ショーシャ軽機関銃

登録日:2016/11/06 Sun 11:19:12
更新日:2023/11/26 Sun 12:16:43
所要時間:約 4 分で読めます




ショーシャ軽機関銃とは、フランス版L85おフランス生まれの瀟洒で上品な軽機関銃である。

基本仕様


正式名称 FM Mle1915 CSRG(Fusil-Mitrailleur mle 1915)
全長 1143mm
銃身長 470mm
全重量 9.07kg
口径 8mm
使用弾薬 8mm×50R(8mmルベル弾)
装弾数 20発
作動方式 ロングリコイル式
発射速度 毎分250発(最大)
有効射程 200m

概要

フランスで第一次世界大戦期に開発された軽機関銃。
コンセプトは「歩兵一人で運用可能な軽機関銃」。
目のつけどころはよかった、のだが…。

ちなみに「ショーシャ」とは本プロジェクトの中心人物であるルイ・ショーシャの名である。

開発の経緯

それまでの機関銃は重かった。
何しろ重量だけで10kgオーバー。THE・軽機関銃のルイス機関銃すら12kg。
お陰で歩兵だととても一人じゃ扱えない代物である。
ここでフランス軍は考えた。
「歩兵一人でも取り扱える機関銃ができれば最強じゃね?」

当時はまだまだ「撃てば強いが取り扱いが面倒なロマン兵器」の領域だった機関銃。
これを軽量化して歩兵一人でも扱えるようにすればロマンの文字が取れて強武器になる。

さらに生産性を上げるための工夫もなされ、「歩兵に一人一丁機関銃」までも目論んだ。
そうして生まれたのが本銃である。

仕様

連発機構にはロングリコイル式(反動利用方式)を採用。
使用弾薬は当時のフランス軍では一般的なものであった8mmルベル弾を用いる。
弾は銃身下部に設けられた半円形の弾倉に収められる。…なんかこの時点で嫌な予感しかしないという方は正解(後述)。

また取り扱いやすいようにピストルグリップを採用

重量は9kg台とルイス機関銃などに比べて大幅な軽量化がなされている。
一体何が起こったのか?

その秘密は「プレス加工で生産する」という点にある。
当時最先端であったプレス加工を多用し軽量でしかも生産性の高い銃として仕上がる。

軽い・扱いやすい・すぐ作れる・今までの弾使える。
うん、完璧じゃないか。
ふはははは。戦争は数だよ兄貴。

さあどうなった

しかし実戦デビューしてみると、現場での評価は…

最悪。

どこがどう酷評されたのかだって?

まず、まだ未成熟なプレス加工を多用したために壊れやすい。
当時「最先端」ということは裏を返せば安定していない恐れもあるということである。
しかも生産性に全ステ振っているためにクリアランスもかなり甘めに取ってあり、余計に不具合が多くなった。
アニオタ的にはまああれだ、ジムの初期生産型と似たようなもの(『造りが雑』なせいでカタログ通りの性能を発揮できなかった)とでも思えばいいだろう。
次に嫌な予感しかしない、半円形の弾倉。
こいつが何かにぶつけたらすぐに変形して弾が出なくなる。さらに弾を装填する際にマガジンフォロワーを指で押し下げるための窓から泥などが侵入し、故障の原因となることも。
銃身の冷却機構も不安定で撃ちまくるとすぐにオーバーヒートする。…とは言えオーバーヒートより先に銃自身がぶっ壊れることも多いのであまり問題にはならなかったそうだが。このお陰で多分クールダウンは必要ないです、カルナさん
また「軽すぎる」のも問題であり、反動がモロに来て狙いが外れるというのも問題視された。
そして連射レートも最大で毎分250発というのも遅い部類に入る。

お陰で本銃を7000丁近く輸入したアメリカ海兵隊は、「おらこんな鉄砲もう嫌だ!」とばかりに鹵獲したドイツ軍の銃を使う始末。
ハートマン軍曹役で有名なR・リー・アーメイ軍曹に至っては「フランスに送り返したくなる銃だ」「フランス人は戦争せずに料理作ってたほうがいい」とまで酷評。
とは言え第一次世界大戦での名誉勲章の受賞者であるフランク・J・バート、トーマス・C・ネイバウアー、ネルス・ウォルドのように、
本銃を得物として戦い抜いた英雄も居ないことはない。
銃自身に問題があっても使う人間の技量があればなんとかなるということ…かも。

で、フランス陸軍はといえば…
後に東洋の某国で生まれた機関銃の様に連射ではなく3発ずつ撃つなど、あの手この手で故障の確率を下げる努力をしていたが、
192O年代に入ると「もう限界だ!」とばかりに後継の銃に置き換えられたそうで。


関連項目

多分似たような銃。



















実は・・・・・・

・・・・・・と、ここまでがよく知られた本銃の姿である。

だが紳士淑女諸君、
いつからこれが軽機関銃だと錯覚していた?


