生ポアニキ

登録日:2014/12/03 Wed 22:58:30
更新日:2023/05/10 Wed 20:59:38
所要時間:約 6 分で読めます




「鍛えろ! 筋肉は裏切らない!!」


●概要

『生ポアニキ』はアサウラ氏によるライトノベル作品。オーバーラップ文庫から刊行されている。イラストは赤井てら氏が担当。
実際のタイトルは『♂』の円の内側に『ポ』の字が収まるデザインになっており、
背表紙に半裸のマッチョが写っている(表紙には美少女もいるけど)のも相まってアッー!な作品を連想してしまうかもしれないが、内容はいたって健全な青春モノとなっている。うん、間違ってない……ハズ。
実際にはそれ系のネタを意識させる書き方をワザとしているだけで、ガチな内容ではない。
同作者の『ベン・トー』シリーズと比べれば直接的な表現は少ないと言える。

登場人物の一人でこの作品の象徴とも言える「アニキ」の関係で、筋肉に関する用語が多く登場し、
それに付随して筋肉トレーニングや健康関係の豆知識が多く、読んでいると筋肉を鍛えたくなるかもしれない。
料理描写もベン・トーに次いで細かく、読み進める内に腹が減ることも。
とはいえ、あくまでこの物語の根幹は気弱な主人公「木村ユースケ」によるハイテンション・マッスル・ラブコメにあり、漢の仕上った熱い筋肉が唸りを上げる内容となっている。
ん? 別に間違ってないよ?

単行本は既刊2巻。第2巻『生ポアニキ パンプアップ』は、第1巻発売よりおよそ2年越しの刊行となったことで話題を呼んだ。


●ストーリー(生ポアニキ特設サイトより)

半不登校で孤独な生活を送る木村ユースケは、カウンセラーの勧めで新たに設けられた『恋愛生活保護』を申請した。
これで相性の良い自分好みの女の子が現れて、幸せになれる……はずだったのだが、
約束の日、家に来たのは女の子ではなく、一糸まとわぬマッチョな“アニキ”だった!

一方で本来現れるはずの鳳来寺ユリは転校生として現れるも、ユースケの好みとはことごとく違う。
家に住み着いたアニキ、ユースケを拒絶する転校生、そして秘密を抱えて近づくクラスメイト・松笠アザミ……。謎が謎を呼び、アニキの汗がほとばしる!

果たしてユースケに恋人は出来るのか!?
全ての答えは筋トレの先にある!
少年少女と一人のマッチョが織りなす健全なる物語。
ハイテンション・マッスル・ラブコメここに交付!!


○恋愛生活保護

この作品独自の設定であり、名称の通り、現在日本にもある生活保護の一種。
具体的には生活保護法で定められている八つの扶助、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助に次ぐ九つ目の扶助となる『恋愛扶助』のことを指す。
内容は誰もが当たり前に持っているものと言われる『つがい、恋人、夫婦』を扶助するというもの。
ある3人の天才によって数年前に追加された制度であり、少子化や未婚率の上昇といった問題を背景に改正が認められたのだという。

当然、世間からの反対は存在し、致し方ないことだが金銭などとは違うあまりに直接的な扶助内容から、この制度を公的な風俗サービスではないのかという偏見も存在する。
天才が考案した制度とはいっても過去に暴行事件に発展したケースもあり、問題点が無いシステムではないのも事実。
しかし扶助の目的は愛や恋といった感情を促すといったものであり、引き合わされた両者が必ずしも近い存在になる必要はなく、一定以上の介入は両者の同意がなければ成立せず、片方が拒否すればその時点で恋愛保護は打ち切りとなる。
パートナーの選考も心理テストやカウンセリング、身体特徴、DNAレベルの検査で導かれる結果である上、申請する者への審査も悪意ある受給者を出さないために厳しいものとなっている。


●主要人物

  • 木村ユースケ
この作品の主人公である16歳の少年。高校生2年生だが、現在は半分不登校の状態となっている。
気弱かつ陰湿な性格であり、不摂生も祟って体は痩せているのに少し腹が出ている。
眼鏡をかけているが、外したからといって実は可愛かったりプチ美形だったりということはない。
通っているカウンセリングで恋愛扶助を勧められ、僅かな期待と胸に申請するが、何故か送られてきたのはマッチョな肉体を持つ「アニキ」だった。
アニキとの共同生活には初めは戸惑っていたものの、彼の献身と漢気によって心を開くようになり、その生活にも次第に馴染んでいく。

  • アニキ
ユースケの家へ送られてきた仕上った肉体を持つ漢。
筋肉の威圧感とは裏腹に、性格は誠実かつ優しさに溢れる好人物。
本名は不明で、周りには自分のことを「アニキ」と呼ばせている。
その筋肉美を維持し魅せつけることに余念がなく、家では料理等の時以外は常にパンツ一丁。
人に注目されるとすぐにポージングを決め、何かあるとまず筋トレを勧めてくる。
扶助で来ただけあって料理をはじめとした家事全般に精通しており、以前の木村家では考えられない健康メニューが食卓に並ぶ。

  • 鳳来寺ユリ
ユースケの扶助としてやってきた16歳の少女。しかし、何故か彼の家には既にアニキがいた。
赤毛が特徴的な美少女であり、スポーツ全般が得意。気遣いはできるものの、物事ははっきりと言うタイプ。
アニキの存在には戸惑ったが、ユースケの扶助としての務めを果たすために彼の通う学校に転校する。
全裸のアニキと一緒にいたことで最初はユースケをガチなそっち系と勘違いしてしまい、一応誤解は解けたものの色々あってまだ半信半疑。
彼女が恋愛扶助をしているのにはある理由がある。

  • 松笠アザミ
ユースケのクラスメイト。大人しくぼーっとした雰囲気を持つ地味目の女子。
アニキのことでクラスメイトから詰め寄られていたユースケを助ける。
実は彼女も恋愛生活保護受給者であり、枲耳まきと同居している。
扶助でやってきたまきのことは好きだが、恋愛的な対象ではないとのこと。
2巻では……

  • 枲耳まき
アザミの同居人。仕事の時はバリバリのキャリアウーマンだが、プライベートではヤバいレベルのずぼら。
アザミに扶助されてやってきた女性だが、アザミと同じく恋愛的な感情はないらしい。


・余談

後書きにも書いてあるし、読む人によっては分かるのだが、この作品のタイトルと、大まかな設定は同じ作者の作品である『ベン・トー』シリーズ内で登場したネタ的なエピソードが元になっている。
具体的にはベン・トー第10巻にて、バレンタインチョコを貰えない現実に絶望する主人公の友人(矢部、神田、倉田)達によって交わされた議論の中に『生活保護法によって支給される恋人』という内容が登場し、それを聞いた白粉花によって『ノンケの家に男が支給される』という腐ったカタチに歪められ、彼女の頭の中にネタとして貯蔵されてしまった。
しまいには、ベン・トーのコミカライズ作品である『ベン・トー アラカルト』には白粉花著の同名タイトルが登場している。

あくまでファンサービスと思われ、現状この作品が『ベン・トー』のスピンオフかは不明。
一巻の帯に「白粉花先生推薦!」とでっかく書いてあっても、関係ないといえば関係ないのである。



追記・修正は連続スクワット85回をやりきってからお願いします。

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最終更新:2023年05月10日 20:59