悪代官(時代劇)

登録日:2018/01/10 Wed 00:06:57
更新日:2024/04/25 Thu 13:22:35
所要時間:約 4 分で読めます





「Wiki籠り、お主も悪よのう……」

「いえいえ、お代官様ほどでは……」

「フッ、聞いたぞ悪の企み」

「! な、なに奴!」

「一つ、独りよがりな独断編集」

「二つ、不埒な糞記事三昧」

「三つ、見たくもない立て逃げ記事」

「仕置人・冥殿見参!」

「えぇい、仕置人だと!? 馬鹿にするな! ものども、出会え出会え!」


……という流れから無双されて スパッと退治される オチに定評のある悪役のこと。

時代劇における悪代官

「悪」の代官という呼び名通り、江戸時代もののフィクションにおけるお約束の悪役にしてやられキャラ。平民以上御三家未満という絶妙な偉さから目下の相手を搾取して苦しめ、強くて偉い人にバレるとあっけなく壊滅する悪徳役人のテンプレ的な存在。
時代劇の多くが一話完結という構成上、その殆どは話のオチにサクッと斬り倒されるか、捕まって厳罰という形でナレ死する末路が多い。その平均寿命にして約40分。
大体が悪徳商人と手を組んで富や地位の独占を狙っているのが定番。
もしくは意中の女性をひん剥きたい、そうでなくとも美女に目がないというエロ代官も。
芸者や身売り娘の由美かおるは死亡フラグ
さらに悪質化するとお家騒動を引き起こして藩政に取り入ろうとするケースも出てくる

「袖の下」「山吹色のお菓子」という隠語で賄賂を懐や袖の下に渡されるのも定番。
その時のやり取りは
「越後屋、お主も悪よのう……」
「いえいえ、お代官様ほどでは……」
が鉄板。
金以上に鉄もよく懐に(物理的に)入るが。

だが、 実はこのやり取りが実際に使われている時代劇はそんなに多くない
ちなみに、史実だと商人とつながっている代官自体はいた。
といってもこれは藩から金銭を貸したり、逆に金銭に困った代官がお金を借りに来たりといった、
別に非難には値しない金銭関係の相談が多かったのではと言われている。

ヒーローが正体を隠した身分の高い人物であった場合の対応は三つに分かれる。
「○○様とはつゆ知らず、失礼いたしました!」
「そのような大層な御方が本当に来るものか!○○様の名を騙る不届き者を成敗せよ!」*1
「○○様……申し訳ありませんが、知られた以上生かして返すわけには参りません。ここで死んでいただきます!」

①だとその場では命は助かるが、後日切腹などのペナルティを課せられる。水戸黄門は先に叩きのめすのでこれが定番。
で、代官もそのくらい分かっているのでまず②③のパターンからの戦闘になるが、
一人で斬りかかることはなく大体手下を呼び出すことが多い(たまーに腕自慢の悪代官もいるけどね)。
本当に偽者と紛らわしい場合は、人違いで無礼を働かされる手下が可哀想過ぎるので「関わりのないor忠義のある者はすぐに立ち去れ!」と先に追い払うこともある。

手下を呼び寄せる時は
「者ども、出会え、出会え!
大金を積んだ腕利きを呼び寄せる時は
「先生、お願いします!」
……まぁどちらにせよ弱いので揃って刀の錆にしかならないが。
基本的に主役の一太刀で一撃。三度斬られればかなり頑丈な方。
ぶっちゃけ非業の死を遂げる町人のモブなんかより遥かに虚弱体質。そもそも刀を振り回す身分に向いていないのでは…。

これでも成敗されるパターンだと雑魚と比べて体力に若干補正がかかっており、
なんとか一撃は耐えて反撃を試みるものの結局とどめを刺されるパターンが多い。
やられ役とはいえ、これもある種のボス補正ということか。
とはいえ、中村主水のせこ突きのように一撃でやられる悪代官も少なくはないが。

ちなみに『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』に出てくる悪代官をシリーズ全て合わせると 余裕で江戸時代に任命された代官の総数を上回る のは有名な話。
無辜の被害者や一緒に成敗される手下や浪人の数も含めると江戸時代の人口も結構危うい。
推理モノも真っ青の治安の悪さである。
身分制だからこそ偉すぎると末端まで面倒見れないのだろうが、そこはあくまでフィクションということで…。

また、時代背景の都合上、悪代官は基本的に男しかいない。
女の悪役もいない訳ではないが黒幕を務めるケースは極めて珍しい。
また、女の悪役は直接斬ってはいけない暗黙の了解でもあるのか

  • 一人だけ助かろうとして他の悪役と仲間割れ
  • ドサクサに紛れていつの間にか斬られる
  • 主役以外の味方(主にくノ一)に成敗される
  • 流れ弾や弾かれた敵の武器で巻き添え
  • 自害を図るか、黒幕に道連れとして斬られる
  • 出家を条件に命だけは助かる

