ルガーP08

登録日:2011/07/21(木) 23:51:43
更新日:2025/09/18 Thu 06:34:26
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性能

全長:220m
銃身長:102mm
重量:870g
使用弾:9mmパラベラム弾
装弾数:8/32+1
動作方式:トグルアクション式ショートリコイル


概要

DWM(ドイツ兵器弾薬製造会社)にて設計され、1908年にドイツ帝国陸軍が制式拳銃として採用した自動拳銃。
社内名称はパラベラム拳銃(Parabellum Pistole)。
ゲオールク・ルーガ(英:ジョージ・ルガー)がフーゴー・ボルヒャルト(英:ヒューゴ・ボーチャード)が開発した世界初の自動拳銃ボーチャードC93を改良する形で開発した。



開発経緯

ボーチャードとC93

ボーチャード(1844~1924)はドイツ生まれの銃器設計者である。1860年にアメリカに移住し、そこでコルト社に雇用され銃器設計の道に入ることとなる。
ウィンチェスター社、シャープスライフル社で技術を学んだ後、1881年のシャープス社解散時にブダペストに戻り、レミントン社と協力したりする傍ら1893年にDWM社と協力してC93を製造。その際に7.65x25mmボーチャード弾も開発した。
C93はマキシム機関銃ベースのトグルアクションを採用しており、同時期のリボルバーどころか銃としてかなり繊細であった*1ものの、その能力自体は魅力的であった。
また、ボーチャード弾は7.63x25マウザー弾/トカレフ弾や7.65x21mmパラベラム弾の基となるなど現代の自動拳銃用弾薬の祖と言える存在となった。
ボーチャードはそのままドイツに残り、1924年に肺炎により亡くなった。

ルガーとC93との邂逅

ルガー(1849~1923)は1871年に予備役となった*2後、1875年にマンリッヒャーと出会い連発式ライフルの設計から銃器設計の道に入ることとなる。
1891年にDWM社に入り、主任設計士となった。その際ボーチャードC93の売り込みでスイス軍、米軍のトライアルに参加。その際のフィードバックを基に改良型の制作を開始する*3
C93はT字型で拳銃というよりはストックを折りたたんだマイクロUZIなどに近いサイズ感であった。機関銃を縮小した形なので操作なども洗練の余地があった。
1899年にボーチャード=ルガーとして完成。同時にボーチャード弾を微調整した7.62mmパラベラム弾を使用する。
1900年には基本モデルを発表し、スイス軍に制式採用される。
1902年には9mmパラベラム弾モデルが開発され、9mmパラベラム弾を使用した最初の拳銃にもなった。
9mmモデルを1904年にドイツ海軍が、1908年に陸軍が採用しP08となった。



特徴

この拳銃を語る上で欠かせなのがトグルアクションだろう。
尺取虫状のボルトキャリアは射撃直後は伸びきってアッパーレシーバーごと後ろに蹴るのだが、途中でロアにある滑らかなパーツに沿って中腹の円形のコッキングハンドルが上に持ち上がる。それによりボルトキャリア自体が曲がりボルトが後退するショートリコイル機構として機能する。

同時期にコルトガバメントのティルドバレル式が確立され、こっちが主流となったのでこの機構を採用した拳銃はC93と本銃(とそのクローン)のみ
マキシム機関銃と違い機構が露出しているので砂塵に弱い点はC93から継承されている。
しかしながらショートリコイル機構を知る上では割とわかりやすい。

職人の手作業により各部品をすり合わせる必要がある構造/製法を取っており、ガタツキはなく命中精度は高いが生産性は非常に悪く部品の互換性もない。
部品点数も多く完全分解には専用工具を必要とする等、整備性も良好とは言えなかった。

そうした繊細さも相俟って、スイス製の名品は芸術品として愛されたという。



活躍

ドイツでの採用前に7.65mmモデルがスイス、ポルトガル、オランダ、ブラジル等で採用された。

第一次世界大戦の塹壕戦でも白兵戦用武器として活躍。ドラムマガジンを装着したカービン版であるLP08が開発され、MP18短機関銃のコンセプトにつながった。
捕虜となったドイツ兵から巻き上げるのが流行ったらしく、戦中は(第二次大戦でも)戦利品として多数がアメリカ等に持ちこまれている。

敗戦後は軍備と兵器生産を制限されたが、ナチスによる再軍備宣言により大量生産を再開した。
モーゼルが主流であったが、ゲーリング元帥による指示でクリークホフ社に空軍向けモデルも生産された。
大量生産の必要性からより進歩した設計のワルサーP-38に制式拳銃の座を譲るが、数合わせのために1942年まで生産は継続された。

戦利品として持ち帰った兵士のみならずドイツ軍内部でも芸術品的な価値を感じていたようで、本銃に金メッキを施し飾る様子が見られる。
現在でもコレクターの間では人気の品で、戦後もドイツやアメリカなどでレプリカ、リバイバル製品が生産されており工芸品的な扱いとなっている。

また、本銃の為に作られた9x19mm弾はその後欧州を中心に軍用拳銃として普及し、現在でも特に自動拳銃用として中心的な存在であるのは周知の通りだろう。



フィクション

  • 映画『スターリングラード』
ドイツ軍の兵士が携行。

  • Phantom
サイス=マスターが愛している。

劇場版でエドがマブゼから金メッキされたものを渡されている。

  • キューティーハニー
パンサークロー戦闘員が使用。

  • 学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD
高城沙耶が使用。

ゴールドルガーの名前で登場し、スティーブが使用。

同じくスティーブが使用。
こちらはゴールドルガーではなく普通のP08。

  • パラサイト・イブ2
主人公であるアヤが手に入れる。同じステージでスネイルマガジンも手に入りクリティカルを出しやすく使い勝手がいいと言う人も。

大正冒険編の武器・魔弾ルガァ。

  • スナイパーエリートV2
ドイツ軍の将兵や、なぜかソ連軍将校などが使用。敵の死体から拾って使うことも可能である。
ちなみにDLCのヒトラー暗殺ミッションではヒトラーも所持している。史実ではワルサーだったはずなのだが…

虎狼死家左々右エ門狩魔冥の狙撃に使用した銃がこれに酷似している。



余談

第二次世界大戦で東南アジアのオランダ領を占領した際、大量に接収され菊紋を彫り込まれて日本軍将兵向けとして使用された。



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最終更新:2025年09月18日 06:34

*1 米軍に売り込み7.62mmモデルでトライアルを受け1000挺購入されるが未使用に終わった。

*2 当時中尉

*3 ボーチャード自身は改修を拒否した