タンタンの冒険旅行

登録日:2011/01/03 Mon 13:49:51
更新日:2025/01/27 Mon 20:26:07
所要時間:約 4 分で読めます




2011年12月S・スピルバーグ監督でCG映画公開だぜ!やったぜバーロー岬!


タンタンの冒険旅行』とは、1929年にベルギーの漫画家・エルジェによって子供向け新聞に連載された漫画のシリーズ。
一作目から九作目は白黒で描かれたがそれ以降の作品はカラーで出版された。なお、その後の白黒作品もカラーでリメイクされている。

年代を見てもらえば分かると思うが、本作は戦前の作品であるにもかかわらず少年のみならず大人達からも高い支持を集め、1946年には専門誌『タンタン・マガジン』が発行されたほど。
有名所では『インディ・ジョーンズ』にも大きな影響を与えており、実際に同シリーズの『最後の聖戦』のロケ地の一つになったペトラ遺跡の宝物殿は『タンタン』の『紅海のサメ』でも遺跡のモデルとして使われている。
また幾度かアニメ化・実写化もされている。

日本では川口恵子氏による翻訳で、1980年-2007年にかけて福音館書店より全巻の日本語翻訳版が発行された。
日本語版は英語のニュアンスを汲み取りつつ、直訳しても通じない表現は大胆にアレンジされている。小気味よい名訳も楽しみの一つではないだろうか。

ちなみに、鉄火場ではボーイスカウト経験の有無が明暗を分ける場面が印象的に描かれることがあり*1ボーイスカウト万能説が実しやかにささやかれる作品でもある。


【登場人物(声は1998年放送のアニメ版)】

タンタン(声:草尾毅
ベルギー出身の若きルポライターで、クルリと巻いた前髪とニッカボッカがトレードマーク。
前半は記者らしく自らの足で事件を探していたが、ハドック船長が登場してからは事件に巻き込まれて犯人と間違われたり殺し屋に命を狙われたりする事が多くなった。
決断力と行動力に優れており、一か八かの場面で機転を効かせるタイプ。また見た目に寄らず腕っぷしも強い。
なお、日本に初めて紹介された時の名はチンチン*2

スノーウィ(声:スーザン・ローマン)*3
タンタンの飼っている白い。種類はワイヤー・フォックス・テリアがモチーフ。
完璧超人のタンタンとは違い、酒に溺れたり他の生き物にちょっかいをかけたり骨や食べ物を失敬したり、というようにトラブルメーカーだが、飼い主の為なら危険もいとわない名犬でもある。
原作のみ、彼の心の声を聞く事が出来る(読者と動物以外で意思の疎通が可能なのはタンタンのみ)。

アーチボルト・ハドック船長(声:内海賢二
伝説の軍艦・ユニコーン号の船長・アドック卿を先祖に持つ海の男で、タンタンの親友。
どんな場所でも酒を欠かせない酒豪で、「船長=酒」と言っても過言ではない。なお、船員禁酒連盟会長も務めている(普通の禁酒会は一口飲んだ時点で「禁酒失敗」として除名する)……え?
「コンコンニャローのバーロー岬」「コンコンニャローのコニャック野郎」「なんとナントの難破船」など川口恵子氏の名翻訳のおかげで様々な名言を産み出した。

ビルフリート・ビーカー(声:辻村真人)
原子力ロケットから酒嫌いになる錠剤まで何でも発明する天才科学者。ただし悪用されるとわかれば大発明であっても破棄する。
また耳が滅茶苦茶遠い。本人曰く「ちょっと聞こえにくいだけ」だが実際はかなり酷い。怒って筆談を勝手に始められる(むろんやったのは短気が炸裂したハドック船長)がギャグシーンになるほど。
一応補聴器を持っているものの、プライドがあるのかなかなか使いたがらず、聞き間違いからトラブルの発端になってしまうことも。
……が、「馬鹿」という言葉にだけ限定で地獄耳。この一言を聞いたが最後、タンタンと船長の二人掛かりでも押さえきれないほどにブチ切れる。

デュポン、デュボン(声:永井一郎)
山高帽とステッキがトレードマークのICPOの刑事たち。
ヒゲの形以外はほぼ同じだが、別にこの手の外見のキャラにありがちな双子ではない。というか実は血のつながりさえ無い。
基本的に任務に真面目に取り組むがどこか抜けている事が多く、作品のコメディリリーフとして活躍する。
原語版ではデュンの方が「Dupond」、デュンの方が「Dupont」という綴りだがどちらもデュポンと読み、デュポン「デー」とデュポン「テー」で区別するが、
日本語版では「イカレポンチのポン」、「ボンクラのボン」という表現で区別している。面白い翻訳である。

