登録日:2015/04/04 Sat 11:18:29
更新日:2025/03/01 Sat 12:38:35
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むかしむかし、中国の後漢という時代に禰衡という男がおりました。
禰衡は並外れた才覚の持ち主で、儒学の祖である孔子の末裔・孔融の親友でもありました。
しかし、周囲の人をすぐに馬鹿にすることが非常に多かったため、ほとんどの人からは嫌われておりました。
ある日、24歳の禰衡は孔融の推挙により彼の友人・曹操のもとを訪れます。
しかし禰衡は、
曹操とその配下が大勢控えている前へ来ると大声をあげて嘆きました。
「ああ、天下はこんなにも広いのに、どうしてまともな人材が一人もいないのだろう」
曹操は尋ねます。
「それはどういうことかな?」
禰衡は曹操の部下たちを一人一人指名しながら答えます。
「荀彧は弔問に行くしか能がありません。
その甥の荀攸は墓守でもしていればよいのです。
趙融は食うことしか頭にないデブです。
程昱は老齢ですから門番しかできないでしょう。
郭嘉は手紙を読んでいればいいのです。
張遼は太鼓でも叩いていなさい。
許チョは牛や馬の管理をする仕事ならぴったりでしょう。
楽進は帝からの命令を伝えるだけでいい。
李典はただの伝令で十分です。
呂虔は刀を打つことしかできません。
満寵は酒桶を作ってその粕を食っている姿がよく似合います。
于禁はただの大工でしかありません。
徐晃は牛や豚を殺して肉屋でも開いていればよいのです。
夏侯惇は手足があるだけマシなカ○ワの将軍です。
曹仁はお金に執着することしか知らない卑しい男です」
突然現れた謎の若者に、ここまで馬鹿にされたのですから、曹操の部下たちは黙っているはずがありません。
しかし曹操は落ち着いてこう答えました。
「お主の太鼓叩きの腕前は素晴らしいものだと聞く。そこまで言うのなら、一つ太鼓を叩いてみてはくれないか」
禰衡はこれを引き受け、曹操らの前で太鼓叩きを披露しました。
その腕前は、怒りを覚えていた部下たちもそれを忘れてしまうかのような見事なものでした。
太鼓叩きには間違えるとその場で服を着替えるという掟がありましたが、禰衡は間違いを指摘されるとその場で素っ裸になって着替えて見せ、
「私の体は潔白です、貴方のように汚れてはいません」
と答えました。
曹操は答えます。
「お主の才能はよくわかった。お主にはその実力以上の名声があるのだろう。
ここで私がお前を殺せば、私は天下から名のあるものを身勝手な理由で殺したと誹りを受けるだろう。
私にはお前を受け入れるほどの能力はない。荊州に
劉表という男がいるから、その者ならお主の才能もいかんなく発揮できるだろう」
こうして禰衡は劉表のもとへ向かうことになりました。
旅立ちの日、曹操らは「彼が別れの挨拶に来ても、我々は常に寝たふりをしておこう」と計画しますが、その場にやってきた禰衡は
「別れの挨拶に来たのに、ここには棺桶と死体しかない。こんなに悲しいことがありましょうか」
と泣いてみせました。
劉表のもとへやってきた禰衡は、主君には下手に出ていましたが、その部下たちにはやはり傲慢な態度をとりました。
やがて劉表も禰衡の目に余る態度に辟易し、部下の一人である黄祖のもとへと追い出します。
始めのうちは黄祖とも良い関係を保っていましたが、次第に禰衡は傲慢になっていきました。
ある日禰衡は黄祖にこう言いました。
「貴方はまるで社の神様のような人ですね。だって供え物を貰うだけ貰って、供えてくれた人には、何の利益も与えていないのですから」
この言葉に黄祖は怒り、ついに禰衡を殺してしまいました。
禰衡の死を聞いた曹操は、「変人らしい最期だな」と笑ったといいます。
とっぴんぱらりのぷう
禰衡は中国後漢の末期の人物で、平原に生まれた。
読み方はデイ コウあるいはネイ コウとも。字は正平。
