ショーン・オブ・ザ・デッド(映画)

登録日:2015/11/16 (Mon) 16:58:00
更新日:2023/09/04 Mon 15:24:20
所要時間:約 8 分で読めます






■ショーン・オブ・ザ・デッド

『ショーン・オブ・ザ・デッド(原:SHAUN OF THE DEAD A ROMANTIC COMEDY.WITH ZOMBIES)』は04年の英ホラーコメディ映画。
英国コメディ界にて高い人気を誇る若手監督エドガー・ライトが、盟友でもあるコメディ俳優サイモン・ペッグを主演に据えて送り出した正統派ロメロ風『ゾンビ』のパロディ作品である。
公開時の宣伝文句は「ロマンス、ゾンビ、コメディ(ROM.ZOM.COM」である(※観たまんま)。
どうしようもないダメ男が、ゾンビの歩く世界で仲間と家族を守る為にヒーローになろうとする“笑えるも熱く、泣ける姿”を描く。


【解説】

コメディ仕立てながら監督のライトと主演のペッグの映画愛が炸裂する徹底的、且つ、最高のリスペクトに満ちたゾンビ映画の傑作。
脚本も彼ら自らが手掛けており、その徹底した作り込みは当のロメロ本人からも賞賛を受けた程。
これが縁となったのか、2人は揃って翌05年に制作されたロメロの『ランド・オブ・ザ・デッド』にゾンビ役にて出演している(スラムの盛り場の“フォトブースゾンビ”)。
因みに、同時期に公開された“全力疾走ゾンビ”をフィーチャーしたリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』がオリジナル版のファンから多くの批判を受けていた事もあってか、オリジナルへのリスペクトが込められた秀逸なパロディである本作への評価が余計に高まったとの事。
英国ではヒットを記録したが、コメディ映画と云う事で侮られたのか日本では劇場公開もされなかったが、その後のソフト化により日本でも高い人気を獲得。
そして15年の時を経て、日本でも2019年3月29日にカルチャヴィル配給・R15+指定で、全国のTOHOシネマズ限定で劇場公開された。



【物語】

29歳のぐうたら男ショーンは、日々の展望も無く毎日を過ごすダメ男。
余りのグダグダさ加減に、遂にはだらだらと関係を続けて来た恋人にも見放されてしまい、落ち込んだショーンは幼なじみで悪友のエドと共に行き着けのバー「ウィンチェスター」で飲みに飲みまくって帰宅。
……そして、ショーンが起きた時にはぼんやりと変わり始めていた世界が、遂に劇的に変化してしまっていた。
果たして、ショーンは“連中”の歩く世界で大切な物を守り抜く事が出来るのだろうか?


【登場人物】

■ショーン
演:サイモン・ペッグ
声:横島亘
毎日を無為に過ごすぐうたら男。
一応、家電量販店で働いているものの、自分よりも遥かに若い後輩にもナメられている始末。
大事に思ってはいるが恋人にも親にも顔を背けており、事件の前日には遂にリズにも見限られてしまう事に。
おかしな人(ゾンビ)が増えていくのを“何となく変だ”と思いつつも、気のせいだと思い込もうとしていたのだが、よりにもよってフられた直後から世界が劇的に変化。
運の良さとマヌケぶりから通りがゾンビだらけになっても気づかなかったが、自宅の庭でゾンビに襲撃された事で漸く現実を直視する。
最悪の事態の中で、ニックと共に無謀にも母親と恋人(元)を救い出そうと思い立つが……。
意外にも音楽の造詣が深く、かなりの拘りもある様だが、これは若い頃にDJをしていたと云う裏設定の為。
ゾンビと云う単語を使うのには抵抗感があるタイプで、言い換えを要求する。

■リズ
演:ケイト・アシュフィールド
声:本田貴子
ショーンの恋人。
ショーンとはギリシャ旅行中に出会った模様。
以来、3年もの間だらだらと付き合い続けていたが、いつまでも煮え切らないショーンに裏切られた事(※店を予約していなかった)もあり、遂に別れを切り出す。
死者が溢れた後は、親友でルームメイトのデービッドとダイアンと共にアパートに閉じこもっていたのだが、危険を冒して助けに来たショーンの姿と、何故か乗り気のダイアンに促されて外に飛び出す事に。
異常事態の中で意外な行動力を見せるショーンを見直していく。

■エド
演:ニック・フロスト
声:茶風林
ショーンの幼なじみにして腐れ縁の悪友。
ショーン(とピート)と同居しているが、彼だけは働きもせずに日がなゲームをして日々を過ごしている(※たまに近所のガキに葉っぱを売っているらしい)。
ショーンがリズにフられた理由の大部分は、デートの際にショーンが馴染みのパブ「ウィンチェスター」にしか行かない上に、その時には必ずエドも付いて来る事であった(※それに対抗してリズもデービッドとダイアンを連れて来る為に、更に状況がややこしく)。
ショーンと共にゾンビの溢れる世界に飛び出してからも、ジャガーを運転したいが為に自ら乗ってきた車(ピートの)を壊したりと混乱を呼ぶ。
「すまない」と言いつつすかしっ屁をする悪戯が好き。
また、他人に勝手にストーリーを付けるのと、猿の物真似を得意としている(※本人曰わく、芸の安売りはしないらしい)。
物語終盤でゾンビ化したピートに噛まれてしまい、騒動から半年後の日曜日の朝には既にゾンビ化していた。

