真珠湾攻撃

登録日:2009/12/09 Wed 01:32:51
更新日:2025/04/28 Mon 02:48:45NEW!
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ニイタカヤマノボレ 一二○八

真珠湾攻撃

日時 1941年12月8日
場所 ハワイ・オアフ島真珠湾
勢力 大日本帝国VSアメリカ合衆国


参加主力艦艇
  • 日本
赤城
加賀
蒼龍
飛龍
翔鶴
瑞鶴
艦載機約350機

その他
戦艦2
巡洋艦3
駆逐艦9
甲標的5




南方攻略作戦に先立ち、真珠湾の米軍基地を拠点とする米太平洋艦隊撃滅を狙って行った作戦。

この作戦の成功によって、太平洋におけるアメリカ海軍水上打撃部隊は作戦能力を喪失。

その結果、太平洋及び東南アジアの勢力図が一変する事になった。


しかし、ワシントンの日本大使館職員の不手際により宣戦布告が遅れた挙句、宣戦布告の意思の伝達自体にも国際法上重大な問題があり、結果的に真珠湾攻撃は「完全なる騙し討ち」という形になってしまう。



その結果アメリカの世論は激昂。
早期講和を目論む日本の思惑とは裏腹に、アメリカとガチで殴り合う形となってしまう。
(なお、前述のとおり宣戦布告に関する協定は実際にはあまり厳密には守られておらず、これほどまでにアメリカ世論を激高させたのは、日本側の情報戦の失敗とも取れるだろう)

ついでにいうと真珠湾攻撃の2時間近く前に、陸軍がイギリス領マレーのコタバルにも奇襲攻撃を開始しているが、そちらに至っては 最初から事前宣戦布告をするつもりすらなかったため 、国際法的にはこっちのほうがよっぽど問題行為ではあった*1

ちなみに後日、正式な宣戦の文書をしつらえたチャーチルは在英日本大使に渡しながら
「戦争というのは正々堂々戦う必要はないが、暴力を振るうなら正々堂々としている ように見せる努力 をしても無駄になることはないよ」
と皮肉を効かせている。

因みに「航空機による港湾・停泊艦隊襲撃」はイギリス軍のタラント空襲という先例があり、真珠湾攻撃はこれを参考にしたと言われている(航行中の艦艇撃沈はマレー沖海戦が初)。


概要

帝国海軍はアメリカを仮想敵国と定めて以来、日本近海まで引き付け潜水艦や航空機により戦力を削った後、艦隊決戦を挑む、
いわゆる「漸滅作戦」を根幹に置いていた。

当初は小笠原~マリアナ諸島を戦場と仮定していた。
しかし、『ワシントン軍縮会議』により保有艦艇数をアメリカ・イギリス両国の六割に押さえられ、
更に対日封鎖網によってジリ貧となると「待ち伏せ」が戦略的に成立しなくなるという窮地に陥る。
このため連合艦隊は、1940年、『山本五十六』の指揮でハワイに先制をかけることにまでなった。

しかし軍令部はこの作戦に反対する。
この作戦には正規空母6隻全てを投入する必要があり、もし最悪の事態となった場合日本は制海、制空両権を失うことになるからだ。

また1941年9月に行われた兵棋演習(シミュレーションのこと)において、
敵戦艦5隻、空母2隻の撃沈と引き換えに味方空母3隻沈没、1隻大破となり機動艦隊壊滅という結果がでていたことも軍令部の反対の理由の1つだった。
そこで軍令部を納得させる為に、山本は航空参謀長『大西瀧治郎』にハワイ攻撃の研究を依頼。


その結果、
  • 三千海里に及ぶ航路を秘密裏に航行するのは難しいのでは?
  • 荒天の多い北太平洋でハワイまでの12日間、燃料補給が可能な日が有るか?
  • 真珠湾突入には背面の山を越え、高層ビルの林立する市外を抜いた後、狭い港内へ殺到せねばならない
  • 港内は深度が浅く、従来の魚雷では攻撃不能
これらを何とか出来れば可なり。
しかし、正否は半々(むしろ無謀)であり一考されては?

と言うことである。


これを聞いた山本は反対する幕僚に、「長官辞任」を盾に脅迫
以後、新兵器開発や搭乗員の猛訓練を開始した。

航空隊は山河を縫って山腹を旋回した後海上を超低空で雷撃演習を行った。
こんな超危険飛行を繰り返したが、ほぼ事故無しで作戦を迎える。

因みにこの演習、近隣住民には好評だったらしく、
「荒鷲の曲芸飛行」
と、毎日見物人が絶えなかったとか。

また、天候などについては、
「天佑我に有らば成功せり。もし、失敗に終われば、天佑無きものとして全作戦を放棄すべし」
とした。



1941年11月22日
主力艦艇は択捉島単冠湾に集結。
同26日ハワイに向けて出航。

『ハルノート』を受けた日本は「対米交渉打ち切り」を決意。
12月2日機動部隊に
『ニイタカヤマノボレ一二○八』
の電文を発信。


12月8日未明

天佑有ってか、予定の真珠湾北二百海里に到達。
荒波で片舷15度を超える大傾斜にも関わらず、一次攻撃隊183機は無事発進。
同7時40分
旗艦『赤城』に奇襲成功を告げる「トラ・トラ・トラ」の電文が入る。

