アフロディテ(ギリシャ神話)

登録日:2015/12/13 Sun 15:23:20
更新日:2023/11/16 Thu 14:48:04
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■アフロディテ

「アフロディテ」はギリシャ神話に登場して来る女神。
ローマ神話ではヴィーナス(金星)と習合……と云うか異名とされた。
寧ろ、現在ではそっちの名前の方が馴染み深い位である。
女神と云えば誰もが思い浮かべる愛と官能の女神であり、美の女神の代名詞として数々の創作のモチーフともなって来た。
因みに、元々のヴィーナス(ヴェヌス)は美の女神なんかではなく菜園の女神だったそうな。
「吸収しようとした相手を呑み込むなんてさすがはギリシャ文化だぜ!凄ェ!」

ギリシャの神々は日本語表記では本来の発音や長母音を省略されて表記、自動変換される場合が多いのだが、彼女はちゃんと「アフロディーテ」や「アプロディテ」等とも変換される。

主神格であるオリュンポス十二神の一柱ではあるが、彼女のみは最高神ゼウスと、その眷属の血統ではない。
よく知られた誕生譚としては、去勢された後に海に棄てられたウラノス(天)の性器の泡(男汁)から誕生した、とされる物がある。
恐らくは人気の高さからオリュンポスに数えられたのだろうが、誕生譚と矛盾する為か、キプロス島に流れ着いた後に足下から生命が溢れ出す様を讃えた季節の女神達(ホラ)に保護されて天上界に導かれ、そこでゼウスの養女になった等と書かれている。
※ゼウスの実の娘とする神話もあるがマイナーな説である。

アフロディテとは「泡から生じた者」の意であり、彼女が初めて陸地に降り立った場所にして、信仰の中心地であるキプロス島にちなみ、キュプロゲネス、キュプリス(キプロス生まれの女神)の異名も付けられている。
この他、『神統記』によればアプロゲネス(泡から生まれた)、キュテレイア(キュテア生まれ)、ピロンメイデス(陰部から生まれた)等の呼び名も捧げられている。
類い希な美しさを持つ彼女にはエロス(愛)とヒメロス(欲)が付き従ったと云う。
エロスは後にアフロディテの従者として定着した後に幼児神へと姿を変えられ、彼女の息子ともされる様になった。

エロス「他の神さん連中より年いっとる言うとったんは嘘じゃあ。今後はアフロディテ様のせがれっちゅう事でよろしゅう頼むわぁ(ダミ声)

配偶神は鍛冶神ヘパイストス
ヘパイストスが「ヘラの解放を条件に」天上界に迎え入れられた際に望んだのがアフロディテとの結婚であり、それをゼウスに許されたともされる(ヘラが苦し紛れに約束したとも)。
しかし、美の女神に対して不具の神では釣り合いが取れないとでも考えられたのか、神話では基本的に不仲と云うかアフロディテがヘパイストスを馬鹿にしている構図で描かれていしまっている場合が多い。

アフロディテが愛人とするのが美形や美少年ばかりなのも意図的なものを感じてしまう。

最も長く関係を持った愛人は軍神アレス。
彼は前述の様に“アフロディテの息子とされてから”のエロスの父親とされている。

また、愛と美の女神と呼ばれてはいるもののアフロディテが司るのは“根源的な愛”であり、従者のエロスの様に能動的に対象に愛欲を掻き立てさせる力は無いとも言われる。
アフロディテの神話に纏わる“それら”の要素は、実は彼女ではなく従者のエロスとヒメロスの働きだと云うのだ。
※能動的に働くのは魅惑的な肢体と自慢の美貌で相手の性欲を掻き立てて自分のベッドに誘う場合のみである。

これと同じく、アレスも戦を司るとされつつも他人の為に勝利を呼び込んだりする働きとは基本的に無縁であり、ここから「神として他者に与えたり、何かを生み出す資質に欠けた似た者同士」と呼ばれる場合もある。

