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暗黒の儀式/Dark Ritual(MtG)

登録日:2014/03/25 Tue 00:00:12
更新日:2026/07/22 Wed 22:35:12
所要時間:約 3 分で読めます





「パワーのあり過ぎなんてことが世の中にあるとしたら、それは俺がまだ発見してないものだな。」
―ヴォルラス


マジック:ザ・ギャザリングに登場するカード。
のインスタント。初出は最古のエキスパンションであるアルファ。
1999年のメルカディアン・マスクスを最後にスタンダードで使用可能なセットからは退場したが、スタンダード外の特殊エキスパンションでは常連カードとして収録される。レアリティはコモン。

カードテキスト

暗黒の儀式/Dark Ritual (黒)
インスタント
あなたのマナ・プールに(黒)(黒)(黒)を加える。

解説

通称「ダリチュー」なんかポケモンっぽくてかわいいね。
黒1マナを元手に「カード1枚が黒3マナに変わる」という、まさに黎明期特有の無法。元手が軽いので無理をせずに1ターン目から唱えられる。
マナ式のTCGをプレイしていないとピンとこないかもしれないが、マナ式のTCGでは「重いカードは使うのに時間がかかるし妨害も受けやすいが、代わりに強い」というバランス調整でゲームが組まれている。
これを最序盤から2ターン分横着することができるというもの。つまり「カード1枚で本来のターンよりも2ターン早く動ける」というカードなのだ。まさに黎明期ゆえに許されたカードである。


有名な相方としては、1ターン目に沼から暗黒の儀式を唱え、惑乱の死霊を出すという通称「A定食」

惑乱の死霊/Hypnotic Specter (1)(黒)(黒)
クリーチャー — スペクター(Specter)
飛行
惑乱の死霊が対戦相手にダメージを与えるたび、そのプレイヤーはカードを1枚無作為に選んで捨てる。
2/2

同様に1ターン目から出てくるファイレクシアの抹殺者

ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator (2)(黒)
クリーチャー - ホラー(Horror)
トランプル
ファイレクシアの抹殺者にダメージが与えられるたび、その点数と同じ数のパーマネントを生け贄に捧げる。
5/5

などが定番だろうか。双方3ターン目に出てくるから許されるカードなのだが、相手に準備ができていない状態でこれを1ターン目に出すのだから無法もいいところ。
どちらも《ショック》で焼かれるまでが定番という話もあるが*1

さらに1ターン目にこれを唱えてから、
Thoughtseize / 思考囲い (黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは手札を公開する。あなたはその中から土地でないカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。あなたは2点のライフを失う。

まずこのカードないし互換カードで相手の重要牌を引き抜き、

Hymn to Tourach / トーラックへの賛歌 (黒)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、カードを2枚無作為に選んで捨てる。

これで残りの手札をズタボロにするという礼儀正しい挨拶などもド定番。
実際には3:3交換なのであまり効率はよくないが、先手1ターン目にこれを行うと対戦相手は初動を完全に妨害されるのでこれが本当に鬱陶しい。ランダム要素も絡むが、極めて質の高い交換が可能。
次のターンに「探査」持ちや《タルモゴイフ》なんかが出てきたら眩暈がしてくる。こういう遊戯王の原作の海馬瀬人を思わせるレベルの「抵抗を許さないクソムーブ」を押し付けるデッキが、レガシーの「Team America」である。
他にも
  • 《納墓》+《再活性》《死体発掘》《動く死体》などの「リアニメイト」
  • 《ネクロポーテンス》
などは単純な使い道として有名な他、《肉占い》+《よじれた実験》などでパワー5を2ターン目から殴りに行かせるなど様々な使い道がある。
《精神錯乱》のXの部分を増やすという素朴な使い方さえぶっ壊れて強い。
《暗黒の儀式》で増えた3マナを元手にさらに《暗黒の儀式》を唱えることで1ターン目から5マナを使えるようにすることもでき、こうなるともうゲームではない
2~4ターン目に唱えることでさらに選択肢を増やすこともできる。

