FN P90

登録日:2011/02/24 Thu 09:28:14
更新日:2025/09/07 Sun 02:57:17
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性能

全長:500mm
重量:3.0kg
使用弾:5.7x28mm SS90⇒SS190
銃口初速:715m/s
装弾数:50+1
連射速度:900RPM
動作方式:ストレートブローバック



概要

1990年よりベルギーのFN社が製造販売しているPDW
NATOは新弾薬を使用し小型軽量な個人防護用のライフル/ハンドガンを欲しており、1989年にD/296文書にてPDWと名付け必須仕様を公表し、それらの武器を要求した。
同時期に近いコンセプトで試作を行っていたFN社が開発し完成したのが本銃とFN Five-seveNである。
仕様の詳細や他社についてはPDWやライバルといえるH&K MP7の頁を参照。



特徴

プラスチックを多用したブルパップ式の銃であるが、これ以外にも特徴的な構造を採用している。

下向きの排莢口

射撃後に薬莢が飛び出す排莢口というのは、多くは銃の右側に設けられていることが多い。
右利きが多い世の中では右肩に肩付けし右手をグリップに、左手をフォアエンドに持っていくのが自然な構え方である為、左側や真上に排莢すると射撃直後の薬莢が射手にぶつかることになる。煩わしく、しかも薬莢は熱いので火傷にもつながる*1
左利きや左肩にスイッチして撃つ場合に問題になることがあった*2
しかし本銃では下向きの排莢口を設けた為、左右臨機応変に構えることが出来るようになった。
足元に薬莢が散らばるので踏んで転びやすくなる弊害もあるので、似たコンセプトのFN F2000では前方に排出するようになっている。

上部給弾の銃に沿ったマガジン

ボックスマガジンというと銃下部に装着し、銃と直角に近い角度で伸びているものが多い。20~30発を超えると、グリップ長を超えてせり出させるかドラムマガジンなど別形式にせざるを得ずかさばってしまう。
しかし本銃ではマガジンを上部に装着。そのままだとブレンガンのように上に伸びてしまうので、銃身と並行になるよう縦横に90度ずつ傾けている。
これにより本体からせり出すことなく50発という装弾数を実現している。
弾はマガジンリップ付近で90度回転するため、H&K G11のように本体側に追加の機構が要らず信頼性を損なわない。
従来とは大きく異なる装填方式の為マガジンの交換には熟練が必要で、装弾抜弾もコツが要り時間もかかる。その代わりとは言い切れないが半透明の素材となっており残弾確認がしやすい。

新規開発の銃弾

要求に合わせ新型の5.7x28mm SS90弾を制作。
概ね突撃銃の5.56x45mm弾を短小化したような形状をしており、サイズこそ拳銃弾並だが850m/sの初速で飛翔し200メートル先の旧NIJクラスⅢA程度なら十分貫通する。
5.56x45mm弾での横転しやすい構造*3も踏襲されており9mmパラベラム通常弾ともダメージは遜色ない。
後にSS190に発展し、弾速を遅く弾頭を重く短くする調整を受けた。SS90が高速を突き詰めるためにブラスチック弾芯を用いていた点を変更したことで貫通力は変わらず銃への負担が軽減された。
FN社曰く9mmパラベラム弾と比べて反動が60%に抑えられたとしている*4

2021年2月25日にMP7の4.6x30mm弾共々NATO標準弾と認定された。P90は弾がより大きく既存の5.56mmNATO弾の生産設備を流用できる点で評価され、MP7は装甲貫通面で評価されたものの拳銃の要求をクリアしていなかった*5のだが、結局は双方とも優秀という結論となった。足掛け20年以上かけてNATOの要求は達成されたといえる。

独特な操作体系

標準でフォアグリップが括り付けられていて、片手撃ちをしない限りは確実にこれを握ることになる。トリガーガードとこのフォアグリップのサムホールとがくっついているのでサポートハンドがトリガーに触れてしまう構造*6
コッキングハンドルは両側にありノンレシプロ。飛び出してこそいないのだが指1つ掛けられるかどうかといったサイズで引くのには慣れが必要。
セレクターはトリガー下部にあり縦軸で回転する方式でクロスボルト的に扱える。
フルオート射撃時はプログレッシブトリガーとなり浅く引いていると単発、深く引くとフルオートになる。AUGと同じだが一応セレクターにはセミオートポジションがある。
マガジン交換と合わせてかなり独特であることがわかるだろう。



現実世界での活躍

冷戦集結後の軍縮により大規模採用されることはなかった。PDWではなく短機関銃扱いとして民間でもセミオート仕様が販売されたが弾も銃も専用弾なので高く、FN社の珍銃として埋もれかけるところだった。
しかし、1996年のペルー日本大使館占拠事件においてペルー軍、警察の突入部隊の一部がP90を使用していたことで知名度が高まる。
CQB向けとして対テロ特殊部隊が採用し、40ヶ国以上で確認されている。本来の後方部隊の自衛火器としてはあまり用いられなかったが…

