カン/Khan(MtG)

登録日:2015/05/25 (月) 00:46:38
更新日:2025/08/21 Thu 13:54:41
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アナフェン「戦場にいる者すべてから見える場所に立て。そして全員が忘れぬような一撃を振るえ。」

ナーセッ「自我こそが悟りの境地に至るための最大の障害である。」

ディ「かすり傷ひとつなく死んだ者だけが、一番良い召使になる。」

ーラ「人はしばしば自然の力によって萎縮させられる場合がある。しかし、その自然ですら萎縮させられる場合がある。」

「壁の向こうに閉じこもっているのは弱者だけだ。我々は風の下で自由に生きる。自由こそが我らを強くする。」

カーン「ファイレクシア絶対に許さねえ!!」




5人のカン「お前は違うだろ!」


レイハン「あ、あのっ!」


カン/Khanとはタルキール/Tarkir次元に存在する5つの氏族を率いている指導者たちのことである。
カンには現代のカンと運命再編ストーリーにおける過去のカンが存在するが本稿では現代のカンについて述べる。過去のカンについてはこちらを参照。

5つの氏族は自身の氏族と覇権を競った龍が持っていた相(特性)を崇拝・体現しているほか、氏族のシンボルとして龍の特定の部位を用いている。
全員各氏族の色を表す楔3色(「友好色2色とそれらに共通する対抗色1色」あるいは「1色とその対抗色2色」のこと)のマナ全てを含む伝説のクリーチャーである。タルキールは各氏族が覇権を競い合い戦乱が絶えない次元なのだが、5人のカンのうちなんと3名が女性である。
全員楔3色ということで唱えるのに苦労するがそれに見合った強力な効果を持っているのが特徴…ある一人を除いて。


タルキール覇王譚では「龍族が遠い昔に滅びた世界の氏族のリーダー」、
タルキール龍紀伝では「龍族が滅びなかったことで新しい立場となった彼ら」、
タルキール:龍嵐録では「龍紀伝から5年後、やっぱり龍族の支配は納得いかないと決別を決意した人間たちのリーダーとなった彼ら」となっている。
それぞれ設定がかなり異なっており、熱心なヴォーソスは解説項目の在り方についてレスバトルを繰り広げをどのようにするかを日々議論しており、
そこまで熱心ではないヴォーソスはいまだに覇王譚時代の記憶で生きていることがある。覇王譚のカンは個別項目を作られても問題ないくらいキャラが濃くてかっこよかったもんなあ……


Anafenza, the Foremost / 先頭に立つもの、アナフェンザ ()(黒)()
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
先頭に立つもの、アナフェンザが攻撃するたび、あなたがコントロールする他のタップ状態のクリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンターを1個置く。
クリーチャー・カードがいずれかの領域から対戦相手の墓地に置かれるなら、代わりにそれを追放する。
4/4

「忍耐」の相を崇拝するアブザン氏族のカン。氏族のシンボルは龍鱗。
3マナでP/Tが4/4と良好なマナレシオを持つ。
さらに自身が攻撃する度にタップ状態の自分のクリーチャーを強化する能力と相手の墓地に置かれるカードを除外する能力を持つ。

相手の墓地に置かれるカードを除外する効果は非常に強力で、カードの再利用や探査のコスト確保を防ぐことが出来る。
特にドレッジ系デッキでは先出しされたこのカードを除去しないとデッキの動かすことが出来なくなる。
楔3色のマナが必要とはいえ、3マナなので比較的序盤に出しやすいのもポイント。遊戯王もプレイしている方はM・HERO ダーク・ロウを連想した人も多いのではなかろうか?

