アントニオ・サリエリ(Fate)

登録日:2018/04/12 Thu 19:21:00
更新日:2024/12/22 Sun 22:30:47
所要時間:約 9 分で読めます





私は、死だ。私は、神に愛されしものを殺さねばならぬ。

……我が名はサリエリ。いいや。違う。私は、私は誰なのだ…………―――



Fate/Grand Order』に登場するサーヴァント
クラスはアヴェンジャー。シナリオでは第2部『永久凍土帝国 アナスタシア』にて登場するサーヴァントの一人。


ILLUST:PFALZ
CV:関俊彦
身長:181cm
体重:65kg
出典:『灰色の男』、モーツァルト暗殺伝説など
地域:欧州
属性:混沌・悪
性別:男性

◆ステータス
筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具
B C A C B C


【スキル】
○クラス別スキル
復讐者:C
被ダメージによるNP上昇率が高くなる。恨み・怨念が溜まりやすい。

忘却補正:B

自己回復(魔力):C
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。
魔力を微量ながら毎ターン回復する。


○保有スキル
無辜の怪物:EX
生前のサリエリは誰をも殺してはいない。
だが、後年に流布された暗殺伝説が世界へと浸透するにつれ、アントニオ・サリエリは無辜の怪物と化す他になかった。
簡単に言うと風評被害
本来は別個のスキルである『自己否定』が融合し、一種の複合スキルとなっている。

慟哭外装:A
サリエリは反英雄としての外殻・外装を纏う。
これは、モーツァルトについての記録にしばしば登場する『灰色の男』―――1791年7月に現れて「レクイエム・ニ単調」の作曲を依頼したという死神の如き存在*1と混ざり合い、習合したが故の能力である。
要するに風評被害
戦闘時、サリエリは自動的にこれを身に纏い、殺戮の戦闘装置として稼動する。

燎原の火:B
呪わしいほどに広まっていった風聞、モーツァルト暗殺伝説の流布はまさしく、燎原の火の如くであったという。
アヴェンジャー・サリエリは、自らを生み出したに等しい人々の悪意、中傷、流言飛語、デマゴーグ、おぞかしき囁きを自らの力とする。
つまりまあ風評被害
対象とした集団の精神をたちまち弱体化させる他、強烈な精神攻撃としても機能する。
対象が魔術的防御手段を有していなければ、自死させる事も可能。


【宝具】
至高の神よ、我を憐れみたまえ(ディオ・サンティシモ・ミゼルコディア・ディ・ミ)
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~20 最大補足:50人


行くぞ、公演の始まりだ――

我は死だ……我は神に愛されし者を殺すのだァ!

オオ、オオオオオッ……ゴッドリープ・モーツァルトォォォ!

至高の神よ、我を憐れみたまえ(ディオ・サンティシモ・ミゼルコディア・ディ・ミ)』!!


ディオ・サンティシモ・ミゼルコディア・ディ・ミ。
一箇の生物にとっては制御不能なまでに巨大な殺意を圧縮し、凝固させ、更には魔力と混ぜ込むことで、精神と肉体の双方を蝕む破滅の曲を奏でてみせる。
生前のアントニオ・サリエリが決して持ち得る筈のなかった、無辜の怪物たるサーヴァント―――アヴェンジャー・サリエリだけが有する、絶技にして音楽宝具である。
……だが悲しきかな。
アマデウスに匹敵するほどのその『音楽』を、アヴェンジャーと化したサリエリは永遠に『音』として認識できない。

ゲームでの性能はArts属性全体攻撃&Arts攻撃耐性ダウン(3T)+味方全体のスター発生率ダウン(3T・デメリット)。


作家系サーヴァントといえば各種ステータスが最低ランクに低く、宝具に依存しきりだったり自分では戦えないのが通例だが、サリエリは異様に高い値をキープしている。
が、これは「慟哭外装」を装備した際のステータス。
それを外した実際のステータスはあのシェイクスピア以下であり、最弱と名高いかのアンデルセンと互角
風評被害の具現たる「慟哭外装」あってこそのサーヴァント。

戦闘では焼け焦げ漆黒に染まった一本の剣を武器として振るう。
これは生前のサリエリの心を灼いた燎原の火であり、胸を抉る刃となった、市井の人々による中傷と嘲りが刃の形で具現化したもの。


◆真名:アントニオ・サリエリ

18~19世紀のイタリア出身の実在する音楽家。
マリー・アントワネットの兄に当たるヨーゼフ2世に神聖ローマ帝国の宮廷楽長として任命され、
ベートーヴェンやリスト、シューベルトなど後の音楽界の巨匠を育てた一級の教育者である。
モーツァルトの息子フランツ・クサーヴァーもサリエリの指導を受けている。
当人の音楽家としての成功はもちろんのことながら、音楽教育や慈善事業にも熱心に取り組んだ、マイナーながらも非常に重要な音楽界の偉人である。

