登録日:2014/10/18 Sat 19:48:36
更新日:2024/06/15 Sat 14:53:55
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「ディシプリン*帝国の誕生」とは、
2009年にマーベラスエンターテイメント(現:マーベラス)より
Wiiウェアで配信された「贖罪バンドデシネ」
ゲームである。
なお、「ディシプリン」とは英語で「調律」「調教」「懲罰」等を意味する。
概要
主人公「you」は妹「*」の手術費用を稼ぐためSRL社が運営する移動要塞収容施設「ディシプリン」の擬似収容モニターとなることに。
「youコン」や施設内の設備を駆使して「カイテキ」「ハラヘリ」「ハイセツ」「スイミン」といった相部屋の収容者達の欲求を満足させ、
その過程で彼らの「こころの壁」を壊すことで彼らが背負った業を象徴するアイテムである「こころの結晶」を集めていくことになる。
なお、収容者達は実在の犯罪者など世間を騒がせた人々がモチーフとなっている。
各収容者はそれぞれ収容日数が決まっているため、その期間内に必要な条件を満たす必要がある。
一日のスケジュールは「起床」→「自由時間」→「作業(昼食)」→「自由時間」→「就寝」と進み、一日の終わりに自動セーブされる。
相部屋の中に「オヒマツブシ」という虫を踏みつぶすことで一日の時間を早く進めることもできる。
昼食の調理作業では収容者の好みの
スープを調合してやると「こころの壁」が崩しやすくなり、「こころの結晶」が入手しやすくなる。
そのため、自由時間での会話中に好みのスープの種類を覚えておくと攻略が楽になるだろう。
また、夜に窓際にいる鳥にyou液を放つことで、各収容者達のエピソードを見ることもできる。
監視員にyouコンを使う所を見られたり収容者の欲求が爆発すると1アウトとなり、3アウトで「おひとりさま」という個室に隔離される。
「こころの結晶」を集める時間が1日分削られるため、いかに監視員に見つからないように必要な行動を取るかがこのゲームのキモとなる。
先に進むほど監視員の人数が増えたり、
通常の3倍の速度で移動する赤い奴が登場する等、難易度が上がる。
また、「おひとりさま」に隔離中はyouコンをマッサージすると時間の経過が早くなり、何もしないでいるよりもスムーズに復帰できる。
その他、ゲーム中に特定の行動を取ることで「罪(ギルティー)リスト」を埋められるというやりこみ要素もある。
内容は収容者と10回会話することが条件の【会話罪】や日数経過が条件となる【伍日罪】のように普通にプレイするだけで埋まるものから、
オヒマツブシ300匹潰すことが条件の【虫虫罪】や全収容者のエピソードを見る必要がある【記憶罪】のように手間が掛かるものまで様々。
全ての罪を犯すと、最後に【槍込罪】が追加される。
なお、「Luc-Leon-Lecoqとの交流の記録を通じ、『ディシプリン』構想の秘密を明かす」という内容のガイドブック(事実上の設定資料集)が販売されていたが、現在は廃刊状態となっている。
ストーリー
「設計者」の話を詳しく聞いていくと、現・所長は元々彼の妻であり、助手だったらしいことが分かる。
やっと授かった赤ん坊を失ったことをきっかけに、彼女はそれまで以上に施設の設計に打ち込むようになったとのこと。
そして家庭を顧みなかったことや「性癖」が理由なのか、「設計者」自身も「シンボル」を奪われた上に施設に収容されたという。
曰く、この施設は収容者の無意識に対して働きかける矯正教育を行っており、
彼自身も記憶が操作されているような感覚を味わっているという。
さらに、あらゆるシステムによりこの施設からの脱出は不可能な設計となっているらしい。
収容者たちが着ている服はその生体情報をモニターしていて些細な変化も逐一チェックされる上、
手順を踏まずに中央管理室から遠ざかると服に埋め込まれた爆薬が爆発し、収容者は絶命する。
その上、施設の外側も厳重な壁が幾重にも取り囲んでいるとのこと。
また、この施設の監視員はマスクをしているため顔が分からないのだが、
何故か全員所長と同じ顔をしているらしい。
+
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ネタバレ注意 |
所長によると収容者達は基本的に偽の記憶を植え付けられているが、「こころの結晶」だけは真実なのだという。
彼女は過去に失った大切な赤ちゃんを「生み直す」ために「こころの結晶」を必要としているらしい。
