切れ時の保険や瞬間的な火力に優れる武器を撃ち切った後のトドメに使っても良しの便利な品だった。

仮面ライダーストロンガー」の本編に登場するはずだったデルザー軍団の怪人・ジェットコンドルがロック鳥の子孫という設定になっている。

モンスター娘TD」には“【ロックバード娘】ログダンノ”が登場。
ハーピィ系のモンスター娘なのだが、モチーフ故に主人公を口に咥えることが出来るレベルの巨身を誇る。
なお、主人公との寝室シーンあり。特殊性的嗜好ここに極まれり。

ラストオリジン」には「RF87 ロク」というAGS(ロボット兵器)が登場する。名前の由来は勿論ロック鳥だが、製造国はロック鳥の伝承とは無関係なメキシコ
「おっぱいと言えばラストオリジン!」と公式が豪語するほど爆乳そして爆尻、過剰な露出な女性キャラが多く登場する事で知られる作品だが、
このロクは人型だが鳥足と翼のような背部ユニットを持つ超イケメンロボットである。尊大・不敵・冷酷だが主には忠義を尽くす性格も実にイケメン。


追記・修正はロック鳥が掴んだロックに乗った状態で、ロック調のミュージックを聞きつつ、項目をロックしないように気を付けながらお願いします。

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最終更新:2025年03月30日 13:25

*1 ただし、アフリカ東端部の「モガディシオ」(現在のソマリア)と混同ないしは取り違えられていたらしい。

*2 同様に、サイも「(スマトラの)ユニコーン」として紹介されていたりする。

*3 フランスの東洋学者アントワーヌ・ガランが千夜一夜物語を翻訳・編集した際に、その一部と思い込み、誤って組み込んでしまったという説が有力。

*4 カメなどの固い獲物を地面に落として割る習性がある。

*5 もしくはバックに巨大な腕のようなものが映っているため、体のサイズを変更可能か