アダムス・ファミリー(映画)

登録日:2017/10/21 Sat 21:01:28
更新日:2024/02/22 Thu 17:28:24
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『アダムス・ファミリー(原:The Addams Family)』は、91年に制作された米国のファンタジー、ホラーコメディ映画。
日本でも92年に公開されヒット作となった。
1937年より漫画家のチャールズ・アダムスが雑誌『ザ・ニューヨーカー』に掲載していた一コマ漫画から生まれ、ドラマやアニメにもなった『アダムスのお化け一家』のリバイバル作品で、映画自体の大ヒットや出演者のハマり具合から暫くは映画版のイメージが『アダムスファミリー』の代表的なビジュアルとして長く記憶されていくことになった。
監督は後に『MIB』シリーズも手掛けるバリー・ソネンフェルドで、初監督作品ながら見事な手腕を発揮している。

【概要】

日本でも60年代にドラマが放映されていた『アダムスのお化け一家』の現代版映画化作品。
89年公開の『バットマン』等と同様に、当時の米映画の流行の一つであった60年代~70年代の人気映画や番組のリバイバル作品の一つであり、時代に合わせてリアリティーが加味された作風となっている。

因みに、70年代には『宇宙忍者ゴームズ』でもお馴染みハンナ・バーベラによるアニメ版も制作されており、此方は日本では未公開のままであったが、映画公開に合わせたのか91年から日本語版が放送を開始。
アニメ版では『ゴームズ』等と同様に、日本独自のわかりやすい名前に変更されていた。

人気作のリメイクということもあり、制作には巨額の費用が投入され、当時としては最新のCGや特殊な撮影技術が投入され、所々で超人的な能力を発揮するファミリーやハンドくんのアクロバティックな動きが随所に描かれた。

キャスティングには当時『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでドク・ブラウンを演じて人気者となり、また、本作のファンを公言していたクリストファー・ロイドや、子役として注目を浴びていた美少女クリスティーナ・リッチといった話題の人物の他、ラウル・ジュリアやアンジェリカ・ヒューストンといったビジュアルにも優れた実力派が選ばれている。

【物語】

広大な敷地に先祖代々の墓に隣接して立つ、古色蒼然としたビクトリア朝風の大きな屋敷に住むアダムス一家は、異端者や魔女の末裔たるお化け一家
一風変わった常識を持ち、経済的に恵まれ、強い絆で結ばれるアダムス一家。
向かうところ敵無しの一家だが、家長のゴメズには悩みがあった。それは、25年前に不和により家を飛び出て、そのまま行方不明になった兄のフェスターのこと。
それに負い目を感じているゴメズは、この25年もの間、フェスターを探すための降霊会を開催していたが、全く手掛かりが掴めないままでいたのだ。

一方、一家の顧問弁護士として取り入り、不気味なアダムス一家の暴挙に耐えつつも、何とか資金を絞り出そうとしては失敗してきたタリーは、莫大な借金をしている高利貸しのアビゲイルに脅される中で、彼女の息子のゴードンが行方不明になっているフェスターに似ていることに気付き、アビゲイルにアダムス一家を嵌める為の詐欺への協力を持ちかける。

……そして、降霊会の夜。
霊への呼び掛けに応じてゴードン=フェスターが帰還する。
最初はそれぞれの思惑が上手くいかないこともあり、ギクシャクしたアダムス一家とゴードンだったが、精神科医を名乗ったアビゲイルの悪知恵と、時を同じくしてゴードンが屋敷で過ごす内に家族に馴染み、子供達と仲良くなったのを皮切りに一家の絆は深まっていく。

……しかし、強欲なアビゲイルとタリーはゴードンに任せたままにはしておかず、早急にアダムス一家の資産を奪う計画を進め、アダムス一家(主にゴメズ)からの迷惑を被っている、向かいに住む判事の協力も取り付けて一家の資産をフェスター=ゴードンの物にして一家を追い出してしまうのだった。

財産を失い、狭苦しいモーテル暮らしに追い込まれ耐え続けるゴメズ達の姿に決心を固めたモーティシアはフェスター=ゴードンと話す為に奪われた屋敷へと向かうが、タリーとアビゲイルに捕まり拷問(ご褒美)を受ける。
この危機に、密かに後を着けていたハンドからモーティシアの危機を知らされたゴメズが救出に向かう。

……果たして、フェスターの行方と一家の顛末は如何に!?