書いてあるテキストは単純ながら、その使い道は非常に幅広く柔軟性に富む。ちなみにこれで基本中の基本であり、この基本の使い方でさえバランスを取れないとして「メルカディアン・マスクス」とともにスタン落ち。エクステンデッドでも禁止カードに指定された。
日本のMTG黄金時代を築き、当時の「独自路線の黒」を特徴づけたカードだった。

広い環境では《ネクロポーテンス》《ヨーグモスの取り引き》などのカードをさっさと展開するためにも使われ、さらにその後もMTGはカードプールがどんどん増えていった。
「ストーム」という能力が登場すると、《暗黒の儀式》は「ストームを1回稼ぎつつマナを増やせる」「フィニッシャー《苦悶の触手》を唱えられる」という極上の相性を誇るカードとして有名になる。
ストームを稼ぐという新しい役割を得た《暗黒の儀式》は、亜種とともに様々なデッキにおいて大活躍した。
最初は「強いカードをさっさと出す」ための補佐役として使われた《暗黒の儀式》は、次第にそのカード自体がコンボパーツとして悪いことの片棒を担ぐようになっていったのである。

現代スタンダードではもちろんのことパイオニア、モダンでも使用不可なので、これを読んでいる人にもおそらく縁のない人は多いだろう。縁があってもせいぜいストームを稼いで悪いことをする程度ではないだろうか。
かつての素朴なダリチューの使い方が可能なフォーマットは「レガシー」「パウパー」の2種類で、どちらも黒絡みのコントロールデッキでよく用いられている。
また、MTGAオリジナルのフォーマット「ヒストリック」「タイムレス」などでは使用可能。《ネクロポーテンス》などと組んで大暴れしているようである。

今のカードゲームでは許されないことが平然と許されていた、おおらかな時代の象徴。
テレビにおける放送禁止用語やお色気描写のようなもので、古き良き時代を強く想起させるカードだ。興味があったらぜひ使ってみよう。


功罪

とにかく愛好家が多い。なにせコモンである。イラストもたくさんある。現在でも新録イラストが話題になる。
圧倒的ロケットスタートで強い挙動を押し付けられて、安い上に動きがド派手なので、当時黒を握ったプレイヤーは絶対にこのカードのお世話になった。
MTGを寿司で喩えるなら、青が大トロなどの特ネタ、緑が鉄火やイクラのような定番ネタ、白が河童巻きやつまようじなどに対し、黒と赤は醤油。つまり「これがなきゃそもそも寿司じゃない」というレベルだった。
本当にそれくらい次元が違う。大トロなんて食わなくても、寿司は楽しめるが、しょう油がなきゃそもそも寿司の魅力は激減するのだ。
「ハハハハハハハ最高に勃起モンだぜ!! こっちだけズルして無敵モードだもんな!!」

初手で来るとHELLSINGに出てくる吸血鬼みたいな顔で大喜びしたくなるが、弱点も多い。
ひとつが「他に使うカードが存在することが前提」であるという点。
せっかく生み出したマナの使い道がない場合、このカードは《治癒の軟膏》以下のゴミである。マナが潤沢に使える状態で引いても無駄牌だ。
つまり互いに息切れしてきた後半ではあまり強くない。

また、手札1枚をリソースにしているため、何らかの方法でリソースを補充しない限りはアド損である。
上述したA定食組はどちらも《ショック》というカードで簡単に崩壊するが、そうなると対戦相手にとっては「極めて質の高い1:2交換」を行えることになる。
圧倒的ロケットスタートには、最良のタイミングでの横槍という弱点が存在するのだ。
「自分の展開以外に興味が無いんだ、あのデブの黒使いは。そうはいくか。「最高のタイミングで 横あいから思い切り殴りつける」 最後の最後にリングの上で拳を上げて立っているのは我々だ」

