直死の魔眼

登録日:2009/06/05(金) 11:55:25
更新日:2025/04/06 Sun 17:17:09
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『万物には生まれた時から綻びがある。』



TYPE-MOON制作の同人ゲーム「月姫」の主人公である遠野志貴、及び小説「空の境界」の主人公である両儀式が所有する特殊能力。

【概要】

ざっくり言えば生物やモノの「」を視覚情報として捉え、干渉する事ができるようになる力
この「死」とは「生命活動の終了」だけでなく、あらゆる物体・概念が自身の誕生と共に持つ「死期」や「存在限界」を意味する。
なお「魔眼」の名を持ち、実際眼が関連する力だが厳密には魔術的な「魔眼」とは異なる。これについては後述。


【能力】

能力を行使すると「死」は黒い線や点といった視覚情報で示され、そこに物理的な干渉を加えることで対象を死に至らしめることが出来る。

線は「モノの死にやすいライン」を意味し、そこをなぞるように切ればその部分は殺されて存在限界を迎える。要は破壊されたり切断されたりする。
これによる切断は物理的なものではなく能力で「殺して」いるので、治療、接合、再生といったことが不可能であるのが大きな特徴。
線を正確になぞることさえ出来れば、刃物に限らずたとえ指先でも鉄板を切断できる。
ただし切断された部分を魔術により一から「再構成」する事が出来れば、多大な魔力と時間を掛けて治す事は可能。

これらは魔眼所持者当人に限り、第三者が線を正確にトレースしても効果はない。

死の線の源である死の点は「死そのもの」を意味し、その点を突けば対象には「死」という結果が与えられる。
「死」を与えられた対象はその後に生命活動の終了・魂の消滅・物質の結合の崩壊など、具体的な「死んだ状態」になる。

Fate/Grand Order』の『空の境界』とのコラボイベント内では、説明された魔眼の効果を主人公が「(モノの)寿命を斬っている」と形容しており、
それを聞いた式も「話が早い」と実質同意するような反応をしている。

また、所持者の脳のスペックの違いで、能力の負担や見る事が出来る『死』の範囲が異なる。


【殺傷力・破壊力】

攻撃力そのものは型月世界でも最上級に入るであろう極めて強力な能力。

対象が生物か無生物かはこの眼の前では意味をなさず、この世に何らかの意味を持って存在している限り、
物体は言うに及ばず、概念ですら「殺す」事が可能。式曰く、空間や時間にも干渉出来るらしい。
元々命が終わっている死者でさえ、死者としての「意味」を持つため、この眼にかかればこの世から完全に消滅させる。
この必殺性がアルクェイドに「私以上の化け物」と言わしめた所以である。

また、対象の限定的な部分のみの「線」や「点」に干渉する事も出来、これを応用すれば体内の毒物・病気などを体に傷を付けること無く排除できる。
式はある人物にぶっつけ本番でこの応用を使い、命を救っている。
同様に志貴も体内に入り込んだ「死徒の血」を殺したり、某ルートでは体内に入った毒だけを殺したりした。
が、後者では志貴は眼を酷使したためか一時的に失明してしまった。


【その他の特性など】

死に関連した能力の他に、通常なら不可視である魔術的な攻撃*1を視認できる「霊視」の特性も持っている。
こういった攻撃は発動からこちらに届くまでのタイムラグがほとんどないため、見えたところでまず回避はできないが、
視認した攻撃の死の線や死の点を突けば『殺す』ことが可能なため、効果が自分に及ぶ前に『殺す』ことで防御することはできる。

蒼崎橙子曰わく、例え目を潰しても消えるモノではないらしい。
何故なら、死は眼球だけで視るのではないので死の概念を掴み取れることに変わりないからだ。
つまり視覚ではなく知覚できるので、眼を失っても脳が死を知覚してしまうのである。
ただし志貴のものは淨眼と呼ばれる特殊な眼が変質したもので、この眼があってこその能力であるため、
一度眼球を潰され、他の一般人の眼球を移植する等で視力を取り戻した場合、前と同様に視えるままかは不明。
式の場合は生まれた時から肉体そのものが持っていた機能が切っ掛けにより解放されたに過ぎないため、
例え眼球を潰されようが、その後何らかの理由で視力を取り戻せば、また全く同様に視えるようになる。


