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ドラコ爆発(MtG)

登録日:2011/06/22 Wed 13:47:28
更新日:2026/03/05 Thu 02:10:03
所要時間:約 3 分で読めます




マルフォイ「次の僕のアップキープ時に機知の戦いの効果で僕の勝ちだ!怖いか?ポッター」


ハリー「……何勘違いしてるんだ」


マルフォイ「ふぉ?」


ハリー「まだ僕のターンは終了してないぜ!」


マルフォイ「何言ってんだ!お前の場には山が一枚、島が二枚、手札は一枚!何をしようが、16点もある僕のライフは削れまい!」


ハリー「それはどうかな……!」


ハリー「うつろう爆発をキャスト!」



ドラコ爆発とは、MtGのデッキの一つ。
2002年頃のエクステンデッドに存在したデッキ。


うつろう爆発/Erattic Explosion/(2)(赤)
ソーサリー
対象となるクリーチャー1体かプレイヤーを1人選ぶ。あなたのライブラリーを、土地でないカードが公開されるまで1枚ずつ公開する。うつろう爆発は、それにその点数で見たマナ・コストに等しい点数のダメージを与える。公開されたカードを、望む順番であなたのライブラリーの一番下に置く。


この不確定バーンカードであるうつろう爆発を主軸に置いたデッキ。



マルフォイ「うつろう爆発…だと…!?」


ハリー「さあいくぜ!まず一枚目!…シヴの浅瀬!二枚目…山!」


マルフォイ「(落ちろ…渦巻く知識落ちろ…!)」


ハリー「三枚目……来た、ドラコ/Draco(MtG)だ!」


ドラコ/Draco/(16)
アーティファクト クリーチャー
(テキスト割愛)
9/9


マルフォイ「な、なにぃ!?」


ハリー「うつろう爆発の効果発動!爆発しろ、ドラコ!」


マルフォイ「フォーーーーーイ!」








真面目な解説

理念自体はとっても簡単。

「デッキトップに高マナのカードを仕込んで、デッキトップを参照する《うつろう爆発》による16点バーンを安定させる」

上の寸劇のような真似は主人公補正運頼みなので、実際には
巻物棚/Scroll Rack(2)
アーティファクト
(1)、(T):あなたの手札のカードを望む枚数だけ裏向きのまま追放する。あなたのライブラリーのカードを上から同じ枚数だけあなたの手札に加える。その後、追放されたカードを見てそれらをあなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
や、
渦巻く知識/Braninstorm(青)
インスタント
カードを3枚引き、その後あなたの手札からカードを2枚、あなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
といったカードを使って、デッキトップを操作しておく必要がある。

【カウンターバーン】に一発のでかいギミックを仕込んだもの、といった趣なのだが、このギミックが明らかにファンデッキ感しかないのにうっかり好成績を収めてしまったことで有名になったデッキ。
当時のエクステンデッドはフェッチランドやペインランドが多くのデッキに採用され、
《吸血の教示者/Vampiric Tutor》や《ファイレクシアの処理装置/Phyrexian Processor》のようにライフをガンガン払っていくデッキも多かったので、《うつろう爆発》1発でも十分な場合も多かった。
16点しかダメージを与えられない不完全コンボでも、相手が勝手にライフを減らして射程圏内に入ってくれる。そんな相手に《うつろう爆発》を唱えて16点バーン。


このデッキは2色デッキであり基本土地をそこそこ採用でき、さらに3マナあれば回るので土地事故を起こしにくいのも強み。
当時は《不毛の大地/Wasteland》が跋扈しており、基本でない土地に依存しないこのデッキはそれに耐性があるのも重要だった。

その後ローテーションで渦まく知識などが落ちてしまった後も、《腹黒い夢/Insidious Dreams》などとセットで使われた。


ファンデッキなの?

このデッキの華々しさは、何もいい歳こいた立て主がマルフォイを使った遊戯王ごっこをみんなに見せつけちゃうほどウキウキになるほどのギミックだけではない。

まず、デザイナーは笹沼希予志。
古い時代のMTGにおいて地雷デッキを駆って好成績を収めることで有名だったプレイヤー。代表作には「パンデモノート」「バベル」などがある。
現在デュエマのデザイナーを務めている射場本正巳と並び称された……というかおそらく多くの人は笹沼の方が上だと評価していただろう。まさにイチローと新庄剛志みたいな関係である。
日本で2020年ごろからまことしやかにささやかれるようになった「《勇壮な戦闘》はブロック構築において青緑マッドネス対策で使われた」というのは、この人の独自のサイドボーディングである*1