しかし彼が世界で有名たらしめたのは、かの天才モーツァルトの毒殺疑惑を掛けられたことに起因する。
同時代の音楽家であったモーツァルトとの交流もあり、「モーツァルトの死はサリエリによる毒殺である」という噂はサリエリの生前から存在していた。
実際の所、モーツァルト毒殺疑惑は証拠も根拠もない出鱈目としか言いようのない噂であった。
しかしサリエリのモーツァルト毒殺疑惑は異様な速さで拡散され流布。結果サリエリは周囲から絶えず疑われるようになる。
そしてロシアの詩人プーシキンの詩劇『モーツァルトとサリエリ』で両者の関係は一躍有名になり、
時は流れて現代になると、イギリスの劇作家ピーター・シェーファーの戯曲及びその映画『アマデウス』の大ヒットによって、「『天才モーツァルト』と対立した『秀才サリエリ』」という大衆のイメージは決定的なものとなる。

因みに実際サリエリがモーツァルトと仲が悪かったことという事実は存在しない。寧ろ尊敬し合い切磋琢磨するライバル関係だった模様。
まだ幼かったモーツァルトの息子・フランツに音楽の指導をつけたのもサリエリである。

この手の人物では珍しくバッシングにより発狂し破滅的な最期を迎えたりといったこともなく、
普通に19世紀前半までぴんぴんしており、最後まで音楽・教育活動に従事しているなど結構肝の据わった人物だったようだ*2

ちなみに、こんな噂が流布された原因としてはイタリア人でありながら神聖ローマ皇帝お抱え楽団の長だったサリエリが
ドイツ民族音楽派のドイツ人によって貶められたがためという説が有力。
モーツァルトはドイツ民族音楽にこだわりを持つ人物であることも、迫害に拍車をかけたと思われる。

――アントニオ・サリエリは、アマデウス・モーツァルトの友人であった。
本来であれば反英雄として座に刻まれる事などなかっただろう。
サリエリはかつての宮廷楽長の立場を追われはしたものの、尊敬すべき音楽家として尊敬を集める存在であり、数多くの音楽家やその子弟を弟子にしていた。
その中にはモーツァルトの一番弟子であったジュスマイヤーやモーツァルトの息子であるフランツ・クサーヴァー・ヴォルフガング・モーツァルト、そしてベートーヴェンらが含まれた。

だが、1820年代、「モーツァルトはサリエリによって殺害された」という伝説が突如として世界に広まっていった。
事実と異なっているにもかかわらず、人々は「神に愛された天才と、それを深く恨み命を奪わんとした秀才」という残酷な物語を夢想した。
老年のサリエリが弟子モシェレスへと告げた「悪意ある中傷以外のなにものでもない」という言葉さえ、罪の告白として流布された。
罪を悔いて、老人は自らナイフで喉を切ったとする噂さえまことしやかに囁かれた。

そして、長い時を経た後。
謂われなき暗殺伝説によって存在を歪められ続けたサリエリの存在は、同じくアマデウスの最後にまつわる伝説『灰色の男』と習合し、サーヴァントとして現界を果たす。
人を害する反英雄――
悲しきもの。
怒れるもの。
神の愛し子を殺すもの。
一騎の、無辜の怪物として。


◆人物像

一言でいうとアマデウス絶対殺すマンエルドラドのバーサーカーと性質は似ているが厄介さは別ベクトルで強烈。
普段はマスターの命令に従い、対象を速やかに仕留める優秀なサーヴァント。
そこに人間的な性格や意思が介在する事はないなどサーヴァントとして見た場合は非常に使い魔らしい忠実な英霊である。

本来は思慮深く、落ち着いた性格の持ち主だが、無辜の怪物と化してしまった事でサリエリの精神は既にひび割れている。
死神の伝説にも等しい『灰色の男』と融合した事も悪い方へ働いており、
結果宿敵であるアマデウスを目にした時、マスターの命令を無視して、殺戮の暴走機械となり果てるだろうとマテリアルではっきり示唆されている。
おまけにアヴェンジャーとしての発生由来から、
サーヴァント化したサリエリは攻撃的な存在であり、異聞帯などの特異な状況下でもない限り、本来意思疎通が困難なタイプのサーヴァントでもある。

精神がひび割れているためか非常に情緒や精神状態は不安定。
独り言が多く、時折己が何者なのか分からなくなるなどエミヤ・オルタに近いものを感じさせるが、元となる精神性自体が平凡だったためか重症度は深刻。
「私は……おぉ……我は……誰なのだ……」と呟いているように、己や自らの過去が分からなくなり錯乱じみた状態に陥る。
それどころかサリエリと融合した『灰色の男』の自我に精神を苛まれ侵食されている節すらある。

「アマデウスを自らの手で殺すこと」がサリエリのサーヴァントとしての存在理由故に、
意思疎通が出来るようでも実際は新宿のアヴェンジャーに匹敵する程扱いづらいタイプである。
アマデウスと対面すれば


我は、貴様を殺すものである……!