上記の話は小説『三国志演義』において脚色された部分もあるが、だいたい史実通りである。
大きく違うところといえば、曹操の部下たちを彼らの眼前で軒並み舌鋒でなで切りにしたぐらいか。
実際に馬鹿にしたのは荀彧と趙融くらいで、ついでに言うと趙融の名前は史実でもこの悪口の中にしか出てこない(故に演義には未登場)。
ついでに言うと、禰衡が指摘した「銭ゲバ野郎」は曹仁ではなく曹洪の間違いである。
他にも、後に曹操に仕官する陳羣や、関わりのあった司馬朗のことも見下している。
そんな禰衡でも、自分を推薦してくれた孔融の他、楊修の2人だけは認めていた。
しかしこの2人も、後に曹操の怒りを買って処刑されている。
類は友を呼ぶ、といったところか。
政治的な実績は何一つ作らぬまま、
三国志の舞台から退場した人物だが、歴史上屈指の煽り野郎として三国志ファンの間では有名。
特に、当時圧倒的な権力を持っていた曹操に対して真っ向から罵倒し、彼から出された難題を次々とクリアしていく痛快ぶりは、現在の中国においても人気が高い。
彼を主人公とした劇の演目が存在するほどである。
<メディア作品での扱い>
初登場はⅤで、知力は92と軍師としては申し分のない数値を誇る一方、魅力は23と最悪に近い数値。
政治力も高水準をマークしていたが、Ⅶで爆下げ。
知力も凡軍師以下まで低下し、Ⅸで武将としてはリストラされてしまった。
才能はあっても実績がゼロなため、数値設定が難しかったものと思われる。
これだけ人を煽る才能を見せつけておきながら、持ってくる計略は挑発系ではなく悉く知力低下計略。
相手を怒らせて冷静な判断を失わせるという意味だろうか…?
Ver3.0ではR軍師カードとして登場。範囲内の敵の知力を下げる陣略持ちで、地味にSR徐庶の相棒として活躍した。
再開後は群雄でなく漢に所属しているが、相変わらず知力低下計略を引っ提げている。
1コストの方はかなりスペックが高い上に知力を下げた相手が計略を使うと武力が上がるという、より相手が怒るような計略にされている。
追加された2コストの方は自分以外の味方諸共知力を下げる漢鳴計略という全てにおいて癖の強い性能をしている。
勢力は群雄、兵種は鬼謀、CVは
井上和彦。
肩書は「毒舌詭弁(★4)」⇒「破天荒(★5)」⇒「皮肉の権化(★6)」。
敵全体を猛毒状態するスキルを持ち、指南クエスト等では重宝する。
回復がやや低い点以外は中堅クラスのステータスを誇っている。
馬鹿どもに俺の記事が追記・修正できっかよ!
- 人物評をよくし、権力者におもねらない、批判を慎まない、いわば”名士”の究極形ではあるが、行き過ぎて手段と目的が逆転しちゃったクレーマー。今の時代に生まれたら絶対ヘイトスピーチとかしてそう -- 名無しさん (2015-04-04 12:20:54)
- 「こんな奴と一緒に仕事をしたいか?」と聞かれたら満場一致で「絶対にノゥ!」と答えたくなるような性格してる以上、どんなに能力高くとも雇ってはもらえないよね。という典型。仕事にはコミュニケーション能力が必要なのは今も昔も変わらんというわけだねw -- 名無しさん (2015-04-04 16:21:27)
- 人間性で身を滅ぼした典型だねぃ -- 名無しさん (2015-04-04 18:04:47)
- 無双には禰衡の禰の字すら、図鑑に出てこないからな…。まぁ「曹操を罵倒した」以外の出来事がないから、戦闘させずらいんだろうが -- 名無しさん (2015-04-04 23:00:20)
- 「ぶーちゃん痛いでちゅかぁ〜www」「なんで負けたのぉ?俺なんかにぃ」三国志パズル大戦の禰衡の煽りは井上和彦さんの演技もあって本気でムカつく。ボイス再生させたくないレベル。 -- 名無しさん (2015-04-05 09:17:31)
