SCP-2959

登録日:2016/12/01 (水) 23:50:42
更新日:2023/12/20 Wed 14:27:30
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SCP-2959とは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) の一つである。
項目名は「What We Did, What We Were(かつての我らとその使命)」。


オブジェクトクラスは少々特殊で、Keter-potissimiと指定されている。
意訳すれば「最大の懸念」となる。



◆特別収容プロトコル

さて、本来ならばここで「このオブジェクトってどんなもん?」という説明をすべきだが、コイツは概要そのものが最大のネタバレになるため、先に取り扱い方を述べておく。

まず、コイツに関するセキュリティは非常に厳重である。
コイツ自体とそれに関連する全ての文書の閲覧は、デルタ-5セキュリティクリアランスを持った人間にしか許されておらず、しかもこれはいかなる事態に陥ろうとも決して緩められることがない。
簡潔に言うと、財団の中でも限られた一握りの人員だけがこの情報を確認することができるのだ。

その上で、当該クリアランスの保持者はSCP-2959に曝露された個人との接触を禁じられ、コミュニケーションを取る際には会話内容の大まかな意味を読み取りつつミーム汚染を阻止する人工知能を介することが義務付けられている。



この時点でわかっただろうが、SCP-2959は実体を持たないミーム汚染系のオブジェクトであり、その特性上収容は不可能である。
しかしここで疑問になるのが、「ミーム汚染系なら何で他の財団職員に対処法が明かされないの?」という部分であろう。
ざっくり説明するとミーム汚染とは、そのオブジェクトによって与えられる、基本的な考え方やそれに基づく行動に及ぶ精神的・認識的影響のことである。
日本支部のオブジェクトならば「ねこですよろしくおねがいします」が筆頭。緋色の鳥は厳密に言うと「認識災害」という別物ですよろしくおねがいします。

コイツも当然ミーム汚染を引き起こしているのだが、対処すべき財団の中でごくごく一部の人間にしか対処法が与えられていないという本末転倒っぷりである。
というのは、このオブジェクトが影響をもたらしているのは外界ではなく、なんと財団内部なのである。

では、コイツは財団の中でどれくらい広がり、どんな影響を与えているのか?
ここからはそれについて述べる。


◆おおざっぱな概略

SCP-2959は、財団職員を汚染しているミーム的災害であり、その内容は財団内部における特定の実体の集合に与えられたとある呼称の指定である。
これには三種類あるが「-1」「-2」とは分けられず、ミーム的災害そのものである「SCP-2959」と、それによるミーム汚染が示す指定呼称にくくられた「SCP-2959実体(ナンバー分けはこちらに対応するが、多すぎるのである)」、そして「SCP-2959-A」と区分される。

SCP-2959実体はさまざまな性別、経歴、身体的特徴、人種、年齢その他を持った通常の人間の集団として出現し、精神、身体的状態は標準偏差の範囲内に収まっている。
様々な個性を持っており、数少ない共通点として、財団職員を「博士」と呼ぶ傾向があるがそれ以外はまちまちである。
ただ特筆すべき点として、SCP-2959実体は一様に、厳重に警備された様々な刑務所におり、様々な国家の死刑囚または政治犯であったが、財団によって引き上げられたと主張している。

財団によって雇用され、何らかの資格を保持している人間がSCP-2959実体、あるいは汚染された個人とコミュニケートした際に汚染が発生する。
では、このオブジェクトによるミーム汚染を食らった人間はどうなるのか?

まず、身体的・人格的には特に変化は起きない。が、認識に変化が起きる。
SCP-2959実体をヒト被験者とみなすようになり、以前の人格や暴力への嫌悪感にかかわらず、SCP-2959実体と他のSCPオブジェクトを利用した実験を行うか、その実行を補助するようになる。
通常、これらの実験はSCP-2959実体を死亡させるか、有害作用によって苦しめる結果となる上、科学的利益が少なく、SCPオブジェクトのより深い理解には繋がらない、というほとんど無意味なものに終始される(一応、「このオブジェクトはどんなものだ?」という概要の理解の助けにはなるが)。
影響を受けた職員はSCP-2959実体の生命や幸福を無視するようになり、長期の接触によってこの傾向は増大する傾向がある。

SCP-2959実体は、カレンダー上で1ヶ月間被験者として用いられることが多い。
汚染された職員は、奉仕期間後の解放を約束してSCP-2959実体を協力させるが、毎月1日に、SCP-2959実体は終了=抹殺されている。
通常はSCP-2959-Aに付属のガス室で行われるが、様々なサイトにおいて儀式的な断頭、溺死、鞭打ちなど、数例の非典型的な終了手段も記録されており、これに必要な道具は全てSCP-2959-Aから供給されていることが確認されている。
終了されたSCP-2959実体は全ての事例において焼却されるが、これと同時に、新たな実体がオレンジのつなぎを着てSCP-2959-A宿舎内で就寝している状態で実体化する。
さらに汚染された職員は、これらの事象の映像記録やSCP-2959の輸送に関する矛盾点に反応せず、SCP-2959がサイトに配送されたという偽の記憶を有するようになる。

尋常ではないレベルの汚染である。

で、最後に残ったSCP-2959-Aだが、これは1棟の建物や1つの階層(場合によっては建物全体)であり、宿舎としての機能を有している。
サイトに関与する職員がSCP-2959実体や汚染者からの汚染を受けた時点で、SCP-2959-Aは財団サイトに完全に組み込まれる。コイツの実体化は瞬間的であることが示されており、阻止の手段はない。
SCP-2959-AはSCP-2959の生活の世話、殺害、制御に必要なあらゆる装備を保管しており、全てのサイト職員はSCP-2959-Aを最初から建物の一部であったかのように扱うようになる。



さて、このオブジェクトによる汚染はどこまで拡大しているのか?




