増毛駅

登録日:2016/12/19 (月) 21:42:59
更新日:2024/11/06 Wed 17:57:56
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ましけ
増毛
<●  Mashike   |
ふさふさ    つるつる
Fusafusa    Tsurutsuru

〜また髪の話してる〜

増毛駅とは留萌本線終着駅にして映画の舞台、そして全国に名を轟かせる「髪の毛の聖地」である。

概要

本線と名がつくローカル線・留萌本線の終着駅。
特に増毛駅のある留萌-増毛間(通称:増毛線)は景色のよい路線として知られている。北海道の鉄路で数少ない日本海を見ることのできる路線で、しかもずっと海沿いを走り続ける。車窓からは海を見続けることができるのだ。
更に駅自体も魅力的だ。長らく風雪に耐えてきた木造駅舎。今では空虚にも見える線路周辺の広い空間。そしてやがてとぎれる線路に置かれた車止め……。
その取り合わせが訪問者の旅情をそそる駅である。

この駅を有名たらしめたものは映画のロケ地としての姿であろう。
「駅 STATION」を始めとして「魚影の群れ」「網走番外地」などの多くの映画の撮影に使われた駅である。
特に「駅 STATION」は有名で、「鉄道員(ぽっぽや)」の幾寅駅とともに増毛駅は「健さん」こと故・高倉健さんのファンの聖地とされている。
また「駅 STATION」の撮影で使われた建物「風待食堂」は観光案内所として今でも駅前に残されている。
増毛駅自体は無人駅であるものの、入場券がここで観光客用に売られている。特に「頭髪に不安のある人」に人気だとか。

それだけではない。この駅がとある方々に聖地としてあがめられているのはその字面ゆえである。
増毛」……「毛が増える」……うっ、頭が……。
そう、「髪の毛でお悩みの人」にとって縁起が良い場所とされているのだ。半家(はげ)駅から増毛駅への切符が神聖なものとして扱われ、「半家から増毛へ」のツアーが組まれることもあるという。

かつて映画の舞台となったローカル線の終着駅……。
それゆえにこの駅は「映画ファン」「ローカル線ファン」「終着駅マニア」「頭髪の不自由な方」などにとって一度は巡礼したい駅となったのである。




髪の毛の量を問わず、追記・修正お願いします。

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                           ( ´・ω・`)                × 2016.12.5 廃止
                         =〔~∪ ̄ ̄〕                ┃
                         = ◎――◎                .┻
━―[半家]━―━―━―━―━―━―━―━―[深川]━―━―━―━―[留萌]      [増毛]









ましけ
増毛
<●  Mashike   |
はしべつ
Hashibetsu

〜出会いと別れの舞台〜

増毛駅とは1921年11月5日から2016年12月4日まで留萌本線の終点だった駅である。

歴史

生え…栄えある歴史

増毛の町の歴史は古い。北海道の町(特に道南以外)では珍しく、江戸時代にまでさかのぼることができるほどだ。その当時からニシン漁などの漁業で栄えていた。
昔の交通手段は鉄道が主だったことから、留萌本線が延伸してきてからはもちろん人々や物資は鉄道によって移動を行っていた。
また留萌本線が敷設された理由の一つに北海道-樺太間の輸送を行うためというものがあり、増毛は鉄路と港をつなぐ拠点の一つとなっていた。*1
そのような事情があり、留萌本線は地域の生活的にも国の政策的にも重要な路線であった。
また留萌本線の支線として羽幌線も存在していた。本線より長いこの路線の沿線には炭坑があったりニシン漁で栄えた町があったりした。
そのような地域と港や都市を結ぶ貨物や旅客の輸送経路として羽幌線および留萌本線は大活躍していた。その全盛期、留萌本線にはニシンやら石炭やら人間やらをたくさん積んだ列車が走っていたそうな。

その他、増毛駅およびその周辺は映画のロケ地として有名となっている。
前述の通り「駅 STATION」などは増毛駅で撮影された。30年を過ぎてもなお名作とされる同作などにより、増毛駅は北海道内でも特に巡礼しておきたいロケ地として数えられたのである。