【弱点】

  • 「死」を認識・理解する必要がある
所持者本人が理解できないものや、既に「死んでいる」と認識しているもの、そして、その時代において破壊し得ないものは、
所持者がその対象の「死」を理解できないために上記の「線」や「点」が見えず、殺すこともできない

アルクェイドの「線」が夜には視認できない理由はこれに起因しており、
彼女は夜になると世界のバックアップによって死の要因が全く無くなるためである。

また、星の化身ともいえる「アルテミット・ワン」に対しても無効。
物理的破壊で活動停止する可能性があろうともそれは死ではなく、死なんて概念は持ち合わせてないので、
直死の魔眼ではどうしようもないのである。

特殊な例では式の攻撃が偽物の(釈迦のものではない)仏舎利で防御されたこともある。
これは、徳の高い高僧が生きたまま入滅したという複雑で高度な死を遂げたため。
より高度な死の概念は、読み解いて理解するのが簡単にはいかないのである。

  • 見えても実際に破壊できるかは本人次第
対象の「線」や「点」がはっきり視認できる状態でも、所持者自身がそれを正確に斬ったり、突いたりしなければ『殺す』ことはできない。
さらに言うと、この魔眼には所持者の身体能力をブーストするような効果は一切ないため、
対峙した敵を『殺す』ことができるかについては、所持者の身体能力に極めて依存する。

鎧や結界といった防御手段だけなら、それを『殺す』ことが出来れば問題ないのだが、
例えばいくら殺しても無限に湧くゾンビに阻まれて近づけないとか、そもそも超スピードで動き回っていて捉えられないとかで、
相手との身体能力に余りにも差がある場合は、「線」や「点」が見えていても触る事が困難で効果を発揮できない。
志貴や式も一般人に比べれば体術や武器術に心得がある方ではあるが、死徒などの人外相手には流石に敵わない。

  • 能力行使時の脳への負荷
志貴の場合は物体の死の情報を見る際に脳に多大な負担をかける事になり、対象が無生物の場合は特に負担が大きい。
これは、本来「生物の範疇」に収まっている脳の回路を、無理矢理「無生物の範疇」にまで拡大しようとする、本来有り得ない運動を行うため。
そのまま眼を酷使すればが「焼き切れたエンジン」のようになり、廃人となってしまう。
故に、志貴は「魔眼殺し」の眼鏡を常にかけ、脳への負担を抑えている。


【所持者】

遠野志貴

遠野志貴の眼は、元々彼の出自の七夜一族の特徴である「有り得ざるモノを視る」ための眼である「淨眼」に、
彼自身の脳に刻み込まれた幼少時代の臨死体験がリンクした結果、『根源』と繋がり生まれたもの。

そのため、志貴は鉱物の線を見る事ができるが、概念の死を切る事は向かない。
能力を全開にすれば物の死の点も見る事が出来、概念殺しも場合によっては可能とするが脳に多大な負荷がかかる。
これは死に沈んだ生物殺しに特化しているからで、能力を使えば使うほど『魔眼殺し』の眼鏡を掛けても制御が効かなくなっていく。
頭痛がするのは、彼が元々保有していたのが淨眼であり、死を視るほどの力を持つ異能ではなかったため。
例えるなら、時速150キロまでしか出せないエンジンで時速200キロ以上のスピードを出しているようなもので、限界を超えたエンジン(志貴の脳)が悲鳴(頭痛)を上げているのである。


両儀式

式の眼の場合も同じく「淨眼」の要素を持つが、彼女は元々「 」(から)と繋がっており、それに昏睡状態の際に触れたことで、直死の眼の機能として開いた。
元々の素養や親和性という意味で、志貴のものを変質・機能拡張と呼ぶなら、式のそれは覚醒・解放とでもいったところ。

そのため、「 」に触れて事象を視覚化するのに特化しており、志貴のような負荷も無く生物や病気、概念や空間そのものすら『殺す』ことが出来る。
死の点について作中で見えている描写はなく、明言もされていない。
なお、式は普段の生活でも『魔眼殺し』の類を使っていないが、魔眼の能力を意識的にオンオフできるわけではなく、「死の線」は見えている。
式は「俯瞰的」に物事を見ることで死が見える光景との心の折り合いを付け、その光景を当たり前のものとして受け止めて生活しているのである。
ちなみに橙子は式用に魔眼殺しのメガネを用意したのだが、式が橙子を喜ばせるのが嫌という理由で突っ返した。

