特生自衛隊

登録日:2011/06/21(火) 13:47:42
更新日:2024/10/22 Tue 14:05:11
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特生自衛隊とは、東宝株式会社が製作した特撮映画シリーズ『ゴジラシリーズ』の作品である『ゴジラ×メカゴジラ』及び『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』に登場した自衛隊の架空設定である。
いわゆる東宝自衛隊に含まれることもある。

劇中での略称は『特自』。


概要

正式名称は『対特殊生物自衛隊』。
英文略称は『Japan Counter-Xenomorph Self Defence Force』から取って『J.X.S.D.F』。

対特殊生物(怪獣)用防衛力として陸海空に続く第4の自衛隊と位置付けられている。
司令部は千葉県の習志野駐屯地。隊員数は2004年当時で4068名とされる(99年時は4072名)。
部隊章は青地に桜の意匠、その上に「特」の一文字が重ねられ、上部にJ.X.S.D.Fと書かれたものを使用する。
また、陸上自衛隊からメーサーを引き継ぐ形で編成されたためか、制服や戦闘服は陸自のものを踏襲している。

階級は「二佐」「三尉」「一曹」といった具合に一般の自衛隊と同じだが、フィクションあるあるで数字部分が漢数字になっている他、「二等陸佐」のように略さない場合はどういった表記になるのかは不明。

なお、自衛隊でありながら後述する理由から特自の戦力は防衛出動には使用出来ない(治安出動や災害派遣など他の自衛隊の行動が出来るかはわからない)。
しかし逆に「陸」「」「空」の支援を受けることは可能。

自衛隊という名称によるリアリティとフィクション性がかなりかっこいい。


特自の歴史

我が日本国は、1954年のゴジラ襲来を契機に生態系が激変。
巨大生物による災害が頻発するようになった。

それまでは概ね既存の兵器や意表をついた作戦で巨大生物に立ち向かっていたが、
1966年に凶暴な人型巨大生物のガイラを撃退する為、陸上自衛隊に66式メーサー殺獣光線車が配備された。

作戦は失敗したものの、メーサー殺獣光線車のあまりの高性能さに国内では「専守防衛の範疇を超えている」という懸念が広がった。
その為、メーサーを専門に扱う部隊として発足したのがこの特生自衛隊である。防衛出動を禁じられているのはこの為。

以後、メーサーを用いて頻発する怪獣災害に立ち向かっていた。
だが、千葉県房総半島沖で1954年にある天才科学者の手で退治されたゴジラの骨が回収された日、台風の夜に事件は起こった。


二頭目のゴジラの上陸である。


他の怪獣とは別格の強さを持つゴジラには、台風で威力が落ちているとはいえメーサーや通常の兵器がまるで効かず、
10人の殉職者と上陸地点の館山市一帯に大きな被害を出してしまった。

これに危機感を覚えた柘植真智子総理は「対G特殊兵器開発特別法案」を国会に提出。
1999年10月、賛成多数によりこの法案は可決された。

諸外国の「日本は再び軍事大国になるのではないか」という懸念の声*1を抑えつつ、
4人の科学者の協力を得たことで回収したゴジラの骨格を基に究極の対G兵器の開発を目的とした「機龍プロジェクト」が発足。

そして4年後の2003年、遂に3式機龍が完成した。
機龍完成と同時に機龍を専門に扱う精鋭揃いの特殊部隊『機龍隊』が新設。
内閣も柘植政権下で科学技術庁長官を務めた機龍プロジェクトの最高責任者・五十嵐隼人に引き継がれた。


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機龍隊

2003年2月、3式機龍の完成を見込み、
特生自衛隊から精鋭中の精鋭を集めて結成された防衛庁科学技術研究所直属のオペレーションチーム。

隊長は富樫二佐。防衛庁科学技術研究所がある特生自衛隊八王子駐屯地に司令部を置く。
AC-3しらさぎに乗って機龍の搬送及び操縦を行うことを使命とする。
『東京SOS』では名称が「第1機龍隊」となっているが、他の部隊は劇中では確認されていない*2


ちなみに機龍隊のメンバーの役者方は、実際に自衛隊で訓練を受けた(釈由美子さんもらしい)。
彼らが劇中の訓練中に歌っている唄はその際に指導してくれた方から、「唄わせたらどうでしょう?」と提案があったもので、
実際に自衛隊で歌われている唄の「自衛隊」を「機龍隊」に変えたもの。



■機龍隊の装備

●パイロットスーツ
暗めのグレーと黒色で配色された革製のスーツ。
左肩には機龍体のマークのワッペン、右肩には特生自衛隊のマークのワッペンが縫い付けてある。
この上に黒色をした装具やヘルメットを着ける。

