SCP-612-JP

登録日:2019/04/12 Fri 01:46:00
更新日:2025/01/23 Thu 00:11:39
所要時間:約 20 分で読めます





1949年2月19日岐阜県大地震を忘れないで


SCP-612-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は「忘れられた災害」。


概要


SCP-612-JPはかつて日本で起こったマグニチュード9もの超巨大地震で、昭和24(1949)年に大多数の犠牲者を出したあの岐阜大震災である。

オブジェクトクラスはEuclidだったが、調査で異常が無いことが判明し、Explained認定*1された。




















「あれ、そんな事あったっけ?」と思ったあなたは正しい。
こんな大災害があったとしたら、岐阜県並びに周辺の地域の人口の推移は劇的に変わるはずだが、そのような異常も確認されなかった。
1949年に岐阜にそんな災害があった記録は一切無いし、記憶している人間も誰一人いない。


つまり、SCP-612-JPとは歴史に存在しない「架空の」大地震である。





そんな架空の大地震を財団が認知したのは、██市内中の警察や交番に「不審物がある」との通報が多数相次ぎ、それが警察内のエージェントの耳に入った事が始まりである。

それは1949年2月19日に岐阜で大地震があった事を示唆する文章が刻まれた石碑や木碑などの遺構であり、これらの不審物(SCP-612-JP群)は全部で23個存在する。
当然、██市の住民は「こんなものがあるとは気付かなかった」「いつからあるか分からない」「そのような地震には覚えが無い」と口をそろえるばかりである。



財団は認識災害や現実改変を伴う巨大地震と考え、一連をEuclidクラスのオブジェクトとしてSCP-612-JPに認定し、専門部隊『機動部隊す-3("タケミカヅチ")』を設立して、調査を開始する。

その1年後、SCP-612-JP群をうろつく不審者を発見。

機動部隊が確保して話を聞いたところ、なんとSCP-612-JP群は全部この人物が作った物と判明。岐阜大震災(SCP-612-JP)など存在せず、SCP-612-JP群はタダのイタズラと判明する。
念のため、この人物の使用した工具や使われた材料も調査したがなんの異常性もなかった。

報告者:小林██
[削除済み]
現在のオブジェクトクラスであるEuclidからの変更を提起します。
補遺: 申請は即日承認されました。機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体され、[削除済み]

かくして機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体され、SCP-612-JPはExplainedへと変更された。
イタズラに振り回されるとは情けないと思うかもしれないが、どんな些細なことでも異常があるとみなせば、財団としては調査しないわけにはいかないのである…。













ところが、ある日岐阜県██市の地下に未知の断層が発見された。
地質調査の結果、なんとこの断層を震源としたマグニチュード9の大地震が過去に起こった事が判明し、嘘っぱちだと思われていたSCP-612-JPにまさかの関連性があるのではないかと現在小林博士の下で調査が進んでいる。


追記修正は石碑を作った人がお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-612-JP – 忘れられた災害
by Central_ECH
http://ja.scp-wiki.net/scp-612-jp

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機密文書
閲覧にはレベル4セキュリティクリアランスが必要























登録日:2019/04/12 Fri 01:46:00
更新日:2025/01/23 Thu 00:11:39
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上記の説明はレベル4未満職員向けの職員に向けた説明であり、嘘の情報や非公開情報が混在している。つまりいつものパターン


SCP-612-JPの正体は「SCP-612-JP(岐阜大震災)が本当にあった出来事」と認識する人間の数に応じた異常現象K-クラスシナリオを引き起こすKeterクラスのオブジェクトである。


真の概要


SCP-612-JPは認知者が多いほど特異性の影響が強くなり、逆に少なくなるほど特異性の影響は小さくなる。

  • ステージⅠ
認識者が500人程で岐阜県██市周辺地域のどこかに、未知の断層が発生する現実改変が起こる。
財団が発見した断層も、この現実改変によって出現したもの。
一般の研究機関に見つかり公表なんてされた場合は、SCP-612-JPを認識する人間がどんどん増えてしまうので、オペレーション"ナマズ踏み"により早期に封じ込めが行われる。

  • ステージⅡ
認識者の数が1000人程に増えると、本やネットなどの記録媒体に、さも当然のようにSCP-612-JPについての記録が情報改竄されてしまう。
改竄の範囲は記載されていないが、おそらくは全世界の情報媒体に現実改変が行われるのだろう。
こうなってしまうと封じ込めはほぼ無理ゲーである。


  • ステージⅢ
認識者の数が10000人まで増えてしまうと、岐阜県██市から半径1kmにいる人間全てに、「SCP-612-JPは実際にあった出来事」と認識するよう認識災害が発生。
つまり、本だのネットなど見ていない人間だろうが、問答無用でSCP-612-JPを知覚させられてしまう。
しかも効果範囲はどんどん拡大する。財団の見立てではステージⅢの発生から72時間以内でステージⅣに至ると推測している。


