ドイツ連邦軍

登録日:2011/11/21 Mon 22:44:22
更新日:2025/01/22 Wed 23:13:03
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ドイツ連邦軍とは栄光ある第三帝国国防軍の残骸である

以上!

追記・修正よろしくお願いします。










「連中項目を立てて勝った気でいるな、ならば教育してやろう」




   *   *
 *   + アハトウング!もちろん違うぞ戦友諸君!
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *

しかし、こんな項目を見ている諸兄なら一度や二度はドイツ軍でググったことはないだろうか?

そしてヒットする項目は殆どがドイツ国防軍で結果的に連邦軍の方は影が薄くなりがちではある。

では今回はドイツ国防軍の末裔ドイツ連邦軍の歴史を少し紐解いてみよう。


概要

現在ドイツ連邦共和国が所有する軍隊。
某大手wikiでは国防軍の伝統は引き継がない新しい軍隊と言っているが、実際はしっかり伝統を受け継いだ国防軍の末裔である

創設当初からNATOに(強制的に)所属し、現在はアフガニスタンの地で治安維持活動を行っている。

あまり知られてはいないがドイツ政府に軍の指揮権は(事実上)ない

これは連邦軍が兵力の大半をNATOに供出しており、この部隊に対する指揮権はNATO軍が持つ為であり、これはドイツの軍事的大国化をNATOが恐れた為である。

冷戦の最前線だった経緯もあってヨーロッパ有数の軍事力を持ち現在も維持している。と、思われていたが現在では見る影もない。
またドイツの開発した兵器は伝統的に最高の水準を誇り、多くの国が採用し、その後の基準となった傑作兵器も多い。


歴史

連邦軍の歴史は日本の自衛隊とほぼ酷似している。
冷戦の開始によって再軍備が開始されたが、すぐお隣がソ連の衛星国で地続きだったことから日本よりずっと危機的状況にあり、その為再軍備は急務であった。
が、旧軍がアレだった為様々な困難を伴うこととなった。

再軍備後は冷戦の最前線ということもあってマジで本土決戦を意識した強力な兵力が配備され徴兵もしていた。

しかし湾岸戦争では日本同様資金面でしか協力できず諸外国から非難を浴び、この結果国際協力に積極的に参加することになる。

ただ日本とは違いPKOのみならず直接戦闘にも参加し戦死者も出している。
現在でもアフガニスタンの治安維持にも参加し戦闘を行っている。



ドイツ3軍+α


○陸軍
旧軍の伝統を一番否定し、なおかつ受け継いでいる組織。国防軍の末裔。
3軍の中では最も特徴的な軍服を採用している

西ドイツ時代は地域軍と称するNATO管轄下ではない郷土防衛部隊を三軍の枠外に保有していた。
最近まで徴兵制を敷き兵力を補充していたが、2011年に「中止」された。*1

レオパルト2戦車

画像1

冷戦時代の資本主義陣営で最初に実用化された第三世代型のMBT(主力戦闘戦車)。
ヨーロッパの多くの国で運用され、実質「ヨーロッパ標準戦車」となっている。冷戦後に大放出され、運用国は更に増えた。
44口径砲から55口径砲に換装した長砲身砲版(A6)は初期不良や習熟前の体験談が取り沙汰されたせいもあり、ミリオタからの評判は悪い。
また相次ぐ改修で重量が67.5トン(A7+やA8)まで増加したため、アメリカのM1A2SEP(TUSKII仕様)とともにメタボ化したとよくネタにされる*2
実際、機動力は落ちたし(足回りも改良されたものの、原型は1970年代後半に登場した55トン級戦車なので焼石に水に近い)*3
なおA5以降に導入された楔形装甲(Schott Panzerung)の防御効果に関しては賛否両論で、未だによく判っていない。
2014年に発生したウクライナ問題の影響からか、ドイツ議会で後継戦車の開発予算を請求されたとの報道が為されたり、
現役車両を225両から328両にして205両をA7V仕様に近代化する計画が持ち上がるなど、にわかに動きが生じている。
フランスとの共同開発で、後継となるMGCS(Main Ground Combat System)の量産型を2035年に配備する予定で、2040年にIOC(初期作戦能力)を獲得する*4
またレオパルド2は今後も近代化改修を実施していく方針で、51口径130mm滑腔砲に換装するプランも提案されているという。
2023年以降には装甲強化・エンジン変更・APU更新・トロフィー*5搭載などの改良が実施されたA8を調達する模様で、ノルウェー・チェコ・オランダ・クロアチアも採用する予定である。
ドイツ連邦軍向けとして123両の調達が合意されているA8は暫定改良型で、開発中のAXは2025~2026年に試作車が登場、量産開始は2028~2030年になると見られている。
当面のT-14対策として、DM 53A1/DM 63A1*6よりも8%性能が向上した DM 73*7を調達し、2024年以降には同比較で20%の性能向上が見込まれたDM 83*8を配備する予定である。

○海軍
旧軍同様3軍の中では最も不遇な存在
特に潜水艦に関しては戦前のUボート以下の排水量しか認められないという制約から長らく創意工夫を迫られた。
ただし現在は撤廃されている。