■デービッド
演:ディラン・モラン
声:てらそままさき
リズの友人で大学講師。
学生時代にリズにフられた経験があり、友人関係を続けつつも彼女に屈折した感情を抱き続けている。
それ故にショーンを嫌っているが、ショーンからもそれを看破されており、陰では嫌な奴(吹替ではカス野郎)と呼ばれる等、険悪な関係にある。
ゾンビが溢れる世界に飛び出してからもショーンへの対抗心“だけ”で突発的な行動を取ってしまい一同を混乱させる。
余りのウザさとKYぶりから、遂にはリズは勿論、ダイアンにまで反感を買ってしまう。
「ロンドンでは意味がない」事から車も免許も所有していない。

■ダイアン
演:ルーシー・デイヴィス
声:魏涼子
デービッドの恋人で、彼と同じくリズとは学生時代からの友人同士。
ショーンは陰で売れない女優(吹替では大根役者)呼ばわりしている。
かなりノリがいい面があり、助けに来たショーンに真っ先に賛同したり、ゾンビの群れをやり過ごす為に一同に演技指導を施したりした。
出会いの際にデービッドがリズに近づく為に自分に声をかけて来た事に気付いていたが、それを怒りもせずに、リズにフられてしまった彼に逆に声をかけて恋人になる等、なかなかに強かな性格をしている。
デービッドの事は好きだが、冷静に状況が見えてもおり、かなりぶっちゃけた発言も。
コメンタリーではデービッドとリズ同様に“先生”をしていると語られている(女優では食っていけてないのかも)。
免許はあるが車は所有していない。
映画ではどう考えても死んだとしか思えない最後だったが……。

■バーバラ
ショーンの母親。
割と惚けた性格で、ゾンビが徘徊している状況を理解せず、たじろぎもしていなかったが、ショーンに連れ出されてから変わってしまった世界を直視。
更には“ある理由”から覚悟を決める事に。
ショーンが義父であるフィリップから逃げ続けている事に対し、密かに心を痛め続けていた。
名前はロメロの第一作目『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のヒロイン「バーバラ」から。
また、エドの「そっちへ行くよバーバラ」という台詞も『ナイト~』のバーバラの兄ジョニーの台詞のパロディ。

■フィリップ
演:ビル・ナイ
声:野沢那智
ショーンの義父。
ショーンが12歳の時にバーバラと結婚した。
ショーンが既に思春期だった事に加え、現在までショーンに厳しく接し続けて来た事から、未だに「義理の父」と断りを入れられる程に敬遠されているが、全てはショーンの為を想っての行動であり、他の誰よりもショーンが“本当は出来る男だ”と信じ続けていた。
ショーン同様、ゾンビと云う言葉には訂正を要求する。
高級住宅街に住み、ジャガーを所有。
愛車は他人には運転させたくないタイプ。
他、うるさい音楽が嫌いで交通ルールにも厳しい模様。

■ピート
演:ピーター・セラフィノス
声:岩尾万太郎
ショーン(とエド)の学生時代からの友人で、同居人。
まともな企業人でありマイカーも所有している。
ショーンには理解を示しているが、ニックの存在は許せないらしく、緊張感の漂う関係にある。
5年前に3人でリンゴ酒を飲みながら『鉄拳2』を夜通し遊んだ頃から何も変わっていない彼を見限っており、ショーンにも関係を考え直す(見捨てる)ように言っている。
事件が起きる直前には死者(ゾンビ)が増えた影響からか、欠員が出た為に日曜出勤しなければいけなくなった上に、自身も帰宅途中で事態を知らないままに暴漢(ゾンビ)に噛まれてしまっていた。
翌朝、出勤前のシャワーの途中で全裸のままゾンビ化してしまい……。
尚、エドとはゾンビになる前に罵り合いを演じているが、その言葉は“どちらも成就”する事になる。
ショーンとエドの帰宅後、必ずと言っていい位にドアが開けっ放しになっているのが許せなかった模様(エドの仕業と断定していたが、反応を見る限りはショーンの仕業である)。
中の人は『SWエピソード1』にてダース・モールの声を担当していた事でも知られる。

■イヴォンヌ
演:ジェシカ・スティーブンソン
ショーンの古くからの友人。
劇中では序盤、中盤、終盤と物語が大きく動く3つのポイントに登場する。
序盤の登場にてリズとも面識がある事が解る。
中の人はライトが手掛け、ペッグが主演を務めたTVシリーズ『Spaces』の共演者で、それを知る人間に向けた配役でもあるらしい。
本作ではもう一人のショーンとも呼べる存在であり、中盤でショーンと再開した時にはショーン達一行(パーティー)と同じ編成(パーティー構成)でゴルフクラブを手にゾンビ退治に乗り出していた(※しかもイヴォンヌ側の方が微妙にupグレードされた編成であり、借家住まいのショーンに対して一軒家を購入している身分である)。
そして、終盤に登場した時には……。

■ゾンビ達
いつの間にか英国(世界?)に蔓延していた生ける屍の皆さん。
行動や特徴は本家ロメロの物を完璧に踏襲している(※やや緩いかも)。
尚、重要なゾンビ役になる人々には、ちゃんと生前の顔が確認出来る場面が用意されており更には、演じる中の人の特徴を活かした姿になっているゾンビも多い。
00年代の映画だけにメイクアップ技術や特撮も凄いものがあり、本家に倣った残酷シーンもちゃんと登場して来る。

※上記の様に登場人物達の設定は非常に事細かく決められており、しかもそれが物語にも深く関わってくるのが特徴。
映画全般に張り巡らされた細かな伏線と暗喩も含めて、見直す度に新しい発見がある事だろう。





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最終更新:2023年09月04日 15:24