貴様の名誉、貴様の曲、貴様の痕跡、全てを殺しつくそう……!今度こそ、この手で殺してやるとも……!


と強烈な憎悪と殺意を隠さない。
一方でアマデウスを殺すことが存在意義であることの歪さと脆さはサリエリ自身も自覚済みで、もしアマデウスを殺したらどうなるのか自嘲するそぶりも見せる。

しかしサリエリの本質はアマデウスの才能を誰よりも評価・認識し、その上でアマデウスを憎み、恐れ、憐んだ「アマデウスの最大の理解者」とも言うべき秀才である。
真にサリエリが憤怒と憎悪を燃やすのは、アマデウスの苦悩を理解しない一般大衆、己、アマデウス本人、そして彼らの関係性を生んだ当時の時代そのものである。

ちなみにストーリー上、「永久凍土帝国 アナスタシア」に登場したサリエリはある理由で理性を保った状態で登場している。
そのため、このゲームでも珍しいカルデアに居る方が危険な状態の人物だったり。

なおジャンヌ・ダルク・オルタ巌窟王とは「リズムが合う」と評して波長が合うと勝手に思いこんでおり。
逆にファントムとは波長が合わない。曰く「リズムが合わない」
そしてマリー・アントワネットの前では借りてきた猫のように大人しくなる。
雇用主の妹さんですから。


◆ゲームでの性能

ゲーム中初の、なおかつ唯一の★3のアヴェンジャー枠で、エクストラクラス全体で見ても唯一の銀。
ただし案の定スト限。(追加タイミングは永久凍土帝国アナスタシアのクリア後)
ピックアップなどの効率的なタイミングを見計らって集めよう…………というか、彼は時々ほぼ確実に入手できる機会が発生するという特徴がある。(後述)

ステータスは☆4に匹敵するほどの高ATKを誇るが、その代償としてHPが☆2以下というトンデモない紙装甲キャラ。
ポジション的には自分も殴れるサポーター枠だが防御関係のスキルが一切ないため普通にあっさり落ちる。
その代わり全てのスキル効果が回数式なため、バフ効果は意外と長持ちする。
スキル面ではデメリット効果なしの「無辜の怪物」がセールスポイントか。

礼装はあっさり落ちることを考慮して死んで発動するタイプの礼装が合うだろう。
近年高性能な能力持ちが多くなってきた★3界隈の中で見て、
とび抜けたユニット性能は持たないが、低コストアヴェンジャーという唯一無二の個性を持つ。
アンリ?そんな鯖は実装されてません。幕間?それはバグ修正、いいね?



◆余談

  • サリエリつかみ取り大会
一般的にスト限のサーヴァントは引く機会が少ない。シナリオをクリアすると通常の聖晶石召喚に追加されるが、新規サーヴァント・限定サーヴァントを擁するガチャの目玉「ピックアップ召喚」には(対象にならない限り)含まれないからだ。
しかし、サリエリはエクストラクラスにおける唯一の★3枠であるため、他にピックアップ出来る低レアサーヴァントがいないという事情から、
2018年7月29日に発売されたクラス別福袋において、エクストラクラスの福袋でサリエリの排出率が40%に設定され
ガチャ結果画面を埋め尽くす勢いのサリエリ祭りとなり、この福袋で宝具レベル5のサリエリが爆誕した報告が相次いだ。
翌年5月に開催されたクラス別ピックアップでも同様の事態が発生。
後に、2騎目の★3エクストラクラスとして徐福(アルターエゴ)が2022年8月から実装されているが、クラス別ピックアップのたびにサリエリが溢れかえることに変わりはないだろう。
過去のピックアップを逃した方は慌てずに次を待つべし。




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最終更新:2024年12月22日 22:30

*1 後にその正体は、しょうもない田舎貴族の遣いの使者だったことがわかっている。

*2 しかし、やはりと言うべきか風説を流されたことには心を痛めていたらしく、(おそらくは尋ねられてもいないにもかかわらず)弟子にわざわざ暗殺を否定する発言をしたことで却って疑われる羽目になるなど、精神的にはかなり参っていた節も見受けられる。