二度に渡る爆・雷撃により米太平洋艦隊は、
  • 沈没
戦艦  5 ※内2隻完全喪失
駆逐艦 2

  • 中大破
戦艦  3
巡洋艦 3
航空機 約300

と、壊滅的打撃を被る。
特に戦艦は在泊8隻の全てが何らかの損害を受けており、すぐに使えたのは比較的被害の小さかったペンシルバニアくらい。

日本側の被害は、
甲標的  5
未帰還機 29

の大勝利であった。

真珠湾の九軍神

真珠湾攻撃に先行して潜入した5隻の特殊潜航艇「甲標的」。彼らは長いこと、無謀な作戦に投入され全て無意味に沈没したとされてきたが、
近年の研究によって少なくとも2隻が湾内に潜入し、しかも1隻は雷撃に成功したとされる。
その1隻の魚雷は戦艦オクラホマに命中し、撃沈に大きく寄与したと判定されたのだ。
戦後70年の時を経て彼らの労苦が報われた瞬間である。

その甲標的は乗員2名、5隻全てが未帰還なら10名が軍神扱いになっていいはず。残り1名は…?
その1人は生還し、米軍の捕虜になったことが早々に判明していた。「活きて虜囚の辱めを受けず」という馬鹿げた戦陣訓のために彼は無視されたのである。
決死の思いで潜入し、作戦に準じた彼を、国家は見捨てたのだ。


評価

日本海軍はこの作戦で

雷撃    55%
水平爆撃  25%
急降下爆撃 50%

という、尋常じゃない命中率を叩き出した。が、燃料タンクや整備施設を破壊出来ず基地を比較的早めに再建されてしまい
さらに主力空母を討ちもらし、「手違い」によりアメリカの国民感情を「戦争遂行」へと傾けたことから、「戦略的敗北」と評する者もいる。

「この作戦を事前察知していたアメリカは、ワザとスルー」説もあるが一応警戒命令は出ていたため、「あると思ったがまさかハワイとは……」というのが実情だろう。

  • 「被害が大きすぎる上、機動部隊を逃がす理由がない」
  • 「米軍の予想はフィリピンで予想外」*2
  • 「天候悪化、艦艇の不調、軍民問わず偶然の航空機・船舶の遭遇等によって極めて中止になりやすい」
  • 「アメリカ側の司令官が奇襲の責任を取らされて更迭」*3
  • 「外洋より港湾内の方がはるかに安全だった」
など、確たる証拠もなく、またアメリカ大統領ルーズベルトが戦中に突然死亡しただけに真相は薮の中。

そもそも「日本側だって変態的技量と山本提督が強行しなければ諦めてた」ので、どれが正しいのかよくわかんない

一つだけ述べておくと、12月1日に変わった暗号の日本艦艇個別符号を早々と解読していたようであり、3日の報告書には「最近空母が行方知れずであるので調査したい」といった内容もある。


現代の各国でも似たようなものだがセンセーショナルな事件で批判的な人々が陰謀論を元に権力者を引きずりおろそうとするのはではなおのことだった。

なお、攻撃を受けるも再建された真珠湾の基地は21世紀現在も健在であり、沈んだ船の内「アリゾナ」は油が半世紀以上も漏れ続けなのは環境破壊ではと言われつつも水中の残骸を保存されその上に慰霊施設「アリゾナ記念館」が立てられている。


余談ではあるが、外交ルートで開戦を回避した場合は、

タカハツギタカヤマヲコエズ

と打電される予定であった*4

1970年の日米合作映画「トラ・トラ・トラ!」は、真珠湾攻撃をしっかり描いた傑作である。

何…「パールハーバー」はどうしただと!

…あんなメロドラマごときと一緒にすんな!




トラ・トラ・トラ
ワレ追記・修正二成功セリ

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最終更新:2025年04月28日 02:48

*1 ただしこちらも真珠湾同様、戦後の裁判ではさして問題視されなかった

*2 行って帰ってくるだけの分でもかなり日本海軍を苦しめた

*3 後の記録を参照すると「もし日本が奇襲してきたらどう対応すればいいか」という問い合わせに米政府はまともに取り合わず、ハワイ司令部はそもそもどうやって備えるべきかの方針すら立てられなかったことが判明して更迭された司令官は後に名誉回復された。

*4 次高山とは台湾の雪山(標高は玉山(新高山)に次いで高い3,886m)のことである。