ビアンカ・カスタフィオーレ(声:此島愛子)
「白いナイチンゲール」の二つ名を持つ、世界的に有名なオペラ歌手。通称「カスタフィオーレ夫人」
作中唯一の複数回登場する女性キャラ……だが、ふくよかな中年なんて誰得なんすかエルジェさん。
ハドック船長のことをいたくお気に入りだが、彼にとっては天敵以外の何者でもなく、毎度毎度ペースを乱されては振り回されまくっている。
ちなみにハドック船長曰く「歌声を聴くと嵐の海で死にかけた時の事を思い出す」とか……一流オペラ歌手なんですよね……?*4
劇場版ではその美声で強化ガラスのケースを粉砕してしまっている。もはや超音波レベル…
他人の名前を毎回微妙に間違えてしまう癖を持つ*5

ネストル(声:上田敏也)
ムーランサール城で執事として働いていた男性。
当初の城の主人だったバード兄弟に仕えていたが、ネストル自身は当時の主人の悪事を知らなかったことからお咎めなしとなり、城がハドックの所有になっても、そのまま彼に仕えている。


【作品一覧(原作発表順)】


〇タンタン ソビエトへ
 ソビエトロシアでは、タンタンが白黒を出版する!
 長らくカラー化されていなかったが、2017年にロシア革命100周年を記念してカラー版が限定発売された。
〇タンタンのコンゴ探検
 アフリカでの植民地描写を巡り(当時コンゴはベルギー領)一騒動あったが、日本では無事に出版された。ちなみに「アニヲタ」という単語がマジで出てくる。
〇タンタン アメリカへ
 禁酒法時代のシカゴが舞台。インディアン差別反対。
〇ファラオの葉巻
 麻薬とミイラがトラウマ。ラスタポプロス初登場
〇青い蓮
 日本人が悪役。ありゃまフジヤマ。
〇かけた耳
 でーぶ!おやじ!
 カラーンバ!
〇黒い島のひみつ
 犯人はゴリラ。ドクター・ミュラー初登場
〇オトカル王の杖
 カスタフィオーレ夫人初登場
〇金のはさみのカニ
 ハドック船長初登場
〇ふしぎな流れ星
 流れ星争奪戦。フィジー!フィジー!フィジー!バハ!バハ!バハマ!アイヤアイヤアイヤヤー!
〇なぞのユニコーン号
〇レッド・ラッカムの宝
 シリーズ初の前後編。ビーカー教授GJ
 スピルバーグ監督で映画化
〇ななつの水晶球
〇太陽の神殿
 またまた前後編。インカの人は日食知ってるだろ常考*6
〇燃える水の国
 デュポンとデュボンが大変な事に。アブダラー王子初登場
〇めざすは月
〇月世界探検
 またまた前後編。アメリカより早く宇宙に行ったタンタン達NASA涙目
 バ カ で す っ て ぇ ! !
〇ビーカー教授事件
 ボルドリア脱出大作戦
 ミラノのアルトゥーロ・ベネデット・ジョバンニ・ジョゼッペ・ピエトロ・アルカンジェロ・カルトフォッリ…
〇紅海のサメ
 チェッとメッカ行きの黒人達。あとアブダラー
〇タンタンチベットをゆく
 衝撃!ヒマラヤ山中に雪男を見た!
〇カスタフィオーレ夫人の宝石
 ジプシー(ロマ)差別反対
 ブリュ石材店とサンゾ精肉店
〇シドニー行き714便
 UFO!UFO!
〇タンタンとピカロたち
 エルジェ生前最後の作品
〇タンタンとアルファアート
 エルジェが死ぬ前に書いたスケッチをまとめた未完成作品

尚、福音館書店から発行された巻数は上記と一致していない為、ムーランサール城を手に入れた筈のハドック船長が後の巻で普通の暮らしをしていたりする
が、2007年に全巻が揃った為、金銭に余裕のある方は全部買って元々の順に並べよう。
また、劇場版の公開に合わせて700円とお手頃価格なペーパーバック版も発売された。
学校や公民館の図書館に置いてあるので読んだ事がある人も多いかもしれない。

【余談】

同時代の大正12年(1923年)1月25日に日本の『日刊アサヒグラフ』で始まった織田小星(織田信恒)原作・東風人(樺島勝一)作画による新聞4コマ漫画『正チヤンの冒険』とは、キャラデザもよく似ていることが良く話題になる。


「コンコンニャローのバーロー岬!さっさと追記・修正しやがれってんだ!」

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最終更新:2025年01月27日 20:26

*1 敵がタンタンを縛って拘束したが、敵にボーイスカウト未経験だったお陰で縄による縛り方に対する理解が無く、タンタンは簡単に縄抜けが出来た、等と言った展開が度々出て来る。

*2 名前の綴りが「tintin」と書くためだが、原語のフランス語では「in」で「アン」と発音する(例:Lupinはルピンではなく「ルパン」)。

*3 全世界共通。

*4 一応、作中では世界中で公演したりセレブのパーティーに呼ばれていたり、今で言うパパラッチに追われるなどかなりVIPな扱いを受けている。

*5 特にハドック船長は『ハンモック船長』や『カポック船長』など、何度も間違えてられている。多い時は同作品内で間違えられる事も…

*6 執筆当時はインカ帝国が天文学に優れていたことがあまり知られておらず、後に知ったエルジェは「この展開はあり得なかった」と語っている。