【登場人物】


■モーティシア・アダムス
演:アンジェリカ・ヒューストン/吹き替え:高島雅羅
ゴメズの妻で、原作同様に一家への愛情が深く、夫を立てつつも実質的には彼女が家族の行く末を見守っている。
原作ではベラドンナやヒヨス(毒草)を育てている。
フェスター=ゴードンの帰還を喜ぶゴメズの姿を自らのことのように喜びつつも、怪しい行動を取るフェスター=ゴードンに注意を向けていた。
由緒正しい魔女の末裔で、死人のように顔色が悪く、痩せている美女。
実は、死んでは幾度も甦っている(日本語訳では従兄弟の葬式でゴメズと出会っているとされているが、原作では自分の葬式で出会っている)。
映画版では言動の節々にフランス語が取り入れられている。
名前の由来は米国の葬儀屋(Mortician)から。

■ゴメズ・アダムス
演:ラウル・ジュリア/吹き替え:玄田哲章
アダムス一家の現在の家長。
原作では風采の上がらないチビだが、映画では長身で威勢の良い享楽的な伊達男となっている。
フェンシングの達人であり、タリーに一方的に決闘を仕掛けたり、ダンスの際にはその超人的な技量を遺憾無く発揮する。毎日屋敷のテラスから、隣の敷地に住むウォーマック判事の家にゴルフボールを打ち込んでからかっている。
25年前に出ていったままとなってしまった喧嘩友達にして、最愛の存在だった実兄フェスターの失踪に責任を感じ、行方を探し続けている。
モーティシアとは常にラブラブで、事あるごとに燃え上がっている。
映画版では言動の節々にイタリア語が取り入れられている。
中の人は『蜘蛛女のキス』などで知られる名優だが、『アダムス・ファミリー』を見ている世代以降だと映画版『ストリートファイター』のバイソン将軍(原作でのベガ)役としての方が有名かもしれない。

■ウェンズデー・アダムス
演:クリスティーナ・リッチ/吹き替え:近藤玲子
アダムス一家の長女。
母親に似て、病的に顔色が悪く痩せている美少女。
原作では気弱でいつも悲しそうな顔をしている。片足の指が6本ある。映画版では生粋のドSとなっており、弟と拷問ごっこをして楽しんでいる。
頭がよく、モーティシアがフェスター=ゴードンを疑っていることも察していたが、子供らしく最初にフェスター=ゴードンの本性を見抜いて懐いたのも彼女である。
ギロチンが大好きで、首チョンパした人形のマリー・アントワネットを大事にしている。*1
本作でのクリスティーナ・リッチの愛らしさはカプコンの『ヴァンパイア』シリーズのアニタの元ネタにもなった。
名前の由来はマザーグースの『水曜日に生まれた子は不幸』から。
余談だが中の人はこの後も『キャスパー』や『スリーピー・ホロウ』など様々なホラー作品に恵まれる事になる。

■パグズリー・アダムス
演:ジミー・ワークマン/吹き替え:大谷育江
アダムス一家の長男でウェンズデーの弟。
腕白で、度が過ぎる程のイタズラ好きの太っちょ。
原作では赤みがかったブロンドに青い目でしゃがれ声。原作と性格の設定は変わらないが、原作では気弱なウェンズデーが彼に対して萎縮しているのに対して、映画版では完全に姉の尻に敷かれてしまっている。(※原作ではどちらの年齢が上か下かという言及が無い為、立場が逆なのかもしれない。)
映画では姉と学芸会で血みどろの剣戟を披露した。

■グラニー・アダムス
演:ジュディス・マリナ/吹き替え:京田尚子
如何にも魔女といった風情のアダムス一家のおばあちゃん。
原作ではグラニーフランプ。(frumpはむさくるしくぱっとしない女の意)いつも機嫌がよく、カード遊びでインチキをし、根っからの嘘つきという設定。家族のために料理をするのが好き。
原作ではフェスターとゴメズの母親だが、映画版ではモーティシアの母親となっている。
一家が屋敷を追い出された際にも元気に晩のオカズ(野良猫や野良犬)を追っかけ回していた。

