登録日:2011/01/17 Mon 23:20:45
更新日:2024/10/28 Mon 07:20:38
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『BATMAN:BLACK&WHITE』とは、DCコミックスから96年に4冊に分けて刊行された「バットマン」のミニシリーズ、及びそれらを一纏めにしたアンソロジー作品。
アメコミ作品と云えば、全ページカラーで印刷されるのが普通だが本作はその名の通り「白黒の線画」…それも殆どの作品は
スクリーントーンも使わずに描かれているのが特徴で、無論こうした形態の大人向けの本格志向のコミック作品は以前から存在していたものの、人気コミックヒーローである「バットマン」を題材にした同シリーズは出版企画として意義があった事は勿論、商業的にもヒットを収める事に成功した様である。
日本では99年に小学館からハードカバー、ケース付きの美術書の様な形態で発売された。
日本からは「
AKIRA」のヒットにより世界的な名声を得ていた大友克洋が参加した事でも知られる。
【#1】
●カバー
●PERPETUAL MOURNING
“尽きせぬ哀悼”
※常に勝利を収めていると信じられているバットマンのキャリアに隠れるあるかも知れない°黷「思いを描いた一編。
●TWO OF A KIND
“似た者同士”
※傑作アニメシリーズを手掛けた氏による
トゥーフェイス=ハービー・デントを主人公にした物語。
深いドラマとラストの余韻は屈指の物。
●THE HUNT
“狩り”
※「X-メン」「ウルヴァリン」のアーティストとして知られるアダム、アンディの父親たる名匠によるバットマンのロマン性をテーマにした
ファンタジー色の強い作品。
●PETTY CRIMES
“ささいな悪事”
※何処にでも居る男性が些細な事でキレて犯罪を引き起こす姿を描く。
大人向けだからこそのリアルな設定が光る。
●THE DEVIL'S TRUMPET
“悪魔のトランペット”
ホセ・ムーニョース(画)
アーチー・グッドウィン(話)
※伝説のトランペットを巡る
都市伝説風の物語。
…バットマンは…。
【#2】
●カバー
●LEGEND
“伝説”
※戒厳令の敷かれた未来世界で語られる御伽話…。
彼≠ヘ黒い衣装を纏い空を飛び、水に潜り、悪を駆逐しました…。
…そして。
象徴たるバットマンだからこそ描ける物語。
●MONSTER MAKER
“怪物を生むもの”
- リチャード・ベーコン(画)
- ジャン・ストルナッド(話)
※解決法の見つからない社会の歪みをテーマに据えた物語…。
尚、バットマンには東南アジアの人身売買に挑む小説も存在する。
●DEAD BOYS EYES
“死んだ少年の眼”
※ゴッサムの「守護者」バットマンに新たな解釈を与える、観念的な物語。
●THE DEVIL'S CHILDLEN
“悪魔の息子達”
ホルヘ・ザッフィーノ(画)
チャック・ディクソン(話)
※リアルな犯罪サスペンスとしての「バットマン」を鮮やかに切り取った作品。
●A BLACK AND WHITE WORLD
“黒と白の世界”
サイモン・ビズリー(画)
ニール・ゲイマン(話)
※先鋭的なビズリーのアートで描かれるのはバットマンとジョーカーによる
メタ発言満載の楽屋オチ…と云うコメディ作品。
時代にそぐわず出番を失った某悪役の境遇が…(泣)
【#3】
●カバー
●GOOD EVENING, MIDNIGHT
“今晩は、ミッドナイト”
※トーマス・ウェインから息子、ブルースに宛てた手紙へのメッセージを通して描かれるアルフレッドの想いを描く物語。
ラストには2パターンがあるが、変更前のが日本人には絶対に良いと感じる筈(倫理観の違いか?)。
●IN DREAMS
“夢の中”
- リベラトーレ(画)
- アンドリュー・ヘルファー(話)
※ある女性と心理学者のやり取りを通して「何故バットマンが悪夢となっているのか?」を描く。
繊細な画で紡ぎ出される、ロマン溢れる一編。
●HEIST
“強盗”
※ある屋敷に潜り込んだ強盗達の享受をコミカルに描く。
収録作では珍しく、トーンを利用した特徴的なアートとオチが光る。
●BENT TWIGS
“折れた小枝”
※解決しない社会問題の一つである、親子問題…更にはその先に想起される虐待をも見据えたのであろう、後味の悪い…しかし余韻の残る作品。
出て来る親子は某家庭マンガのパロディ。
●A SLAYING SONG TONIGHT
“クリスマス・イブの訪問者”
- テディ・クリスチャンセン(画)
- デニス・オニール(話)
※アンソロジー中でも特に特異なアートで紡ぎ出される物語は、リアルな設定の筈なのに何故かファンタジー風。
…ヒーローには遊び心も必要なのだ。
【#4】
●カバー
●AN INNOCENT GUY
“罪なき市民”
※何処にでも居そうな普通の少年による不遜な犯罪予告…と云う形式で語られるユーモアと不思議な怖さの残る一編…。
描き出されるゴッサムシティの姿は50年代〜60年代のレトロ風。
●MONSTER IN THE CLOSET
“戸棚の奥の怪物”
- ケビン・ノーラン(画)
- ジャン・ストルナッド(話)
※「プロの憧れるプロ」と紹介される名匠によるSFストーリー。
シンプルに見えながら計算し尽くされた構成は解説を読むと一層スゴさが解る。
●HEROES
“ヒーロー達”
- ゲイリー・ジャンニ(画)
- アーチー・グッドウィン(話)
※「私の住むゴッサムシティには全てのヒーローの長所を集めた様なヒーローが登場した…」
バットマンの誕生した1930年代への憧憬と郷愁を下地に、コミックの枠を越えた匠の業と鮮やかな語り口の物語がマッチした名編。
97年度アイズナー賞受賞作。
●LEAVETAKING
“別離”
- ブライアン・ステルフリーズ(画)
- デニス・オニール(話)
※鮮烈なコントラストで描きだされる、銃撃されたバットマンの混濁した意識が見せる悪夢の物語。
先鋭的な画面構成が光る。
●THE THIRD MASK
“第3の仮面”
※「バットマン」を題材に描かれる大友流SF+サイキックストーリー。
短編ながら、練り込まれた画面構成と迫力のアートは圧巻。
バットモービルがカッコイイ。
日本の作家にも『バットマン』のファンが多い為、大友氏は非常に羨ましがられたらしく、本人はオーソドックスに描き過ぎたとコメントしている。
●ピンナップ
- マイケル・オールレッド
- メビウス
- マイケル・WM・カルータ
- トニー・サーモンズ
- P・クレイグ・ラッセル
- マーク・シルベストリ
- アレックス・ロス
- ニール・アダムス
- ジム・ステランコ
●フロントカバー(ケース)
考えたんだ…誰にも知られずにバットマンを追記、修正するって方法を…
最終更新:2024年10月28日 07:20