ただし、これは出身地差別を受けたアレス同様に、オリュンポスに組み込まれた際に本来の彼女が持っていた多産や豊穣、戦勝や航海の守護…etc.といった属性が他の女神とシェアされたり取られてしまった為と考えられている。

……こうした事情からか、神話だけ見ると直接的な愛に飢えたビッチ女神みたいな扱われ方をされてしまっている。
トロイア戦争の伝説で発端となった「パリスの審判」でも、ヘラアテナを抑えて美女神No.1に選ばれている辺りは、さすがは美を司る女神様である。
※パリスが景品のヘレネ(世界一の美女)に釣られただけだろ……とかは絶対に言ってはいけない。


【出自】
元来は東方から渡って来た古代オリエントの春(意味深)の女神で、お馴染みのリリス系統に属する生殖と豊穣を司る大地母神であった。
古くは古代バビロニアと同様に神殿に豊穣の密儀を司る神聖娼婦(男女どっちも揃ってた)が住み、主神のアフロディテ(リリム)はその守護者でもあったらしい。

また、アフロディテには航海を守護する女神としての属性もあったが、これも、矢張りリリン系統の地中海地域の女神であるアシュタルテ等と共通した要素である。
四方を海で囲まれたキプロスでは海の安全が何よりも大事であったのであろう。

……こうした信仰の起源や形態は、ギリシャ神話だけで見ても同じくオリュンポスの系統に組み込まれたアルテミスやアテナ、ペルセポネ…etc.と、リリン系統に属する、或いは属性の共通から習合したと思われる女神はかなりの数にのぼり、この事が逆にアフロディテが仕事を奪われる結果に繋がったとも考えられる。


【神話】
特に知られるのが美少年アドニスとの悲恋。
まあ、母親(スミュルナ)にまで遡る発端はアフロディテ自身とされてしまっているのが如何にもギリシャ的悲劇ではあるのだが(インガオホー)。

キプロス王キニュラス(またはアッシリア王テイアス)にはスミュルナ(ミュラ)と云う美しい娘が居たが、彼女が自分を拝むのに積極的で無い事に腹を立てたアフロディテはエロスに命じて、彼女が父親に恋をする様に仕向けた。
※または王か王妃が娘の美しさを神にも優ると豪語した為ともされる。
※基本的に煽り耐性がないのがギリシャ神話の神々なので仕方がない。

スミュルナは自分が狂ってしまったと思い自殺を考えるまでに思い悩むが乳母に止められる。
王女の胸の内を聞いた乳母は策を講じて王女を別の女性に仕立てて王の寝室に送り込む事にする。

ここから、王女は父親の部屋に12日間も通う事になる。
バレずに済んだのは乳母が王に部屋を暗くしておくように言い付けて居た為とも、酔うと泥の様に眠る王と夢現の中で交わった為、とも記されている。
古代なのに処女姫の逆レ○プ展開とか流石はギリシャ神話。


……しかし、破局は突然にやって来た。
連日の逢瀬に違和感を感じた王は灯りを付け、自分の伏床に通っていた女の正体が娘である事を知ったのである。

激昂した王はスミュルナを手に掛けようとするが、絶望の内に逃げ出した王女は、逃げに逃げて逃げた後に、アラビアの南(サバの地)に辿り着くと命の尽きる直前に自分に宿っていた子供のみを助ける様に神々に懇願。
これを聞き入れた神々はスミュルナを没薬(ミルラ)の木に変えた。
彼女の息子アドニスは月満ちた後に、その木の裂け目から生まれたのだ云う(出産の女神エイレイテュイアが木に触れたら生まれたという説も)。

自分の起こした悲劇に責任を感じていたともされるが、アドニスを引き取る事にしていたアフロディテは、美しい少年を見た途端に虜となってしまう(エロスの仕業ともされる)。
そして、アドニスが他の誰の誘惑にも晒されないように箱に入れると、最も誘惑の種のないであろう冥府の女王ペルセポネに預ける事にした。
アテナといい、何故にみんな箱に入れたがる。