これを調整したのが中村聡。
「スパイクの誓い」「リス対立」「クラッシュウィーバー」など様々なオリジナルデッキを駆る、昔のMTGを代表する超名物プレイヤー。
好成績を収めつつも遊び心を忘れず、さらに初心者に向けた解説などにも熱心だった、タレント気質プレイヤーの先駆けとも言える存在。
デュエル・マスターズ(漫画)の初代NACのモデルでもあり、後に「カードファイト!!ヴァンガード」のデザイナーも務め、CMにも出演している。

そしてこれを使って好成績を収めたのが八朔人平。
《霜のタイタン》《クローン》を入れて下振れを抑えた「集団変身」デッキで入賞を果たした、日本最後の地雷デッカー。
上2人に対して知名度は劣るものの、かつてニコニコ動画で「5ばさん」の名前で対戦動画の解説をあげており、この記事が立てられたような時期のプレイヤーにはなじみの深い人物である。
観戦動画にはプレインズウォーカー入りのZoo「七英雄Zoo」など話題を残したものもある。スパイク気質が強く、歯に衣を着せない正論は時にカジュアル勢から物議をかもした。

今のプレイヤーには分からないかもしれないが、今は亡きタキニキ(瀧村和幸)や、一線を退いたナベ(渡辺雄也)が、浅原晃がデザインした禍々しい謎デッキを駆るようなもん、とでもいえば分かるだろうか。
そんなオールスターがめちゃくちゃ分かりやすいデッキを使って好成績を収めた。しかもエクステンデッドは日本人プレイヤーがなかなか勝てないことから「魔境」とも呼ばれていた頃に。
この華々しさも手伝って、一発ネタにもかかわらず当時のMTG wikiの記事制作基準が甘かったこともあって個別ページが作られたのである*2
いろんな意味で、今じゃとても考えられないレベルの偉業だったのだ。

なお八朔による回顧録によれば、このデッキを使われた対戦相手は唖然とした後に様々な反応をし、中には「ファンデッキに負けた!」と大憤慨する人もいたという話である。
そもそも八朔自身、調整中にこのデッキを提案された際に「ファンデッキで遊んでんじゃねーよ」とかなり不快感を示したという。
しかし中村の「好成績を収めている」という文を見て半信半疑で使ったところ、かなりのガチデッキであることが明らかになり、
最終的に「これは海外のエクテンプレイヤーにも間違いなく知られている」として対ドラコ爆発用の調整まで行うようになったという。
八朔氏はこれを「カイ・ブッディもドラコ爆発を使うと思っていた」というタイトルで表現している。

つまり一見ネタに見えて超合理的なガチデッキという、昔のMTGに多かったデッキ。
かつて本項目にはさもロマンデッキのように書かれていたが、むしろその正反対で合理性の塊である。

《渦まく知識》が強いだけでは……?


その後の類似デッキ

「ミラディンの傷跡」時代のスタンダード(=この記事が立った頃)では、《引き裂かれし永劫、エムラクール》(15マナ)を《爆発的天啓》でめくる【エムラクール爆発】を組むことができた。
実用的なライブラリー操作としては基本セット2011の占術*3、特に《定業》などがある他、《ハリマーの深み》という土地もあるので案外実現は可能。さらに《精神を刻む者、ジェイス》の±0能力が《渦まく知識》なので、手札に来たエムラを仕込むこともできる。
ただしドラコ爆発と比べると、《爆発的天啓》《精神を刻む者、ジェイス》のコストが非常に重いことから、コンボの成立が難しい。当時と違い、対戦相手が勝手に射程圏に入ってくれるようなカードがほとんどなかったのも逆風である。
一応《選り抜きの記憶》でライブラリーをエムラと土地だけにすることで確実にめくることができるが、ここまでくるともうコンボのためにすべてを投げうっていて意味不明という評価になってしまう。
何より、エムラはともかくとしてこの脇を固めるパーツ、特に神ジェイスが高すぎる。一発ネタみたいなデッキのために5万円以上を出したがる好事家なんているわけもなかった。

「新たなるファイレクシア」後は《有毒の蘇生》《水晶球》が登場したことや、対戦相手がファイレクシア・マナで勝手にライフを削ってくれることなどもあって試されてもよかったはずだが、当時は猫も杓子も神ジェイスを用いたガチ全盛時代。まったく試されることなく終わってしまった。


