登録日:2018/06/16 Sat 14:44:52
更新日:2025/04/03 Thu 18:10:21
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コウモリ(蝙蝠)とは、哺乳類の一種であり、「翼手目」に該当する生物の総称。
英語ではbat(バット)、フランス語ではChauve souris(ショーヴ スーリ、直訳すると「禿げ
ネズミ」だが、元の意味合いは「フクロウ
ネズミ」)という。
なお以下、固有名詞以外はカタカナ表記で統一する。
●目次
生物としての特徴
最大の特徴は、
哺乳類でありながら飛行能力を持つこと。
ムササビやモモンガのように「空を飛べる哺乳類」自体は他にもいるが、ムササビなどはあくまで「滑空」止まりであって、
自ら羽ばたくことによって空を飛べるわけではない。
このためやはり「
飛行能力を持つ哺乳類」というくくりは翼手目が唯一となる。
前足から後ろ足にかけて「
飛膜」という膜が張っており、これで風を捕まえて飛行できる。
一方地上を移動する能力は退化しており、特に
後ろ足は自身の体重さえ支えることができなくなっているため、休む際はおなじみの天井からぶら下がるポーズをとる。
その見た目は一見鳥によく似ている……が、実は鳥とはかなり異なった方向に進化している。
鳥と生態ニッチを争わないために、コウモリの仲間は長距離の移動能力や移動速度を切り捨てた代わりに、小回りが利く方向に特化しているのだ。
さらに目や超音波器官を進化させることで、多くの鳥類が活動を行わない夜間に活動することを可能にし、上手くニッチに適合している。
そのため、なんとその種数は
1000種を越え、
哺乳類全体の1/4を占める。
ネズミ類に次いで発展した哺乳類の仲間と言えるのだ。
ただ、小型哺乳類の宿命で化石があまり残っていないので、実はどのように進化したのかはハッキリしていない点が未だ多いが。
一応遺伝子解析の結果から、
ネズミによく似た顔立ちに反しネコやウマの近縁種であることは判っている。
主なコウモリの仲間
虫食タイプ
主に小型で、群れを作って活動するタイプ。
日本で最も身近に目にするコウモリと言えばこれである。
超音波による「エコーロケーション」を駆使した狩りを得意としている。
目が小さく顔が扁平で、全体にパラボラ状をしている典型的なコウモリのイメージ。
果物食タイプ
主に大型のコウモリ。最大で2メートルに達する個体も存在する。
「フルーツコウモリ」の名前でペットショップで売られていることも。
基本的には熱帯域に多く生息しており、日本では
沖縄県や小笠原諸島にしか生息していない天然記念物。
狩りは行わないため、前述の「エコーロケーション」の機能は発達しておらず、その代わり視覚が進化している。
目が大きくて鼻が尖り、コウモリのイメージからは遠い顔立ちをしている。
中南米に生息する「ナミチスイコウモリ」一種のみが該当する。
コウモリのイメージ全体に強い影響を与える存在だが、実際のところは獲物の肌に小さな傷を付け、そこから滲み出る血を舐めとるだけで、決して牙を突き立てて血を吸い取るわけではない。
とはいえ、狂犬病を媒介することもあり、現地では害獣として扱われている。
また獲物の血を吸い取るために四足歩行できる。
ペットとしてのコウモリ
最もペットに適しており、ペットショップでも入手できるのは前述のようにフルーツコウモリの仲間。
ただし、マイナーペットの通例としてかなり値が張り一匹数万円は覚悟しておいた方がいい。
「じゃ、その辺飛んでるコウモリ捕まえればいいじゃん」と思うかもしれない……が、実は日本に棲息するコウモリは「鳥獣保護法」の対象で全て保護動物扱い。勝手に捕まえて飼育すると違法なので注意。
一応「保護」の名目ならば飼えないこともないが、その場合は必ず保健所や役場の自然保護課に届け出る必要があり、期間も一か月程度になる。
また、前述のようにあの致死率ほぼ100パーセントの狂犬病のキャリアーでもあるため、もし飼ったり保護したりする際の扱いには細心の注意を払ってください。
食用としてのコウモリ
アジア・アフリカ・オセアニアにはコウモリを食用とする文化がある。食用にされるのは主にフルーツコウモリ。