タップ状態の自分のクリーチャーを強化する能力も同時に攻撃したクリーチャーを強化したり、タップ能力を起動した長久持ちやマナ・クリーチャーを強化したりと非常に汎用性が高い。

アブザンのカンの名に恥じない高性能で、スタンダードではアブザンアグロの主力クリーチャーとして活躍している。


Narset, Enlightened Master / 悟った達人、ナーセット (3)()()()
伝説のクリーチャー — 人間(Human) モンク(Monk)
先制攻撃、呪禁
悟った達人、ナーセットが攻撃するたび、あなたのライブラリーの一番上から4枚のカードを追放する。ターン終了時まで、あなたはこのターンに悟った達人、ナーセットにより追放された、クリーチャーでないカードをそれのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
3/2

「狡知」の相を崇拝するジェスカイ氏族のカン。氏族のシンボルは龍眼。
攻撃の度に自分のライブラリーの一番上から4枚のカードを追放し、その中のクリーチャー以外の呪文を全てマナコストを支払わずに唱えることのできる能力を持つ。同ブロック内で後に登場する「反復」というキーワード能力の元になったと思われる。

6マナという重いコストに対して貧弱すぎるP/Tと青の十八番ともいえる打消し呪文と相性が悪いのが欠点だが、決まれば一気にアドバンテージを稼ぐことが出来る。使用の際は占術土地などのライブラリー操作を併用したい。

劇中ではなんとあのヤンデレドラゴンフェチなサルカンと良い仲になるが(サルカン爆発しろ)、サルカンを「扉」の向こうに送り出すためにズルゴを足止めしてズルゴに殺されてしまった。(ズルゴは下記のカード性能も相まって読者からさらにヘイトを集めるハメに)
プレインズウィーカーの灯を持つ可能性も示唆されていたが、結局灯に火が灯ることなく命を落としてしまった。

劇中での活躍とサルカンとのやりとりで発覚した意外な可愛さで、人気が高いキャラクターである。彼女を主役にしたナーセットコンなるデッキも存在する。

統率者戦での活躍が有名。
元々ジェスカイカラー(トリコロールカラー)には強力な統率者が少なかったため登場直後からカラーマーカーも兼ねて注目されていたが、程なくして普通に唱えるには重い呪文を多めに入れてナーセットで踏み倒すデッキが登場。
青と赤はどちらも追加ターン(追加戦闘フェイズ)を得意とするため、これを満載にしておけば「一度攻撃を通せばほぼ勝てる」という状態を作り出し、有力統率者としての立場を確固たるものにしている。
これをモダンに取り入れて何とか使おうとしたデッキも登場した(大昔のグリセルブランドデッキの趣)が、大成することはなかった。


Sidisi, Brood Tyrant / 血の暴君、シディシ (1)(黒)()()
伝説のクリーチャー — ナーガ(Naga) シャーマン(Shaman)
血の暴君、シディシが戦場に出るか攻撃するたび、あなたのライブラリーの一番上から3枚のカードをあなたの墓地に置く。
クリーチャー・カードが1枚以上あなたのライブラリーからあなたの墓地に置かれるたび、黒の2/2のゾンビ(Zombie)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
3/3

「残忍」の相を崇拝するスゥルタイ氏族のカン。氏族のシンボルは龍牙。
場に出るか戦闘を行うと墓地を肥やす能力と、自分の墓地にクリーチャーが置かれるたびにゾンビトークンを生成する能力を持つ。

場に出るだけで3/3+2/2という数値以上のマナレシオを発揮する期待ができ、さらに殴り続けるだけでトークンを増やすことが出来る。
能力が自己完結しており、他のカンに比べて単体で腐りづらいのもポイント。

スタンダードでは、《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》などの墓地肥やしや《エレボスの鞭/Whip of Erebos》などのリアニメイト系呪文も充実しており、このカードやサテュロスの道探しで墓地に送ったクリーチャーをエレボスの鞭で釣り上げる「シディシ・ウィップ」が大流行した。同環境内に《女王スズメバチ/Hornet Queen》が存在していたのも後押ししている。
しかしローテーションでテーロス・ブロックが落ちた後は、強力な墓地肥やしカードが手に入らなかったことなどもあり衰退してしまった。そのせいで「スゥルタイの真のカンはサテュロスの道探し」などと言われることも。


余談だが、日本語版のカード名は誤訳である。broodをbloodと取り違えたらしく、本当は「群れの暴君、シディシ」が正しい。
ちなみにイラストからは分かりづらいが女性である。