脳への負担がないことや『死』が見える対象がかなり広いこと、『死』が見える世界に普段から慣れている等の点から、総合的には使い手としては志貴より式の方が数段上とのこと。
式に脳の負担が無いのは、無かったものをいきなり手に入れてしまった志貴とは違い元々「 」に繋がっていた上に死の概念を学習したため、
死を視る事は呼吸をするくらい当然のこととして本人も脳も受け止めているからである。
ただ、死を視ても脳に負担がかからない式でも、死を視えることは奇怪であるということは知っているし気持ち悪いことは変わりない。


テペウ

『Fate/GrandOrder』第二部第七章「黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン」に登場する恐竜人間(ディノス)。
ORT総力戦において「MELTY BLOOD:TYPE LUMINA」における遠野志貴のラストアーク発動時と同じ効果音が流れるという演出があり、それと同時に最後のゲージ破壊が行われる。

なお、言峰によれば汎人類史の使い手たちよりも効果は微弱とのこと。
だが、そもそもの身体スペックがサーヴァント級であるため使い手としては式よりも上と言える。


番外

ミハイル・ロア・バルダムヨォンも同じような眼を持つが、彼の眼は「モノを生かしている部分=命」を視覚情報として捉えられるもので、
志貴(直死の魔眼)とは似て非なる能力であり、脳への負担がゼロである代わりに生物以外は視ることができないというものである。
どう違うかというと、志貴や式の魔眼は死を視るモノでソレを殺す場所がわかる、ロアの魔眼は命を視るモノでソレを生かしている場所がわかる、という違い。
生物に対して殺すために使用する場合は結果的に同じ箇所を狙う場合が発生するが、視ているモノは根本的に違う。


【魔眼?】

直死の『魔眼』と呼ばれているが、魔術によってはなしえない為、
本当は魔眼ではなく『超能力』、つまり上人が持つとされる『淨眼』である。
魔眼の色は赤や緑が主流で、強力なものとしてアルクェイドのような最上級の吸血鬼が持つ『黄金』、その上には神域に達した『宝石』がある。
そして更に上に七色が万華鏡の如く混同した『虹』があり、月の王の証とされる。
よって魔術でなしえないモノである直死の魔眼は『直死の眼』と言うのが正しい。

またとある人物によると、この直死の魔眼はその『虹』に近いレベルのものであるとのことである。
魔眼はそれ自体が強力な魔術回路であるため、恒常的に魔力を精製する性質を持つ。
志貴が魔術師でも無いのにもかかわらず強力な使い魔であるレンと契約できたのはそのため。


【余談】

  • 別名
別名としてバロールの眼とも呼ばれる。
バロールはケルト神話の神で、その眼で見たものを全て殺すという能力だったとか。ちなみにバロールは太陽神ルーの祖父。
つまり第五次聖杯戦争にランサーとして召喚されたクーフーリンの曽祖父にあたる。
ゲイ・ボルグといいバロールの眼といい相手を絶対殺すことになんとも全力な一族である。

サーヴァントのアナスタシアが契約している精霊ヴィイが持つ、透視の魔眼はバロールを祖としている。
直死の魔眼とは別系統の退化を辿ったもので、結界の打破や城塞の弱点を見つけ出し、全力開放時には因果律を捻じ曲げて弱点を創出する。

  • VSサーヴァント
直死の魔眼の破壊力を活かせるかは最終的には所持者の身体能力による部分が大きいのは前述の通り。
『Fate/stay night』などのFateシリーズに登場する英霊の写し身であるサーヴァントともし戦ったら?という話でも同様で、
そもそも彼らは人間を超えた連中ばかりのため、人間の身体能力で彼らの死の線や死の点を突くことはなかなか難しいという。
一方で、なんとか突くことができれば勝てるとかなんとか。

『Fate/EXTRA』や『Fate/Grand Order』ではゲスト参戦した式が直死の魔眼でサーヴァントやそれに匹敵するエネミーをバッサバッサと切り捨てているが、
どちらの作品内でも式はサーヴァントとして召喚されている(人間以上の存在に格上げされている)状態であるため、人間の状態でも同じようにできるのかは不明。
また本編後を描いたエピソードで刀を持った式はエクスカリバーを持ったアーサー王と同じぐらいという台詞もあるので、そもそも本編と本編後で強さが異なるのかもしれない。



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最終更新:2025年04月06日 17:17

*1 遠野秋葉浅上藤乃などが行使するもの