エンディングではディシプリンの全貌が明らかになり、機械仕掛けの超巨大な赤ん坊が出現し、産声を上げる。
なお、作中で度々言及される*についてだが、紙袋と所長の話、そしてラストのyouの独白の内容から、
どうも*が冒頭でベッドに伏していたのは病気ではなく、他ならぬyouが元凶な様子。
所長曰く「もつれた愛の呪縛を解きほぐそうとして奮闘した結果、余計にこんがらがり、それをyouが無理やり断ち切った」とのこと。
また、ラストのyouの独白によると、彼は*の部屋からも赤ん坊の産声を聞いたことがあり、「訳がわからなくなってしまった」らしい。
つまりyouは単なるテストのために呼ばれたのでなく、己の罪を償うために収容されたようである。
エンディングテーマ「きょうだい☆けんか」の歌詞の内容もそれを暗示しているものと思われる。
最終的にyouは巨大な赤ん坊によって踏み潰されそうになってしまう。
これは自分自身の罪の重さに押し潰されそうになっていることを表現しているのだろうか。
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登場人物
以下にこの施設の所長と、youと同じく施設に収容されている人々を紹介する。
括弧内の名称は「こころの結晶」を入手した時等に見られる「辞世の句」に書かれているものである。
「妹さん、お気の毒ね。あ、ごめんなさい。 間違えたわ。
妹さん、大変ね。 さぞかし心配でしょう。」
この施設を統括する立場にある女性。
youの抱えた事情を知っており、youや*のことを気遣ってくれる。
ちなみに、この施設は所長だけでなく監視員も全員女性である。
中には某アイドルグループを彷彿させるダンスをする人達もいる。
「私は調理芸術家だ。 生きている生物をそのまま調理し、
屍肉ではない肉を食すことが生涯のテーマなんだ‥‥‥。」
その名の通り、新たな収容者であるyouに施設の情報を色々と教えてくれる人物。
自称「調理芸術家」であり、施設の調理係に任命されたyouを羨ましがっていた。
食材への拘りが強く、youの肉の付き方がどう変わっていくかにも興味津々な様子。
納得の行く素材を得るために自ら「狩り」に出かけたこともあったという。
こころの結晶:「ポテトTIPSの袋」(苦痛をやり過ごすための知恵が詰まっている)
元ネタらしきもの:「ハンニバル・レクター」「佐川一政」「パリ人肉事件」
「私は、どんな賑やかなお祭りに参加しても、なんか冷めてる。
だから、焚き付けてみたんだよ。」
youに対して人生の悲しみや喜びなどありがたい話を説いてくれる人物。
生きる虚しさを感じていたある日、「センセイ」なる人物に出会うことによって生まれ変わったとのこと。
その話術のセンスは天才的で、彼の話を聞くために財布の紐をどんどん緩めてしまう人が大勢いたほど。
それ故、自身の才能に自惚れている面があり、センセイのことを内心では見下していたようで、
いつか「ガッコウ」を乗っ取り魅惑の総合商社を作るとのたまっていた。
こころの結晶:「弁論大会の
トロフィー」(10代の頃に貰った全国選手権のトロフィー)
元ネタらしきもの:「上祐史浩」「
オウム真理教」
「果たして人間が作り出すもので、
本当の意味でのオリジナルってあるのかな。」
かつて有名な音楽家だったらしい人物。
「すべての芸術は模倣から始まる」という信条に基づく創作活動を行っていたが、
録音したテープが見つかったことで盗作だと非難され、その地位を失ったとのこと。
「おかゆ」が好物で、そのあまりの美味しさに脳が痺れるとか。
「楽しいメロディーで人は楽しくなる」「退屈なメロディーで人は寝る」「ディシプリンのメロディーで人は鬱になる」
といった音楽の法則を見極めることで、「家庭」を支配できると考えていたらしい。
こころの結晶:「デモテープ」(内容は不明。タイトルは「依存(デモ)」)
元ネタらしきもの:「小室哲哉」「小室ファミリー」
「君は鳥になれるんじゃないかな。
君の肉体の周辺には、カーの気配が漂ってるもん。」
ウサギの耳を持った青年。
丘の上の小さな町で両親や赤ん坊の弟と一緒に暮らしていたが、竜巻が襲ってきたことで壊れてしまったらしい。
肉体の損傷でウサギの耳になってしまった再生人間だが、元々は大空を舞うための鳥の羽を持っていたとのこと。
youに対して「人間は鳥の形をした魂(バー)と手の形をした霊(カー)、そして肉体の3つの要素から成り立つ」という、
エジプト神話に伝わる概念について語ってくれる。
こころの結晶:「うさぎのキーホルダー」(魔除け?)
