幽雫宗冬

登録日:2014/08/16 Sat 17:34:11
更新日:2023/02/20 Mon 16:23:40
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相州戦神館學園 八命陣』の登場人物。
CV.古河徹人


辰宮百合香に仕える筆頭家令。

彼女への忠誠心は絶対のもので、命じられれば命を賭して戦うし足も舐める。神野曰く、「くらなくんはまぞ」。

絶世の美男子であり、歩美曰く「私史上最高のイケメン」と称されるほどのイケメン。

そして同世代の選りすぐられたエリートが集う戦真館において飛び級で進級し初代筆頭にまで上り詰めた稀代の才人であり、そして崩壊した初代戦真館の唯一の生き残りでもある。


ちなみに壇狩摩甘粕正彦とは同年代であり、方向性はそれぞれ異なれど彼ら2人に並ぶ才を有した、曰く「出る杭も叩けないほど上方に突出した組織の癌」であるそうだ。




今作における、正田卿の嫁



以下ネタバレ注意











戦真館崩壊後、従者の家系であった彼は辰宮家に仕えることになった。
彼からしてみれば戦真館崩壊の一端を担った辰宮は憎しみの対象ではあったが、だからといって何の咎もない百合香に憎しみをぶつけるのは筋違いだと理解しており、同時に戦真館崩壊によって寄る辺を失っていた宗冬にとって、守る対象を得る事は喜ばしい事でもあった。
そして徐々にその忠誠は彼女への愛へと変わり、百合香の歪みを理解しながら、自分だけは彼女の事を肯定し続けるという誓いを立てる。




しかし当の百合香からはその様を「つまらない」とバッサリ切り捨てられ、彼の愛はまるで伝わっていない。
自分に向けられる好意を信じられず、自分に対する嫌悪を真の感情だと盲信している百合香にとって、宗冬の愛はどうでもいいものでしかないのだ。

そして、自分が失ってしまった王道を持ち、彼女の心を揺さぶる鳴滝の事を憎み、同時に羨んでいる。
その心の強さはあまりにも眩しく、それに感化された宗冬は、

彼女を殺すことで己の愛を証明する事を決める。

どれだけ言葉を尽くしたところで貴女に俺の愛は伝わらない。ならば貴女を殺すことでこの愛が本物であると証明し、貴女は誰にも愛されない孤独な人間ではないと証明する。
それが彼女を救うために自分に出来る唯一の事だと信じた。





しかし、鳴滝からしてみればそんなものは到底納得できるようなやり方ではない。

彼女が歪んでいるというのなら、自分がそれを正してやればい。

それは宗冬とは正反対の考え。彼女を肯定すると誓った宗冬には絶対に出来ないことだった。
故に二人はぶつかるしかない。自分の方が彼女のことを愛しているのだと証明するため、二人の漢の決戦は避けられないものだった。








■能力資質
全体的に能力が高くまとまった万能型。中でも戟法の剛と迅、解法の透、創法の形の四つは特に優れている。
加えて本人も超絶的な技巧を持つため、その戦闘力は極めて高く六勢力首領とも肩を並べる。
実質、貴族院辰宮の最高戦力と言える。







【破段】


「この世は総じて紙風船だ」


名称不明。

宗冬の「自分の愛に比べれば、この世のものは総じて羽毛のごとく軽い」という夢を元にした破段。

その能力は「重量の軽減」。

この破段を発動させた宗冬に近づくだけであらゆるものは羽毛のごとく軽くなり、物理的な攻撃が意味を成さなくなる。
体が軽くなってしまう分、地を蹴る反動も減って移動すらままならなくなり、宗冬の攻撃を受ければ為す術もなく吹き飛ばされるしかなくなる。

特に百鬼空亡の百鬼夜行に対し目覚ましい効果を発揮する。何せ膨大な頭数こそあるものの、彼らは空亡から全力で逃亡するだけの存在である。
幽雫の夢にかかれば一切の攻撃力を失い、時間と体力さえ無限であるという前提なら皆殺しにすることも容易くなるのだ。


しかし、それはつまり宗冬がこの世の全てのものに価値を見出していないという事の証明でもある。
百合香を絶対視するあまりに自分を含めた全てのものをどうでもいいと感じ、軽く見ている宗冬の精神の歪みが具現化した夢であり、本人もその事を自覚しているが、まるで改善されないという宗冬の百合香への強すぎる愛を証明する夢。






【急段】


「左道大逆魘魅蟲」

(さどうたいぎゃくえんみのかしり)


――急段・顕象――


「穢跡金剛禁百変法」

(えしゃくこんごうきんひゃっぺんほう)


