ヘパイストス

登録日:2011/05/07(土) 09:33:45
更新日:2025/10/03 Fri 12:20:18
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『ヘパイストス』はギリシャ神話に登場するオリュンポス十二神の一柱。
火と鍜治を司る神(古くは火山の神であったとか)であり、ローマ神話では「ウルカヌス」、英語では「ヴァルカン」と呼ばれる。
親は最高神であるゼウスとその正妻であるヘラの息子で第一子…
と言われたりするがヘラの息子と言われる事もある。

「何で?」
と思った方、理由は簡単。ヘラが一人で産んだから

「は?」
と思うかもしれませんが、神話でよくあることじゃね?

でその理由についてだが、ゼウスからアテナが誕生した(実際は頭カチ割って出てきた)のを見て、
ヘラ「ゼウスが一人で子供を生めるなら、私も生めるはず」
で生んだとか、ゼウスの浮気に業を煮やして一人で生んだとか色んな話があるが、とりあえずヘラが一人で生んだのは確実なようだ。
ちなみに上記【アテナ】の項目にはゼウスの頭をカチ割ったのはそのヘパイストスだったりするのでなんか変だが、その場合割ったのはプロメテウスなのだろう。多分、恐らく、メイビー。ややこしす。諸説あります。
……所詮神話だから気にするな!!

で、なんとかヘパイストスを生んだヘラだったが、両足は曲がってるわ不細工だわと我が子のあまりの醜さに激怒。
さらに言えば上記のアテナが戦争と知恵のイケ女神だったのでさらに嫉妬したらしい。
ヘラ「なにこの子キモッ!こんな子いらんわ!」
でもってヘラはヘパイストスをオリュンポスの山頂から投げ捨ててしまう。長男なのに……
なにか現代に通じるものがある……

捨てられたヘパイストスは海の女神であるテティスに拾われ、鍜治の仕事を学びながら育っていく。

さて、こうして育ったヘパイストスだが、まだ母であるヘラを恨んでいたので復讐を企む……

ヘパイストス「母さんにこの黄金の玉座を贈るよ!」
ヘラ「あら、ありがとう」
そうしてヘラが腰かけた瞬間、玉座から鎖が巻きつき動けなくしてしまう。
ヘパイストス「計画通り…」

……この後、ややあって無事にヘラは解放される。
その理由としては、酒の神ディオニュソスがヘパイストスをベロベロに酔わせて解放させたから……

しかし、その際にヘパイストスはヘラに解放の条件として、自分の認知と美と愛の女神アフロディテとの結婚を約束させたそうな。
……日陰者だけに性格が暗……ゲフン!ゲフン!……見事な策士である。まあそもそもヘラが毒親なのが悪いし。

そして、ヘパイストスはこの一件の後で、その知恵と技術が認められて晴れてオリュンポスに迎え入れられる事となるのである……やったね!!


この話には別の説もあり、ヘラとの仲は悪く無く、寧ろ長男として両親を気遣う良い息子である。
ある時、ゼウスとヘラが天をも引っ繰り返す大喧嘩(いつもの)をした末にヘラが打ち負かされてしまう。
他の神は触らぬ神に祟りなし(神だけに)と見て見ぬふりをするが、第一子・長男としての責任感からかヘパイストスだけが父のやりすぎを嗜めながら、縛り上げられた母を解放しようとして、ゼウスの逆鱗に触れてしまう。
気が立っていたゼウスはヘパイストスに渾身の一撃を見舞い、天から叩き落す。
この父の一撃と、丸一日近くの落下の末、地上に全身を強打したヘパイストスは現地の人間達とテティスに保護されて、治療を受けるが一番ダメージが大きかった片脚に障害が残ってしまった。

この説では上記説のヘラの役割がゼウスになっており、
ヘパイストス「父上にこの黄金の玉座を献上します。」
ゼウス「おお、お前も従順になったな」
そうしてゼウスが腰かけた瞬間、玉座から鎖が巻きつき動けなくしてしまう。
ヘパイストス「計画通り…」
テミス「善悪判別神器<正義の天秤>発動!!」
ディケー「夫婦喧嘩を止めようとした息子を痛めつけるとは最低、との判定です。