なぜ対テロ特殊部隊に人気かというと、弾薬の特徴としてドアやボディーアーマーなどの硬いものには高い貫通力を発揮するが、人体などの柔らかい目標には弾頭が体内にとどまり、人質や壁越しの民間人などへの二次被害を出しにくい点がある。
また特殊部隊は少数精鋭のため、装備に対してある程度の高コストを許容できる。ちょっとくらい値段が高くてもそれで任務成功率が上がるならOKなのである。
冷戦後は世界で起きる戦いの大部分が「国家対国家」から「国家対テロリスト」の非対称戦に変化していったため、PDWの需要が高まっていると考えても穿ちすぎではないだろう。



バリエーション

  • P90
ベースモデル。外部集光(最新モデルはボタン電池)式のドットサイトを装備している。
  • P90 USG
米国政府向けモデル。
  • P90 TR
3面レールモデル。上面がレールとそれに沿ったバックアップサイトで構成。
  • P90 LV/IR
可視光レーザー/IRレーザーモジュールが標準搭載されたモデル。
  • PS90
セミオートのみでフルオート改造もできないように改修された民間仕様。SBRと認定されないように16インチ銃身+固定式フラッシュハイダーを装備している。94年からのアサルトウェポン規制法に則り装弾数に制限を設けたマガジンも存在する。
ただし引き金がプログレッシブトリガーそのままなのでトリガーフィールが悪く、その点をカスタマイズする場合がある。SBRとして短縮したバレルも社外で販売されている。


また、他社も同じ弾を使用した以下の銃を販売している。

  • ケルテック P50/R50
  • AR-57
これらはP90と同じマガジンを使用するライフル。P50のみ拳銃となっているがかなり巨大なので携行性が悪いかわりに低反動。

  • ケルテック PR57
  • スタームルガー5.7/5.7カービン
  • PSA 5.7 ロック
  • S&W M&P 5.7
これらは専用マガジンを使用する拳銃/カービン。

弾はFNの子会社のみが製造している状態で1発150円以上の高値となっていたが、パテントが切れ別会社も弾を作り始めたとのことで今後はこのような5.7x28mm弾を使用する銃も増えていくものと思われる。



フィクション

人間工学に基づいて作られた外見のインパクトもさることながら実戦で活躍できる銃のため様々な作品に登場している。

登場作品


  • パーフェクトダーク
モデルとした「RCP-90」が登場。

上記パーフェクトダークに先駆け「RC-P90」名義で登場している。

  • メタルギアソリッドシリーズ
メタルギアソリッド2ではソリダス・スネークや天狗兵が使用。4ではヘイブン・トルーパー(カエル部隊)が使用する。

「ヒーローシューターレプリカ」の元ネタとされる。

ヘンリエッタが使用。改造したバイオリンケースに入れて持ち歩いている。
監視役であるジョゼがFive-seveNを携行しているが、ヘンリエッタは手のサイズの関係で使えない。


OVA第一話の防空壕内に配備。原作最終話で浅羽が発砲。

  • 砂ぼうず

  • ギャラクシーエンジェルⅡ
メルパ・ブラウニーが所持。

BADANのコマンドロイドが所持。

  • 魔法先生ネギま!!
学園祭のイベント時に龍宮が使用。おそらく改造エアガンであろう。超特製の時間跳躍弾をばらまいた。また、量産型茶々丸シスターズも使用している

第5巻の扉絵にてシャルロットが保持。まぁIS用装備かもしれんが。

OVA三巻で深井零が使用。

主人公レンの愛銃。3巻ではFive-seveNとの弾互換性も語られた。
本編シリーズの主人公であるキリトはFive-seveNを使用している。

モダン三部作全てに登場する数少ない銃火器の一つ。
主にロシア系テロリストやロシア軍兵士が使用している。
アイアンサイトの視認性が良く、集団率やリコイルも安定していて使いやすい。

  • スターゲイト

遊戯銃

国産トイガンとしては東京マルイがP90を発売している。
大柄に見えてその実コンパクトに構えられ、左右のスイッチングも楽々こなせる。
欠点はマガジン交換に馴れが必要なのと、トリガーがやや重い、MP7辺りと比べるとサブウェポンとして吊るしづらいところか。
民生用のP90である「PS-90」も販売されており、こちらは規制の都合でロングバレル化されかつハイサイクルカスタムとなっている。実銃はセミオートのみだが、こちらはサバゲー用にフルオートを搭載。
また台湾のWE社ではP90のガスガンが開発中。
マガジンを抜く際、給弾口からバシュっとガスが四方に吹き出す様は、未来系SFに出てくる銃を強く思い起こさせる。
その手の愛好家の心を捕らえて離さないだろう。





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最終更新:2025年09月07日 02:57

*1 ワルサーP38など左や真上に排莢するものもあるがレア

*2 既存の銃はケースデフレクターなどで前に偏向したり工具によって排莢口を左右切り替えできるようにしたりしている

*3 人体など軟目標に命中した際に内部で横転してダメージを高める

*4 追記者は実際PS90をSS197SR弾で射撃したが、スコーピオンEVO3などと比べてもかなり反動自体がなかった。.22LRと同じか少し勝る程度。ついでに構造上構え方が1つに強制されるのでその点でも反動が抑えられている

*5 MP7自体が大型拳銃として運用できるため

*6 悪いわけではないが、意図しない射撃を誘発しかねないのでAUG系統以外のライフルではあまり見られない。一応M16やSG550などトリガーガードを外して同様のことができる場合もある