登録日:2010/11/16 Tue 23:53:27
更新日:2025/02/05 Wed 03:04:21
所要時間:約 5 分で読めます
概要
機関銃とは、基本的にフルオート射撃を前提に運用される銃器の総称である。
要は引き金を引きっぱなしで弾を連射出来る銃の事だ。
銃としては弾丸を連続して発射するため銃身は熱や摩擦で傷むし機関部も負荷がきつい。
発射の反動で銃全体がガクガクに揺れ、弾は銃口から広がるコーン状にばらまかれる。わざわざ単射でもしない限り、狙って撃つ事はできない。
しかもベルト給弾で断続的にぶっ放す為、弾薬消費が半端ではない。
当然ながら安定させるための二脚や三脚は必須である。
更に耐久性を最重要視して設計されるものの、軽量化は基本的に考慮されていないため持ち運ぶのも一苦労という代物である。
しかしそれらを犠牲にした分、大変強力な火器となっており、
小銃とは比べ物にならない射程と威力、そして連射力を誇る「
戦場の悪魔」として君臨している。
運用
主な運用方法は
- ひたすらに弾をばらまき敵を一掃する
- 連射し続け敵の移動や反撃を力ずくで抑えつける
- 味方が進軍するときや、リロードの際に援護射撃をする
- 敵の上陸や進行から陣地を守る要となる
- 小銃の有効射程外から敵の指揮官や砲手を狙撃する
など。数人の兵士で大部隊の足止めや掃討を可能とするため、軍隊には必要不可欠なものである。
第一次世界大戦の頃に登場し、登場直後から死体の山を築き上げ、これに対抗する塹壕戦、更にその塹壕を突破する戦車が生まれる事になった。
特に日露戦争からWW2にかけて機関銃の大きく影響を受けたのが騎兵であり、その存在価値・運用方法は大きく変化させられてしまった。
+
|
余談:機関銃と騎兵 |
中世の騎士が消滅し近世の「騎兵」となってからも、騎兵部隊は文化や風習により、戦いを一種の美や英雄譚と捉え、また煙内でも視認性を確保出来るよう派手なカラフル制服を着用していた地域も多かった。
軍事面でも砲撃を突破し敵陣に集団突撃を行う騎兵突撃は騎兵の、ひいては戦場の花形だった。
事実、機関銃が猛威を振るった日露戦争でも、日本では騎馬隊が大真面目に編成され、ロシア側でもカラフルなコサック部隊が前線を闊歩していた。
- ちなみに、近世までの騎兵部隊のもう一つ重要な仕事が「浸透」だった。敵陣深くに入り込み、要所を打撃したり状況を偵察して帰ってくるという任務である。これができるのは、任務の内容と重要性を理解できる教育レベルがあり、すぐに逃げ出すことのない士気があり、かつ敵歩兵では追いつけないほど移動力のある兵種…つまりエリート兵種である騎兵だけだったのだ。
しかしライフルの発明により、突撃前に狙い撃たれる頻度が増え始め、その時代に陰りが見え始める。
そして機関銃によって鉛弾の物量と威力の跳ね上がった近代戦においては目立つ装飾のせいで完全に只のマトと化し、重騎兵部隊は悉く蜂の巣にされ死屍累々と化したことで戦術上の価値を大きく失ってしまったのである。
何せ図体=被弾面積デカくて鉛弾で転んだら投げ出される馬に跨がり、赤や青など目立つ鎧を身に纏って真正面から突撃してくるのだ。
どうぞ撃って下さいと言わんばかりの絵面でしかない。
浸透を仕掛けようとする騎兵はもっとひどい。装いを地味にしようとも、戦線の隙間を通ろうとすれば前線で張っている機関銃手相手に横腹をさらすことになるのだ。弾幕張られたらめった撃ちである。
騎兵は長い訓練が必要で、軍馬の育成も時間とカネがかかる。損害の補填のための損失が洒落にならない。
こうして機関銃に対抗できない騎兵という兵科は減少・消滅していき、馬は輸送や軽騎兵の局所的な偵察といった補助的な任務に回されていくこととなる。
WW2で騎兵突撃を複数回成功させた騎兵ガチ勢国家のポーランドですらこの流れには逆らえず、WW2後にはポーランド騎兵隊も解体されていった。
そしてかつて重騎兵が担っていた敵陣地への直接攻撃という役割は機関銃を跳ね返す頑強さを備えた戦車などの装甲車両が担っていくこととなる。
|
◇制圧射撃
機関銃という武器を語るにあたって重要な概念が「制圧射撃」である。
敵を狙って撃つ事が難しいのに、なぜ機関銃はこんなに重要な武器なのか?
