FN P90

登録日:2011/02/24 Thu 09:28:14
更新日:2025/02/26 Wed 00:18:06
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FN P90は、1987年にベルギーのFN社が開発したPDW
開発コンセプトは『拳銃弾より貫通力に優れた弾を使い、なおかつ突撃銃より取り回しがよい銃』。


○カタログデータ

全長 500mm
重量 3.0kg
口径 5.7mm×28
使用銃弾 SS90⇒SS190
銃口初速 715m/s
装弾数 50発
連射速度 900発/分
発射形式 セミ・フル
作動方式 ストレート・ブローバック
メーカー FabriqueNationale(ベルギー)


PDWの項目にもあるが、ボディアーマーの普及と高性能化により、後方部隊の火器では対抗できなった為に開発された。
特徴としてプラスチックを多用したブルパップ式の銃というものがあげられるが、これ以外にも画期的な特徴を備えている。



○下向きの排莢口

排莢口というのは通常銃の右側に付けられることが多い。
右利きが多い世の中、右手を引き金、左手はハンドガードに持っていくのが自然な構え方である為、右側に排莢口を付けないと………「熱っ!」「痛っ!」となる。
自然と左利き人間は不便を強いられてきた。

しかし、下向きの排莢口を設けた為、射手の利き手を選ばず、左右臨機応変に構え直すことが出来るようになった。
でも足元に薬莢が散らばるので踏んで転びやすくなる弊害もある。



○銃上部に設置されたマガジン

マガジンというとグリップの中や引き金の前にある物を想像するだろう。
P90では上部に銃身と並行に設置し、銃弾を横向きの複列装填にすることで本体から大きく張り出すことなく50発というハイキャパシティーを実現している。
勿論銃弾は横向きに飛ぶ…訳はない。バネによって90度回転させてから薬莢に送弾する。
しかし残念なことに従来とは大きく異なる装填方式の為マガジンの交換には熟練が必要である。



○新規開発の銃弾

なんと新口径の銃弾「SS90」まで作ってしまいました。
ライフル弾を短小化したようなボトルネック形状をしており、サイズこそ拳銃弾並だが貫通力に優れる。
さらに人体などの柔らかい物体に命中すると弾が横転するため、口径の割に殺傷力が高いというおまけ付き。拳銃弾とライフル弾の両方の利点を備えた物なのだ。後に発展型のSS190に切り替えられる。
銃弾そのものが軽くなっており、FN社曰くは9mmパラベラムと比べて反動が60%に抑えられたとしている。
FN社は主武器と予備武器の弾の種類を一つにまとめることも意識し、この弾薬を使うFive-seveNという拳銃も開発している。
が、新規開発の為コストが高い。
5.7mm×28がポピュラーになることはまずあり得ないので、多分ずっとお値段も高いまま。


…と思われていたのだが。
なんと2021年2月25日、ライバルのMP7の4.6x30mm弾共々、NATO標準弾と認定された。


○現実世界での活躍

FN社が試行錯誤しながら完成させたP90だが、
冷戦集結後軍縮に向かう世界の中で要求を出した米軍にも買われずにPDWではなく「ただの短機関銃」として販売せざるをえなかった。
しかし、1996年のペルー日本大使館占拠事件においてペルー軍、警察の突入部隊の一部がP90を使用していたことで知名度が高まる。
室内戦闘の多い特殊部隊の火器としても注目されており、アメリカ海軍のSEAL、イギリス陸軍のSAS、キプロス国家守備隊などが採用、トライアル中である。

なぜこういう特殊部隊に人気かというと、「ブルパップにより銃身長をそのままに全長が短くなり狭い室内で引っかからない」「弾薬の特徴としてドアなどの硬い目標には高い貫通力を発揮するが、人体などの柔らかい目標には弾頭が横転して体内にとどまり、近くにいた人質などへの二次被害を出しにくい上にストッピングパワーも高い」「ボディアーマーを貫通できる」「それでいて22LR弾並の低反動」などが理由。
また特殊部隊は少数精鋭のため、装備に対してある程度の高コストを許容できる。
ちょっとくらい値段が高くてもそれで任務成功率が上がるならOKなのである。

NATO制式弾薬への採用も、世界で起きる戦いの大部分が「国家対国家」から「国家対テロリスト」に変化していったため、この弾薬の需要が高まっていると考えても穿ちすぎではないだろう。



○架空世界での活躍

人間工学に基づいて作られた外見のインパクトもさることながら実戦で活躍できる銃のため様々な作品に登場している。


○登場作品


  • パーフェクトダーク
モデルとした「RCP-90」が登場。

上記パーフェクトダークに先駆け「RC-P90」名義で登場している。

  • メタルギアソリッドシリーズ
メタルギアソリッド2ではソリダス・スネークや天狗兵が使用。4ではヘイブン・トルーパー(カエル部隊)が使用する。

「ヒーローシューターレプリカ」の元ネタとされる。

ヘンリエッタが使用。改造したバイオリンケースに入れて持ち歩いている。
監視役であるジョゼがFive-seveNを携行しているが、ヘンリエッタは手のサイズの関係で使えない。


OVA第一話の防空壕内に配備。原作最終話で浅羽が発砲。

  • 砂ぼうず

  • ギャラクシーエンジェルⅡ
メルパ・ブラウニーが所持。

BADANのコマンドロイドが所持。

  • 魔法先生ネギま!!
学園祭のイベント時に龍宮が使用。おそらく改造エアガンであろう。超特製の時間跳躍弾をばらまいた。また、量産型茶々丸シスターズも使用している

第5巻の扉絵にてシャルロットが保持。まぁIS用装備かもしれんが。

OVA三巻で深井零が使用。

主人公レンの愛銃。3巻ではFive-seveNとの弾互換性も語られた。
本編シリーズの主人公であるキリトはFive-seveNを使用している。

モダン三部作全てに登場する数少ない銃火器の一つ。
主にロシア系テロリストやロシア軍兵士が使用している。
アイアンサイトの視認性が良く、集団率やリコイルも安定していて使いやすい。

  • スターゲイト


○余談

国産トイガンとしては東京マルイがP90を発売している。

大柄に見えてその実コンパクトに構えられ、左右のスイッチングも楽々こなせる。
欠点はマガジン交換に馴れが必要なのと、トリガーがやや重い、MP7辺りと比べるとサブウェポンとして吊るしづらいところか。
民生用のP90である「PS-90」も販売されており、こちらは規制の都合でロングバレル化されかつハイサイクルカスタムとなっている。実銃はセミオートのみだが、こちらはサバゲー用にフルオートを搭載。

また台湾のWE社ではP90のガスガンが開発中。
マガジンを抜く際、給弾口からバシュっとガスが四方に吹き出す様は、未来系SFに出てくる銃を強く思い起こさせる。
その手の愛好家の心を捕らえて離さないだろう。


なお本項目ではPDWとしたが短機関銃として区別、評価する専門家もいる。





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最終更新:2025年02月26日 00:18