ストッピングパワー

登録日:2011/06/09(木) 18:39:01
更新日:2025/07/03 Thu 21:33:14
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この項目には難しい数式が含まれます
数字にアレルギー反応がある方は注意してください



概要

銃、砲で用いる用語で、被弾した相手の行動能力を奪う力の事。
あくまでも行動不能かどうかなので破壊/即死させる事は絶対条件ではない。
かなり相対的、主観的な用語である為すべての弾に対して同率に求めることはできない。
目標が人間の場合はマンストッピングパワーとも言う。本項目ではこちらを主に述べる。



要素

弾が持つエネルギー

こちらは運動方程式で求められる絶対的な指標である。重量と速度から求められる。

弾頭重量

重ければ重いほどエネルギーは強くなる。
同じ9mmパラベラム弾でも、8gと9.5gの弾頭とでは初速が同じなら9.5gの方がエネルギーが大きくなる。
もやしっ子のタックルより、ラグビー部のタックルの方が痛いのと同じ事である。

命中時の速度

射撃速度を増し、弾のエネルギー保持力が高いほど早くなる。
ライフル弾は拳銃弾より格段に小型軽量な弾頭であるにもかかわらず、桁違いに早いので非常に威力が高い。
ヘビー級ボクサーがとてもゆっくり打つパンチより、もやしっ子が思いっきり打つパンチの方が痛いのと同じ事である。

命中時の伝え方

相対的で観測がむつかしいが、弾頭形状やエネルギーの行く末として如実に合わられる部分である。

弾丸の形状変化

同じ.45ACP弾でも拡張弾かそうでないかで大きく変わる(詳細は弾薬を参照)。
変形して弾の断面積が増えると運動エネルギーをフルに活かす事が出来るので、人体に対して大きなダメージを与えられる。そもそも直径が大きい場合でも同じことがいえるので拳銃弾はライフル弾より口径が大きくなりがち。
また、断片化(フラグメンテーション)して破片で広範囲を傷つけることも想定されている。
他にも軽量小口径な5.56mmNATO弾5.45x39mm弾の一部では人体等の柔らかい物体に命中すると内部で横転して破壊力を増すように設計されている。

貫通時の衝撃

エネルギーを伝えきれずに貫通してしまったとしても、弾は音速かそれ以上の速度で飛翔するためその衝撃はすさまじい。
柔らかい肉体内部は被弾した際に衝撃波で押されて広がり、貫通後戻って貫通銃創となる。
元の場所に戻るとはいえど繊維は断裂し骨は砕けるであろう。
命中時の速度が最適な場合に効果を望むことができる。

命中後の要素

医学的要素

  • 医学的知識を持っているか/対策しているか
撃たれた箇所が致命的な部位か否かの判断、応急処置の方法といった医学的知識の有無でも変わってくる。
熟練の兵士は多少の出血までならターニケット(止血帯)を締めて戦線復帰してくるかもしれないし、相方に引きずられている間も制圧射撃を続けてきて脅威となる。

  • 被弾個所
頭部の被弾は瀕死の状態になりやすいが、腕や足なら100%行動不能になるとは限らない。
即死を狙うなら頭、胸部中央(心臓)などのバイタルパートだが、いつでもそこを狙えばいいわけではない。*1

  • 薬物
英西戦争でのモロ族や近年のキメた犯罪者などは薬物の作用で痛みを感じずハイになっている。そうでなくとも犯罪者はアドレナリン全開であることがほとんど。
このような場合、テーザーガンや拳銃弾による腕、下腹部への被弾等ではまだ向かってくる。ペッパーガンで目をつぶしても刃物を振り回したり乱射してきて危険なので、殺さない程度に攻撃手段を奪いというのはかなり難しい。

精神的要素

血を見ただけでもショックを起こして死亡することはある。
神崎・H・アリアは弾丸が腕をかすった程度で行動不能になるとは思えないが、
鳳仙エリス(Canvas2)はどうだろうか。彼女は赤色にトラウマがある為、身体的には無事でも精神的に参ってしまうだろう。

その他

メディアの影響

メディアやエンターテインメントでは銃の威力がかなり誇大に描かれており、「1発撃たれたら死ぬ」という強く思い込んでしまう。精神的要素の重大要因。
このため全く致命的でない部位に被弾しただけでも動けなくなる。
何処にも被弾していないのに銃声を聞いただけで苦痛を感じて動けなくなることもあるほど。

実際はバイタル以外だと重症で済む。そこからの対処次第で死に至るのだ*2


これらの要素を統合的に合わせてマンストッピングパワーとしている。



信頼に値するものか否か

後半になるにつれ薄々感じていたと思う。改めて言おう、すさまじく主観的である。
弾丸そのものの要素以外に心理的な要素も関わってくる。平時には実験が困難(人体実験となる為)で不明な点が多い*3
このような理由から、この指標に疑念を持つ声や間違っているという意見も少なくない。



マズルエネルギー

胡散臭いストッピングパワーだが、目安としては最初に挙げた弾が持つエネルギーが一番絶対的といえるだろう。

初活力の単位はいくつかある。ft-lbs(フットポンド)やみなさんご存じJ(ジュール)だ。
特にジュールは遊戯銃(エアガン)のエネルギー制限でも見かけるので比較しやすいだろう。
ただ、弾頭形状や命中時の速度などは考慮されていない点に注意。例えば.50AE弾はマズルエネルギーでは7.62x39弾に匹敵するが遠距離では勝負にならないが、それらはここからは判別できない。

  • ft-lbsの算出方法
弾丸重量(gr)×初速(fps)^2÷450240=初活力
(gr=grain:グレイン、fps=feet per secpnd:フィート/秒)
(1グレイン0.0648g=7000分の1ポンド)

  • Jの算出方法
弾頭重量(g)×初速(m/s)^2÷2000

弾種 重量(gr) 初速(m/s) ft-lbs J
9mmパラベラム弾 116 360 356 483
.45ACP弾 230 270 414 561
5.45×39mm 49 915 990 1340
5.56×45mm 62 940 1303 1767
6mmBB 3.1(0.2g) 99 0.723 0.98


う~ん、なるほどわからん。
追記・修正よろしくお願いします。

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最終更新:2025年07月03日 21:33

*1 アメリカ海兵隊では狙撃の際「股間を狙え」と教えられるとか。着弾点が左右にずれれば大腿動脈、上にずれれば下行大動脈への被弾が考えられるからである。ここに当たれば失血死やショック死の可能性は充分にある。

*2 コロンバイン高校銃乱射事件の生還者の一人は脳を撃たれたが社会復帰を果たした。有名人だとラスプーチン(数発耐えて結局別の方法で死亡)や坂井三郎(頭部に7.62mm機銃弾を受けたがかすめる形だったため生還)あたりか

*3 戦時中にはM16など銃だけ別にした同規模の部隊が敵国部隊と交戦するような対照実験を行い比較することがあった