地球へ2千万マイル

登録日:2017/02/06(月) 13:32:43
更新日:2024/03/11 Mon 16:29:27
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本作は1957年に製作されたアメリカ製作の特撮怪獣映画。日本では『金星怪獣イーマの襲撃』というテレビ放映時の題名でも知られている。
また、世界で初めて生身の宇宙怪獣が登場した記念すべき映画でもある。モノクロ82分。


【概要】


1952年頃ハリーハウゼンはヨーロッパへの旅行を熱望しており、そのため同地を舞台とする『The Elementals』と『The Giant Ymir』という作品を企画していた。前者はコウモリのような宇宙人がパリのエッフェル塔に巣を作って大騒ぎになる」 というストーリーであったが、残念なことにこの作品の製作は実現しなかった。

後者の企画は、 「金星から持ち帰った標本から怪物が生まれ、さらに地球の環境が生物に影響を与え、一晩で2倍のサイズになって大騒ぎになる」 という企画であり、その後、チャールズ・H・シニアがこの企画に興味を持ち、本作が製作されることと相成った。

大筋は 「宇宙からやってきた怪獣が大暴れし、軍隊が退治する」 という怪獣映画では鉄板のパターンだが、電球の明かりを見てまぶしそうに眼をこすったり、川で喉の渇きをいやしたりというようなイーマの生物描写を丁寧に描くことにより、他の怪獣映画とは一味違った作品に仕上がっている。

金星から何も知らないまま地球に連れてこられ、人間によってたかってなぶり殺しにされるイーマの姿は、人によっては涙を禁じ得ないかもしれない。また、『イーマの境遇はキングコングに似ている』という意見もある。

日本では映画の封切が行われず、長らく視聴困難であったが、2002年にようやくソフトが発売され視聴可能になった。脚本の小説版は1957年にSF作家のヘンリー・スレッサーが発売した。


【あらすじ】


ある日シチリア島ゲラ沖に突如飛行物体が落下する。それは13か月前にアメリカが打ち上げた金星探査ロケットであった。

ロケットは事故を起こしており、偶然居合わせた漁師により燃え盛る機内から2人が救助されるが、1人(博士)は既に金星のひどい風土病に罹患していたために救助後ほどなく死に、結局生存者は隊長のカルダー大佐のみとなってしまう。

そのころ島の少年ペペは、海岸で異様なカプセルを拾い、島に滞在していたレオナルド博士のもとに持ち込む。実はそれは探検隊が持ち帰ってきていた謎の金星生物の卵であり、やがて金星怪獣イーマが誕生する。イーマは地球の環境のせいで急速に巨大化し始めた。

それからほどなくして体調が戻ったカルダー大佐はペペやレオナルド、部下たちの協力を得てイーマを捕まえることに成功し、ローマの動物園で科学者たちと生態を研究するも、結局電気系統のトラブルから脱走されてしまう。

その後、出撃した軍隊とイーマはローマ市内で攻防を続け、最終的にはローマのコロッセウムへと逃げ込むが、やがててっぺんに上ったイーマは戦車隊やバズーカ砲の集中攻撃を喰らって力尽きるのだった。


【主な登場人物】


◆カルダー大佐

本作の主人公。米国軍人であり、金星探査に同行した唯一の生存者となった。
イーマ誕生以降は捕獲・調査の中心人物となる。

◆マリザ・レオナルド

本作のヒロイン。レオナルド博士の孫で、カルダーと恋仲になる。

◆レオナルド博士

シチリア島に滞在していた生物学者。ペペから200リラでイーマの卵を購入した。

◆ペペ

シチリア島漁師の少年。イーマの卵を発見し、レオナルドに持ち込む。

◆コロク博士

東大教授。イーマの生態を研究していた。


【イーマ】

全長:15㎝~8m(7.5mという資料あり)
体重:20t(※ケイブンシャ『世界の怪獣大百科』より)

金星出身の宇宙怪獣。人間恐竜を合わせたような容姿で、緑色の皮膚で覆われている。手足の指は三本で、背中には鰭があり、先端が二股に分かれた長い尾も持っている。

なお「イーミア」「イミーア」「イーミル」など様々に呼称されるが、日本では故大友昌司氏が名付けた「イーマ」の名で表記されることが多いため、本項もそれに倣っている。

もともとは非常に温和な生物であったが、環境の違いのせいで一気に巨大化していき、人類の脅威となってしまった。力はゾウを殺すぐらいにはあるが、あまり格闘戦は得意ではない模様。

心臓と肺が存在しない代わりに特殊な管のシステムが胸の中にはあるという特殊な呼吸機能を持っており、潜水が得意である。飛び道具などの超能力は持っていない。

体はあまり頑丈ではないが、ライフル銃程度では死なない。しかしバズーカ砲の直撃や高圧電流には大ダメージを受けていた。

最期は人類に兵器でなぶり殺しにされるという悲惨な末路を遂げた。余談ながら好物は硫黄で、作中では農家の納屋に積まれてあった袋からつまみ食いしていた。


【元ネタ?】

 公式には明言はされていないが、この映画には元ネタが存在すると一部の識者から指摘されている。
 それが、脚本の小説版を手掛けたヘンリー・カットナーが執筆したSF短編小説『花と怪獣』である。

◆「金星怪獣」

登場:「花と怪獣」(ヘンリー・カットナー著、1940年)
体長:15センチ(孵化から二日後)~30メートル
体重:不明~200トン(※体重と体長は本編の描写とケイブンシャ『世界の怪獣大百科』より)

作中時間で1982年、ジェイ・アーデンという学者が金星に生えていたランのような花の種と一緒に地球に持ち帰ってきた生命体。バルゴンのように宝石のような卵から孵化する。
金星とは全く違う環境の地球においてはその成長速度も半端なく、僅か2日で15センチ、数日後にはさらに巨大になっていった。

実は金星に高度な文明を築いた知的生命体であり、人間並みか、それ以上の知能を持っている。容姿は原点の小説が掲載された雑誌の表紙によれば、赤い皮膚をしたケラトサウルスに近い。
彼らの種族は前述の流星に乗って外宇宙から飛来したランに似た花から発生される、防御不可のウイルスのせいで絶滅寸前にまで追い込まれ、
卵の状態に戻って難を逃れていたのである。

地球にもその花が来ていることに気づいた彼はその危険性を知らせるため、人間にどうにかしてコミュニケーションをとろうと試みるが、地球人から見れば怪獣にしか見えないその容姿と、言語による意思疎通が取れなかったせいで失敗し、
なんとかワシントンまでたどり着いたところで出撃した軍隊からの爆撃と熱線砲の直撃を食らって命を落としてしまい、結局人々に危険性を知らせることはかなわずじまいで終わってしまう。

邦訳版は早川書房から出ていた『キング・コングのライヴァルたち』に収録されているので、興味がある方は一読をお勧めする。
現在では絶版で入手困難だが、一読の価値はあるだろう。




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最終更新:2024年03月11日 16:29