マッジ・ペンローズ(ゴルゴ13)

登録日:2018/10/06 Sat 05:19:00
更新日:2025/01/30 Thu 19:34:03
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「小説の最後はこう結ぶつもりよ……」「あばよ、ゴルゴ13!」




マッジ・ペンローズとは、『ゴルゴ13』の第43巻(文庫版第39巻)に収録されているエピソード「ミステリーの女王」に登場するキャラクター。
後々のストーリーにも影響を与えることになり、(ある意味で)『ゴルゴ13最強の敵』とも言われる。

概要

英国が世界に誇る、ゴルゴ世界で有名なミステリー小説家。
殺した数ならゴルゴにも負けていないと自負する。ただし小説の中で

だが、「ミステリーの女王」としての名声は既に過去の話で、現在は創作に行き詰まってしまっており、2年間何も書けなかった。
本人曰く「休筆」としてそのスランプを否定しているが、マンディ・ワシントンにそれを指摘された時の動揺した態度を見るに薄々と才能の衰えを自覚していたと思われる。

ゴルゴ13に神秘的な存在で創作意欲が掻き立てられるとして興味を抱き、新作の国際的ミステリー小説を書くことを決意。、
ゴルゴに恨みを持つアメリカ軍情報部のエリック大佐に自分を「殺しのプロ」として売り込み、米軍を味方に付けて「取材」すると共に執筆活動を行う。
…だがその動機はテロリストのゴルゴを断罪するという正義感でもなく、ゴルゴに恨みを抱いてるとかいう復讐心でもなく、ただ「小説家」としての栄光を取り戻す為。
その為には自分以外なら何人犠牲になろうと一向に構わないという、人間的な倫理は既に破綻してしまっている。

実在の人物や事件を元にした創作や、裏稼業の人間に直接取材して書いたルポルタージュなどは現実にも存在するが、
裏稼業の人間への取材は信頼関係を得るところから始まる長い時間がかかるもの。
彼女の取った方法は拙速で無礼な上に、手を出した相手がヤバすぎた。
そもそもぶっちゃけ言って今回の彼女の行為は、ほとんど「盗作」に変わりない(マンディからもその点は突っ込まれている)。
最早小説家としても、人間としても色々終わっているとしか言いようがない悪女である。

なお、後のエピソードで判明するのだが、実はゴルゴのルーツについても調べ上げていたらしい。
そのルーツが正しいとは限らないが、マジならはっきり言って才能の無駄遣いである。

結果としてゴルゴは「事実は小説よりも奇なり」という存在であったがために突然過激で理不尽な「取材」を受けるハメになった。
罠にかけられ事故死させられそうになっても凄まじい難度の狙撃を決めて制裁した上で自身の命を繋いでおり、これがノンフィクションだと言われても誰も信じないだろう。
「ミステリーの女王」では必要以上のことは話さず無口ではあるが、マッジへの捨て台詞では初期時代のような皮肉を呟いたりと本気で怒っているかのような態度を見せている。

劇中の活躍

◇ミステリーの女王


「アラスカへは釣り……?猟……?

それとも依頼者と会うためか……?」

アラスカの田舎へとやってきたアンカレッジへと飛び立とうとしていたゴルゴをエリックの部下の飛行機の操縦士を使って罠に嵌め、その際に無線機からゴルゴに挨拶をする。
ゴルゴへの取材とはゴルゴ13という題材を扱ったことの報復を避けるためにゴルゴを抹殺するという計画だった。
操縦士は緊急脱出してシートごと射出することによって機体と共に葬ろうとするが、すぐさま射出された操縦士めがけて射撃してから大慌てで操縦桿を握ったゴルゴに対応される。
結果として操縦士は絶命させられるも機体を立て直すことはゴルゴでも不可能だったため、アラスカの針葉樹林へと不時着させて腕を裂傷し足を骨折する重傷を負わせる。

そこに犬と赤外線探知装置を搭載したヘリによる追跡や部隊の捜索で追い打ちを掛けるが、ワレモコウで応急処置やスギの花粉や川の利用で対策されてしまう。
最終的に追跡部隊を全滅させられたマッジ達は命がけの新たな計画を考えることを余儀なくされるが、ゴルゴの資料を把握しているマッジは傷が癒えるまでゴルゴは行動できないと読み、それまでに完全な罠を用意することとした。