元ネタらしきもの:映画「ガンモ」
「キャベツなんていいよね。
丸ごとスープに入れてゆでていると鍋の中で勝手にめくれていくでしょ。 皮が。」
包帯を頭に巻いた少年。
バケツ山で両親と兄妹と一緒に暮らしていた。
陽気な人を喰ったような性格で、ゲームと猫と野菜スープを作るのが大好き。
親友のオキシーさんが計画した街の区画整理のために山のふもとの畑から野菜を引っこ抜いて基地に持ち込んでいたらしい。
収容されていることについては「まだ子供だからすぐに出ていける」と、あまり気にしていない様子である。
「とりわけ大きな人物体。
とりわけ♀は私がもっとも苦手とするものです。
だって、コワイですから。」
テレビ番組が大好きな青年。
録画テープを幾つもコレクションしており、その一部についてyouに詳しく語ってくれる。
人と話すことを苦手・苦痛と感じており、大人、特に成人女性が苦手らしい。
「感情をあらわにするのは最低の行為」と考えているが、youの場合は「感情が見えない」らしい。
「見える物は存在する、見えない物は存在しない」という判断基準を持っている。
ウサギ人間に会った時は、ビデオの中のキャラクターが出てきたと思って驚いていたようだ。
何故収容されているかは自分でも分からず、夢なのか現実なのかもハッキリしないとのこと。
昔はおやつの時におじいさんが作ったチップスを食べる習慣があり、
白い壺の中に入っていて、食べると「コリッ、ボリッ」と音がしたらしい。
(それって遺骨じゃないかな?)
こころの結晶:「ビデオテープ」(内容は不明)
元ネタらしきもの:「宮崎勤」「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」「夢のなか、いまも」
「若竹は希望に満ちている。 すくすくと育つ。
その前に刈り取ってスープにして飲みたい。」
「センセイ」と呼ばれる、多くの迷える子羊を導いてきた指導者。
常識では無理と思えることも、彼のジュギョウを受ければ可能になるとyouに説いてくる。
同じ所をぐるぐる回っていると、ある日この世の真理が見えてくるらしい。
街頭演説ができる車でセイトたちと一緒に魔都へ出かけることもあったとか。
セイトの一人であったセールスマンについては、その自惚れ屋な性格を見抜いていたようであり、
「自己顕示欲が強すぎる、出来の悪いセイトだった」と語っている。
また、自分のセイト全員ですら出来が悪すぎると思っていて、
「ガッコウ」の過去の所業については「セイト達が勝手にやっただけ。自分は潔白だ」等と弁解していた。
ちなみに、収容者の食事に出されるスープの出汁は彼の体液らしい。
こころの結晶:「食品見本」(生ハムと果実を組み合わせた前菜料理)
元ネタらしきもの:「麻原彰晃」「オウム真理教」「サットヴァ食品」
「オレはアンタを絶対許さないから。
*ちゃんの無念を晴らすため、オレはここまで来たんだ。」
紙袋を被った青年。
彼は*が看板女優として活動していた劇団のメンバーだったらしい。
何故か、youの顔を見るなり憎悪を剥き出しにして糾弾してくる。
また、*は交友関係が広かったようで、彼も一時期親しかったようだ。
「辞世の句」の名称から考えるに26人目のボーイフレンドと思われる。
物語の根幹に関わる事実を知る人物。
こころの結晶:「*の写真」(仲睦まじいカップルの様子)
元ネタらしきもの:「渋谷区短大生切断遺体事件」
「誰でもよかったから、抱きしめて欲しかった。
それができるか? あんたに。」
頭部の形状が特徴的な青年。
外の世界では親しい友人が誰もおらず、孤独だったらしい。
その寂しさや虚しさを主人公に対して訴えてくる。
「天国」に旅立つ日までのカウントダウンを続けている。
実は収容される前に、*と紙袋がデートしているところを目撃している。
こころの結晶:「∞
携帯電話」(あらゆる電話回線に繋がる夢の電話)
元ネタらしきもの:「加藤智大」「秋葉原通り魔事件」
「調律。まだ言語というものを獲得していない乳児と
接するための方法は、それ以外にあるか?」
ディシプリンを設計した人物。
矯正教育の研究を30年続けた人物で、この施設はその集大成らしい。
仕事に打ち込むタイプで、あまり家庭を顧みなかったらしいが、
外ではそれなりに親しくしている「男トモダチ」がいたようである。
そのせいで病気にかかったりしている。
こころの結晶:「試作品」(youコンの原型となったシンボル)
元ネタらしきもの:「ミシェル・フーコー」「監獄の誕生」
「電気を自由自在に操ることで、