もっとも、ドイツは東西南が陸地であり、海に面する北部もデンマークとスウェーデンがいる地理上、海軍が必要な要素が限られているというのも一因ではあるが。

  • 212A型潜水艦/212CD型潜水艦/214型潜水艦/218型潜水艦

画像2

ドイツが2000年代に就役させた通常動力潜水艦で、212A型6隻に加えて212CD型2隻を調達する予定である。
イタリア(サルヴァトーレ・トーダロ級8隻※212A型)やノルウェー(級名不明4隻※212CD型)も採用している。
またイスラエルが2021年度までに212A型ベースのドルフィン2級を3隻就役させていて、ドルフィン1級の後継として更に3隻調達することが決定している。
AIP(非大気依存推進)機能を有する水素燃料電池とディーゼル機関のハイブリッドで、数週間の作戦行動が可能。
214型は輸出モデルの準同型艦で、ギリシア(パパニコリス級6隻)・韓国(孫元一級9隻)・ポルトガル(トリデンテ級2隻)・トルコ(レイース級6隻)が採用し、
インドネシアも最大4隻の導入を検討している。
212型の拡大発展型である216型や214型を基にした218SG型は、シンガポール(インヴィンシブル級4隻)で採用されている。

  • 空軍
ある意味最も旧軍の伝統を色濃く残す組織。
創設期には戦前のエースパイロットも所属していた(ルーデル除く)。
作戦機は当初アメリカ製が多かったが、最近ではヨーロッパ製が大半を占めている。
一時期ソ連製も所有し両機が同じドイツの紋章をつけて飛ぶ姿は冷戦の終結を強く印象づけた
なお元東ドイツのMiG-29はF-16との対抗演習で互角以上と評価されたが、戦力維持に支障をきたして隣国のポーランドに廉価で売却された。
アメリカとの核兵器シェアリングを維持するため、トーネードの後継として30機のF/A-18Eや15機のEA-18Gを導入する予定だったのだが、
F/A-18の代わりにF-35を調達する案が再浮上していて、電子戦機についてもEF-2000の電子戦機型に変更する案も検討されている模様である。
またフランスやスペインとの共同開発で、EF-2000の後継になる第6世代型有人/無人戦闘機FCASを2040年までに実用化させたい模様である。


画像3

英独伊西(仏は脱退)が共同開発した第4.5世代ジェット戦闘機。現ドイツ空軍の主力。
順調に進めば間違いなく世界屈指の戦闘機になるはずだったが、開発に難航して運用開始時期が約10年ほど遅延。
初期ブロックのトランシェ1を配備する頃には、第5世代ジェット戦闘機のF-22の低率初期生産が始まっていた不遇な子。
DERA(英国防衛評価研究所)はF-22に次ぐ性能と評価したが、他の欧州機のラファール(仏)やグリペン(瑞)に劣ると判定された事もあった。
2020年の段階で最大93機の追加調達が予定されていて、アップグレードの困難なトランシェ1はトランシェ4によって置き換えられる模様である。
航空自衛隊の第4次F-X(F-4EJ改の代替)商戦の際には、日本のHENTAI技術による魔改造を期待するミリオタも少なくなかった。
2022年には百里基地に飛来し、空自との共同演習を行った。

○戦力基盤軍&救護業務軍
組織面における最大の特徴。陸海空の補給組織と医療機関を統合し、それぞれ独立した軍として組織化した。


画像4

ドイツが近年創設した特殊部隊。創設が近年となったのは歴史的な問題から。
アフガニスタンにも出動したそうだが、実戦経験の問題からか実戦には参加せず見学ばかりしていたそうである。
詳細は「KSK」を参照。


旧軍との(建前上の)決別


第三帝国が非常にアレだった為。再軍備に関しては自衛隊以上に国内外問わず反発が非常に大きかった。

その為連邦軍は(表向きは)旧軍の伝統を引き継がない新たな組織として出発する必要があった為、
紋章や名称、装備など様々な制約が課せられることとなった。

一例をあげると

  • 軍服
旧軍の伝統の決別、という建前上、同じ軍服を特に陸軍では採用するわけにもいかず新しい軍服を採用することとなった…のだが、
そこはドイツ軍、各国が考えないような独特の軍服を考え出す。
なんと軍服の上下で色が違うのである



上着は灰色、ズボンは黒というその奇抜すぎるデザインは他の国では真似することができずドイツオンリーとなっている。
※ただし旧国防軍時代から上着に比べズボンの生地の色が若干薄い場合もあったようで、連邦軍の時代から採用したと一概には言えない模様。


制帽は第三帝国自体と同じ官帽型のものが存在するがほとんど見る機会は無く、基本的にはベレー帽をかぶっている。
これについて旧軍との決別のためという説も出回っているが単純にコストの良さからとされる。

  • 勲章
実は連邦軍にはつい最近まで勲章というものが一切存在しなかった。
(ただし旧軍からの参加者については鉄十字勲章の着用が許可されたが)