人は生命の危機に晒され、死が間近な環境でそれを気にせず作業する事はできない。
弾が飛ぶ気配がしたり、近くで
榴弾の炸裂が起きたら当然、作業を放り出して身を隠す。敵を探したり、銃を構えたり、そういった作業も放り出す。
つまり、
マシンガンのフルオートで弾を撒き散らし続ける限り、直接殺傷はできなくとも、弾が散らばる範囲の敵を全員物陰に隠れさせ、作業を中断させられる。
これが制圧射撃の狙いである。
この間に味方の歩兵は移動し、敵を探し、
手榴弾を投げる事ができる。
機関銃はこれが一番の仕事なのだ(
短機関銃はやや仕事が違ってくるが)。
似たような事ならその辺の自動小銃でも出来ないこともないが、ベルト給弾故、こと装弾数において圧倒的に勝る機関銃は『持続性』が段違いなのである。
只流石にトリガー押しっぱなしで延々ぶっ放す『掃射』を毎回やる訳ではなく、大抵は数発ごとに止めるを繰り返す
バースト射撃で運用している。
種類
一口に機関銃といっても様々な種類がある。
- 重機関銃(HMG)
- 軽機関銃(LMG)
- 汎用機関銃(GPMG)
- 分隊支援火器(SAW)
- 短機関銃(SMG)
- 個人防衛火器(PDW)
- 機関砲
この項目ではこれらを簡単に説明する。
□重機関銃 (Heavy machine gun)
三脚や銃架を使って陣地に固定して運用する機関銃。略称は重機、HMG。
大変重い(弾や交換銃身含めるとワンセット60kgとかザラ)ので数人がかりでしか運べず、撃つ際にも射手・装弾手・銃身交換手の3人が必要。
原初の機関銃や原初の
ガトリング砲もこれに近く、台車に乗せて馬や人力で運ぶ大砲規模の兵器であった。
後述する「より軽い」機関銃が登場すると、この様な大規模で手間のかかる機関銃は重機関銃と呼ばれる様になった。
数値的に何十kgとかいう基準があるのではなく、「運用に最低3人は必要」という運用側の部隊編成の手続き面から「重い」と表現されている訳だ。
昔は水冷式が主流だったが、戦場での水の確保は難しいため現在は空冷式が主流。
WWⅠの頃に重機関銃が担当した役割は、現代では後述の汎用機関銃が担当する事が多くなっている。
そのため、現代では使用する弾が大口径だったり、多銃身だったりと小型化が難しいものが重機関銃として残っている。
大勢がかりでないと動かせないので、主に陣地などの防御に使われる。
航空機銃や車載機銃に転用・発展した物も見られる。
補給や運用に重しをかける重厚長大兵器だが、他にはできない超大型弾をぶちまけて車両でも陣地でもひっくり返せるという利点があるため歩兵側からの需要は絶えない。
新型の開発の流れは途切れてしまったが、技術的に枯れ尽くした古参モデルが今でも各国で現役で生産され、戦線で鉛玉をぶちまけている。
重機関銃、特に口径12.7㎜級以上の大口径タイプは射程を活かして1.5~2km先から一方的に射撃を加えたりする事もできる。
これはフォークランド紛争で実際に使われた方法で、アルゼンチン軍が塹壕の中からブローニングM2に望遠鏡の様なデカいスコープを付け、7.62mmのライフルしか装備していなかったイギリス軍を狙撃し始めたのである。
これにはイギリス軍も呆然自失。
相手は2km先からの狙撃で遮蔽物ごと撃ち抜いてくるが、自分達の銃はせいぜい600m先を狙うのが限度だったからである。
結局イギリス軍は相手を塹壕ごと、非常に高価な対戦車ミサイルで陣地ごと吹き飛ばす戦法しかとれなかった。
この戦訓から対陣地ロケット弾と
アンチマテリアルライフルが開発された……と言われているが、後者に関しては俗説の域を脱していない。
但し重機関銃による狙撃は日本軍の機関銃部隊が伝統的に得意にしていた他、朝鮮戦争や
ベトナム戦争でも行われており、フォークランド紛争が初の実例という訳ではない。
汎用機関銃のMG34を配備していたナチスドイツでさえ、大型三脚架と望遠照準器を備える重機関銃仕様で運用した際に敵小銃の有効射程外から狙撃した例が確認されている。
とはいえ、とっさにそれをやられると大損害(人死に)が出るというのは現代でも脅威に変わりない。
間接照準射撃に用いられた例もあるが、歩兵支援火器の充実や通信・観測技術の改善に伴って実施する機会が無くなっている。
アメリカや中国は大口径重機関銃用の装弾筒付徹甲弾も実用化していて、ブローニングM2のM903SLAPであれば、距離500mで34mm、1.2km先でも23mmの防弾鋼板を貫通できるため、軽装甲目標の撃破に活用されている。
有名な銃器
イギリス:マキシム、ベサ