  • ステージⅣ
認識者が██████人。タイムパラドックスによるCK-クラス:再構築シナリオ*2が誘発。






1949年2月19日9時39分26秒
「岐阜大震災」が現実となる。



過去にそのような大災害が「起こったこと」になれば、必然的に現在にも影響を及ぼす。
██市のみならず岐阜全体、さらには周辺の県にも壊滅的な被害が出るのは間違いない。それどころか内陸地でこの規模で起きれば、最悪日本全体に影響を及ぼしかねない。

つまり、財団としてはSCP-612-JPの認知者を減らすしかないのだが、記憶処置しても無意味で、SCP-612-JPに関する嘘の情報を認識させることで認知者を減らせることが判明している。
こうしてSCP-612-JPはKeter認定されたのであった。

財団は「無職がイタズラで「岐阜大震災」なるものをでっちあげ、それっぽい遺構を作りました」……というカバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」にしておく事で、一般人がSCP-612-JPに曝露することを防ぐ。

というわけで、上記の報告書は本当はこのようになる。

報告者:小林██
現在のところカバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」は有効に機能していますが、いつまでも効果があると断言することはできません。事実、199█/2/██に発見された██名をはじめ、潜在的なSCP-612-JP認識者が存在する可能性は依然として残っていますが、調査により検出しようとした場合には逆にSCP-612-JP認識者を増加させてしまう危険性があります。
従って特別収容プロトコルはより効果的なものに更新する必要があり、現在のオブジェクトクラスであるEuclidからの変更を提起します。
補遺: 申請は即日承認されました。機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体され、新たに小林博士を中心とする専門対策チームが結成されています。また、オブジェクトクラスはEuclidからKeterに変更されました。


そして本当の情報を報告書にしたところでSCP-612-JPの認識者を増やすだけでなので、このカバーストーリーはクリアランスレベル3以下の財団職員全てにも適用された。
「SCP-612-JPはたしかにあったけど、結局イタズラだったからExplainedだよ」ということにして、嘘の情報を植え付けるのである。

考え方としては妖精に対する特別収容プロトコルと似ているかもしれない。

ただ、SCP-612-JPによって人口の推移が変化してしまったことを財団は確認している。

そもそも、なぜ財団はこの報告書を書くことができたのか?

何故、SCP-612-JPが認識者によって効果が変動することを知っているのか?

もしかするとSCP-612-JPは一度ステージⅣまで進行し、「岐阜大震災」を現実にしてしまったのではないか?

SCP-612-JPは認識者が減ってしまえば異常性も消失してしまう。恐らく、財団はカバーストーリーなどをフル活用して認識者を減らし、ステージⅠまで異常性を衰微させたのだろう。

現状の異常はSCP-612-JPによって生じた未知の断層のみである。

















……が、今は解体された機動部隊す-3("タケミカヅチ")の元隊長がこんな懸念事項を残している。

SCP-612-JP-4が事前に指示された文法を守っていない。
誰がやったのか分からないが、これを作った隊員を確認し、修正させる必要がある。忘れないように。





もう一度上のSCP-612-JP群のリストを見て欲しい。
確かに他のSCP-612-JP群は犠牲者の記録や法要の記録が書かれているのに対し、他のと同じフォーマットだったのだろうSCP-612-JP-4だけは主観的に書かれている。

そして、他のSCP-612-JP群は徹底して「岐阜大震災」と書いているが、SCP-612-JP-4のみは「岐阜県大地震」と刻まれている。

SCP-612-JPの異常性は記録媒体の記録改竄。
つまり、SCP-612-JP-4はステージⅡの影響で文章が改竄されてしまったのである。





SCP-612-JPの認識者が
着実に増えていることを意味する。







岐阜県の昨日はどっちだ。


余談

tale『忘れられた終焉』においては、このSCPは意外な形で登場する。
核によって終焉を迎えつつある世界で、なんとステージⅣによるCK-クラスシナリオを意図的に引き起こし世界をリセットしたのである。

リセットされたその後の財団では、このように世界終焉シナリオを防ぐ運用を行うため、SCP-612-JPをThaumiel指定するというレポートが提出されたが、流石に容認されなかった。


追記修正は岐阜県大地震を覚えている方がお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-612-JP – 忘れられた災害
by Central_ECH
http://ja.scp-wiki.net/scp-612-jp

忘れられた終焉
by Central_ECH
http://ja.scp-wiki.net/central-ech-1

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最終更新:2025年01月23日 00:11

*1 Explainedクラスとは「異常の原因が解明された」「そもそも異常などなかった」等により、異常存在として扱われなくなったオブジェクトに与えられる

*2 歴史改変によって、今の世界が書き換わってしまうシナリオ。