マジック・オリジン期では、ファンデッキ止まりであったが《ニッサの天啓》を使用したデッキも登場。
ダメージは与えられないが、タフネス参照のライフ獲得とパワー参照のドローが発生する。6/6程度のカードをめくってもおつりがくる。
7マナと非常に重いが、1枚でライブラリー操作とトップ参照効果を得られる。このすぐあとの「戦乱のゼンディカー」にてエルドラージが復活したこともあって、ファンデッキ止まりではあるがデッキが試された。
当時はミラ傷時代と異なり、ニコニコ動画によるカジュアル動画配信ブームがT-jiro氏(草タイタンの人)などによって産声を上げた時期でもある。
こういうデッキが認められる空気が強くなってきたこともあり、それなりの結果を残すことができた。


デッキトップのマナ・コストを参照するという意味ではレガシーで一時期登場した、《全知》を出すタイプの《実物提示教育》デッキ「オムニテル」の型のひとつが挙げられる。
《全知》を出した後のコンボルートに、《無限への突入》でライブラリーを全部引いてから《引き裂かれし永劫、エムラクール》をデッキトップに仕込み、《蟻の解き放ち》を相手が死ぬまで唱え続けるというものがある。
《蟻の解き放ち》はデッキトップのマナ総量を対戦相手と競い、使用者が最大のものを出すと手札に戻ってくるというカード。エムラの15マナを上回るカードは当時1枚しか存在せず、その1枚《ドラコ》をデッキに入れている人なんているわけがないという見立てが成り立ったのだ。
コンボ自体は《ドラコ》の方が安定するが、エムラなら《全知》から唱えることで新たな勝ち筋を作ることができる。つまり《ドラコ》を選ぶのは、わずかな負け筋をつぶすために多くの勝ち筋を捨てるという本末転倒な結果を招いてしまう。
中国にはね、角を矯めて牛を殺すってことわざがあるの。牛の角の形を直そうとしたら牛が死んじゃった、つまりわずかな欠点を直すためにすべてを台無しにする愚かな行為って意味よ。スネークも細かいアドバンテージにこだわって本質をおろそかにしないようにね


そしていよいよ、モダンホライゾン2にて《計算された爆発》というカードが登場。
Calibrated Blast / 計算された爆発 (2)(赤)
インスタント
土地でないカードが公開されるまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ公開していく。それらの公開されたカードをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。あなたがこれにより土地でないカードを公開したとき、ひとつを対象とする。計算された爆発はそれにそのカードのマナ総量に等しい点数のダメージを与える。
フラッシュバック(3)(赤)(赤)(あなたはあなたの墓地から、このカードをフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後、これを追放する。)

あっ、このカードwikiで見たことある!
インスタントになった上にフラッシュバックまでついて、インフレしつくした環境でも使える基準になって再登場。
最高の相方《渦まく知識》がいないため、手札に来てしまった火種がだぶついてしまうという欠点があるが、これは赤の役割になったルーティングによって簡単に解決できる。
しかもフラバまでついているので1枚で2回唱えることも可能なので、統率者戦などでも実用的なカードになった。
かつてのドラコ爆発時代に比べ、デッキのブラッシュアップ速度が比にならないほど早いことや、《ドラコ》以上に相性のいいカードに恵まれたこともあり、様々なデッキで用いられている。

特に指輪物語コラボで登場した土地サイクリング持ちのカードなどは非常に相性がよく、お願い感覚で素打ちしても結構なダメージを叩き出せる可能性がある。
フェッチショック環境というのもあってライフが削れやすく、墓地のカードをトップに仕込む《魔女の小屋》程度で簡単に即死させられる。
また、「リアニメイトデッキのサブプランとして利用する」というのは、インベイジョン当時では間違いなくファンデッキ止まりだったことだろう。MTGもずいぶん加速したものだ。


Parker Luck / パーカー・ラック (2)(黒)
エンチャント
あなたの終了ステップの開始時に、プレイヤー2人を対象とする。それらのプレイヤーはそれぞれ、自分のライブラリーの一番上にあるカード1枚を公開する。それらのプレイヤーはそれぞれ、他方が公開したカードのマナ総量に等しい点数のライフを失う。その後、それらのプレイヤーはそれぞれ、自分が公開したカードを自分の手札に加える。

スパイダーマンコラボでは、デメリット付きとはいえ《うつろう爆発》が毎ターン使えるようになったカード《パーカー・ラック(ダスクモーンの取り立て)》が登場。
2人対戦では「お互いに《うつろう爆発》してから手札に加える」というテキストになるという、逆《闇の腹心》みたいなやつ。
デメリット付きのドローソースにもなるが、対戦相手にもドローをさせてしまうので非常に使いづらい。
しかしマナ総量の高いカードを多用するデッキにとっては「対戦相手のライフを削りながらドローが可能」というカードになる。「青赤ルーン炎」の動きを1枚でこなすとはたまげたなあ。
スタンダードでもこのカードを軸にしたデッキが使われている他、モダンでは《計算された爆発》のほかにもエムラを出すタイプのデッキなどで単体でドローソースとして使われている。
《うつろう爆発》もすっかり《多用途な逸品》と化してしまった。