アメリカ:M1919、ブローニングM2
フランス:ホッチキス(オチキス)
オーストリア:シュワルツローゼ
ソ連:DShK38
日本:九二式重機関銃
□軽機関銃 (Light machine gun)
二脚を使って運用する機関銃で、第一次世界大戦に登場した。略称は軽機、LMG。
射手・装弾手の2人で運用されるが、移動だけなら1人でも可能な位の無理が効くのが重要な利点。
原初の機関銃は、強力だが簡単に移動できず、伏せ撃ちもできないなど問題が多かった。
技術の進歩と共に機構を小型軽量化でき、生まれたのが軽機関銃である。
重機と比べて射撃精度や射撃継続能力は劣るが、その分軽く、移動もし易い。
防御向けの重機に対し攻撃面を担い、歩兵と共に進軍し援護するのが主な運用法。
現在は固定でも移動でも使える汎用機関銃と、移動運用メインで更に軽い分隊支援火器に分岐・発展した。
第一次世界大戦が勃発するまで歩兵分隊における火力の主体は小銃だったが、
以後は軽機関銃やそこから派生した汎用機関銃に置き換わり、現在は分隊支援火器がその座に収まっている。
有名な銃器
イギリス:ルイス、ブレン
チェコ:
ZB26
デンマーク:マドセン
日本:九六式軽機関銃、九九式軽機関銃
□汎用機関銃 (General purpose machine gun)
第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期に登場。
状況に応じてパーツを交換し、二脚なら従来の軽機関銃、三脚なら従来の重機関銃に近い運用(陣地防衛等)ができる汎用性が売り。
軽機関銃から発展したタイプで、口径は8mm以下が多い。
一部は分隊支援火器と重複している。
更に軍用車両や軍用ヘリに搭載したり、対空銃架を装備すれば空にも対応と汎用の名に恥じない働きをする。
分隊レベルの対人は分隊支援火器、対物・対空は大口径重機関銃にとって代わられつつあるが、両者の中間的な性能であり今も生き残っている。
有名な銃器
ドイツ:MG34、
MG42、MG3
ベルギー:FN MAG
アメリカ:M60
フランス:AA-52
ソ連:
PK
日本:62式7.62mm機関銃
□分隊支援火器 (Squad Automatic Weapon)
第二次世界大戦後に登場したタイプで、現代における軽機関銃的な存在。
「Squad Automatic Weapon」の頭文字をとった「
SAW」という略称がある。
使用する弾薬の関係で汎用性に劣るものの、更なる軽量化が図られていて、基本的に一人で運用する。
歩兵の主力火器である
突撃銃と使用弾薬を共通化する事で弾の補給を円滑にし、また銃・弾・反動を軽くして動きやすくしたタイプが主流。
アサルトライフルから発展したモデルもあり、制圧力よりも射撃精度を重視する物もある。
汎用機関銃では重くて動きづらい、突撃銃では連射力が足りない…という現場の事情から、双方の歩み寄りで生まれた
間の子である。
分隊の火力を簡単に上げる事ができ、部隊と共に素早い行動がとれる攻撃用の機関銃である。
戦闘の際はまず火力で敵を面制圧し、味方の援護を勤める。
突撃銃全部にフルオート機能を持たせるとこれまた問題が色々起きたため(新兵の撃ちすぎ問題等)、そこを補填するために生まれたという側面もある。
有名な銃器
アメリカ:
M1918ブラウニング自動小銃(※先駆者的存在で、分類上は自動小銃)、
M27 IAR(分隊支援火器だが、分類上は自動小銃)
ソ連:RPKシリーズ(アサルトライフルベース)
ベルギー:
M249 MINIMI軽機関銃(汎用機関銃ベース)
他に、色々な
突撃銃に分隊支援火器化オプションがある。キットで組み替えるだけで転用できるようになっている場合が多い(ステアー・AUGなどが代表的)。
◆ここまで↑の機関銃(重機・軽機・
汎用機・分隊支援火器)はベルト給弾が基本である。
これは「メタル・リンク」という金属の輪っかで弾と弾を繋ぎ合わせたもので、
それを絡まないように折りたたんで弾薬箱に入れ、最初のスタータータブを銃に挟みこんで使用する。
これで頻繁なリロードをせずに撃ちまくる事ができ、機関銃の強みである継続的な連射が可能となる。
その連射を支えるために機関銃は通常のライフルの銃身よりも肉厚で丈夫なヘビーバレルを採用しており、銃身の耐熱限界を長くしている。
だがそれでも限界はすぐきて銃身が傷んでしまうため、ワンタッチで銃身を交換できるようになっている。
交換目安は200発から多くて500発ほど。