Surrak Dragonclaw / 龍爪のスーラク (2)()()()
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 戦士(Warrior)
瞬速
龍爪のスーラクは打ち消されない。
あなたがコントロールするクリーチャー呪文は打ち消されない。
あなたがコントロールする他のクリーチャーはトランプルを持つ。
6/6

「獰猛」の相を崇拝するティムール氏族のカン。氏族のシンボルは龍爪。
瞬速と打ち消し耐性、さらには自分のクリーチャー達を打消しから守りトランプルを付加する等、ファッティに欲しい能力をこれでもかと詰め込んでいるのが特徴。

マナレシオも楔3色を含むとはいえ、5マナ6/6と良好で能力も中堅~大型クリーチャーが主力であるティムールによくかみ合っている。ただし、打消し以外の除去に対しては全く耐性がないのが欠点。
特にこの打ち消しを環境柄見ることがほとんどなかったことから能力が2つも腐ってしまい、青赤緑という組み合わせには他にも《サグのやっかいもの》などの優秀なカードが多かったことから、
「テキストは強いが活躍の場に恵まれなかった」というなかなか悲しい結論を出されてしまったカード。

非常に優秀なスペックだが、スタンダードではティムール自体にトップメタに食い込むほどの実力がなく、同環境のトップメタには打消し以外の除去を多く積むデッキが多いため活躍できていない不遇のカンである。
ローテーション後は多色化が更に容易になったため、4色や5色のデッキがサイドボードに取っていることがあった。
どちらかというと歴史再編後のスーラクの方が話題で、これは非常によく使われたカードであり、多くのドラマを生み出してきた。


Zurgo Helmsmasher / 兜砕きのズルゴ (2)()()(黒)
伝説のクリーチャー — オーク(Orc) 戦士(Warrior)
速攻
兜砕きのズルゴは、可能なら各戦闘で攻撃する。
あなたのターンであるかぎり、兜砕きのズルゴは破壊不能を持つ。
このターンに兜砕きのズルゴによってダメージを与えられたクリーチャーが1体死亡するたび、兜砕きのズルゴの上に+1/+1カウンターを1個置く。
7/2

「迅速」の相を崇拝するマルドゥ氏族のカン。氏族のシンボルは龍翼。そしてこのマルドゥはサルカンが生まれた氏族でもある。
7/2というあまりにも頭でっかちでアンバランスなP/Tを強いられたクリーチャーである。
速攻と可能なら毎回の戦闘で攻撃をするデメリット能力、自分のターンは破壊不能を持つ能力、さらに自身が相手クリーチャーを倒した際に自身を強化する能力を持つ。

非常に攻撃的な能力を持ち、パワー7と非常に驚異的な数値である。
しかし、数値上のマナレシオは5マナでパワー7と非常に良好だが、楔3色を含む5マナはアグロで使うには少々重い。さらに、破壊不能をもつとはいえ自分のターンのみなのでそれほど固くはない。おまけに自身を強化する能力もチャンプブロックをためらわせる能力に見せかけて返しのターンでアッサリ除去されるためあまり機能しない。

ぶっちゃけカンのなかでもぶっちぎりで弱く構築でもほとんど採用されることはない。
そもそもズルゴはこじつけでカンになったようなものなので、他のカンたちに比べてカード性能が劣るのもある意味納得である。

統率者戦では3回殴れば統率者ダメージで勝てるパワー7という数字であり、現在ほど選択肢が充実しているわけではなかったこともあって「最もガチな白黒赤統率者」と呼ばれるほどだった。
構築における弱点が「統率者戦」というゲーム性のおかげで補強されており、当時としてはそもそも「ガチデッキが成立したことが極めて稀、あったとしても他の3色の組み合わせより有意に低い」という非常に珍しい色の組み合わせだったため。
《神の怒り》《横揺れの地震》のような全体破壊系の除去との相性も良好。《衰滅》はやめてください
特筆すべきは《突撃鎧/Assault Suit》との相性。速攻を持っているこいつがグルグル渡り歩いて行くため大変なことになる。しかも大変除去しづらいため、下手をすれば1周する頃には1人落ちていることも。
この超前のめりな性能が、当時は単色でたまに見る程度だったこともあってコアな人気を博したというものである。同色には一応カーリアあたりは人気があったが、カーリアとは全く異なる動きを見せるという点や、他の候補となるこの色の組み合わせの統率者がしばらくへっぽこぞろいだったこともよかったようだ*1