撮影で使用されたスーツは手塚監督のとにかくタイトなものにしたいという意見が反映されており、
革の上下スーツと他の装具は、それぞれ発注先が異なるという凝ったもの。
家城茜役の釈由美子氏も「カッコイイ」と大絶賛だったらしい。

ただ『東京SOS』のオーコメ等によればレザー製なこともあり、ウルトラシリーズの隊員服同様、撮影日の夏場は汗がこもって滅茶苦茶暑かったらしい。

●ヘルメット
機龍隊メンバーが着けるヘルメット。透明ゴーグルがスライドする。
酸素ボンベを取り付けることで放射能で汚染された環境でも活動できるようになる優れもの。
後部にはそれぞれの隊員名が一つ一つプリントされている。

●スピアガン
劇中、茜が機龍のMB-3に入る際に使用された銃。
ワイヤーガンの一種で、放たれた後にダーツ部分が展開し、目標に引っかかる。
その後、腰にワイヤーを接続することで人一人を持ち上げることができる。

●キャップ
通常の隊員のキャップ。
機龍隊の刺繍が施されており、隊長の物にはつばに刺繍が入っている。




中心人物


◆柘植真智子 演:水野久美
1999年当時の内閣総理大臣。劇中の日本史上初の女性総理大臣である。
二頭目のゴジラ出現に危機感を覚え、「対G特殊兵器開発特別法案」を国会に提出。
賛成多数によりこれを可決させ、諸外国の批判を抑えて機龍プロジェクトを始動させた。
2003年に辞職、後の事を五十嵐新総理に託した。


◆五十嵐隼人 演:中尾彬
柘植総理の後任。柘植政権下では科学技術庁長官を務め、機龍プロジェクトを発案した人物。
首相の座を継いでからは機龍を使ってゴジラを倒す事に心血を注ぐが、
小美人の警告を受けた旧友・中條信一の言葉と命を賭けて戦うモスラの姿を見てゴジラを倒した後に機龍を破棄することを決断する。
最後は「自らの過ちを認める勇気を得たことこそ真の勝利」と語る。


◆土橋 演:上田耕一
防衛庁長官で、機龍プロジェクトの参謀を務める。


◆一柳 演:中原丈雄
特生自衛隊の幕僚長。ゴジラ撃滅の陣頭指揮を執る。
なお、特自の幕僚長は陸海空の幕僚長と違って単独での行動が許されている。


◆富樫 演:高杉亘
特自の二佐。機龍隊結成時には隊長に着任した。
冷静沈着な人物で、隊長としての手腕はなかなかのものである。




特生自衛隊の装備

ここでは主に架空の兵器を中心に羅列するが、便宜上、陸海空の実在兵器も紹介する。

◆66式メーサー殺獣光線車
詳しくは『メーサー殺獣光線車』を参照。
日本が特自を組織する切っ掛けとなった特殊兵器。
パラボラ型の砲塔から誘導放出されたマイクロ波を照射して目標を攻撃する。
劇中では既に現役を退いており、世界観説明を兼ねた柘植総理の回想で登場。
本作が『ゴジラ』以外の東宝特撮とも繋がりがあることを印象づけた。


◆90式メーサー殺獣光線車
詳しくは上記と同じく『メーサー殺獣光線車』を参照。
66式の後継機で、出力が10万ボルトから15万ボルトにアップしたほか砲塔にカバーが付くなど見た目がスタイリッシュになった。
乗員は操縦手兼砲手兼車長と補助要員の2名だが、家城が事故ったのはこれが原因な気がしなくもない……。
2004年(『東京SOS』)には改良が加えられた90式メーサー殺獣光線車<改>が配備された。
ゴジラ相手には上記の通り力不足だったが、ゴジラをひるませ時間を稼ぐなど良い支援をしていた。
小型原子炉を内蔵しているのに放射熱線で爆散しているが大丈夫なんだろうか……。


3式機龍
詳しくは項目を参照。


◆AC-3しらさぎ
全長:30m
重量:35t
最高飛行速度:時速930km
巡航速度:時速750km
機龍輸送時速度:時速400km
武装:バルカン砲、ミサイル

機龍の運用を行う目的で開発された特殊VTOL戦闘機。全部で6機が配備された。
1号機が作戦指令、2号機が機龍の遠隔操作、3号機がエネルギー供給機であり、残りがその予備機である。
また、1号機と2号機はワイヤーハングによって機龍を戦場まで輸送する役目も担っている。
なお、5号機は劇中未登場。3号機と6号機が『ゴジラ×メカゴジラ』での戦いで大破している。

機龍輸送できるとか、「どんな推力でどんなワイヤー使ってるんだ」とか突っ込んではいけない。
ちなみに用意できる劇中フロップ等の都合(その他合成も)から当初の輸送する機体が5機から2機に減らされた経緯を持つ。
手塚監督的にも苦肉の策であり、パンフレットなどで機龍の重量設定を見る度に心が痛むそう。