……しかし、そこはペルセポネもオリュンポスの子(?)。
好奇心に負けて箱を開けると、彼女までもがアドニスの虜になってしまった。

やがて、スゥイートホーム(愛の育成部屋)の準備を整えたアフロディテはペルセポネに箱の返還を求めるがペルセポネは応じず喧嘩になる。

ペルセポネ「アドニスはわたしのものよ」
アフロディテ「ちきしょう!」

埒が開かない事を危惧したゼウスは要請に応じて1年を1/3ずつアフロディテと暮らす→ペルセポネと暮らす→一人で暮らす……と定めた。

……しかし、せっかくの決定も役には立たなかった。
アドニスは山野を駈け巡る狩人の資質がある少年だったのだが、ある日獰猛な巨大猪に遭遇。
これを追うも、逆に猪に殺されてしまったのだ。

この猪の正体については密かに嫉妬していたハデスとされる事もあるものの、普通は性格やら行動やら何となくやりそうじゃね?と云う風潮から、アフロディテの愛人のアレスとされている。

そして、死んだアドニスの流した血から真っ赤なアネモネが。
愛しい人の死を悼み女神が流した涙からは深紅の薔薇が生まれたのだと云う……。

この他にもアドニスに関わる誕生譚は存在しているが、これはアドニスの神話が勿論、史実などではなくて古代オリエントから伝わった「冥府下り」の“かなり”大胆なアレンジの為。
いずれはキプロス島に広大なダンジョンみたいな洞窟や蚊の巨大育成施設が出現するのは間違いない事であろう。


【その他】
この他の神話としてはアレスと激しく前後している所を晒し者にされた神話も有名だが間男の当該項目を参照。

また、ギリシャの神々は揃いも揃って色ボ…ゲフンゲフン、恋多き事で知られるが、実はその原因はアフロディテにあると云う。
彼女の被害者は、上記のスミュルナ、エロスの妻プシュケ、ハデス・ペルセポネ夫婦(とデメテル)、暁の女神エオス、太陽神ヘリオスなど多岐に渡る。
最高神ゼウスすらもが、無自覚に力を発揮するアフロディテにより散々に人間の女を愛させられたが、アフロディテはそうして皆に愛欲を掻き立てては、時として悲劇をも生んでいたのに、そうした行いを傲慢にも鼻に掛けていた。
そこで、ゼウスはアフロディテにも人間へ愛情を抱く様に仕向け(ゼウスは天の理を支配しているので実は何でも出来る)、アンキセスを相手に選んだ。
※アンキセスはトロイア王家の流れを汲む高貴な血筋で姿も美しい男子であった……罰になってないな。

アンキセスに一目で恋に落ちたアフロディテは人間の娘に化けて近づき子供を宿した。

※人間の女が神の子を生むのは名誉だが、女神が人間の子を生むのは恥……だと云うのが罰の理由だったのだが、流石は愛の女神、正体がバレても動じない。
 ちなみにトロイア戦争の武将には女神を母に持つ者が結構いる。帰り道で女神を現地妻にして孕ませた奴もいる。

ゼウス「!?」

それどころか「女神を妊娠させたとか吹聴すると天罰で雷が降るから言わないでね」と忠告する程の余裕ぶりである。

この時に生まれたのがトロイア戦争でトロイア側の援軍ダルダノイの総大将を務めたアイネイアスと言われている。

この後のアンキセスの運命については諸説があるが(アフロディテを食った事を自慢して天罰を喰らい不具になったともされる)、トロイア敗戦の後にアフロディテの導きにより親子でローマに逃れ、その血は後にカエサルを輩出したユリウス家の祖となったとされている。
……勝ち組ですね。




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最終更新:2023年11月16日 14:48