本項目ではズルゴだけが格落ちというネタを提唱しているが、実際には見ての通り白黒赤の中では相当強い統率者だった。問題があるとすればこの色の組み合わせ自体がアレだったってことだろう。「むしタイプの中だと2番目に強い」みたいな感じでいいじゃないか。
当時としてはサイクルになっているレジェンド枠がしっかり強く、カジュアルとガチの壁こそあるもののいずれも活躍の場があったというのはかなり異様なものであり、そういう意味でもこのカンサイクルは結構話題になった。


ちなみにズルゴがカンになった経緯は以下の通りである。

無益な戦いを繰り返すマルドゥ氏族の在り方に嫌気がさしてサルカンが離反し、どこぞに放浪の旅に出てしまう。

リフレッシュしたサルカンが帰宅。他の同族は「おかえり」と歓迎するも、ズルゴはいきなりスゥルタイに進軍するように命じる
(この時ズルゴはマルドゥのために血を流せと戦時中の日本みたいなことをのたまう。タルキールはアジア圏がモチーフになっているため、案外モチーフになっているかもしれない。)

「いつ終わる!! いつ終わるんだよ!! いつ闘いが終わるんだよーっ!!いつになったらーっ!!」
無益な争いについに激しい怒りを覚えたサルカンは灯に火が灯り、燃え盛る炎の龍となって敵味方の両方を焼き払う。

そこに遅れて駆けつけて来たズルゴは「サルカンの奴同族を焼き払いやがって許せねえ!」と激憤。
しかし敵を倒したのは自分の功績にしておこうとちゃっかり横取り。

まさに、棚から牡丹餅である。

ここまでなら、灯の件は不可抗力とはいえ無責任に放浪をしていたサルカンにも非があり(サルカンには酷だが)、ズルゴはズルイ面があるとはいえむしろ氏族の教えを尊重しているところは評価できる。

しかし、サルカンへの復讐に燃えるあまり賢臣ヴァルクの意見を聞かなくなったあたりから、彼の指導者としての無能さが露呈しはじめる。
サルカンへの復讐の建前のためだけにティムールに無茶な侵攻を続けてしまったのである。
慣れない悪天候のなか強引に進軍した結果、ティムールから手痛い反撃を受けたマルドゥは多くの犠牲者を出してしまう。

それでもサルカンへの復讐という個人的な理由のために進軍を続けようとしたズルゴはヴァルクから「あなたは真のカンではない」と言われ、マルドゥ全員から見限られてしまった。1000年前のカンであるアリーシャとはエラい違いである。
さらには、タルキールブロック屈指の人気キャラであるナーセットを殺害したことで読者からのヘイトを一気に集めてしまった。

このようにカードでもストーリーでもほとんどいいとこなしだった彼はいつしかタルキールブロック屈指のネタキャラとしてプレイヤー達から愛されることになった……のだが、
この直後にとんでもなくなさけなくて面白い男が出てきてしまい、さらにその後ズルゴはすっかり凋落(ほかの歴史をたどった結果カンではなくただのオッサン(Just Guy)となった)した姿でカード化し、
このただのオッサンの方が構築でものすごい結果を見せたことから、ネタキャラとしてもちょっとインパクトが薄くなってしまったのだった。



以下ちょっとネタバレ




タルキールブロックの主人公であるサルカン の名前はサル(偉大なる)カンで偉大なるカンを意味している。
そして、過去へ旅立ったサルカンの行動によりドラゴンが絶滅したという未来は消滅、彼らカン達の運命も大きく変わることとなる…。


追記、修正はドラゴンたちを狩りつくしてからお願いいたします。

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最終更新:2025年08月21日 13:54

*1 当時の統率者戦は「青が含まれていないだけでキツい」と呼ばれることもあったほど青が圧倒的だった。