■穢跡金剛禁百変法

幽雫宗冬の急段。

協力強制は、相手が「幽雫宗冬の左腕には何か切り札のようなものがある」と思うこと。
最終決戦までは柊聖十郎に奪われていたが、聖十郎の急段では左腕しか奪うことができず、その結果片腕しかないために協力強制の条件が満たせず、二人共破段までしか使うことができなかった。

元々宗冬の利き腕は左なのだが、戦真館崩壊の折、発狂した仲間達を左腕で皆殺しにしたことで宗冬はトラウマを抱え、戦闘はおろか日常生活においても一切左腕を使えなくなった。

彼が左腕に感じている怨念は百合香への愛を凌駕しかねないほどに重く、その怨念は邯鄲において「絶望を具現化する」という能力として具現化した。

この急段は発動した瞬間、相手にとって最も絶望的な事象を引き起こす。
死を拒む者に死を、愛を奉じる者に裏切りを、世界平和を願うものに鉄風雷火の大戦争を、といった具合。













鳴滝との最終決戦では、「百合香を自身の手で殺す」という事象として具現化し、鳴滝を百合香に襲いかからせた。
しかし、鳴滝は破段によって限界を超えて己の質量を増加させ、自分の体を潰し物理的に動けなくすることでこの急段を止めてみせた。
当然鳴滝の体はズタボロになり、最早結果は見えたかに思われたが、


「余計なお世話だ――俺がこいつに負けるかよォッ!」


犬田小文吾悌順によって鈴子の創法の形の資質を借り受けた鳴滝は、柱を超える巨大さの大剣を創形。
仲間との絆を重んじ、故に自分はそれに応えるだけの重さを持つ男でありたいという夢を持つ鳴滝が、仲間の力によって創り出した大剣はその夢を強烈に反映し、山をも超える重量を持って宗冬に襲いかかる。


そして宗冬は咄嗟に破段でその重量を軽減しようとするが、それは大きな失敗だった。

そもそもそんな攻撃など避ければいい。にもかかわらず、真っ向から挑戦したのは男としての意地があったから。
しかし、宗冬の破段は自分の愛に比べれば全てのものは総じて軽いという夢が元になっている。鳴滝に対して、男として負けられないと思ってしまった時点で、既にその破段は意味を失ってしまっていた。

仲間を守れず、失ってしまった男と、仲間のために強くあろうとする男。
持つものの重さの差が、ここに勝敗を決定していた。



















そして決着がついたその瞬間、百合香が駆け寄ったのは宗冬だった。
その答えをもって鳴滝は去り、百合香は宗冬に傍に居させて欲しいと懇願するが、宗冬は百合香を拒絶した。




「何を驚いているのです? まさかわたくしがいうのだから断るはずもないだろう、とでも?」

「見くびってもらっては困る。俺はあなたの犬でも、案山子でもない」

「真実を知ったと言うのなら、ここで朽ちる俺などに構ってどうする。その先には何もない。

「俺はあなたを抱けもしなければ笑わせることもできないのだから」

「死者を想ったまま老婆にでもなっていくと? お花畑もそこまでにしていただきたい」



「俺があなたの、新たな牢獄になるなどと……絶対に御免こうむる」









彼女の全てを肯定すると誓った男は、最後の最後に、朽ち果てる自分に彼女が囚われないように、愛する女を拒絶した。


「お嬢様、これが最後の忠言です。心して聞いていただきたい」

「彼を追うのです。たとえ振り向いてもらえなくとも、離れずに」

「そして傷つき、悩み、苦しみなさい。足掻いて、みっともなく、貫いて進むのです」

「あなたにとっての、本当の真を信じて……俺がそうしてきたように」









傷つき、悩み、苦しんで生きろ。それが宗冬が残した最後の教えであり、生きているのなら付いて回る当然の事。
それでもあの男がいるのなら、彼女は決して一人ではない。それを彼女が忘れない限り、絶対に乗り越えることが出来るだろう。

彼は最後まで、愛する女の身を案じ、仲間達が待つ場所へと逝った。










「ああ、待たせたな……いま行くよ」

「無事に、お前たちのところに行ければいいが……駄目かな、こんな俺のままじゃあ…

…詫びたいことが、無数にあるんだ……聞いてくれよ、なあ、みんな…」




「俺は、真実、お前たちとの戦の真を……」













■余談
邯鄲の夢というオカルトを除いた素の戦闘能力ならば、怪士、水希、甘粕さえ超えて八命陣最強の人間であるそうだ。
ただし相州戦神館學園 万仙陣以降はクリームヒルト・ヘルヘイム・レーベンシュタインが最強の称号を塗り替えた。
技量自体は幽雫が上回るものの、身体能力に途方もない差があるため白兵において彼女を上回る人間は存在しない。








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最終更新:2023年02月20日 16:23