…といった感じに別の方法で間接的に成敗されるのがお決まりの流れ。
主役は全く手を出さないのに、何故か自分からフラグを立てて勝手に死んでしまう。ある意味これも一つのお約束。
悪役としては微妙な話だがそれだけ男が多くの責任をとっていた時代であり、役職に限らず悪役のやられ方にも反映されているのだろう。
役者としてたまには気前よく斬られてみたいという人がいないとも限らないが。

近年はテレビ時代劇そのものの減少に加え、BSなどで細々と制作される新作についても原作小説付きのものがほとんどであり、このような悪代官を目にする機会も少なくなっているが、それでも時代劇=悪代官というステレオタイプは今も根強く日本人の心に沁みついているのだ。

これら悪代官のイメージを徹底的にパロったのが悪代官(ゲーム)であるのは言うまでもない。


実際の代官


フィクションでは日本各地で悪事を働いては処分されているイメージだが、実は史実においては所謂「悪代官」化する代官は殆どいなかったと言われる。
そもそも代官とは、本来の領主が多忙な場合に代わりに領地経営を任される人のこと。
江戸幕府のシステムの中では勘定奉行などの元で主に幕府の直轄地である天領(幕領とも)の統治をおこなう旗本の最下層であり、
士族ではあるもののぶっちゃけ身分は低い。
また幕末に活躍した韮山代官の江川太郎左衛門(江川英龍)のように代々世襲する代官もいたが、あくまで役職なので交代することも珍しくない。
要は中間管理職である。
中間管理職だけあって、下からは年貢がきついと言われ、上からは年貢が少ないと言われ、
それでいて収入が多かったわけでもないという悲哀に満ちた仕事なのである。

しかし、身分の割には任される職の範囲が広く権限が強い、という特徴がある。
こういった「いかにも」賄賂政治に手を染めそうな立ち位置が悪役として好まれる理由なのだろう。

なお、広範な職の範囲や権限からも想像がつくように本来の代官は 超多忙 な激務であり、
とてもではないが町娘をさらってきて帯回しして遊んでいるようなアホに務まる職ではなかった
また、基本的に 悪行がバレたら死罪 というかなりリスキーな立場でもある。
大名は失政をやらかして問題視されても支配に穴をあけられないためある程度見逃されたり、最悪改易で済む場合が大半だが、代官はすぐに罷免、場合によったら切腹に至るので実際の所「悪代官」と呼べる悪代官は歴史上そんなに多くない。
もし代官という立場にありながら私腹を肥やせる奴がいたら、そいつはとんでもない有能であろう。
むしろ、江戸時代の代官に多かったのは年貢を過大に取り立てるような不正より取るべきところを見逃す不正の方だったとも言われる。
農民を適切に労わりつつ上からの評価も良い代官が農民に慕われたり、減税や飢饉時の救民をさせてくれと切腹で抗議した代官という例もある。

ちなみに幕府から「有能」と称される代官は大抵 農民からとにかくギリギリまで税をむしり取る から有能なのであり、
むしろこの手のタイプの代官に当たる方が領民からすると悲劇だったりする。
大名だが、領民に過酷な徴税をして島原の乱の原因となった松倉重政・勝家親子は、乱の発生までは税をむしりとっていろいろ事業を行うという意味では幕府の覚えのよい大名だったという説もある。
また商人との癒着等のイメージから田沼意次あたりの時代に隆盛を極めていそうだが、実際には 徳川吉宗の時代の方がよっぽど農民を苦しめる代官は多かった
享保の改革はあくまで幕府財政を健全化させただけで、農民のことまで考えた政治ではなかったのだ。
これは武家の収入源である年貢がコメで集められることに由来する。
つまり「一般の景気が悪い=米の価値が高くなる=武士に都合がいい」「一般の景気がいい=米の価値が低くなる=武家の家計は火の車」という図式になるのだ。
戦国時代といった戦時中ならば、金は食えずとも兵糧は大事なものであったが、
おおよそ平和になった江戸時代となると景気がよくても武家の懐が寂しくなりやすい欠陥を抱えていたのである。
吉宗自身、米価と物価の変動に苦心させられたという。

むしろ、農民と癒着してしまった代官から権限を取り上げるような施策も少なくない(収穫にかかわらず一定量の年貢を出させる定免法など)

「私腹を肥やす」というイメージからすると、平安・鎌倉時代の守護・地頭の方がよほどあくどいことをやっている。
ある程度中央の管理が行き届くようになった江戸時代には私欲で領民を虐めるような剛の者はそうそうでなくなったのだ。


悪代官とWiki籠りの悪辣なWiki私物化計画は、冥殿の活躍により世の知るところとなった。

悪代官はアカウント没収の上1年間の制限付きモードを命じられ、大手バナー広告であったWiki籠りの収益はたちまちのうちに傾いていくことになる。

「ありがとう、編集者さん。おかげでこのWikiにも活気が戻りました」

「なに、当然のことをしたまでさ」

利用者に見送られ、冥殿は再びネットサーフィンへと向かっていく。

このwikiに平穏が続くようにと、心の内に願う管理人であった。


終劇

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最終更新:2024年04月25日 13:22

*1 ちなみに本当に気づかないパターンと、本物と気づくがヤケクソで言うパターンがある。