パラオ共和国など貴重なタンパク源として食している地域もある。
高級レストランから、屋台、家庭と様々な場所で食される。
捌いて
カレーライス等に入れることもあれば、丸ごとコウモリそのままの姿(毛もむしっていない!)で串焼きやスープに入っているメニューも。後者は見た目がグロテスク過ぎて日本人からすれば
ゲテモノ食い、
食わず嫌いの対象にされても致し方ない。
珍味としては四川料理の「蚊の目玉のスープ(夜明砂のスープ)」があり、これは
コウモリの排泄物から集めた蚊の目玉を使っている。
だが食用・薬用目的でコウモリが捕獲されすぎた結果、絶滅や絶滅寸前に追い込まれた種もある。
キャラクター・文化としてのコウモリ
「夜にだけ活動する」「鳥とも獣ともつかない
中途半端な外見」「血を吸う」……そんなあまりにも特異な生態故に、
様々な地域で嫌われ者・悪役の象徴と言える存在
。
悪魔の背中にはコウモリの羽が生えているし、
ドラゴンもコウモリの翼を備えた存在として描かれている。
ただし、現代の多くの人々が描いているであろうコウモリの、どちらかと言えば否定的なイメージは、ヨーロッパの価値観に依るもの。中国のように「富の象徴」として肯定的に扱う文化も存在する。
スペインのバレンシアでは国土回復運動の時代、アラゴン王ハイメ一世の肩にコウモリが止まり勝利をもたらしたという伝説から市の紋章に描かれているし、
サッカークラブではバレンシアCFやレバンテのエンブレムにもその意匠が取り入れられている。
実は日本でも中国から縁起が良い動物として伝わっており、その姿を象った和柄なんかもある。マイナーだけど……。
嫌われ役を背負わされた例の代表格は
イソップ童話『
卑怯なコウモリ』だろう。
この話の中では、コウモリは互いに対立している獣と鳥双方に調子のいいことを言ってすり寄った結果、
どちらからも相手にされなくなり、夕方からしか生きられなくなってしまう。
そのため、「コウモリのような奴」「コウモリ野郎」と言えば、
どっちつかずな卑怯者として現在でも慣用句的に使われる。
ちなみにオーストラリアにも似たような話が伝わっているが、こちらでは獣と鳥の
戦争に嫌気がさした
太陽が昇らなくなるという大事件が起きてしまい、それをコウモリが
ブーメランを三度投げることで呼び戻した、というエピソードが付け加えられている。
そのため、オーストラリアバージョンではコウモリは単なる卑怯者ではなくなっている。
また卑怯者から転じてか「小物」のイメージで「鳥なき島(里)のコウモリ」という慣用句もある。
これは鳥がいない所ならコウモリは威張れる=優秀な者がいない所ならつまらない者でも威張れる、という意味で「お山の大将」に近い。
なお織田信長が長宗我部元親をかく評した、という話が伝わっているが、江戸時代(徳川綱吉の治世)の本が出典ゆえ信憑性は低い。
更に、「血を吸う」という特性を過大にキャラクター化したものが
吸血鬼の伝承に影響を与えており、コウモリを何羽も従えて闇夜から姿を現す
吸血鬼……という、彼らのオトモとしても広く記号化されて扱われている。
概して「闇の象徴」「夜の象徴」「悪の象徴」として数多くのキャラクターに影響を与えてきた動物界の
トリックスターと言える存在である。
名前の由来
江戸時代には既に「かはほり」と呼ばれていたが由来ははっきりしていない。
蚊を食べるため「蚊欲(かほり)」
翼の様子から「皮張り(かわはり)」
蚊を食べるために河原に出没したことから「川守/河守(かわもり)」
等が語源となったとされている。
主なコウモリモチーフのキャラクター
御存知アメコミの代表的な人気キャラクター。
コウモリのコスプレをした、コウモリらしくダーティーでシビアな
ダークヒーローである。
仮面ライダーシリーズ
一方、同じ特撮番組でも『
スーパー戦隊シリーズ』ではコウモリモチーフの怪人は少ない。それでもぽつぽつ登場はしているが。
見た目にコウモリ要素は薄いが、アニメ版では化身と思われる黄金のコウモリ(通称「コウモリさん」)が、ヒロインであるマリーたちの前に現れる。対等に戦った数少ない敵
暗闇バット
も同様の姿。
また、敵にもコウモリ使いの魔術師やコウモリ型
ロボットを駆る怪獣飼育員など、コウモリキャラは強敵であることが多い。
グーン