- 三國志Ⅸだと、ランダムイベントで悪口言ってくるから、斬るか見逃すかっていうのがあったような。 -- 名無しさん (2015-04-05 12:27:46)
- こういう人ネット上でもいるよなぁ…。政治家に対して批判を言いたい放題言うくせして、その政治家に今後どのようにして欲しいのかを言わない評論家気取り。昔も今もこういう自意識過剰な奴はいるもんだなと思う。 -- 名無しさん (2015-04-05 17:55:00)
- 「悪口がやたらうまかったので後世に名を残した」という凄い人物。どんなものも極めると何がしかの価値を生むのである。 -- 名無しさん (2015-04-06 16:03:09)
- 曹操が大人の対応すぎて見事 -- 名無しさん (2016-08-23 16:55:09)
- 斬れっ -- 名無しさん (2017-05-23 21:11:00)
- 無用の人間だけど命をかけて悪口言ってる姿勢だけは立派。変な所で硬骨の中国人気質 -- 名無しさん (2017-05-23 21:39:00)
- 鶏の物真似だけで主人を助け後世に名を残した人もいるというのに…相手をやり込める、じゃなくて怒らせる達人だから政治の場では使えないし敵武将への挑発は拡声器がない時代だからほぼ無理だろうし…うん、使い道ないね -- 名無しさん (2018-08-02 15:16:17)
- 勢いや身振りや態度込みで怒らせるタイプだから文章だと威力減るタイプの煽りだしね -- 名無しさん (2020-02-11 05:31:11)
- 間違っても一緒に仕事したくはないが、陰ではなく堂々と批判する辺りは気骨あるなw -- 名無しさん (2020-08-24 00:15:46)
- ↑8 面と向かって煽っている辺り、SNSで喚いている奴らよりは有能なのかもしれん。現代にいたら、意外と大きな支持を得られ……やっぱ無理か -- 名無しさん (2021-07-06 19:53:48)
- 平和な現代日本で煽り発言を芸風にしてる人間とは一線を隠してると思うわ。次の瞬間に刀抜かれて殺される可能性が九割以上って時代・権力・シチュエーションでやり抜いてるんだから。現代で言うなら治安の悪い国で銃持ってる奴の目の前で言うレベルでは? -- 名無しさん (2022-11-11 02:39:13)
- タグは有吉になってるけど、笑えない毒舌って意味ではウーマン村本とかのがイメージに合いそう。 -- 名無しさん (2022-11-11 19:15:22)
- 名士層の褒め合いの時代、曹操も「あいつ名声だけはあるから殺すと俺の名声が落ちる」と言って殺すのを避けたわけだし、有名人の立場をかさに着て殺されたりしないと舐めてただけと思うなあ -- 名無しさん (2022-11-11 19:21:26)
- 三国志Vの禰衡は確かに能力は高いが隠しパラメータの性格のせいで何をやらせても忠誠度が下がってゆき、ほぼ出奔してしまうのだ。 -- 名無しさん (2022-11-11 20:53:29)
- 古代中国にもひろゆきいたんだな・・・ -- 名無しさん (2023-01-23 23:55:03)
- 古代中国に宮廷道化師の概念があったら彼はハマり役だろうな。彼自身がそれを良しとするかは別だが -- 名無しさん (2024-01-12 10:06:29)
- 才能大好きな曹操が登用しなかったって事は大した能力を持ってなかったんだろう -- 名無しさん (2024-06-18 06:45:48)
- 京劇では彼が主役扱いの独立演目「打鼓罵曹」があるくらいの人気 やっぱり絶対的権力者が無名の人に真正面からやり込められる状況がウケるんだろうなぁ -- 名無しさん (2024-07-13 20:33:14)
- 太鼓の失敗の件はあのパフォーマンスがしたくてわざと間違えたとしか思えない -- 名無しさん (2024-11-27 02:18:00)
最終更新:2025年03月01日 12:38