夜叉猿

登録日:2014/07/23(水) 10:23:54
更新日:2024/07/15 Mon 13:49:27
所要時間:約 7 分で読めます





天下取るなら飛騨行ってこ
夜叉の大猿天下一


夜叉猿(やしゃざる)とは、バキシリーズの登場人物人外(UMA)の一人(?)。
初出は『グラップラー刃牙』の幼年編。だが、のちに子どもが最大トーナメント編にも登場。
こちらと区別するために、単に「夜叉猿」といえば通常は親のほうを指し、子は「夜叉猿.Jr」の名で呼ばれることが多いが、本項目では両方について記述する。


【来歴】

○夜叉岩の魔獣

喧嘩で百人の不良に負けジュニアウェルターのボクサーに負けたことで、それまでの科学的なトレーニングの無意味さを知った刃牙
全てを最初(はな)から改造(つく)りなおすためにwiki籠り…、でなくて山ごもりを計画する。

山小屋で出会ったのは父・範馬勇次郎の友人で2メートル強の大男、安藤玲一だった(カンのいい読者なら名前で気づくだろうが、モデルはかの巨人プロレスラー、アンドレ・ザ・ジャイアントである)。
だが、刃牙の目的は彼ではなく、夜叉岩に住む魔獣であった。
安藤さんも、ツキノワグマを素手で仕留めるほどの超人なのだが、そんな彼でも夜叉猿は相手が悪すぎるとして刃牙を引き留める。
「裸の美女がニューヨークのスラムを歩くようなもの」と警告するが、刃牙はそれを聞き入れず、ビビリながらも夜叉岩でのキャンプを強行する。

その夜。バーベルをへし曲げながら夜叉猿登場。安藤さんが助太刀にやって来るが、山刀をへし折られ、拳を噛みちぎられ、内臓を抉りだされて完敗。
このとき見せ付けられた夜叉猿の圧倒的な強さを前に、刃牙は自分が「井の中の蛙」「飼いならされた裸の小猿」であることを思い知らされることになる。

その後、安藤さんの敵討ちを誓い、猛烈なトレーニングを開始。限界を超える荒行により、脳内麻薬エンドルフィンや死に際の集中力など、のちのちまで刃牙の基盤となる技術に開眼。
さらに200キロ近くあった食料を(若干もどしながらも)全て平らげ、技術・肉体両面において一気にパワーアップを果たす。


○再戦

再戦時、まずは夜叉岩の周囲を火で取り囲み、ファイヤーリングデスマッチを敢行。
夜叉猿相手に苦戦しつつも、正中線への集中攻撃、フルスイングでの打撃で活路を見出す。

その一方、山小屋では、入院していた安藤さんがいまさら三ヶ月ぶりに帰宅していた。が、刃牙の不在を知り、慌てて夜叉岩に向かう。
夜叉猿は六年前、当時の勇次郎をも負傷させたほどの怪物だという後付け設定衝撃の事実が知らされる。

夜叉岩では、野生の本気を出し始めた夜叉猿が猛反撃を開始し始めた。そこに猟銃を持った安藤氏が訪れるが…

「ふざけんじゃねェェッッッ」

「もうオッさんの出る幕じゃねェんだよ」

と助太刀を拒否。切り札のエンドルフィンを発動させ、反撃に打って出る。
頭部に備わる穴から直接に脳へダメージを与えるエゲツない攻撃(「勇次郎の血をキッチリ引いてやがるッッ」)で痛めつけ、自らの拳で相手の呼吸器をふさぎ、勝利する。

「オレがッ オレが飛騨最強の男だァッッッ」
公園最強の生物みたいなローカル王者って言ってはいけません。


○夜叉猿に会いに…!!

キチガイじみた 雄叫びを上げた後、なんだか気まずくなったらしく賢者タイム。

「安藤さん」
「ひょっとしてオレ…」
「ただ静かに暮らしたかっただけの猿を徒らに虐待しただけじゃないかって…」
勿論その通り…ッていうか、いまさらそんなこと言うなら飛騨までくるなよッッ!!

だが安藤は武装してようやく対等であるはずの人間と野生動物の実力差を素手のみで覆したその戦いを「男同士の戦い」として刃牙に説き、刃牙に手土産を持たせて夜叉猿の住処へと向かわせる。

安藤さんが刃牙に届けさせたもの、それは六年前に父・範馬勇次郎の奪った夜叉猿の頭蓋骨で、彼女(?)は夜叉の奥さんであった。夜叉はその頭蓋骨を先祖を祀ってある遺骨に並べ、刃牙に衝撃を与える。

感極まり「あなたの……あなたのおかげで強くなれた……」と謝意を表明
それに答えるかのように、夜叉は笑みを浮かべ、自らの牙を折って差し出す。
漫画版も素晴らしいが、アニメ版はそのドラマチックな演出も相俟って、感動的な名場面に仕上がっている。このシーンぐらいしか名シーンがないのは内緒。