元々は黒の初動の遅さを補うためのカードとしてデザインされたようだったが、結果として
  • 「1ターン目から対戦相手の手札をズタボロにする」
  • 「1ターン目にすでにデカブツや超危険牌が目の前にいて事実上リーサル」
  • 「3ターン目に突然死」
のような無法な動きをサポートしてしまうこととなった。
このカードが狭いカードプール(≒スタンダード)に存在することは、開発部にとって非常に大きな負担となった。なにせ3マナのクリーチャーをあまり強くできなくなってしまう。
そのためたとえば黒の部族「傭兵」などはかなりのマナ食い虫としてデザインされ、《暗黒の儀式》の4枚積みが前提となっている。
さらに当時の黒は、同色とアーティファクト以外にブロックされない「畏怖」や、黒の除去の対象にならない「除去耐性」などで徹底した独自路線を歩んでおり、それを過剰に考慮すればカードとは弱くなり、かといって無視すれば環境が真っ黒に染まってしまう。
旧枠時代の黒のカードに全体的にパッとしないものが多いのは、この《暗黒の儀式》の存在が前提になっているからなのである。
商品の持続可能性を考えた結果さすがに独自路線を歩ませるわけにもいかなくなり、21世紀の到来とともに《暗黒の儀式》はスタン落ちした。
「さらば!!我が友!!」

上振れ系のカードということもあり、現在使える環境ではこの上振れゲーを嫌って入れないプレイヤーもそれなりにいる。
ただしその上でやっぱり悪いことをするためのカードなのでパウパーではさながら執行猶予のついた囚人であり、常に監視の対象内。うっかりやらかしたらその日がシャバでの最後の日である。


その後

エクステンデッドで禁止、またインベイジョン・オデッセイに収録されずスタンダード落ち。
代わりに

陰謀団の儀式/Cabal Ritual (1)(黒)
インスタント
あなたのマナ・プールに(黒)(黒)(黒)を加える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが7枚以上ある場合、代わりにあなたのマナ・プールに(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)を加える。

が登場したものの
  • 1ターン目に使えない
  • 1マナしか増えない
  • スレッショルドだと3マナ増えるとはいえ、土地が増えてくる中盤以降にマナ加速出来てもあんまり
と、どうにも見劣りする。
とはいえスレッショルドを達成すれば下記の《煮えたぎる歌/Seething Song》の上位互換になるため決して弱い訳ではない。
事実早いターンにマナが大量に必要なデッキでは普通に用いられており、【ストーム】などでは基本一緒に4枚投入されている。

他にはアイスエイジに(黒)で自墓地のクリーチャー分の(黒)を出す《忌むべき者の歌/Songs of the Damned》も存在したが、アイスエイジには暗黒の儀式も収録されていたので若干地味な存在だった。アライアンスのLake of the Deadもあり、氷河期は黒マナに溢れていた。
閑話休題。墓地を肥やすタイプで大量のマナを要するデッキならば有用、というのは陰謀団の儀式と同様。

枠が移行した「ミラディン」以降では、当時へっぽこ極まりなかった赤へのテコ入れ、及び『リソースを削った瞬間的な出力アップなんだから、衝動の色の赤だよね』ってことで「一時的なマナ加速」の役割が黒から赤に移行した。
《暗黒の儀式》がやらかしすぎたことを反省するべく、

煮えたぎる歌/Seething Song (2)(赤)
インスタント
あなたのマナ・プールに(赤)(赤)(赤)(赤)(赤)を加える。

炎の儀式/Rite of Flame (赤)
ソーサリー
あなたのマナ・プールに(赤)(赤)を加え、その後あなたのマナ・プールに、すべての墓地にある《炎の儀式/Rite of Flame》という名前のカードの総数に等しい点数の(赤)を加える。

Pyretic Ritual / 発熱の儀式 (1)(赤)
インスタント
(赤)(赤)(赤)を加える。

といったカードが印刷されていた。いずれもたった1枚で1ターン目から無法なマナ加速ができないように調整されているのだが、上2つはモダンであっさり禁止カードに指定された
《炎の儀式》はコンボに使うためのカードなので論外だが、《煮えたぎる歌》に関してはむしろ《暗黒の儀式》よりも考え方によってはヤバいカード。
というのも、《煮えたぎる歌》は踏み倒したりコピーしたりすると生み出せるマナの量が5xとして増えていくので《暗黒の儀式》よりも種火として優秀なのだ。
さらに5マナ域には3マナ域よりもフィニッシャーとしての格があるカードが多く、何気なく使うだけで相当強いのである。
《弧炎撒き》などを高速召喚させる素朴な使い方でも結構なやり手であり、これを眼目に据えたデッキがレガシーの「ドラゴン・ストンピィ」である。
マナを軽量化すれば1~2マナで5マナまでのジャンプが可能であり、1回唱えるだけでストームを1回稼ぎながらマナ問題はほぼ解決。これを眼目に据えたデッキがレガシーの「ドラゴンストーム」「赤単ストーム」「ベルチャー」などである。
《ヨーグモスの意志》のリメイク版《炎の中の過去》と色がまったく同じというのが最悪で、ストームの十八番を黒はおろか青からさえ奪い取ってしまった。
特に「ドラゴンストーム」のプランBとなる「ドラゴンの素出し」や、ベルチャーにおける「早期のベルチャー設置」が可能なのは《煮えたぎる歌》のおかげというところがある。