そう、これらの評価は戦中の間違った運用により着せられた汚名なのである。




本当の姿

上記の正式名称にあるフランス語『Fusil-Mitrailleur』とは英語にするのであれば『マシン・ライフル』に当たる言葉である。(フランス語で軽機関銃はMitrailleuse)
そこからも想像できる通り、本銃は軽機関銃としての運用を考慮されていなかったのだ。

時はWWⅠの最中、塹壕戦により西部戦線は完全に膠着状態に陥り、各国は頭を抱えていた。
どうにかして自陣の塹壕から敵の塹壕まで辿り着かなければ戦局を打開することは難しかったが、戦場は遮蔽物の無い広大なヨーロッパ平原、塹壕から飛び出そうものなら敵の機関銃に蜂の巣にされてしまうのは明白であり、新戦術または新兵器の開発が急務となっていた。

そんな中、フランス軍は『マーチングファイア』と呼ばれる歩兵戦術に目を付ける。
これは多数の兵士が1列横列を組み、腰だめ撃ちで弾丸をフルオート連射してばら撒き敵を牽制しながら突き進むという戦術であり、これによって敵軍兵士が塹壕から頭を出すことが出来ないままに自軍は前進することが出来るとフランスは考えたのである。

しかし、この戦術を行うには『立射が可能で・装弾数が多く・フルオート射撃が可能な・歩兵全員に配れる』銃が必要であり、当時フランス軍が装備していた火器ではこの戦術は使うことが出来なかった。
そこでフランスはマーチングファイア専用銃を開発することを決定、さらに航空機銃として既に実用化していたCSマシンライフルを歩兵向けに転用、再設計することで設計期間の短縮を計ったのである。

そうして完成した本銃は、まさにマーチングファイアのために設計されたマシンライフルとなった。

9kgという軽さは歩兵が1人で扱うには十分であり、大きい弾倉は装弾数を増やし、弾倉の穴は弾倉奥深くまで弾を込める際に横から補助することで弾倉の準備の手間を軽減、低い発射レートは継戦能力と腰だめ撃ちでのコントロールのしやすさを兼ね備え、プレス加工の生産性は歩兵全員に配布できるだけの量の生産を可能にしたのである。(実際WWⅠ中のルイス軽機関銃の生産量が50000丁ほどに対し、ショーシャは250000丁に迫る生産数になった)

完成後ある程度数を揃えられた本銃はソンムの戦いに投入され、マーチングファイア戦術での運用で一定の効果を見せたため、さらなる増産が決定された。


・・・・・・が、大量生産され各前線に届けられた本銃を見た現地指揮官と兵士は『フルオート連射できる・バイポッドがある・装弾数が多い』という部分のみを理解し、これは軽機関銃であると勘違いしたのである。名前からして違うだろ。

結果として、軽機関銃的運用をされた本銃は上述のような欠点を露呈し、欠陥製品の烙印を押されてしまったのだ。


如何に優れた製品でも、使い方を誤れば欠陥品となる。取扱説明書はきちんと読むべきなのだ。



ちなみに

実は本銃と同じ設計思想を持つ名銃がある。
そう、それこそかの有名な変態天才銃技士ブラウニング氏の発明したM1918ブラウニング自動小銃、通称BARである。
こちらもマーチングファイア戦術での運用を前提に設計されたが、重量は7.25kgまで軽量化、動作方式もガス圧作動方式になっておりその信頼性の高さから前線の兵士からは非常に高い評価を受けた。もうこいつだけでいいんじゃないかな。


しかし人類は過ちを繰り返した。


BARも軽機関銃的運用をされたのである。だから説明書を読めとあれほど

結果改良型とされるM1918A2では重量増加&重心の前進の原因となるバイポッドが取り付けられ重量はショーシャと同等の9kgまで増加、セミオート機能が排されるなど軽機関銃としての運用をする事を重視する設計になった。その上で銃身交換機能は最後まで搭載されないなど実質改悪当初のBARの運用思想とは異なった変更が行われたのである。

だがそこは天才ジョン・ブラウニング製、BARの高い機械的信頼と軽機関銃的運用にもある程度耐える拡張性はベトナム戦争まで長く兵士に愛される名銃を産んだ。




本銃も頑丈に作っておけば粗大ゴミ呼ばわりされる事も無かったのかもしれない。






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最終更新:2023年11月26日 12:16