あらゆる主体は自意識を捨て去り、私に隷属することになる。」
興行格闘団体「DOG RADAR」の運営者を自称する人物。
見せかけではない命をかけた本物の闘争にこだわりがあり、
観客に最高のショーを見せるために電気を使い「犬」を調教していたという。
彼の技術によってあらゆる感情は反転し、恐怖は悦びに転じるらしい。
だが、youが試してみたいと言うと「君は犬か? 人間にはしないのだ」と断られる。
彼の言う「ショー」の内容を考えると、何か理不尽な気がしないでもない。
なお、過去にセンセイ達が彼の装置を買いたいと言って訪ねてきたが、
あまりにも知識が乏しかったので追い返したとのこと。
セイト達のジュギョウに使用するつもりだったのだろうか。
こころの結晶:「双頭の首輪」(動物が繋がれていたのか、それとも‥‥)
元ネタらしきもの:「松永太」「消された一家(北九州監禁連続殺人事件)」「関根元」「
冷たい熱帯魚(埼玉愛犬家連続殺人事件)」
僕たちは、細くて小さい木の枝をふたつ砂浜に立てた。どちらが残るだろうか。
僕のほうもすぐに倒れるだろうと思っていたけど、予想に反していつまでも残っていた。
*って本当に負けず嫌いだ。わかった。今度こそ受け止めてみよう。
【追記・修正罪】
「ディシプリン*帝国の誕生」の項目を追記・修正した罪。
- タグのラインナップが見たことないくらいひでぇな… -- 名無しさん (2014-10-19 22:06:15)
- 一人だろ どこに居たって一人だろ 二人で居ても 一人と一人 -- 名無しさん (2014-10-20 08:16:31)
- タイトルだけは聞いたことあったけど、こんなゲームだったとは…しかもWiiだなんて… -- 名無しさん (2014-10-30 20:32:24)
- 任天堂もよくこのようなゲームをwiiで配信したよな…。しかも、ポケモンのウェアよりも売れたというからすごい…。 -- 名無しさん (2014-11-11 22:34:30)
- 続編の制作が予定されてたらしいけれど、その後音沙汰ないな…。やっぱりその内容故に、たち消えになっちゃったんだろうか……。 -- 名無しさん (2014-11-11 22:59:09)
- ↑そりゃあただでさえ凶悪犯罪者や小室をモチーフにしたキャラを出したからなぁ。下手すればどこかから訴えられてもおかしくないのに、また石橋を叩いて渡るようなマネを誰もしたくはないだろう。 -- 名無しさん (2014-11-12 06:08:24)
- 意外とそんなに凶悪じゃない人も混ざってたり -- 名無しさん (2015-04-27 21:40:36)
- 元ネタがエグすぎる・・・・・・ -- 名無しさん (2015-09-03 20:19:39)
- 小室さん自身が過去に往年の名曲を(アレンジした上でのとはいえ)引用を認めている発言をしているだけに、何ともいえない。パクリとリスペクトの境目が本気でわからなくなる。 -- 名無しさん (2015-09-05 06:52:15)
- 佐川のポテトチップスは何を意味しているのか未だに分からない。 -- 名無しさん (2016-09-14 01:08:53)
- 「収容者の偽の記憶」「クローン技術がないはずなのに同じ顔」あたりから、ディシプリンはyouの妄想の産物なのかなーと。所長は*で、産み直しは罪をなかったことにしようとしてるのかと。でもyouは各収容者に分化された自分の罪と向き合ったことで、結局罪の意識=機械の赤ん坊に押し潰されたのかなーとか思ってる。 -- 名無しさん (2016-10-19 03:20:22)
- 3月27日でwiiショッピングチャンネルのポイント追加が終了になるから、今のうちに買っておかないと2度と遊べなさそうだな -- 名無しさん (2018-03-26 07:14:20)
- ラスボスの赤ちゃん産みなおしなどで「赤子の世話」を連想させられがちだが、本質に「介護」のドス黒さが滲み出てて良い意味で不快なゲーム。ちょうど監督が親の介護で長期休業していて、親の死後に復帰してからの作品であることと関連は・・・あるんだろうなあ・・・ -- 名無しさん (2021-06-14 16:40:38)
- 絶対にリメイクとか出ないゲーム 発売当時には生きてたモデルが死刑執行されたりとか時代も流れたな… -- 名無しさん (2021-12-10 10:07:53)
- これはクソゲーじゃね? -- 名無しさん (2023-12-28 18:38:24)
最終更新:2024年06月15日 14:53