またネタ的には、所在地の増毛町は「おもしろ地名」としてしばしば取り上げられる場所である。もちろん増毛駅も「おもしろ駅名」として有名であった。
そうして増毛町および増毛駅は字面から「生え際に不安がある人の聖地」として知られることとなる。

かくして留萌本線を行く列車は地元の人や多くの貨物、更には「映画ロケ地巡礼者」や「髪の毛よりも前進している者」などの旅人を運んでいたのである。

衰退、そして廃止へ

しかし、やがて鉄道輸送は衰退していった。物資も人々も、列車が運ぶものは少なくなっていった。
そしてニシン漁の衰退、炭山の閉鎖、モータリゼーションの発達、そして沿線の過疎化……。これらは全て留萌本線の利用実績に影響した。
ニシンや石炭など、運ばれる貨物の量は減少していった。また道路交通網が整えられた結果、貨物輸送はトラックなどによるものに取って代わられた。
加えて地元からは次々に人が去っていき、残った人々もより融通のきくバスや自動車を利用するようになった。そうして鉄道の利用者数は減少していった。

留萌-増毛間は日本海を望みながらひた進み、時期と運によっては「夕日」や「あらし」が見られるなど風光明媚な路線ではあった。観光路線としてのポテンシャルはあったと言えよう。
実際、海水浴需要のために「浜中海水浴場駅」という臨時駅がもうけられたり、SLすずらん号や増毛ノロッコ号といった観光列車が走ったりした。
しかしそれでも観光客だけで路線を支えられるほどではなかった。やはり地元の人々が使わなければ路線の維持は厳しいのであろう。

その結果、近年の留萌本線、特に留萌-増毛間は往年の賑わいなどどこにもないほどの閑散路線となってしまった。その減少の幅は「30年前の16分の1」ほど。
加えてこの路線区間は災害に弱く、大雨なり暴風なり大雪なりの悪天候による運休がやたら多かった。
冬に「雪崩」や「斜面崩壊」のおそれがあったことから運休になり、そのまま春まで動かないということもあったとか。
そんなもんだから営業成績の指標となる「輸送密度」ではJR北海道全体で一番下となっていた。あの閑散路線・区間で有名(?)な「札沼線の北半分」よりも悪いのである。
それどころかまた別の指標である「営業係数」では美深町の誇る(?)「日本一」こと美幸線よりも悪かったりする。
かくして減少を止められず「もうがない」ということで留萌-増毛間は2016年12月に廃線、それに伴い増毛駅も廃止されることとなった。

お別れ

さて、廃止と聞いてやってきた者達がいる。葬式鉄と呼ばれる者たちである。
髪の量も様々な彼らは広く全国からやってきて、留萌本線の入り口たる深川駅へ赴き、そして増毛駅を目指した。
もちろん区間の乗り通しだけを目的とし、増毛にたどり着くとすぐ折り返しの列車で帰る者も多かった。しかしせっかく来たのだからと増毛の町を観光していく者もまた多くいた。
中には鉄道のみでは飽き足らず、路線バスや徒歩を駆使して廃止区間全駅への巡礼を行う者もいたという。
そして鉄オタではない近隣住民までも深川駅から出る気動車に乗り込み、増毛駅を目指した。
訪問者が増えた結果、運行する列車の車両の数が少し増えたり、臨時列車が出たりした。それでも廃線決定前のスカスカ車内っぷりは再現されなかった。
かくして閑散区間であった留萌-増毛間、そして増毛駅は最後の賑わいを見せたとさ。

この話を聞いて「だったら普段からもっと乗りに来てあげてればよかったのに」とお思いの方もいらっしゃるだろう。
しかしこういう話が出てくるのはたいてい遠くて行きにくい過疎地。しかもこれだけの賑わいを見せても赤字だったという話も。
多少の延命はできてもいずれは廃止を免れぬ運命だったのである・・・。