■ゴードン・クレイブン
演:クリストファー・ロイド/吹き替え:麦人
強欲な金貸しであるアビゲイルの息子で、人間離れした怪力と容貌の持ち主。
母親の用心棒でもあるのか、金を払わないタリーを脅すが、その魁偉な容貌がアダムス一家のアルバムで見たフェスターに似ていることに気づいたタリーによって詐欺の主役に祭り上げられる。
降霊会を利用してまんまとアダムス一家に入り込んだ後は、異常な一家の様子に苛立ったりもしていたが、子供達と仲良くなったのを皮切りに、本人も屋敷の様子に馴染んでいくが…
+ ネタバレ
■フェスター・アダムス
実は、アビゲイルの本当の息子ではなく25年前に失踪したゴメズの実兄フェスター本人。
失踪している間に記憶喪失となり、彼女に拾われそのまま養子になっていた。
終盤においてアダムス家と仲良くなった彼に業を煮やしたアビゲイルとタリーにより自分に財産が譲渡され、ゴメズ達が屋敷から追い出されても喜ぶことなく、寧ろ涙を流して悲しんでいた。
最終的にアダムス夫妻の始末に戸惑ったためにアビゲイルに「アンタなんか拾うんじゃなかった」と吐き捨てられたために自分が彼女の実子ではない事を確信し、金庫の隠し場所である書棚から竜巻を起こす書物を取り出し、彼女をタリー共々吹き飛ばしてアダムス邸から追い出した。
その際に起こった雷に打たれかつての記憶を取り戻し、改めてアダムス家の家族として受け入れられることになった。
名前のフェスターは腐る(Fester)という意味。

■ラーチ
演:カレル・ストレイケン
アダムス一家に仕えるフランケンシュタインの怪物を思わせる容貌の執事。
中の人は実際に2.1mもの長身の持ち主である。
子供達の世話から、人を捕まえる程に元気過ぎる植物の世話までと様々な仕事をこなしているが、子供達のからかいの対象となることも多い模様。部屋はゴメズの趣味の部屋の真下であるため、夜な夜な爆走する機関車の騒音に悩まされることもある。
原作ではウェンズデー達を世の中のいい影響に晒さないように注意しているとのことだが、映画版では普通の子供達がハロウィンの夜に訪れた時に彼の容姿を見て逃げ出した時には大きなショックを受けていた。
一家の為に肖像画を描いたり、パイプオルガンを弾くのも得意なようである。
原作者によると、意図的に映画のフランケンシュタインの怪物に似せて描いているわけではないが、よく類似性を指摘されるキャラクター。当の怪物役のボリス・カーロフに本の書評を依頼したという逸話がある。

■ハンド
演:クリストファー・ハート
アダムス一家のペット(?)
その名のように蜘蛛のように忙しなく動く人間の手で、極めて有能。
言葉は喋れないが手話や文字やモールス信号を利用して意思の疎通は可能。
ただし、映画の終盤では焦っていた為かモールス信号を試みるまでゴメズとの会話が成り立たなかった。
中の人(?)はマジシャンとのこと。
因みに、ハンドは日本だけの呼び名で、原作、及び原語ではザ・シング(The Thing=物体)という名前で、元々原作では腰から上しか描かれない影の薄い幽霊だったのが、ドラマ版ではじめて手だけとなって描かれた人気キャラクターである。

■タリー・アルフォード
演:ダン・ヘダヤ/吹き替え:青野武
アダムス一家の弁護士として屋敷に出入りしている仲だが、密かに一家の莫大な資産を何とか略奪出来ないかと画策している小悪党。
アビゲイルに追い詰められたことと、ゴードンの容姿から偽のフェスターとして潜り込ませる計画を思いつき、更には一家に迷惑を被っている判事の心情を利用して一家を屋敷から追い出してしまった。
アダムス家のパーティではアモール姉妹に気に入られる。
バル・ベルデの将軍は赤の他人。

■マーガレット・アルフォード
演:ダナ・アイヴィ/吹き替え:沢田敏子
タリーの妻で、アダムス一家のことは気持ち悪いと思いつつもそれなりに親しく付き合っていた仲。
タリーと結婚して20年経ち、モーティシアとゴメズとは正反対に夫婦仲が冷えきっている。
タリーとアビゲイルによる詐欺行為は全く知らなかった。
ハンドとおばあちゃんにからかわれたりと、当初は、どこにでも居そうなただの中年女性と思われたが……。
映画の最後、ハロウィンパーティではオズの魔法使いのグリンダの仮装をしている。

■カズン・イット
演:ジョン・フランクリン
ゴメズの従兄弟。
全身が毛むくじゃらで、一家にしか解らない言葉で喋る。
パーティーでマーガレットに出会い、既婚の彼女に積極的かつ猛烈なアプローチをする。
愛車はメッサーシュミットKR200。
名前の由来はそのまま「いとこ(Cousin)」と、固有名詞なしの意で「それ(it)」。原作ではItt(それ)と呼ばれている。

