Il-2(攻撃機)

登録日:2014/04/14 (月) 02:15:19
更新日:2021/03/18 Thu 23:54:10
所要時間:約 5 分で読めます




イリューシン Il-2は、ソ連の生み出した傑作対地攻撃機であり、某破壊神閣下を絶対に乗せてはいけない機体の上位候補である。
まあ、閣下がコミーの機体に乗るとは思えんが


性能諸元(副座型)

全長:11.65m
全幅:14.60m
全高:4.17m
翼面積:38.5m2
全備重量:6,060kg
エンジン:ミクーリン製AM38F(1700hp)
最大速度:411km/h
実用上限高度:6,000m-6,920m
航続距離:685km
固定兵装:23mm機関砲2基、7.62mm機銃2基、12.7mm後部旋回機銃1基
爆装:最大600kg
乗員:2名

開発経緯と特徴

本機に限らず、重装甲の対地攻撃機というものはどこの国でも設計・試作はやっていた。
機関銃と塹壕が一般化してからというもの、歩兵の防衛ラインというものはなかなかに強固となったからだ。
その塹壕からの攻撃を物ともせずに、逆に塹壕に派手に銃撃・爆撃かまして制圧する機体の実用化は急務だったといえる。
しかし、とうとうそれが完璧な形で実現することはなかった。*1
簡単な話で、装甲を強化しすぎると火力にしわ寄せが来るか飛べなくなるかの二択にしかならないのだ。

さて、本項目の主役は戦間期から懲りもせずに装甲攻撃機の開発に勤しんでいた赤い大地の皆様である。
時に1938年、セルゲイ・イリューシンが提出した設計案が上層部に受け、試作機開発が認められた。
当初は複座機として開発が進められたが、重量や航続距離の関係で単座機に設計変更された。結局複座に立ち返るけどな!
結果を出そうと出すまいと粛清されるだけあって開発は割合順調に進み、1941年6月に試験審査を終え、直ちに量産が始まることとなる。

本機最大の特徴はとにかく「当たろうがどうということはない」レベルの重装甲である。
恐ろしいことに機体前部がモノコック構造の装甲外殻でできており、フレームレス軽量化&重装甲を成し遂げている。
簡単に説明すると、前半分に鋼のバスタブ被って飛んでるようなものだ。そりゃ豆鉄砲は効きもしない。
さすがに真正面から大口径機関砲をブチ込まれれば話は別だが、たかが20mm榴弾程度ではせいぜい凹む程度。
そして大口径機関砲なんぞ積んでいる機体はドイツにはほとんどない。
カノーネンフォーゲル?そもそも護衛に食い散らかされるし本機を叩き落としたのは破壊神補正に決まっておろうが。
まあ後部はジュラルミン不足で木製*2だったんだけどね。おかげで「装甲部分が破損する前に木製部分がぼっきり折れて墜落する」シュールだが笑えない事態が頻発したとか。
ジュラルミンが安定供給されてからはちゃんと全金属製なので安心してほしい。

主翼は艦上攻撃機並みに馬鹿でかいが、これはクッソ重い機体をまともに飛ばそうとした設計者たちの努力の賜物である。
決して労働者の怠慢ではないし資材の浪費でもない。また旋回機銃を除く全ての武装はこの主翼内に収められる。
翼内機関砲は元々は20mmだったが、後に強化されて23mmとなった。
後には翼下に37mmや40mmガンポッドを搭載した対戦車仕様も開発されたが、命中率がお察しであまり使えたものじゃなかったらしい。
実は敵軍の輸送機や爆撃機を叩き落としまくったので戦闘機型が試作されたが……お察しください。

日本の機体と違って航続距離がなんかもうお察しに感じるが、彼らは基本的に陸の上で殴り合ってるので何も問題はなかった。
猫も杓子も航続距離にこだわるのは日本とアメリカくらいのもんです