ディズニー映画『眠れる森の美女』に登場するヴィラン、茨の魔女ことマレフィセントの家臣たち。
コウモリの他にも、
ワニ(アリゲーター)と鷹、
ヤギ、
ハゲワシ、イノシシの個体が存在する。ただしディズニーのテーマパークで会えるのは、だいたい
イノシシの個体。
屈強そうな見た目の一方、マヌケであまり賢くないらしい。
ぶっちゃけ、マレフィセントがペットとして飼っているカラスの方が賢い。
スマホゲーム『
ディズニー ツイステッドワンダーランド』の登場人物である
リリア・ヴァンルージュはコウモリのグーンをモデルにしている。
こうもり猫
飛べ飛べコウモリ
NHK教育テレビ(現:Eテレ)のクイズバラエティー『あにまるQ』内で流れたオリジナル楽曲。子供向け番組のため、番組内では『とべとべコウモリ』表記。歌唱は『
救急戦隊ゴーゴーファイブ』や『
仮面ライダーアギト』のOPも担当した石原慎一。
怪人やアニメのイメージでコウモリ=悪役・化け物イメージを抱いてたチビッ子達に「コウモリは
動物」という当たり前のことを教えてくれた。
「コウモリは鳥じゃない 悪魔でもない」は名言。
またコウモリ=吸血だけじゃなく魚や花を食べる種がいる(放送されなかった2番ではフルーツコウモリ等にも触れている)という歌詞は、チビッ子のみならず一緒に見ていた親御さん達にも衝撃の事実であった(と思う)。
その他、コウモリが関わるものごと
オペレッタ『こうもり』
シュトラウスⅡ世作曲の歌劇。ドイツ語圏では大晦日恒例の演目。
こうもり傘
(和傘に対する)洋傘の異名。
広げた形がコウモリのように見えるのでこういう名前でよばれるようになったとか。
蝙蝠扇
竹や木を骨として、片面にだけ紙を貼った紙扇のこと。
これも扇を開いた形が、コウモリが羽を広げた姿に似ているからそう呼ばれるようになったと言われている。
コウモリソウ属
キク科コウモリソウ属の多年草の植物。
名前の由来は葉っぱの形がコウモリの羽に似ていることから。
カニコウモリ、ミミコウモリ、ハヤチネコウモリ等コウモリの名を冠する種が多数いる。
コウモリシダ
独特な葉脈を持つヒメシダ科ヒメシダ属のシダ植物。
群生する様子がコウモリに似ているらしいが…独特な感性が無いとそう見るのは難しい。
ビカクシダ(麋角羊歯)(別名コウモリラン)
ウラボシ科ビカクシダ属のシダ植物。
葉っぱの形が個性的でシカの角のように見えるためその名が付いているが、垂れ下がる葉っぱの様子から別名コウモリランとも呼ばれる。
コウモリダコ
タコの仲間でもイカの仲間でもなくコウモリダコという頭足類。
和名はコウモリダコだが、学名は「ヴァンパイアのイカ(吸血イカ)」を意味する。
足の間に皮膜がありこうもり傘のように見えるからコウモリダコという説や、タコでもイカでもない分類が獣と鳥の中間に位置するコウモリと一致するからコウモリダコと命名されたという説も。
マイナーな生物だが、
ゲーム『
あつまれ どうぶつの森』やアニメ『
すすめ!オクトノーツ』に登場したため知名度は上がっているのかもしれない。
夜空こうもり
米米CLUBの1992年のライブ『SHARISHARISM DECADENCE 疑惑の多様ショー 素直なパパ編』に登場したキャラクター。演じたのはカールスモーキー石井。
その名の通りこうもりを模した様な紫の衣装・羽根・帽子を纏い、夜空ならぬ美空ひばりの曲をムード歌謡調に高らかに歌いあげた。
…だけならまだ良かったのだが、ツアーの一部回ではその後になぜかカラオケマシーンを持ち出し、本人曰く「リアレンジ」を施しノリノリで、後にダブルミリオンを達成した当時の新曲『君がいるだけで』を披露しサビ部分でふざけ過ぎてスタッフに機械を止められ、側にいたアフロなパーカッショニスト「タチ朝男」と共に逃走していた。
追記・修正は、コウモリ野郎と言われないようにお願いします。
- バット…ババット…ファイアー! -- 名無しさん (2018-06-16 15:03:42)
- マヤ神話ではカマソッソという蝙蝠の悪神が登場している。英雄殺し(未遂)を成している -- 名無しさん (2018-06-16 15:08:12)
- 海外にはコウモリ料理なんてのもあるらしいね そのせいで乱獲され絶滅したコウモリもいるのを見ると珍味として人気あるのかな -- 名無しさん (2018-06-16 15:27:42)