■フローラ・アモール
演:モーリーン・スー・レヴィン
■フォウナ・アモール
演:ダーリーン・レヴィン
結合双生児の美人姉妹で、若き日にフェスターとゴメズとの間で恋の鞘当てが演じられ、フェスターに嫉妬したゴメズが強引に射止めたらしい。
25年経った今は精神病院のお世話になっているようで、パーティ後の迎えの車は救急車であり、拘束衣を着せられて帰っていった。

■ウォーマック判事
演:ポール・ベネディクト/吹き替え:水野龍司
アダムス一家の屋敷の真向かいに住んでおり、ゴメズにベランダからフルスイングでゴルフボールを打ち込まれるイタズラの被害に逢っていた。
一家のことは迷惑と思いつつも何の手段も講じていなかったが、終盤、強引な手段に出たタリーに焚き付けられる形で裁判所に不当に財産を奪われたと訴え出てきたゴメズを日頃の恨みを込めて敗訴させる。
チャリティオークションで司会を務めており、ウェンズディとパグズリーの学芸会にも参加するなど、一家とは何かと縁がある様子。

■アビゲイル・クレイブン/Dr.グレタ・ピンダーシュロス
演:エリザベス・ウィルソン/吹き替え:谷育子
強欲な金貸しの女傑。
貸した相手のタリーの提案に乗り、貸した以上の金を入手すべく、息子のゴードンを利用したアダムス一家への詐欺に協力。
詐欺の設定として、記憶喪失のフェスターを保護した医師Dr.ピンダーシュロスの名を名乗って一家に近づき、ゴメズのフェスター=ゴードンへの疑いを緩和させる等の暗躍をした。ピンダーシュロスの振りをする場面ではドイツ語訛りになる。
終盤には自分の為に働くどころか化け物一家に馴染み始めたゴードンに業を煮やし、タリーと共に強引な手段に出る。

【余談】


  • 本作が大ヒットした事で1993年には続編の『アダムス・ファミリー2』が公開された。キャスト陣もグラニー・アダムスを演じたジュディス・マリナを除いて軒並み続投している。こちらも興行的に成功し更なる続編も制作される予定だったが、ゴメズ役のラウル・ジュリアが翌年の1994年に帰らぬ人となっため中止となってしまった。
  • また1998年にビデオ映画として『アダムス・ファミリー3 再結集』が制作されているが、そちらは1964年ドラマ版のリメイクに近い内容であり、キャスト陣もラーチとハンドの演者以外総入れ替えとなっている。
  • アカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされ、実際に衣装デザイン、主演女優賞まで獲得している本作だが、当時人気だったM.C.ハマーによる主題歌のみは不興を買ったのかゴールデンラズベリー賞の最低主題歌賞を獲得してしまっている。ただし、MTVムービー・アワードの方ではゴメズ&モーティシア夫婦のキス賞と共に、主題歌も賞を獲得している。
  • 日本ではホンダのミニバン「オデッセイ」のCMに本作のキャストが起用されて話題となった。前述の通りゴメズ役が3の制作前に亡くなってしまったため、映画キャストで出演した最後の作品となった。
  • パーティーに出席している奇妙な血族達の元ネタはドラマ版『アダムスのお化け一家』のゲストキャラクター達。
  • ドラマ版でモーティシアの姉として登場したオフィーリアが出てくる。(ダンスパーティーのシーンで1人で蝋燭を持って踊っている女性)
  • 元々の脚本では「フェスターは本物なのか偽物なのか曖昧なままアダムス家と過ごすことになる」という後味の悪い結末で終える予定だったが、キャスト間では不評だった。そこで動いたのが、ウェンズデー役のクリスティーナ・リッチ。彼女の説得により監督たちは脚本のリライトを決めたという。*2もしも、元々の脚本で映画が公開されたら本作の評価も変わっていたかもしれず、クリスティーナはある意味で映画を大成功に導いた貢献者だったと言えよう。
  • 2019年にはCGアニメ化もされ、吹き替えに生瀬勝久や杏、ロバート秋山等の豪華なキャスト陣が起用された。また、今作でグラニー役を務めた京田尚子も同役で続投している。監督は『ソーセージ・パーティー』で知られるコンラッド・ヴァーノンとグレッグ・ティアナンが務めた。
  • 2022年にウェンズデーを主役としたドラマシリーズ『ウェンズデー』がNetflixにて配信されている。監督(第1話~第4話)・製作総指揮はティム・バートン


追記修正は秘密の呼び名を思い出してからお願い致します。

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最終更新:2024年02月22日 17:28

*1 ※名前の由来は言わずもがな。

*2 出典:https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/the-addams-family-film/amp