財団全てである。




比喩ではなくSCP財団の主要サイト全てが、SCP-2959によるミーム汚染を受けてしまっているのである。
ハッキリ言って終わっている。その規模ゆえに、根絶まで汚染者の行動を阻止する手段は存在しない。出来たとしても、その場合財団自体が機能を停止する。この汚染にかかわる行動を除いては全ての職員は財団の基本目的に反しない行動をとるため、わかっていながら看過せざるを得ないのが現状である。

そういうわけで、デルタ-5/セキュリティクリアランス保持者は、根絶の目途が立つまで全サイトから最低100キロメートル以上離れたセーフゾーンに隔離されている。というより、感染しなかったわずかな人員をこのクリアランスに割り当て、その内部で情報をやり取りしているらしい。


余談だがSCP-2959実体は、その95%が、主に軽犯罪で刑務所入りしている人間のコピーであり、投獄の理由を除けば私生活から人格に至るまですべてが一致している(実体群は死刑囚だと主張するが、該当する実際の人物は窃盗や恐喝などの軽犯罪で投獄されている)。
残り5%については該当する人物が生死問わず存在していない。


この5%についてだが、自身を「セリーナ・デイビス」と称するSCP-2959-10へのインタビューが試みられている。
件のAIを介し、かつ財団の人間ではない外部の人員を介してインタビューを行った。
その結果は芳しくなかったが、該当実体は質問者が財団職員でないとわかった途端異常な発汗を起こし、さらにインタビュアーの言葉をおうむ返しに繰り返し、最後には「彼らが何をしたか。彼らがどこから来たか、博士」と繰り返していたことから、オリジナルの存在しない実体については指定カテゴリである以上の行動がとれないと思われる。
そしておそらくは、この独立個体がオブジェクトの起源に関わっていると思われる。




ここまで記せば見当がついただろうが、SCP-2959によって発生しているミーム汚染の内容とは「Dクラス職員」である。

このオブジェクトに汚染された最初のサイトであるサイト-19は2011年2月13日、処罰として職員を「Dクラス」に「降格」し、通常の手順に従って月末に終了するという慣習を制定した。
降格理由としては財団への不服従や資金の流用などがあったが、同時に慢性的な遅刻癖や、最近制定された服装規定に従わないなどの理由も含まれていた。

さらに5年後の2016年9月18日、他の全ての汚染サイトが職員の「Dクラス」への降格を様々な罪への処罰として制定した。
こうして運行されているのが現状の財団である。

例のセリーナ・デイビスについては、「Dクラス職員」というカテゴリ内に収まっているため、財団職員以外の人間とのコミュニケートが想定されていない=例外処理がなかったためにバグを起こしてしまったらしい。


しかし、Dクラスという概念がミーム汚染の結果である以上、元々の財団にはそんなものは存在せず、必要ともされていなかったことがわかる。
これについて、汚染を逃れたO5-5がこう述べている。


これが我々の立場だ。ほとんどのO5は汚染されている。
無論、彼らはまだその地位にあるが、我々は彼らをできる限り早く退職させるように舵を取ろうとしている。
我々が破局に気付いた後で、救うことのできた職員はほんの一握りだった。
だが、病欠していた少数の研究員や幸運にも網の目を逃れたエージェントがいた。もう我々だけだ。
困難な任務だが、この疫病は終わらせなければならない。かつての姿を取り戻さなければならない。
我々は疫病を免れるほどには幸運だったが、我々がどれほど凋落してしまったか見続けるという呪いを背負うことになった。


彼らは恐るべき何者かと化してしまった。我々は彼らを救う必要がある。SCP-2959は財団の目的を変更しようという試みなのか、それとも我々の資源を自分達の実験に用いているのか。我々には分からない。
だが理由は問題ではない。私は、私の愛していた人々が吐き気を催すようなことをするのを見てきた。
仮にあれが本物の人間では無かろうとも、汚染者は本物だと考えている。
彼らは日々残酷になり続けている。これを続けるのを許してはならない。
我々は、彼らが財団をこれ以上堕落させるのを絶対に許してはならない。


我々が確保し、収容し、保護するためにここにいることを思い出せ。科学の名の下に不必要な苦痛を与えるためではない。
彼らは我々の使命を思い出す必要がある。我々全てのように、かつて暗闇の中の光だったことを思い出す必要があるのだ。


O5-5



そして残念ながら、このミームは我々Wiki籠りにも感染している。
考えてみてもらいたい。我々がSCPという存在を知らなかった頃、初めて知った頃。

人体実験という響きに嫌悪感を覚えなかっただろうか?

だが、いくつかの記事を読み進め、財団世界の概念とDクラスの詳細を理解した頃。

そういうものなのだと自然に受け入れるようになっていなかっただろうか?


SCP-2959。

それは、ある意味でもっともわかりやすく、普遍的な「ミーム」、そのものなのである。




追記・修正はDクラスについて考えてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2959 - What We Did, What We Were
by kinchtheknifeblade
http://www.scp-wiki.net/scp-2959
http://ja.scp-wiki.net/scp-2959

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最終更新:2023年12月20日 14:27