結局、掟の女神にも神々の検事総長にも呆れられて正規の神罰を発動出来ず、自慢の雷霆も使えなくなったゼウスはヘパイストスに平謝りして解放して貰った。
その直前に、オリュンポスの神々に加わったばかりのアフロディテに手を出そうとして、ヘラに「貴方があの美女に手を出したら、息子達が怒り出して手が付けられなくなりますわよ」と掣肘されていたゼウスは、長男への詫びとしてアフロディテとの縁談を取り持つことを約束した。


繰り返すが、このヘパイストスの妻はあの愛と性を司るアフロディテである。

望んだとは云え、なんとも不思議な組み合わせ…経緯を考えるとアフロディテ涙目である。気にして無いけど。

……しかし、ヘパイストスは母ヘラと同じ悩みを抱えることになる……

元々奔放な女神だったアフロディテは妻となった後も数多くの男性と関係を持っていたのだ。
さすが愛の女神である。イシュタルも「そうだそうだ」と言っています。

アフロディテの浮気相手として最も有名なのは美男子として知られる軍神(だが弱い)アレスである。
意地の悪い人間ならここでアフロディテが醜いヘパイストスに嫌気が差してたとか加える所である(マジ)。
……ヘパイストスが何をした……
しかし、母との逸話でも触れた様に暗い性格のヘパイストスは一計を案じる。
それは、ベッドから透明な鎖が飛び出す仕掛けを作り、二人の浮気現場を抑えてやろうと云うもの!!

ヘパイストス「ちょっと出かけて来る(白々しく)」

アフロディテ「行ってらっしゃい(はよ行けブサイク)」

……少し待って

アレス「今日も綺麗だねベイビー」

アフロディテ「当たり前の事はいいからハ・ヤ・クゥ……

そして、ヘパイストスの居ぬ間にセクロスに臨んだ二人だが、その時ベッドから透明な鎖が飛び出し繋がった二人を縛る!!

二人「あれっ!?」

※陰から見ていたヘパイストス「計画通り……」


この後、他の神々を呼び寄せ、間抜けな二人の姿を見せて妻に恥をかかせて復讐した(やっぱり暗い)と云うのが大筋だが、場合によってはヘパイストスが恥をかく方向に纏められている場合もある。


ヘルメス「アフロディテを抱けるんなら、そっちのが……いいよな」

男神連中「まったくだ……てか旦那は自分の甲斐性無しを何自慢してんだろな」


……ヘパイストスが何をし(ry……


結局この件はポセイドンの取りなしでアフロディテと離婚し、アレスから慰謝料としてをもらうことで決着する。

……それでいいのか?


このように、ヘパイストスはオリュンポスの神々の中でもアレスとは別ベクトルでかなり不遇な扱いを受けているのだが、実際当時のギリシャでは職人階級の地位が低く、そのことが神話の数々に反映されている*1
さらにアルカディアなどの地域ではオリュンポス十二神入りすらさせてもらえないほどであった
しかし職人が高い地位を持っていたアテナイでは大きな崇拝を受けており、その祭儀では今のオリンピックと同じような聖火リレーも行われていた。

ちなみに仕事場では弟子としてキュクロプスが働いている……が、キュクロプスがそもそもティターンとの戦いの際にゼウスの雷霆とか作ってたとか言わない……常に神のが偉いのだ。
また、雷霆を作っていた製造所と製造担当者であるキュクロプス始祖三兄弟はアポロンの襲撃で壊滅しているので、製造ラインを復旧したヘパイストスが子供世代のキュクロプスを手伝わせている……可能性も高い。

なお、アフロディテがそこかしこでこさえた子供たち(当然父親は別の男)のための装身具や武具も作らされている……







追記・修正は捨てた親に実力を認めさせて綺麗な嫁さん娶ってからお願いします

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最終更新:2025年10月03日 12:20

*1 足が不自由なことも、男性機能に障害を負ったことやまともな性愛に恵まれないことの暗示であろう。また、彼の放った精液から生まれた息子エリクトニオスは下半身が蛇であるとされるが、これもまた足が不自由なことを意味する