そして最後の日がやってきた。2016年12月4日のことである。
もちろんこの日には髪の多少を問わず大勢の人間が最後の姿を見ようと、あるいは最後の日の客になろうとやって来ていた。
その結果「混雑のため遅延」という留萌本線史上まれにみる状況になったり、Googleの混雑情報がバグったりという珍事も起きている。
だが幸いにも罵声大会などの大きい騒動は起きていない。この路線では珍しい、しかし廃止当日の路線ではよくある混雑に困惑しながらも時間はゆっくり過ぎていった。
そうこうするうちに最後の時間となった。20時15分、30分遅れで出発した「最後の一本」を ペンライトを持った地元民や葬式鉄の皆さんに見送られ、増毛駅は鉄道駅としての使命を終えた。
ちなみにこの最終列車深川行きなのだが、なんと幌糠〜峠下間で鹿と衝突という事故を起こしてしまった。
過去にラストランの列車が事故を起こした前例はないと思われるのだが、何にせよある意味伝説を作ってしまうことになった…のか?


増毛駅さん
九五年間
ありがとう
ございました
(by沿岸バス)

後継者?

増毛駅廃止と聞いて絶望してしまった「髪の毛の量が気になって仕方ない人」もいるかもしれない。
しかしどうか希望を持って欲しい。増毛に代わる「髪の毛の聖地」として名乗りを上げている駅が何カ所か存在しているのだ。

元祖。「はげ」と読む。
ネタ駅名としての歴史は古く、「半家から増毛へ」の旅が定番かつ人気であったほどだ。2016年12月現在、増毛は廃止されてもハゲは理不尽にも存続している。
単独だとただの「ハゲ」でしかないため、下に挙げる駅と組み合わせるのがいいかも。

それぞれ「ふさ」「ふっさ」と読む。
理由はもちろんその読みである。二回繰り返してみよう。ふさふさ、ふっさふっさ。髪の毛がたくさん増えたような感じがするだろう……多分。
読みの「ふっさふさ」ぶりにあやかり、「頭部の寒さが気になってきた人」の人気を新たに集める駅である。

「かみおおい」と読む。
「かみおおい」→「髪多い」 ……いいね?

それぞれ「かつら」「かみかつら」と読む。まあ地毛ではないけど、いいよね?

「かみのけくろはえ」と読む……衝撃的な名前の駅である。
実在を疑うほどの「できた」ネーミングだが、元の名前は「笠上黒生(かさがみくろはえ)駅」。

これは、「鉄道収入だけじゃやっていけない」という銚子電鉄の懐事情により駅の愛称の「ネーミングライツ(命名権)」を売り出したことに起因する。その結果、この駅の命名権はヘアケア商品のメソケアプラスが取得、「髪毛黒生駅」となった。
当初は2015年12月1日より1年間だけの契約であったが、2016年12月1日より更に1年間延長、2024年現在もネーミングライツが継続となっている。
そのような事情もあり、「髪の試練を与えられし者」にとっての聖地としてのみならず、鉄道会社の新たな戦略の証としても注目される駅である。
そういう意味では銚子電鉄としても懐が潤う話でもある。

その後について

では、駅廃止の後の増毛はどうなるのだろうか。

増毛駅舎やその周辺は保存されることになっている。健さんの聖地には今後も訪れることができるのだ。
駅にやって来る列車はもはや1本もない訳だが、時刻表などの駅としての要素以外は残される。例えば駅舎内に入っている食品店は駅の廃止後も営業を継続している。
更には駅跡地を新たな名所とするための整備も計画されているらしい。

もちろん駅は廃止されたとはいえ、増毛の町はなくなったりしておらず存在している。
海と港も、名物の甘えびなどの海産物も、最北の酒蔵・国稀酒造も、古い町並みも健在である。行くのに使う交通手段が変わっただけだ(沿岸バスなどへと)。
だから鉄道がなくなった後も、増毛の町にぜひお越し下さい。髪の毛の量に関わらず。


それと、増毛とともに廃止されてしまった7つの駅(箸別朱文別舎熊信砂阿分礼受瀬越)のことも、時々でいいから思い出して下さい。




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最終更新:2024年11月06日 17:57

*1 「その役目は宗谷本線じゃないの?」と思われる方もいるだろう。しかし宗谷本線の敷設は思ったよりも困難で、完成までに時間が必要だった。そのためより早く海路と連絡する鉄路を完成させるために留萌本線に重きが置かれていたようだ。