一般的に予備の銃身を何本か持ち運び、それが冷えるまでローテーションして使いまわしている。
これらが揃って初めて数百発単位での連射が可能となると言っても過言ではない。
◆ここから下↓は使う弾薬や運用の基準がそもそも違うクラスになる。
短機関銃やPDWは拳銃弾とそれを使う銃の発展型で、重機以来の機関銃とは別系統から発展してきた。
機関砲は砲カテゴリなのでもはやそういう次元ではない。
□短機関銃 (Submachine gun)
第一次世界大戦中に取り回しの良い機関銃が求められて開発されたタイプ。略称はSMGなど。
初活力の低い
拳銃弾を使用した事で個人携行を可能にしている。
一部は個人防衛火器と重複しており、拳銃弾を使用しない物も有る。
かつては塹壕戦や運動戦などで重宝されたが、アサルトライフルが主流となった上に軍隊にボディーアーマーが普及しため、現在は短射程・低貫通力(=二次被害が出にくい)という特性を活かせる治安維持用途が多い。
発祥の地ドイツでの名称「Maschinenpistole(機関拳銃)」からもわかるよう、本来は拳銃の延長上の武器である。
□個人防衛火器 (Personal Defense Weapon)
冷戦終結前後に登場した新しいタイプで、CQB(近接戦闘)に向いている。略称はPDW。
防弾チョッキの普及により拳銃弾では威力面で不足が生じた事から、こちらは専用弾薬を使用する等で貫通力を高めているのが最大の特徴。
短機関銃と同様に治安維持や特殊部隊での運用が目立つ。
□機関砲
「砲」というだけあって20~57mm程度の大口径であり、威力は機関銃とは比較にならないレベル。
例えば7.62mm NATO弾は弾頭の重さが10g程度だが、ボフォース40㎜機関砲の弾頭は1㎏に迫る。
近年過激派組織
(北朝鮮もやってた)が見せしめとして人に向けて発射する事もあるが、跡形も残らない。
また、「銃」と「砲」の区分は曖昧で各組織によって定義が異なり、同一銃が別分類になる事もある。
旧日本軍では20㎜を機関砲という事もあれば37㎜を機銃という事もあった。
ただ、砲というだけあって榴弾(爆発する弾)を撃てるのが特徴とも言える。口径20mm位は無いと、弾の中に爆薬や信管を仕込むのが難しくなるのだ。
一般には大型のため据付けで車載・機載・艦載されており、対人対車両、対空に用いられる。
メジャーな動作方式はやはり歩兵用と同じブローバック式などだが、特に連射速度を求める航空機関砲や
CIWSなどでは
ガトリング式、リヴォルバーカノン式など、機関砲ならではの方式が用いられる事も。
余談
日本では
突撃銃(アサルトライフル)や
短機関銃(サブマシンガン)など、連射できるものは全て機関銃(マシンガン)と表現される傾向にある。
しかし全ての銃はそれぞれ違ったコンセプトの元に開発され、現場と開発者の努力の結晶とも言えるものである。
どうかその事を時々で良いので思い出して欲しい。
そして全てマシンガンと一言で済ませないで欲しい。
追記・修正お願いします。
- 仮面ライダーアギトではG3-Xによって大活躍。 -- 名無しさん (2013-12-29 15:33:12)
- 機関銃は無くてはならない -- 名無しさん (2015-01-31 20:41:32)
- ェヴィーマシンゲァン!! -- 名無しさん (2015-12-29 23:03:24)
- 汎用機関銃って軽機関銃の別名なだけじゃなかったっけ?MG34やMG42も三脚固定したり車載固定したりするし -- 名無しさん (2015-12-29 23:15:18)
- ↑三脚に乗せれば重機として、乗せなければ軽機として使えるのが汎用機関銃。 -- 名無しさん (2015-12-31 02:34:22)
- バイオハザードは6までマシンガンの区分にアサルトライフルがあったな、ハンドガンとも弾別の謎仕様。逆に6からはアサルトライフルが分類に増えてマシンガンはハンドガンの部類になった -- 名無しさん (2016-09-30 21:23:30)
- 重機関銃の定義に沿う場合、スコープドッグの銃はヘヴィマシンガンじゃなくて軽機関銃か自動ライフルなんだよね。もっともATが2機がかりで運用するってどんな砲だよ宇宙艦艇並みか?って話になってしまうが。 -- 名無しさん (2019-10-26 16:25:54)
- 使う側とターゲットによってえげつない破壊力か副砲にすぎないかが枝分かれする印象 -- 名無しさん (2019-10-26 16:46:00)
最終更新:2025年02月05日 03:04