【生態】

飛騨山中に生息。身の丈2メートル余りで、推定年齢は150歳。
地元では童話に登場する伝説の生き物で、冒頭の文句はその一節。
昔の武芸者の多くが腕試しに訪れことごとくが大猿の前に敗れさったらしい。

猿と呼ばれるがその姿はゴリラともチンパンジーとも異なり、敢えて言うならヒバゴンやイエティ(雪男)等のUMAに近い。あるいは絶滅した大型類人猿、ギガントピテクスがそうだろうか。

その知能はきわめて高く、先述の通り「先祖を祀る」という概念を有し、人間との意思疎通を図ることもできる。作中では「人間(ヒト)に最も近い動物」と評されている。

いずれにしろ生きていたとなると「木曜スペシャル」が放ってはおかない。


【その後】

山篭りと夜叉猿との死闘を経た刃牙には、かつて自分を制したユリーはもはや真剣勝負の相手ではなかった。
その後、夜叉猿より強い花山薫との死闘に移ってゆくが…


「成長しねェガキだぜ 刃牙のヤロウもよ」
「こんなエテ公に手こずりやがってよォ」

勇次郎は刃牙との立ち合いを思いつき、その旨を伝えに来るが、その際に持ってきたのは、夜叉猿の生首であった。
六年前とは比べ物にならないほど強くなった勇次郎にとって、夜叉猿はもはや暇つぶしにもならない相手だったのだ。

「ばァきィく・ん」
「お・ひ・さ・し・ぶ・り・で・す・…と」

生首の口を腹話術人形のように動かしながら、刃牙を挑発。
残虐というより最早シュールである。

死者の尊厳を冒涜するような行為に、花山戦での暴行で既に疑問を抱き始めていた刃牙は、ここにきて勇次郎との訣別を決断。
夜叉との全てを思い出しながら、その遺骨を全て噛み締め、勇次郎への復讐を誓うことになる。

そう…
夜叉猿は犠牲になったのだ
刃牙を勇次郎戦へと駆り立てるために

結局忘れられたけど


【最大トーナメント編】

その後、最大トーナメント編には彼の息子が登場。名前はまんま夜叉猿ジュニア

徳川のじっちゃんがスペシャルリザーバーとして招聘したが、ジュニアの目的は両親を殺した敵を討つことであった。

その後、安藤さんの設計した檻を難なく破壊し(「強いッッ 父親よりもッ!」)、パナマの鉄拳とかいうラベルト・ゲランとなんかよく分からんモブキャラを始末。その後、神心会空手の加藤清澄と対峙する。

じっちゃんにけしかけられてジュニアに挑むが、野生の戦闘力にはまるで通用せず、欠伸まで見せられながら観客席にいる刃牙のところまで軽く10メートルは投げ飛ばされる憂き目に遭う。その後、責任を感じた刃牙が交替を申し出るが…

♪あ~~げましょお~~ あげましょお~~
♪これから鬼のオ~~ セイバツにィ~~

桃太郎の歌を改変しながらやってきたのは、加藤と同門の愚地克巳だった。
なお、言うまでもないことだが桃太郎は鬼退治のために猿を連れて行ったのであり、猿を退治したわけでは決してないッ!!

片手で猿を引きずり回し、「正拳→掌底→前蹴り→中足の廻し蹴り」という正統派の空手であっさり撃破する。

その後、刃牙は愚地克巳と対立し、決勝で決着をつけようとするが…

「オレがやるよ」
「君の代わりにオレがやる……」
「必ずやる!」
「君の分もご両親の分も……!!」

そう…
夜叉猿はまたも犠牲になったのだ
刃牙と、愚地克巳という新しいライバルとを対決させるために

なお命に別状はなく、後に柳龍光の毒で衰弱した刃牙と飛騨で再会している。


【余談】

親とジュニア、両方が(半ば)自分のせいで犠牲になったのは刃牙にとってかなりのトラウマだったらしく、遙かのちの『範馬刃牙』でピクルという野生の雄とのバトルになった際、

「いいのかい、こんな初心(ウブ)いのを巻き込んじまって」

という花山の言葉に躊躇。

「ありがとう、花山さん。また同じ過ちを犯すところだった。

と心変わりする。

しかしそんなことがピクルに分かる筈もなく、刃牙は一撃で観客席まで蹴り飛ばされてしまった。

この顛末を聞いた勇次郎は、
「わが子ながら、あの甘さにはヘドが出るッ」
「さしたる覚悟もなく挑むから、そういう不覚を取るのだ」
と口を極めて罵った。

おまけに刃牙はこのあと結局ピクルと試合をするのだから、作者彼は本当に何をしたかったのか分からない。ぶっちゃけ、勇次郎でなくても苦言を呈したくなる。

さらに余談ながら。冒頭の飛騨の伝説の際、最新作『刃牙道』に登場するクローンの名前が一度だけ出てくる。まさか、もう猿退治はしないよね?


「オレがやるよ」
「建て主の代わりにオレがやる……」
「必ずやる!」
「追記も修正も……!!」



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最終更新:2024年07月15日 13:49