しかし、アフガニスタンでの戦闘によって戦死者が出ていく中、戦意高揚の為にドイツ政府も勲章を制定する。

その名も「勇敢な行為の為の栄誉十字章」…なんかダサい。

画像5

見た目は金になった以外は鉄十字勲章そのものである。
いつの世も軍人と名誉は切り離せないものなのである。

  • フリッツヘルム
ドイツ軍の代名詞ともいえる装備だが、旧軍が装備していた為連邦軍では長らくアメリカのM2ヘルメットを装備していた。
しかし各国が採用していく中でついに採用に踏み切るがNATO諸国では一番後発となった。
因みに消防やGSG-9を含む国境警備隊では普通に装備していた。

  • 指導と道徳理念学校
世界でも珍しい軍学校。
ナチス時代に犯した過ちを繰り返さぬよう、将官から下士官までが一定期間学ぶ。
そもそもの元凶はヒトラーを始めとした政治家じゃね?とか考えてはいけない。
軍人たる者は政治家ではなく、国に忠義を尽くすべきなのだ。

創作作品


存在しない……と思いきやしっかり存在している。代表的なのが、『エロイカより愛をこめて』のクラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハであろう。
所属はNATO明記になっているものの、ドイツ連邦軍所属の軍人としては最も有名な人物とといえるだろう。『翼のシグルドリーヴァ 狂撃の英雄』ではドイツ連邦陸軍大尉が主役となっている。
出番こそ少ないものの『勇気爆発バーンブレイバーン』ではハイデマリー・バロウは連邦海軍の所属、架空世界ではあるものの、「シュヴァルツェスマーケン」のキルケ・シュタインホフは西ドイツ軍(ドイツ連邦軍)所属である。

ラウラ・ボーデヴィッヒとクラリッサ・ハルフォーフの両名も所属はドイツ連邦軍であるはずだが、ドイツ軍表記であり詳細は不明。


余談


  • ドイツの社会福祉と徴兵は縁が深い。
    なぜなら法律によって徴兵を拒否した者は同じ期間を社会福祉活動に従事しなくてはならないと定められており、
    これがドイツの社会福祉の根幹をなしてきたのである。
    徴兵制が「中止」したいま福祉への人材供給も止まったわけで、これが近年まで徴兵制を廃止できなかった大きな原因でもある。

  • 周辺国との政治調整などで再軍備までに10年も掛かってしまったため、西ドイツ軍の創設は当初の想定以上に困難が生じた。
    WWIIの兵役経験者は民間企業で要路を得ている場合も多く、部隊の指揮統制を担う士官の人材確保に苦労したと言う。
    また発足から間もない頃は反戦感情や徴兵制に対する忌避感も強く、日本の自衛隊員と同様に国民から厳しい目で見られていた。

  • 冷戦終結後は旧ソ連崩壊に伴う防衛最前線の東遷とドイツ統一(事実上の東ドイツ吸収合併)に伴う社会的コスト増大のため、平和の配当として軍縮を敢行した。しかしこれが行き過ぎてしまい、海外派遣が増えたにも係わらず国防予算はGNP比1%台までに低下。陸海空の三軍で主要兵器の稼働率が大幅に悪化し、更には徴兵制廃止によって人員確保も苦労するようになってしまった。経済が好転して2010年代半ばを迎えると、クリミア危機・ウクライナ東部紛争の影響もあって流石に問題視されて現状改善を叫ばれ続けられたものの、苦境からは未だに立ち直っていない。



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画像出典(上から順に):
画像1 ttp://report.militaryblog.jp/e307774.html
画像2 ttp://konflikty.wp.pl/kat,1020231,title,Poslowie-PiS-zawiadomili-prokurature-ws-zakupu-okretow-podwodnych,wid,16207648,wiadomosc.html
画像3 ttp://nashew-m2f1.blogspot.jp/2013/03/nato.html
画像4 ttp://www.faz.net/aktuell/politik/ausland/afghanistan-bundestag-verlaengert-anti-terror-mandat-1727303.html
画像5 ttp://www.asaho.com/jpn/bkno/2008/1013.html

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最終更新:2025年01月22日 23:13

*1 2024年現在、「再開」はしていないがウクライナ戦争の影響で徴兵制再開の動きが強まっているそうな。

*2 当事者である米独もMBTの重量増加に頭を悩ませていて、M1E3やMGCSは50トン級戦車として構想されている。

*3 A8は1600馬力のMTU MT-883エンジンに変更しているため、パワーウェイトレシオが僅かに改善された。

*4 スケジュール通りの進行は困難だと見られていて、5年から10年の計画遅延が報道されている。

*5 イスラエル製のアクティブ防護システム(APS)で、飛来してきた対戦車ミサイルや携行対戦車兵器をハードキル用の発射体で迎撃する。

*6 120mm滑腔砲L44/L55用の装弾筒付翼安定徹甲弾

*7 120mm滑腔砲L55A1用の装弾筒付翼安定徹甲弾

*8 開発時にKE2020Neoと呼称されていた120mm装弾筒付翼安定徹甲弾