ちなみに本機の燃料タンクは計器盤前方と座席下&後方にあり、パイロットは燃料と装甲にサンドイッチされて飛んでいる
赤い大地パネェ……

実戦での活躍

傑作機とは言っても損失なしで云々などというつもりはない。先にも述べたが初期仕様は単座機だった。
鈍重な機体で後方機銃がないのに、護衛は生産が滞ってたりしてろくにつかないものだから、本機だけで突貫。
そりゃもう迎撃機を過少評価した爆撃機のごとくバタバタ落とされる。
いくら装甲がよかろうが、前から後ろからフルボッコされればどうしようもない。装甲つったてたかが航空機だし。
そんなわけで現地では慌てて仮設機銃座を設置(機体を無理矢理くりぬいたり)したり、迫撃砲を後ろに向けてぶっ放したなどという笑える例もあった。
最終的には複座が制式仕様となったが、複座化しても銃手席の装甲厚は限定的で、いわば死刑宣告だったという。

が、工員と雑兵は畑で採れるのがソ連クオリティ。数が揃ってからは莫大な生産数とジョークのような重装甲でドイツ兵を蹂躙しまくった。
特にPTAB*3を用いての編隊絨毯爆撃は強烈の一言で、文字通り有象無象の区別なく消し飛ばしていったという。
その結果、ドイツ兵から「空飛ぶトーチカ」だの「空飛ぶ戦車」だの「黒死病」だのといった物騒極まる異名を頂戴した。

なお元祖ブラックサレナとその先輩曰く「液冷エンジン用のオイルクーラー狙えばわりと楽に落とせるよ」とのこと。
……そもそも機体下面に付いてる物を、しかも低空飛行で対地攻撃中に狙えと?
数の暴力に圧殺され尽くしてなお生き延びたドイツのエース軍団は格が違った。

最終的な生産機数は驚きの36,182機で、これは軍用機としては最多。ソ連の軍用機総生産数の約3割を占める。
凄いなIl-2。最終鬼畜チート国家でも成し遂げられなかったのに。

エピソード

責任者の悲哀
生産開始時期を見てミリヲタ兼任のアニヲタ諸氏は気付いたかもしれない。
よりにもよってちょうど独ソ戦が始まったころであり、電撃戦でフルボッコされるわ開戦1ヶ月でミンスクは占領されるわの大惨事である。
当然工場疎開で生産は遅延した。ヨシフおじさんもイラつかざるをえない。
そうは言っても疎開した工場への人集めなど、責任者はそれこそ馬車馬が楽に見えるレベルで働いていた。

が、結果を出さねば粛清タイムなのが共産党クオリティ。
激おこぷんぷん丸のヨシフおじさんからお手紙(電報)着いた。

「我々は空気やパンのようにIl-2を必要としている」

とかく重装甲でジュラルミンを湯水のように使うので生産が滞ると

「我々の忍耐力を試すつもりかね?」

責任者の胃にはダース単位、最悪グロス単位で穴が開いていたであろうことは想像に難くない。

シュトゥルモヴィーク
シュトゥルモヴィークという単語を直訳すると「襲撃機」となる。
ぶっちゃけると、ソ連軍内の軍用機のカテゴリーである「シュトゥルモヴィーク」の中で最も有名な本機が、象徴的にそう呼ばれているだけだったりする。

創作におけるIl-2

有名な機体だし赤い国が登場するシミュゲーにはだいたい参戦していると見て間違いない。
また、あまりに有名になりすぎて本機の名とカテゴリーを冠するフライトシムが祖国で開発される始末。
特にIl-2 1946はフライトシムとしては珠玉とさえ賞されるレベルの出来を誇り、なんとフライアブル機数200機以上!
さらに有志の作成したMODでより快適に、かつニッチの埋まった至高の体験が可能。
フライトシムに興味をもった同志アニヲタは今すぐチェックだ!(モロマ)



追記・修正は偉大なる同志スターリンと大祖国の名のもとに、シュトゥルモヴィークでゲルマンどもを蹂躙してからどうぞ。

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最終更新:2021年03月18日 23:54

*1 少なくともジェット機の大出力で多少重くても飛べるようになるまでは

*2 変態紳士の国には全木製爆撃機というブッ飛んだ代物もある。たかが後ろ半分が木製だった程度で驚くことでは……あるな

*3 成形炸薬爆弾の略記号で、1.5kgから2.5kg程度だが100mm程度の装甲を貫徹可能な爆弾。これを48個×4ケース積載して上空から投下した