他にも「デッキトップを参照し、特に対戦相手にダメージを与える」というカードはたくさんある。
動画投稿者によるファンデッキ止まりでいいのなら様々な例があるので、Scryfallあたりでデッキトップを参照するカードを調べて、そこを端緒に色々調べてみるといいだろう。
デッキトップに依存するという意味では、「青白奇跡」や《予想外の結果》なんかもある意味ではこのカードの亜種とも言える。
といっても、カレーパンを「小麦料理だからスパゲッティの仲間」扱いするレベルの暴論にもなるので、その辺の線引きは各人自由にやってほしい。


余談

実は《うつろう爆発》はコモン。当時パウパーなんて環境はなかったので、「まさかコモンが!?」というところも話題性になった。
《渦まく知識》もコモンなので一応ドラコ爆発をパウパーで使うこともできるが、ろくな火種がないのでまったく実用的ではない。
このコモンとネタ臭しかないレアというのが、この華々しいコンボを有名にしたというところがあるのだが、実は《うつろう爆発》はレアリティでサイクルになっているカードでもある。
その中でも類似性の高いレアのカードがこちら。

Kaboom! / ドカーン! (4)(赤)
ソーサリー
対象となる好きな数のプレイヤーとプレインズウォーカーの組み合わせを選ぶ。それぞれについて、あなたのライブラリーを、土地でないカードが公開されるまで上から1枚ずつ公開する。ドカーン!は、そのプレイヤーかプレインズウォーカーにそのカードのマナ総量に等しい点数のダメージを与える。その後公開されたカードを望む順番であなたのライブラリーの一番下に置く。

かつては「!」がカード名に入るカードとして非常に有名だった。今となっちゃ《ピシュ!》なんてカードもあるくらいだから全然珍しくないだろうが、少なくとも2020年くらいまではかなり異様なカード名だった。
しかしこのカード、実用上は本当に弱い。当時ほとんど遊ばれていなかった多人数戦に対応したせいで、マナは重くなり、仕込みは難しくなり、挙句レアにまでなってしまったという恐ろしいカード。XになったあとのTwitterみたいに余計な機能ばかりつけやがって。
当然だがパックから出てきても全然嬉しくならないカスレアなのだが、「多人数戦用」という魔法の言葉で反論されるというカード。《蒼ざめた月》の裏側にはこういうカードが山ほど眠っているのだ。
その後統率者戦が一般化したので面目躍如された……と思われがちだが、こんなカード使うわけねーだろ
ただカード名は愉快なので、たまには思い出してあげてください。


「次元の混乱」ではリメイクとして《うつろう突然変異》が登場。
Erratic Mutation / うつろう突然変異 (2)(青)
インスタント
クリーチャー1体を対象として選ぶ。あなたのライブラリーのカードを、上から土地でないカードが公開されるまで公開する。ターン終了時まで、そのクリーチャーは+X/-Xの修整を受ける。Xはそのカードのマナ総量である。これにより公開されたすべてのカードをあなたのライブラリーの一番下に、望む順番で置く。

タフネスにマイナスがかかるので除去としても使えるし、当時のドローと占術の色である青なので使いやすくなったが、とにかく不安定なことこの上ないのでまったく使われなかった。
wikiでは「リミテッドでは除去として使える」と書いてあるが、……まぁ、うん。


《ドラコ》自身も《ドラコの末裔》としてリメイクされ、ドメインデッキなどで活躍している。
かつて相方として組んだ2つのカードは、現在ではまったく違う道を歩んでいるのだ。


ゴミ山の中でフォカヌポゥする暇人は、追記修正要望の衝撃波をニッサに向けて放った。


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最終更新:2026年03月05日 02:10

*1 結果はふるわなかった

*2 当時はMTGに限らず、wikiという形態のサイトには内輪ネタや一発ネタの記事が多く立てられていた。

*3 当時は非常盤木であり、復活能力として話題になった。なお青と黒にしか与えられず、その補填として基本セット2012で赤に与えられたリバイバル能力が「狂喜」。もちろんその実用性は月とすっぽんで、ケツ王が話題にされる理由はこういうところにもあった。