90式戦車
実在する日本の主力戦車。特自ではなく陸自に所属。
メーサー車と連携して、巨大生物迎撃の任に就く。
巨大生物に対してはAPFSDSではなくHEAT-MPを使用するようだ。
館山市や品川埠頭でのゴジラ迎撃など両作品の通常兵器としては出番が多いが、後退中に蹴り飛ばされたり放射熱線で全滅するなどもっぱらヤラレ役。

なお、元々は着上陸してくるソ連軍を迎え撃つため北海道で運用することを前提とした兵器だった。
そのため実際の第1戦車大隊に90式戦車が配備されたことはない*3
現実ではソ連崩壊後も北海道への集中配備は変わらなかったが、度々怪獣が襲ってくる機龍二部作での配備状況がどうなっているのか気になるところである。


◆73式小型車
特自の偵察警戒車。実在の73式小型トラックとは別の、架空の車両である。
ベース車は日産テラノ。
館山市での迎撃作戦では家城の操縦するメーサー1号車の先導車両として登場。
土砂崩れを回避するためバックしたところメーサーの牽引車と接触し、崖から転落した挙句ゴジラに踏みつぶされ、乗員4名が死亡した。
『東京SOS』では機龍の修復に向かう義人に同行している。


◆88式地対艦誘導弾(SSM1)
実在の兵器。館山市で90式メーサー殺獣光線車や90式戦車、MLRSと共にゴジラを攻撃する。
また、品川東病院に接近するゴジラを機龍到着直前まで至近距離で攻撃するが、敢え無く撃破された。ただし時間稼ぎには成功している。
翌年、品川埠頭に上陸しようとするゴジラに向けて関東地方一帯に配置された本車からの飽和攻撃が行われたが、全く効果はなかった。


◆三菱F-2支援戦闘機
実在の兵器。『ゴジラ×メカゴジラ』に登場。航空自衛隊に所属。
なぜか青い洋上迷彩ではなく、F-16のようなグレーの制空迷彩になっている。
機龍隊司令室での描写を見るに、コールサインは「イエロー」で三沢基地から発進したようだ。
品川埠頭に上陸しようとするゴジラを迎撃するが、放射熱線を受けて全機撃墜される。


◆F-15J要撃戦闘機
実在の兵器。『東京SOS』に登場。特自所属ではなく、航空自衛隊の戦闘機。
百里基地所属のコールサイン「ブルー1」と「ブルー2」の二機が国籍不明の超音速飛行物体にスクランブルをし、交戦する。

この時の流れは「アメリカ空軍からの警報」「AWACSや防空レーダーで防空識別圏と領空への侵入を感知」「英語での警告」「警告射撃の申請と許可」などリアリティがあり、
ゴジラシリーズの中では比較的現実に近い機龍二部作の雰囲気を盛り上げる名シーンと言える。

◆護衛艦「あいづ」(DD-147)
架空の兵器。『東京SOS』に登場。海上自衛隊に所属する。
東京へ向け北上するゴジラに対し、僚艦と共に対艦ミサイル*4、主砲、アスロックで攻撃したものの、反撃すらされずにスルーされた。

こんごう型護衛艦とタイコンデロガ級巡洋艦を混ぜたような見た目をしており、六角形のフェイズドアレイレーダーを備えるなどイージス艦の意匠があるが、イージス艦そのものかははっきりしない。
なお、艦番号の「DD」は一般的に汎用護衛艦を意味する*5

ミニチュアは前々作に登場した防衛海軍巡洋艦「あいづ」を改造したもの。
主砲がMk.45からオート・メラーラ127mmコンパット砲に代わっている他、艦橋前の高性能20mm機関砲が撤去されている。

この他にも装甲車、トラック、攻撃ヘリ、哨戒ヘリ、護衛艦、潜水艦など様々な兵器が登場する。


追記・修正は特殊生物研究本部でテズーカのDNAを研究しながらお願いします。

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最終更新:2024年10月22日 14:05

*1 なお、国内マスコミは「景気はどうなるのか」「また増税か」を懸念している。それに対して柘植総理は「非常時という認識を持ってもらわないと困る(要約)」と返答している

*2 たとえば陸上自衛隊には「第1空挺団」のように第2以上がなくても「第1」を冠している部隊がある。

*3 劇中に登場する実車は教育部隊である富士学校のもの

*4 ライブフィルムの都合上、対潜ロケット用の71式ボフォースロケットランチャーから発射している

*5 海自が装備するイージス艦こんごう型、あたご型、まや型はいずれもミサイル護衛艦(DDG)に分類されている。