その後、マッジは新作のタイトルを『Gと呼ばれる男』として全世界に発表し、自身はウオルトン少将の協力も得てアイスランドの米軍基地にある小屋で執筆に勤しんだ。
アイスランドの米軍基地は周囲を木一本さえない見通しの良い荒野に囲まれており、飛行機で来ようものなら対空ミサイルの歓迎準備委員会のレーダーに感知され撃墜される。少将はゴルゴにはぜひ空から来て欲しいと自信を見せた。
小屋にも電流が流れており、死にはしないものの確実に吹っ飛んで気絶する。
今度はマッジ自身を囮にしてゴルゴを罠に嵌め始末しようとしたのだ。

ところがゴルゴは着々と反撃の準備を整えており、以前メッサーシュミットを用意させた調達屋の元を訪れ、小型戦闘機F-104スターファイターを当時退役済みだからと100万ドルで三日以内に用意させる。
しかもイギリスとアイスランドの中間にあるフェーア諸島のとある自然が美しい島を購入し、昼夜兼行の突貫工事で一部を整地していく。環境破壊は気持ちいいゾイ
更に有能な整備士と空港で荷降ろし作業の経験がある者を集めた。ここまでで明らかにガリンペイロをも大幅に上回る出費をしている。
準備を終えると大型輸送機C-5Aギャラクシーの周囲を妨害電波を出しながらスターファイターで飛び回り着陸を指示した後に、ギャラクシーをハイジャックしていた。

その最中、自身にとんでもない反撃が来るとも知らずにアイスランドの米軍基地では小屋の中でマッジ達が作品完成記念の祝杯を挙げているマッジ達。
そこにゴルゴによってハイジャックされているギャラクシーが着陸、ギャラクシーの中からゴルゴの駆るスターファイターが緊急発進*1。し、マッジ達のいる小屋にミサイルをぶち込んだ。
あまりの電撃作戦に為すすべはなく爆炎と共に小屋もろとも原稿は焼失。マッジ達も炎に包まれ、マッジは悪鬼の如き怨念に満ちた表情をしながら他の3人と共に焼け死んだ。

歓迎準備委員会も味方の腹の中という死角を突かれてはどうすることもできなかった。
スターファイターは基地の敷地内を飛び回って体勢を整えるともう一つのミサイルも発射し委員会を爆破解体、ゴルゴは見事に基地を脱出していった。
『ミステリーの女王・2』では、一民間人の攻撃で空軍基地が壊滅するという不祥事を重く見たため基地は閉鎖され、基地の勤務者は全員が除隊処分になったという。



「小説の最後の一章は……あばよ、マッジ……だったな……」

◇その後

マッジは「ミステリーの女王」で死亡したが、上記したようにその存在と死はゴルゴ世界に多大な影響を与えた。
世間的には彼女の死亡理由は『取材中の事故死』ということになっているが、マンディ・ワシントンやアイスランドの軍事事情を知る者は死の真相を把握している。

  • 『システム・ダウン』
  • 『毛沢東の遺言』
はこの話がきっかけになった他、

誰得なジジババの濡れ場を披露したそのものズバリな
  • 『ミステリーの女王・2』*2
最近の作品では
  • 『軍隊を持たぬ国』
でも言及されている。


マッジのゴルゴへの「怨念」は未だ晴れてはいないということなのだろうか…
ぶっちゃけ彼女の死自体は完全な自業自得で、逆恨みもいい所なのだが
ある意味ではマッジは本当の意味での「(「怨念」と言う名の)ミステリーの女王」となったのかもしれない。

死してなお、怨霊の如くゴルゴを苦しめ続けるマッジこそ、まさしく『ゴルゴ13最強の敵』と言うに相応しい存在だろう。

余談

マッジは、殺した数ならゴルゴに負けていない、と発言している。
当時なら無くもなさそうだが、現在ではゴルゴ13は世界で最も巻数の多いマンガとしてギネスに乗るくらいの話があり、さらに作中で何度か1個師団やマフィアを丸ごと壊滅させたこともある。
実際、今話でもかなりの犠牲者を出しており、全話通した総犠牲者数はかなりの数になるだろう。
これを越えようと思うと戦争レベルの被害が必要になるし、それをミステリーの分野で達成しつつ売れっ子になるのは、今やかなりの難題になってしまっている。




「ゴルゴ13がどう出るか楽しみね……この記事が項目となれば彼は終わり(ジ・エンド)……その前に彼は追記・修正せざるを得ないわ。」

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最終更新:2025年01月30日 19:34

*1 ちなみに、「MY FIRST BIG」版の解説ではC-5にスターファイターはそのままでは格納できないと指摘しており、主翼部分を小型化する等何かしらの改造を実施している可能性があるとしている。

*2 なお、この時に登場したコマンドは何の因果か前述した基地に所属していた元軍人である。