《発熱の儀式》に関しては1マナ加速しかできないため、スタンダードでは見向きもされなかったのだが、《ルビーの大メダル》のようなカードと組むと赤い《暗黒の儀式》と化す。
「バランス調整を覚えた後なんだし、弱くすりゃ暴れることもないだろ」という甘い見立てのおかげで亜種が豊富なため、ストームデッキなどでよく用いられる。
その後やっぱりおかしかったとして「宝物トークン」を生成する能力に切り替わり、これによって往時の黒よりさらにマナジャンプが得意になって*2現在に至っている。

これらのカードもあんまりにも暴れすぎたせいで《アイレンクラッグの妙技》を最後に直系の亜種は印刷されていない。
ただ生成するものを「宝物トークン」にした亜種なら現在でもよく印刷されている。そろそろ黒に返して


ちなみに、暗黒の儀式を含めアルファから存在する1マナのインスタント達はブーンズ(Boon:恩恵)と呼ばれるMtG最古のサイクルである。
いずれも1マナのインスタントで、何かを3することが出来る。
また《Ancestral Recall》以外はすべてコモンである。(アンリコはレア)


再録機会は案外多く、最近では天野喜孝イラストのFF9の「永遠の闇」の名前とイラストで再録されている。残念ながらペプシマンではなく原イラストの方。
ストリクスヘイヴンのミスティカル・アーカイブでも再録されており、特に日本語版は和装の女性が厳しい顔で俯いて悪霊を生み出すという「これから恨みを晴らす」という趣のもの、つまり実際のカードの挙動を強く反映したものになっている。
一方テーブルトップで使える環境はかなり少なくなっている。特にハイランダーが前提となる統率者戦では、「1枚しかデッキに入れられないのでマナジャンプの動きを安定させられない」という弱点もある。とないえ、黒いデッキの上振れムーブとしてはもちろん強いので、だいたいマナファクト他の手段と合わせて入れられることもある。

古老として言うと、やっぱ4枚積めてこそ。そしてストームではなくクソムーブを押し付けてこそ
単純ながら奥深い1枚。昭和の香りのするMTGを楽しみたい方は、ぜひレガシーの黒単コンあたりでご利用ください。
ゲラゲラ笑いながら「クソゲーじゃねぇか!あークソゲー!ほんとクソゲー!死ねよ!」と笑い合える、昔懐かしいドブンゲーの片鱗を味わえるだろう。
「最近のガキときたらやれストームだヴェリアナだグリセルブランドだ。ダリチュー、ヒム、シンクホールが各4枚。これこそが本当のマジックじゃ。」

余談を超えた余談だが、MtGと同じWizards社が開発するデュエル・マスターズでも、1マナで使えて一時的に2マナを加速する《フェアリー・ギフト》なるカードが存在し、こちらも制限カードになっている。
こちらは自然文明(MtGの緑にあたる)で、正味2マナ以上でしか使えないものの、それでもめちゃくちゃ強い。


「アニヲタは虚空から生まれた。無駄知識の最終処分場、アニヲタwikiは追記修正をお願いしますという決まり文句を項目の末尾に書くように命じた。かくして『暇人の暇つぶし』が始まった。」
———アニヲタ経典

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最終更新:2026年07月22日 22:35

*1 特に《ファイレクシアの抹殺者》は、自身のペナルティ能力で土地ごと吹っ飛ぶ。

*2 ただし1マナ域から突然のジャンプでゲームプランをぶっ壊す黒に比べると、赤のそれは3マナ以降にファッティを高速召喚してくるという比較的健全な域に収まっている。健全ってなんだよ。