- 史実は別にして悪魔城のドラキュラはコウモリモチーフだね。シリーズによって差が激しくて全然コウモリじゃないのも多くいるが。 -- 名無しさん (2018-06-16 15:36:02)
- 黄昏時に飛び回るのをよく見る。 -- 名無しさん (2018-06-16 15:42:13)
- チスイコウモリの生息地ってアフリカとヨーロッパじゃなくて南米じゃなかったっけ? -- 名無しさん (2018-06-16 15:43:47)
- アニマルQというNHKのアニメ番組での蝙蝠のテーマ曲はカッコイイ、そして花が大好きで、魚を食べる蝙蝠がいるってことを知った。 -- 名無しさん (2018-06-16 21:13:16)
- コウモリにもつイメージといえば洞窟棲だけど、大半は植物棲だったりする。 -- 名無しさん (2018-06-16 21:50:27)
- ドゥーガル・ディクソンの未来コウモリたちはまさに悪夢の造形。翼竜のごとき巨大コウモリなんてまともな方で、前肢を脚、後肢を腕に変えた陸上性コウモリとか、花に擬態して虫を待ち伏せるコウモリとか、トラウマ物 -- 名無しさん (2018-06-16 21:55:09)
- ズバット系列→血吸い、コロモリ系列→虫食、オンバット系列→果実食かな? -- 名無しさん (2018-06-16 23:05:02)
- 夕方に飛んでる蝙蝠を小鳥だと誤認してる人は多そう。イメージより小さいんだよね。 -- 名無しさん (2018-06-17 00:16:52)
- 魚食うタイプもいる -- 名無しさん (2018-06-17 08:37:54)
- コウモリは基本洞穴にいるもんなの?夜の時に一度見たことあるけど……。あと屋根の上にコウモリのミイラがあった。 -- 名無しさん (2018-06-17 14:02:35)
- キシシシシシ…、見ろ、こうやってスマートに殺すんだ!! -- 名無しさん (2018-06-17 14:05:20)
- コウモリ:食虫の種は夏の夜、ボウフラから成虫する蚊を食べる為に河原に出没する。そのため「河守」がコウモリの語源とする説もある -- 名無しさん (2018-06-17 14:11:01)
- ナミチスイコウモリは仲間に食料である血を分け与える利他行動を取る事で有名。 -- 名無しさん (2018-06-17 14:12:26)
- コウモリ:食虫の種は夏の夜、ボウフラから成虫する蚊を食べる為に河原に出没する。そのため「河守」がコウモリの語源とする説もある -- 名無しさん (2018-06-17 14:13:04)
- 恐らくだけどblood the last vampireとその派生作品のblood+に登場する翼手のモデルだろうね。 -- 名無しさん (2018-06-18 19:59:29)
- 幼稚園児のころ、むしまるQのとべとべコウモリを聞くまで全てのコウモリが吸血すると思ってたなあ -- 名無しさん (2018-06-19 08:08:17)
- コウモリってよく見ると可愛いんだよねえ -- 名無しさん (2020-02-19 10:17:25)
- ペットにできるならオオコウモリとか飼ってみたい。顔も犬っ子みたいで可愛いし…だけど狂犬病諸々の感染症がね… -- 名無しさん (2023-01-04 14:45:50)
- 「主なコウモリモチーフのキャラクター」に『悪魔くん』のこうもり猫を追加するのはありですか?なしですか? -- 名無しさん (2023-08-12 18:01:15)
- 不吉な生き物として扱われてるのはやはり危険な病気を媒介するからかな -- 名無しさん (2023-09-24 17:31:26)
- レディバット(ぴちぴちピッチ) -- 名無しさん (2024-06-27 15:38:58)
- ヒキコウモリ、トジコウモリ、ヤドコウモリ(妖怪ウォッチ) -- 名無しさん (2024-06-27 15:41:01)
- 暗黒の翼(ぴちぴちピッチ) -- 名無しさん (2025-02-16 08:10:51)
- 怪盗ゼニこうもり(ぜんまいざむらい) -- 名無しさん (2025-04-03 18:10:21)
最終更新:2025年04月03日 18:10